魔法先生ネギま~とある妹の転生物語~   作:竜華零

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第14話「宣言」

Side アリア

 

あの後、運び込まれたらしいエヴァさんのログハウスで一日休ませてもらいました。

かなり楽になりましたが、右眼の視力は戻りませんでした。

正直、ビビってます。

私の切り札がリアルに一つ使えません。

エヴァさんと茶々丸さんに心配をかけたくはないので、「大丈夫」と連呼しましたが。

 

 

それはそうと別荘から出て自室に戻ろうとしたころ、自室前でタカミチさんに捕まりました。

回復するの早いですね。

そして正直、勘弁してほしかったです。

でもタカミチさんの目がいたく真面目であったので、逃げられませんでした。

 

 

「・・・よく来たの」

 

 

そして、学園長室に連行される私。

学園長だけかと思いきや、魔法先生全員集合の様相を呈していました。

ちなみに今私は右目に包帯を巻いていますので、それを見て驚く人が何人かいました。

でも、この状況を回避することはできません。

 

 

・・・謝ったら、許してくれませんかね?

無理でしょうねぇ・・・。

 

 

「呼ばれた理由は、わかっておるな?」

 

 

わかりたくないです。でも、わかってしまいます。

頭いいんです、私。

え? 頭悪くてもわかる? ・・・ですよね。

 

 

「・・・エヴァの呪いを解いたそうじゃな?」

「はい、解きました」

「・・・・・・そうか、なら良い」

 

 

・・・いやに、物分かりがよいですね・・・?

いったい、どういうつもりなんでしょう?

 

 

「何を言っておられるんですか、学園長!!」

 

 

一部の先生は、ご理解いただけないようです。

まぁ、相手は吸血鬼ですからね。

怖いのはわかりますけどね。

家族とかいる人は、特に保守的になりますしね。

 

 

「キミも、なぜそんなことをしたんだ!? お父上の名を汚すつもりなのか!?」

 

 

・・・この人の相手、疲れそうですね。

えっと、ガンドルフィーニ先生でしたか。

悪い人ではないんですけど・・・ええ、悪い人では。

 

 

「えっと・・・何が問題なのか、わからないのですけれど」

「<闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)>に手を貸し、あまつさえサウザンドマスターのかけた呪いを解くなど・・・」

「でも呪いは本来、3年の約束だったのでしょう?」

 

 

確認するように学園長を見ると、頷いてきました。

 

 

「そもそもこの15年間、エヴァさんにこの学園を守ってもらっていたのでしょう? 魔力を封印した上に、強制労働・・・そしてエヴァさんは、逆らうことも悪事も働くこともなく、それをやっていた」

 

 

どちらが悪か、わかりそうなものですけどね。

 

 

「だから私が引き継いだんです。父のその契約を、賠償期間付きで」

「賠償期間?」

「ええ、今後12年間・・・父の契約の超過分、私はエヴァさんの従者として働くことになっています」

「なっ!?」

 

 

先生方がどよめきます。

タカミチさんは昨夜の話の内容と合わせて、納得しているようですが。

・・・まぁ、実際は期間なんて定めてませんけどね。

 

 

「エヴァさんも、とりあえず私の修行が終わるまで・・・つまり次の卒業までは麻帆良でこれまで通りに過ごすそうです・・・どこか問題がありますか?」

 

 

というか、私としては最高のグットエンドなんですけど。

目的も果たせますし。

おまけに全盛期の魔力を取り戻したエヴァさんが研究を手伝ってくれて、修行までつけてくれる。

何より茶々丸さんは良い人です。

言うことありません。

 

 

「何を考えているんだ!? 君は!?」

「それは私のセリフですよ。貴方たちがもっとちゃんとエヴァさんと接してくれてさえいれば、わざわざ私が後始末をすることもなかったんです」

 

 

そう、頭ごなしに悪と決め付け怖がって、そのくせ都合よく使っていたくせに。

これだから。

 

 

「父と言い先生方と言い、どうして大人になると、そんな恥知らずになれるんでしょう。自分の都合ばかり優先して、相手の話ひとつ聞けやしない」

 

 

まぁ、私も偉そうなことは言えませんけどね。

でも言います、「悪」ですから。

私は全員を見据えながら、言葉を続けます。

 

 

「私の人生です、誰と共に在るかは私が決めます。そしてその責任も、全て私に帰属します」

 

 

そう言い放つと、先生方は何とも言えない表情になりました。

好意的ではありませんが、なんと言っていいのかわからない。

そんな表情。

 

 

「今後、私のマスターであるエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルを侮辱することは私を侮辱したことになります。彼女に害意を持つ者は私が実力で排除します。今後彼女の敵は、私の敵となるでしょう」

「そうか、ならお前の敵は私の敵でもあるわけだな? アリア」

「私にとっても、敵となります」

 

 

私が高らかにそう宣言すると、突然、聞き覚えのある声がしました。

それも、2人。

後ろを振り返ると・・・。

 

 

「エヴァさん、茶々丸さんも」

「ふん、ずいぶんと面白いことをしているじゃないか」

「エヴァさん、どうしてここに?」

「ふ・・・」

 

 

私のもっともな疑問に、かっこよく笑うエヴァさん。

・・・惚れてしまいそうです。

すると、茶々丸さんが私の傍に来て。

 

