真打7thD ‐2020-   作:唯のかえる

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第7話

 ――戦闘開始。

 

 

 そう告げ、正眼に漆黒の小烏丸天国を構えたクサカベの躰が沈み込む。彼の後ろで援護すべくマナキーボードを叩いていた情報操作系(ハッカー)のゴスロリ少女は、クサカベのその姿に肉食獣(チーター)が走り出す直前を幻視する。

 

 

 次の瞬間。 ――たんっ。

 

 最低限の軽い音が耳に残り、彼の纏めた紅い長髪が夕日に照らされてキラリと光を反射したのが視覚に残像として残り……、次の瞬間、空気が悲鳴を上げて鋭い剣閃が幾条も迸った。

 

 ギギギギギンッ!!

 

 威嚇する様に翼を広げて、巨体をさらに巨大に見せつけていた蒼いドラゴンの正面から腹にかけて激しい火花が散る。

 

 一拍。

 首、胴の柔らかそうな部分からツゥ……と赤い血液が零れた。

 

「……硬いな」

 

 ズザァァ!! 滑る様に、切り込んだクサカベがドラゴンの胴下で左手、両足の三脚で屈みこみ、フッと力を溜める。一通り斬撃を送り込み、血液が滲んだ柔らかい部分を切断しようと飛び上がろうとした――。

 

『オォオオオオオオオ!!』

 

 だが、ドラゴンも自身の命の危機を本能で感じ取ったのか、胴下に陣取るクサカベを圧倒的な質量で押しつぶすべく、――体当たりをぶちかます!!

 

 クサカベは飛び上がろうとしていたモーションをそのまま使い、小烏丸で迫りくる巨体の脇の皮一枚――、この場合は硬い鱗を始点にし、くるりと体当たりを避け、宙に踊る。

 瞬間――。

 

 ゴッ!! と爆音とともに、コンクリートと下に咲き誇っていた赤い花弁が撒き散らされる。

 

 宙に曲芸のごとく浮いたクサカベは、体で地面を押しつぶすような形になったドラゴンの柔らかい部分を探すべく、目を細めて態勢を整えた。

 

「教官ッ!! 尻尾だ!!」

 

「――ぐっ!?」

 

 戦闘初めにクサカベが刀を振るった時とは比べ物にならないほどの空気の悲鳴が聞こえ、グンッ! とシャープな蒼い尻尾が空中で逃げ場のなかったクサカベに襲い掛かる。

 なんとか、小烏丸天国で流すように弾いたクサカベだが、ゴム鞠のように勢いよく都庁の壁に向かって射出される。

 

 結果、ガシャンッ!! と窓ガラスを突き破り、屋内に吹き飛ばされてしまった。

 

『グゥウルルッッ、――ガァ!!!』

 

 止めと言わんばかりにクサカベが吹き飛ばされた地点に、ドラゴンが炎の吐息(ファイヤーブレス)を噴き出す。

 

 ――轟音。

 

 練り込まれたマナで構成された灼炎がビルに絶大なダメージを与え、焦げ跡を残す。

 パチパチと、残り火が煙を上げ始める。

 

 クサカベの、反応はない。

 

「教官っ!! ……くっ、面倒な」

 

 そういえば、と存在を思い出した様な蒼いドラゴンがゴスロリ少女の方向へ、クサカベが爆死したと思われる場所を見ていた長い首をもたげる。ゴスロリ少女は、額に汗をかきながらマナディスプレイ越しにドラゴンを見つめ、――タタタタタタッ!! と高速で指をマナキーボードに走らせ続ける。

 

 ――タンッ!

