魔法先生ネギま~とある妹の転生物語~   作:竜華零

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今話は一部、修正しました。
では、どうぞ。



第8話「桜通りの吸血鬼」

Side アリア

 

春休みが終わり、新年度が始まりました。

しばらくの間はとても静かな(一部は春休み中も騒いでいました)日々が続いていましたが、今は。

 

 

「「「3年!」」」

「「「A組!」」」

「「「ネギせんせー! アリアせんせー!!」」」

 

 

はい、元気が良いですね。

元気が良すぎて、HRの連絡ができません。

いえ、嬉しいんですけどね。

 

 

「それでは、身体検査がありますので、みなさん服を脱いでください!」

「出て行きなさい」

 

 

瞬間的にネギ兄様を教室の外に蹴り出します。

扉の向こうで犬の鳴き声のような声がしましたが、知ったことではありません。

 

 

「まったく、何を考えているのか・・・」

「アリア先生、何も蹴り出さなくとも・・・」

 

 

委員長の雪広さんが兄様の心配をしますが、こればかりは。

 

 

「心配してくださるのは嬉しいのですが、あまり甘やかさないでください、雪広さん」

 

 

ただでさえ、一般常識が欠乏しているのですから。

明日菜さんも激しく頷いています。

・・・ご迷惑を、おかけしているようです。

今度、菓子折り持っていきましょう。

 

 

「で、ですがネギ先生はまだ子供ですし・・・」

「いいんちょは本当ネギ君大好きだよね~」

「なっ!?」

「あははっ」

 

 

本当に無意味に人気のある人ですね、あの兄は。

これが主人公補正というやつでしょうか、だとしたらもはや一種の毒ですねこれは。

 

 

「アリア先生も身体測定するん?」

「はい、そうですね・・・このまましてしまう方が、面倒が無くていいですね」

 

 

職員用の身体測定もありますが・・・まぁ、問題ないでしょう。

けして他の女性教諭の方々との身体差を気にしているわけではありません。

というかしずな先生を筆頭に、なぜ私を膝の上に座らせたがるのでしょうか。

愛玩動物ではないんですよ、私は。

いえ、気にかけていただけるのは嬉しいのですが。

 

 

着ていたスーツを丁寧に脱ぎ、下着姿に。

まだ第二次性徴の特徴がないので、キャミソールのみで十分なのです。

夏は非常に助かりま・・・って、なぜかクラスのみなさんの目が・・・。

 

 

「「「「す、すごーーーーい!!」」」」

 

 

は!?

ちょっ・・・!!?

 

 

「何これ!? お肌しっろ!!」

「ほんと・・・ってすごいすべすべ! ぷにぷにしてるし・・・っ!」

「髪の毛もさらさら・・・これって地毛!?」

「下着も・・・これシルク?」

 

 

・・・しばらくもみくちゃにされた後、身体測定が始まりました。

お嫁に行けないかも・・・しれません。

 

 

気がつくと、教室はいつの間にか「桜通りの吸血鬼」についての話題になっていました。

職員会議でも話題になっていた、変質者の話ですね。

 

 

「気をつける事だな、神楽坂明日菜。吸血鬼は貴様の様な無駄に元気のいい女子を狙うらしいぞ、くくく・・・」

「ふ、ふ~ん」

 

 

エヴァさんが明日菜さんを脅かしています。

・・・とても、楽しそうですね。

明日菜さんがかなり怯えているようです、顔色が悪いです。

 

 

「明日菜さん、噂ですから。あまり気にしない方がよいですよ」

「べ、別に怖くなんてないわよ! わ、私なら逆に蹴っ飛ばしてやるわ!」

「明日菜さんは勇ましいですね。私なんて夜道で吸血鬼に出会ったら2秒で気絶しますよ」

 

 

ちらりとエヴァさんを見ると、良い感じの笑顔を返してくれました。

「やってやろうか?」と言う幻聴が聞こえた気がしましたが、全力でお断りしたいです。

 

 

「それはもうちょっと頑張りなさいよ・・・でも、心配してくれてありがとね」

「いえいえ」

 

 

その後は滞ることなく身体測定が進みました。

そろそろ終わるかという時間になって、急に廊下が騒がしくなりました・・・和泉さん?

