魔法先生ネギま~とある妹の転生物語~   作:竜華零

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今回から修学旅行編に突入します。

ここからまた十数話、お付き合いいただけますようよろしくお願いいたします。

では、どうぞ。


第16話「修学旅行へ向けて」

Side アリア

 

ある日、学園長室に呼び出されました。

・・・忙しいのに。

 

 

「えええええーっ!? 修学旅行が中止!?」

 

 

・・・帰りたいです。

学園長室の中から聞こえてきた声に、私は心の底から帰りたくなりました。

でもここまで来て帰るのも、なんだか癪ですし。

 

 

「・・・失礼します」

 

 

ノックして中に入ると、学園長とネギ兄様がいました。

ただ、ネギ兄様はどうしてか崩れ落ちていました。

 

 

「おお、よく来てくれたのアリア君」

「・・・修学旅行は中止、了解しました。では・・・」

「ふぉ!? ちょ、ちょっと待ちなさい!」

 

 

そのまま帰ろうとしたのですが、呼び止められてしまいました。

私はしぶしぶ、もう一度振り向いてあげました。

 

 

「・・・・・・なんですか」

「も、もう少しフレンドリーにできんかのぅ?」

「無理です」

 

 

私、あなた嫌いですもん。

 

 

「それで、用件は何ですか? 私、今ちょっと忙しいんですけど」

「最近の若者は老人に厳しいのぅ・・・」

「帰りますよ?」

「実は修学旅行についてなんじゃが、京都は無理かも知れんのじゃ」

 

 

学園長は慌てて用件を伝え始めました。

まとめると、こうです。

 

 

麻帆良を本部とする関東魔法協会と、京都に本拠を構える関西呪術協会は仲が悪い。

修学旅行とはいえ、麻帆良の魔法先生(ネギ兄様です)が京都に行くのは嫌がられる。

そこで学園長は兄様に親書を持たせ特使として派遣する、という形を取ることにしたそうです。

・・・長い、つまりは京都に行くんじゃないですか。

 

 

「そういうわけじゃ、ネギ君、頼んだぞ」

「は、はい! がんばりますっ!」

 

 

学園長先生から親書を渡されて、舞い上がってる様子の兄様。

・・・意味、わかってるんでしょうか?

 

 

「では、修学旅行は予定通りとする。ネギ君は下がって良いぞ」

「は、はい」

 

 

そして私をちらちら見ながら出ていく兄様。

普通に鬱陶しいですね。

 

 

「・・・それで、私にどういった御用件でしょうか?」

「うむ、京都でネギ君のサポートをやってもらいたいのじゃ」

 

 

真剣な目で私を見つめる学園長、私はそれに頷き。

 

 

「嫌です」

 

 

はっきりと答えてあげました。

なんで私が、あんなちら見兄様の面倒をみなくてはいけないんですか。

 

 

「な、なぜじゃ?」

「教師としてのサポート、副担任としての仕事はします。これは私に課せられた義務ですから」

 

 

ですが、と言葉を続けます。

 

 

「魔法使いとしての仕事なら別です。私は別に貴方の部下ではありませんし、頼みを聞く義理もありません。だいたい、見習い魔法使いのネギ兄様に特使を任せる等・・・相手を馬鹿にしているとしか思えない下策です」

「むぅ、関西呪術協会の長は、君たちの父の戦友じゃし・・・」

「近衛詠春さん、知っています」

「おお、知っておったか」

 

 

そりゃ知っていますよ。

知っているから、言っているんです。

 

 

「そんなトップ同士の私情の入った人事が本気で通ると思っているあたり、頭大丈夫ですか?」

「・・・最近、容赦ないのぅ」

「事実ですから」

 

 

いくらトップが良いと言っても、反発するのが人であり、組織でしょう。

それくらいのことわからないわけはない・・・と、なると。

 

 

「試練・・・ですか? ネギ兄様・・・そして私の」

 

 

そう言うと、学園長の顔色が変わりました。

ついでに言うのなら、私に関しては見極めの意味もあるのでしょう。

 