 

「マスターはアリア先生が心配で心配で、後をついてきたのです」

「茶々丸!? なんでバラした!?」

「そうなんですか・・・もぅ、エヴァさんのツンデレ」

「違うわっ!」

 

 

顔を真っ赤にして拒絶するあたり、まさにツンデ「違うわっ!」・・・心を読まれました。

エヴァさんはふん、と鼻を鳴らすと私を守るように私の前に立ちました。

小さな背中が、なんだか頼もしく思えます。

 

 

「そういうわけだ、じじぃ。今後アリアに妙なちょっかいを出したら、私が許さん。この学園ごと消滅させてやるから、そのつもりでいろ」

 

 

そう言うとともに、魔力と殺気がエヴァさんの全身からあふれ出ました。

その強大な魔力量に、学園長の額に玉の汗が浮かびます。

他の魔法先生は、言うに及びません。

タカミチさんでさえ、苦しそうですね。

 

 

「・・・ふん。行くぞ、茶々丸、アリア」

「はい、マスター」

「・・・・・・はい、エヴァさん」

 

 

どうしてでしょう、とても嬉しいのです。

私は茶々丸さんの反対側に回って、エヴァさんについて歩きます。

茶々丸さんと私で、エヴァさんを左右からガードする形です。

 

 

「待つんじゃ!」

 

 

すると、学園長先生が呼び止めてきました。

 

 

「アリア君、キミは・・・何を目指しておるんじゃ? 何を求めておる?」

 

 

何が目的って、それは・・・。

私は立ち止まって、少し考えるそぶりを見せた後に。

 

 

 

「お嫁さんです♪」

 

 

 

そう言って、学園長室を後にしました。

 

 

 

 

 

Side 学園長

 

アリア君が退出した後、わしらはあっけにとられておった。

というより、彼女の真意をはかりかねていた。

 

 

「お嫁さん・・・?」

 

 

誰かが震える声で呟くのが聞こえる。

どことなく、不信感が漂っているように思える。

わしとて、にわかには信じがたいのじゃから・・・。

 

 

「彼女の年齢なら・・・普通なんじゃ?」

 

 

娘のおる明石君がそう言うが、場の空気は変わらんかった。

皆の表情はとても堅い。

エヴァのこと、アリア君のこと、そしてこれからどうしたらいいか、戸惑っているのじゃろう。

 

 

「でも・・・アリアちゃんが僕たちのことを信用していないというのは、確かでしょう・・・」

 

 

どことなく辛そうに、タカミチ君が言う。

その意見には、皆も同意するように頷いた。

アリア君の魔法使い嫌いは以前からわかっておったが、今回の事でますます進行した可能性が高い。

 

 

「どうなさるおつもりですか学園長、将来有望なマギステル・マギ候補が・・・」

 

 

ガンドルフィーニ君はネギ君同様アリア君にも期待しておったからの。

その落胆も激しかろうて・・・。

 

 

どうしたものかの、ネギ君の修行の事も考えねばならんし・・・。

といって、あの年齢で学園結界に介入できるほどの力を持つアリア君を放っておくこともできん。

頭を抱えたくなるとは、このことか。

 

 

 

 

 

Side タカミチ

 

僕は先の戦闘のことを思い出していた。

アリアちゃんは、肉弾戦で僕を圧倒した。

不意を突かれたとか、油断したとかは言い訳だ。

どういう理屈で、僕を一撃で倒したのかはわからない。

 

 

僕の知っているアリアちゃんは、おとなしくて、引っ込み思案な、普通の女の子だったはずだ。

魔法が使えないということでずいぶん苦労はしていたようだけど、それくらいだった。

 

 

それなのに、昨日の動き。

・・・わからない。

 

 

いったい、アリアちゃんに何があったのか。

そして、彼女の力はどこからきているのか・・・。

わからなかった。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

「あはははははははははははははっ!! お、お、お嫁さ・・・お嫁さんだと!? ぷくくっ・・・だ、だめだ腹がいたっ・・・あはっはははははははははははっ!!」

 

 

あれから、エヴァさんはずっと笑っています。

どうやら私の「将来の夢はお嫁さん」発言が、ツボにはまったようです。

・・・・・・というか。

 

 

「茶々丸さん、私、キレていい場面ですよね? 下剋上OKですよね?」

「あ、あの、その・・・」

「あ、おいばかよせ顔をみせっ・・・ぷくふっ!?」

 

 

私の顔を見てプルプル震えた後、再び爆笑しだすエヴァさん。

 

 

「離してください茶々丸さん! あの金髪ロリッ子に鉄槌を下してやるんです!!」

「お、落ち着いてくださいアリア先生、私は素敵な夢だと思います!」

「あーはっはっははははははっ!」

「うにゃああああああっ!!」

「マスター! アリア先生!」

 

 

 

いいじゃないですか、前世でもなれなかったんですよ?

いつかきっと、素敵な王子様が来てくれるって信じてるんです。

「お嫁さん」は・・・幼稚でしょうか、シンシア姉様。

 

 

 

 

 

アリアは、お姫様だっことかに憧れます。

 




最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

主人公が正式にエヴァンジェリンの庇護下に入りました。
次の大きな山場は京都修学旅行編ですね。

次回もがんばります。

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