 

 甲高いエンター音が響いた。

 ブレスを吐こうとしていたドラゴンはそんなものに気を留めることもなく、灼炎を噴き出す。

 

「火あぶりは、こりごりだっ……。痛ぅ……」

 

 ブレスがゴスロリ少女に触れる直前、彼女の前で彼女が即興で組んだプログラムの壁とぶつかり合い、相殺を始める。だが、完全に消し去ることは出来ずに、小さくなったブレスが少女を炙った。

 

 彼女は、それでも諦めることなくマナキーボードを叩き続ける。

 

 

 ――絶望的な状況の中で、ソレは訪れた。

 

 突如として、何処からともなく現れた小さな白い鳥たちが、蒼いドラゴンに襲い掛かり始めたのだ。ドラゴンは突然現れたそれに鬱陶しさを感じながら、武器の巨躯を使い、叩き落とす。

 

「なんだ、これは――」

 

 白い鳥――。

 ゴスロリ少女はそれが鳥などではない別物だったと、叩き落された物を見てようやく気がつく。

 ヒト型を模した和紙に複雑な呪式の描かれたそれが、どこから飛んできたのかに気がつき……、

 

 完成間近だったそのプログラムを完成させるために高速でマナキーボードを叩く!

 そして――。

 

「受け取れ教官っ!!」

 

 身体能力向上のプログラムが、先ほどクサカベが吹き飛ばされたところで効力を発揮する。

 

 

 ――ぐんっ、と力が、活力がそこに居た彼の体に満ちる。

  

 

 少し煤けたクサカベは未だに白い式神を叩き落そうと、もがく様に格闘している蒼いドラゴンを吹き飛ばされて出来た壁穴から確認した。そして、同じような式神を一枚取出し――、その手を複雑に、格子を描くように動かし、詩を詠うように諳んじる。

 

「追加だ、受け取れ。『北帝勅語(ほくていちょくご)――千鳥(ちどり)千鳥(ちどり)、伊勢の赤松を忘れたか――』」

 

 ――バラララララッ!!

 

 一枚だった式神がハラリハラリとその影から分裂。

 爆発的な増加を起こし、瀑布となってドラゴンに殺到する。

 その式神は、その一枚一枚が鋭い刃のごとく鱗の柔らかい部分を引き裂く!!

 

『グウウゥウ!! ガァ!!』

 

 その数の暴力にたまらないと言った風なドラゴンは、式神の舞う空中に向かってブレスを吐き始めた。舞う式神たちが、炎に焼かれ、力を失い、灰になってどんどん数を少なくしていく。

 

 ――だが、絶大な隙が出来た。

 

 小烏丸天国を、切っ先を向けるようにクサカベは構え、再び体を沈み込ませる。

 

「――シッ!!」

 

 

 真紅の長髪が矢の羽のように見え、一矢と為った彼の刃が……。

 ――黒塗りの刃が、つぷりっと音を立てて蒼いドラゴンの喉に突き立った。

 

「ハァァァ……ッ!!」

 

 意識を、その一刀に注ぐ。

 小烏丸天国の漆黒の刀身が黒い陽炎に包まれ――。

 

 巨体を蹴り、そのままドラゴンの頭まで縦に、卸す!!!

 

 断末魔を上げることもできずに、頭を断たれたドラゴンは、グラリとその巨体を傾けさせ、

 

 

 ズゥン……。

 

 

 ――生体活動を止めた。 

 

 

 

 ❀✿❀✿❀✿❀

 

 

 

「――戦闘終了。いやー、疲れたわ。そしてごめんな、ゴス……候補生」

 

「まったくだ。教官ならもう少ししっかりしてくれ。……まぁ、助かったよ」

 

 そして、ひゅっ。と血糊を払うように小烏丸天国を振い、虚空に消したクサカベは本部に連絡を入れるべくインカムを押さえる。ジト目のゴスロリ少女は、疲れたのかウサギのぬいぐるみを抱きしめ、目を閉じて地面に座り込んだ。

 

 暫くして、建物内で同じようにドラゴンを倒したと思われるガトウ、ナガレとシラハのいる候補生チームが屋上に訪れた。互いの状態、状況を確認しガトウのおっさんは、本部に報告を入れる。

 

 

 彼らは夕日に照らされながら、嵐が訪れる前のような静けさを感じていた。

 

 

 




 13班は2020のOPを見れば大体わかると思われます。
 ただ、デストロイヤーをどうするか。爺さん……。
 

 もーすぐ0章終わる。
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