 

「・・・また、そんなことに生徒を巻き込むのですね」

「大丈夫じゃ、相手も一般人には手を出さんじゃろうからの」

 

 

そんな甘い見通しでどうしますか。

3-Aには・・・。

 

 

「・・・木乃香さんについても、同じことが言えると?」

「婿殿もおるし、そう大事にはならんと思うのじゃがのぅ・・・」

 

 

・・・話すだけ無駄、ですね。

最初からわかっていたことではありますが、この見通しの甘さ、私の予想以上です。

 

 

「・・・とにかく、私はネギ兄様の面倒を見る気はありません。ただ、生徒のみなさんのことは守ってみせましょう・・・。ですがこの程度の戦力で緊張状態にある組織の本拠に入るのです。万が一の際の覚悟だけはしておいてください」

 

 

言うことは言いました。後は知りません。

私は私の責任を果たすだけですから。

 

 

 

 

 

Side 学園長

 

「うぅむ・・・」

 

 

また、失敗してしまったかのぅ。

なんとかアリア君とのわだかまりを解消しようと、今回の事を考えたんじゃが・・・。

 

 

「逆効果じゃったかのぅ・・・」

 

 

しかも当然のごとくこちらの考えは看破され、警告までされてしまう始末じゃ。

 

 

「むしろもう、何もせんほうが良いのかのぅ・・・」

 

 

しかし、それでは・・・。

悩みは、尽きん・・・。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

「オウ、アリアジャネェカ」

 

 

別荘に入ると、奇妙な人形、その名もチャチャゼロさんが私を出迎えてくれました。

この方は一番古いエヴァさんの従者とかで、魔力が封じられていた間は魔力供給が受けられず埋もれていたのだとか。

 

 

つまりは私の同僚、それも先輩にあたる方ですね。

刃物をよく振り回すことを除けば有能な戦士、学ぶことも多くあります。

 

 

「エヴァさんは?」

「サキニハジメルッツッテタゼ?」

 

 

待っててって言ったじゃないですか~。

私は急いで研究室へ向かいます。

 

 

 

 

 

「どうですか? エヴァさん」

 

 

私が研究室に入った時、すでにあらかた終わっていました。

 

 

「む、戻ったか」

「すみません、遅れて」

「いや、いい。今最終調整に入ったところだ」

 

 

エヴァさんの前には大きな寝台があり、そこには女の子が横たわっていました。

病人服のような白い衣服の胸元には、彼女の名前が刺繍されています。

 

 

『相坂 さよ』

 

 

「成功したんですか?」

「一応、意識の定着には成功した。ただ、自由に動くのにはまだしばらくかかるな」

 

 

そう、この肉体はさよさん用にエヴァさんと茶々丸さん、そして私の3人で作り上げたホムンクルスです。

さよさんの新しい身体。

まぁ、この処置についてはエヴァさんと私との間でかなりの激論があったのですが、茶々丸さんを味方につけた私の意見が通りました。

 

 

「お前がちゃんと面倒を見ろよ」

 

 

それがエヴァさんの出した、ただ一つの条件でした。

それは衣食住や学に関することだけでなく、魔法のことも含まれます。

・・・私と関わる以上、そこは避けては通れないこと。

でも、それでも私はさよさんを幽霊のままこの学園に縛り付けておくことはできなかった。

 

 

人は全て、自分のことは自分で決めるべきなのです。

さよさんの意思に反してここに縛り付けた人間が、本当に憎い。

 

 

「・・・さよさん」

 

 

私は眠り続けるさよさんの頬に触れ、次いで頭を撫でます。

 

 

「一緒に修学旅行、行けるといいですね」

「リハビリも含めて、まだかかるからな・・・微妙だな」

 

 

・・・どうか、貴女の未来が幸せでありますように。

シンシア姉様。

 

 

 

 

私たちの未来にも、幸せはあるでしょうか。

 




最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

さよさんに新しい肉体を作ってみました。

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