 

 

「どうしましたか?」

「あ、アリア先生! 絡繰さんが!」

「落ち着いてください和泉さん。兄様、どういう状況ですか?」

 

 

話をまとめるとどうやら茶々丸さんが桜通りで変質者、保健室に運びこまれているとのこと。

・・・ええ、「茶々丸さん」が、です。

クラスメートのためにここまで必死になれる所は、和泉さんの優しい所なのでしょうね。

 

 

「・・・なるほど、知らせてくれてありがとうございます和泉さん。では兄様、教室の方は私が落ち着かせますので、兄様は絡繰さんの様子を見てきてもらえますか?」

「わ、わかった」

「うん!」

 

 

2人を見送った後、教室はまさに蜂の巣をつついたかのような騒ぎになりました。

これは落ち着かせるのが手間ですね・・・。

 

 

「はい、みなさん。心配なのはわかりますがどうか落ち着いてください・・・」

 

 

特に葉加瀬さん落ち着いてください、「私の茶々丸が!?」って・・・いやホントに落ち着いてくださいそのメカ何ですか!?

 

 

 

 

 

Side エヴァンジェリン

 

ククク・・・アリアめ、ずいぶんと手間取っているではないか。

いつもの澄ました顔が、生徒どもの勢いに押されて困り果てている。

面白いかと問われれば、そうだと答える。

 

 

意外な程、そう思えた。

あの男にこの地に封印されてから15年・・・正直、楽しさとは程遠い時間だった。

約束の3年を過ぎてからは、特に苦痛だった。

 

 

「そうだな、面白い」

 

 

今度ははっきりと頷く。

あの男の娘が私の下僕になってまでやりたいことがあると聞いた時には腹を抱えて笑ったものだし、別荘で模擬戦をやった時などは奴が周囲に隠している力を見てまた笑った。

心の底から笑ったのは、本当に久しぶりだった。

 

 

それに、奴が自分の生徒に振り回されている姿を見るのも、また面白い。

それに・・・。

 

 

 

今回の吸血鬼騒動は、奴が言い出したことだしな。

奴は、アリアは自分で言ったのだ、ネギ・スプリングフィールドを襲えとな。

まぁ、そのこと自体は別に良い。

じじぃからの依頼でもあったし、あの男の息子でアリアの兄であるあの坊やにも多少は興味があったからだ。

だが、奴は、アリアは・・・。

 

 

「私の魔眼なら、学園長サイドの策略の間隙を突いて、エヴァさんの魔力を奪っている学園結界を解除、悪くとも都合よく書き換えることができるはずです」

 

 

と、言ったのだ。

嬉しかった。

私を吸血鬼と知りながら、そこまでしようとしてくれた人間は初めてだった。

兄のことにしても、私が女子供を殺さない、という話を信じてくれているからだろう。

 

 

信頼されるという感触は、初めてのものだった。

ま、流石にクラスの連中を吸血するのは止められたがな。

なので他の連中はおどかす程度にして、今日は茶々丸に襲われたフリをさせた。

 

 

「ま、従者の頼みを叶えるのもたまには良いさ」

 

 

封印を完全に解くためだしな。

その時不意に、アリアと目が合った。

にこ、と微笑まれた。

・・・。

 

 

・・・ま、まぁ、せいぜい楽しませてやるとするか!

何と言っても私は、世界最強の<悪の魔法使い>だからな!

わははははははははははははははははははははっ!

 

 

 

 

 

Side アリア

 

「失礼します」

 

 

あの後なんとかなだめすかして、保健室に向かうことができました。

保健室に入ると、中にはネギ兄様とベッドに腰掛ける茶々丸さんが。

見た所、元気なようですね。

当たり前ですけど。

 

 

「遅くなりました、兄様」

「あ、アリア」

「茶々丸さん、お加減は?」

「私はロボットなので・・・」

 

 

ネギ兄様、茶々丸さんと言葉を交わしながら、茶々丸さんの様子をうかがいます。

確かに茶々丸さんは普通の身体とは少し違うので、丈夫でしょうけど・・・。

私のせいでもあるので、心配です。

 

 

「あ、あの・・・アリア、絡繰さんなんだけど」

「はい、なんでしょう?」

「えっと・・・は、早く良くなるといいね」

「・・・そうですね」

 

 

どうやら、兄様も気づいてはいるようですね。

エヴァさんはわざと、茶々丸さんの制服などに魔力の残滓を残していましたから。

といっても、兄様は私がすでにエヴァさん側だとは知らないでしょうが。

 

 

 

 

 

 

 

「アリア先生、ありがとうございました」

「構いませんよ。私のせいでもありますし・・・」

「いえ、マスターのためでもありますので」

 

 

放課後に、茶々丸さんを家まで送り届けることにしました。

・・・こちらの都合で迷惑をかけてしまったようなので、お詫びも兼ねています。

自己満足ですが。

 

 

「・・・!」

 

 

しかし2人仲良く校舎から出た所で魔力反応、桜通りですか。

・・・あの兄様、書類仕事もせずに。

この後は、まっすぐ帰ろうかと思ったのですが・・・。

 

 

「申し訳ありません、アリア先生。せっかくお送り頂いたのですが、マスターに呼ばれたのでここで・・・」

「あ、はい・・・では後日に」

 

 

エヴァさんは飽きたのか面白いと考えたのか、さっそく茶々丸さんを敵として兄様にぶつける気のようですね。

まぁ、保険として傍に置いておくだけなのかもしれませんが・・・魔力は、まだ完全には戻っていませんし。

 

 

・・・ネギ兄様の驚く顔が見たいという、いじめっこ的な思考かもしれませんが。

被害者が実は敵だった・・・となった時、兄様がどう行動するのか。

・・・興味、沸きませんね。

 

 

「私は、どうしますかね・・・」

 

 

まぁ、私も別枠で行くしか無いわけですが。

嫌な予感しかしませんけど。

溜息一つ、私はその場から駆け出しました。

 

 

 

 

 

桜通りにつきました・・・が。

 

 

「これはいったい・・・?」

 

 

木乃香さんと明日菜さんが、宮崎さんを介抱していました。

宮崎さんが服を着ていないのは、なぜ・・・?

 

 

「あ、アリア先生!」

「えっと・・・どういう状況なんです?」

「そ、それが、私達が来た時にネギが裸の本屋ちゃんを抱きかかえていて、それで」

「噂の吸血鬼を追いかける言うて、もの凄いスピードで走ってってもーたんや」

 

 

本屋ちゃんとは、宮崎さんのニックネームですね。

推定、宮崎さんをおどかしていたエヴァさんに武装解除魔法をかけ、宮崎さんが巻き添え・・・でしょうか。

兄様・・・いくらなんでも裸のまま放置しないでください。

とりあえず、スーツの上着を宮崎さんにかけて・・・。

 

 

「とりあえず宮崎さんに何か着せて、部屋まで連れて行きましょう。申し訳ありませんが、手伝ってください」

「わかったえ」

 

 

その後木乃香さん達の部屋で宮崎さんを着替えさせた後、木乃香さんを伴い、宮崎さんを部屋まで送り届けました。

宮崎さんの部屋の窓から外を見ると・・・何やら全力疾走している明日菜さんの姿が。

 

 

「あ、明日菜や、どこに行くんやろ?」

「・・・明日菜さん」

 

 

あの方向は・・・。

ネギ兄様たちの魔力反応がある方向、ですね。

本当は、止めるべきなのかもしれません。

 

 

でも、明日菜さんが自分で決めたことならば、私にはきっと、それを止める資格はないのでしょう。

でも・・・。

それでも、行ってほしくないと思うのは、身勝手なのでしょうか?

教えてください、シンシア姉様。

 

 

 

 

 

アリアは、正しい選択ができていますか?

 




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

主人公は今回の学園長サイドによる「ネギへの試練」のストーリーを利用して、エヴァンジェリンを縛る最後の結界をどうにかしようとしています。

はたして主人公の計画(原作?)通りに話が進むのか、それはこれからの展開次第です。

・・・何より私の表現力と発想力にかかっています。
がんばります。

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