魔法先生ネギま~とある妹の転生物語~   作:竜華零

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第28話「3日目・舞踏会・上編」

Side アリア

 

もっと、貴方を見ていたい。

どうしてか、そんな気分になります。

 

 

「魔法具『クトゥグァ』、ならびに『イタクァ』!」

 

 

右手に自動式拳銃(クトゥグア)を、左手に回転式拳銃(イタクァ)を装備、こちらへと近付いてくるフェイトさんを牽制します。

 

 

ダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンッ!

 

 

『クトゥグァ』から放たれる直線的な炎の弾丸と、遠隔操作される『イタクァ』の風の弾丸。

しかしその全てをフェイトさんは上下左右に動いてかわし、時には無詠唱の石の槍で迎撃してきます。

当たるとは思っていませんでしたが、ここまで華麗にかわされるとむしろ見惚れてしまいます。

 

 

「・・・恥ずかしいので、あまり近くに来ないでくれますか?」

「ひどいな。僕はもっと近くに行きたいのに」

「意外と、情熱的・・・・・・です、ね!」

 

 

両手の銃を破棄、魔法具『黒の剣』を左手に創造。

この剣は刀身まで全てが漆黒の剣、信念を貫く者に力を与え、全てを断ち切る剣。

正面のフェイトさんを、斬ります!

 

 

「・・・残念」

 

 

空振り、消えた!? 幻影ですか!

どこに・・・。

 

 

「・・・障壁突破」

「・・・・・・ふ」

 

 

背後。

左手を突き出し、『石の槍』を放とうとしているフェイトさん。

でも、そんな攻撃は・・・。

私はきっと、生まれる前から知っていた―――――。

 

 

放たれる直前、勢いよく振り向き、フェイトさんの左手に私の右手を、パァンッと勢いよく叩きつけます。

・・・その魔法。

 

 

「・・・いただきます」

「何・・・?」

 

 

『複写眼(アルファ・スティグマ)』を起動。

フェイトさんの『石の槍』の術式構成を書き換え、乗っ取ります。

逃がさないように、まるで指を絡めるように、手を握ります。

空気中に集まりかけていた石の凝縮が、停止する。

 

 

「・・・ッ。この魔法、僕のなんだけど」

「まぁ、そう言わずに、分けてくださいな・・・・・・『全てを喰らう』」

 

 

『殲滅眼(イーノ・ドゥーエ)』を同時起動。

停止させた『石の槍』の魔力、精霊を吸収し、加速します。

少々名残惜しいですが、手を離します。

 

 

「『そして放つ』」

「・・・速いね」

 

 

魔力を纏った右拳を放つも、フェイトさんはそれを右手を軽く当てるだけで後ろにそらし、私の腕を掴んでさらに投げ飛ばしてきました。

空中で体勢を整え、着地、しかしその時には目前にはフェイトさんの左足・・・!

 

 

『時(タイム)』!

 

 

・・・時間を停止させ、距離を取ります。

驚きです、よもや『闘(ファイト)』を使用し、しかも『殲滅眼(イーノ・ドゥーエ)』で常に身体強化されている私を体術で圧倒してくるとは・・・。

・・・・・・素敵です。

 

 

「・・・今、何をしたの?」

「女の子の秘密を、詮索するものではありませんよ」

 

 

・・・本格的に不味いですよ、攻略の糸口が見えません。

『時(タイム)』は時間を止めるというDI○様もびっくりの魔法具なのですが、魔力コストが重い。

ただでさえ、ここに来るまでにかなりの魔力を消費しているので・・・そう何度も使えません。

 

 

その時、フェイトさんが私から距離を取りました。

魔法の詠唱を始めるようです。

 

 

「ヴィシュ・タルリ・シュタル・ヴァンゲイト」

「・・・射殺しなさい、『神槍』!」

 

 

『神槍』は、刀身を伸縮させることのできる刀です。

『神槍』のほぼ無制限に伸びる刃でフェイトさんに攻撃、魔法を妨害します。

普通の魔法なら、別に止めませんが・・・。

フェイトさんの魔法は、「石」という物理的な形態を持っています。

それは、怖い。

正直、天敵かもしれない属性です。

 

 

しかし『神槍』の刃を、フェイトさんは上空に飛んでかわす・・・飛行魔法ですか!

 

 

「おお、地の底に眠る死者の宮殿よ、我らの下に姿を現せ・・・」

 

 

フェイトさんの周りに、巨大な石の柱が出現します。

数は・・・6本ほどですか。

確実に、『殲滅眼(イーノ・ドゥーエ)』では食べられない感じの物ですね。

大技で破壊したいところですが、魔力がちょっと・・・ならば。

 

 

「『冥府の』・・・」

「魔法具、同時発動」

「・・・『石柱』!」

「『風(ウィンディ)』『水(ウォーティ)』『凍(フリーズ)』・・・・・・『盾(シールド)』!」

 

 

『水(ウォーティ)』で巻き上げた湖の水を、『風(ウィンディ)』で固定、『凍(フリーズ)』で凍らせ、壁とします!

6本の石の柱と分厚い氷の壁が、激突。

崩落しました。

 

 

 

 

 

Side フェイト

 

もっと、彼女を見ていたい。

どうしてか、そんな気分になる。

 

 

僕の『冥府の石柱』が湖の水ごと、彼女を飲み込んだ。

石と氷の破片が橋を押し潰して、彼女はその下敷きになっているはず・・・。

彼女は、まだ出てこない。

 

 

「・・・どうしたんだい、アリア」

 

 

僕を失望させないでくれ。

その程度ではないはずだ、そうだろう?

僕には、わかる。

 

 

左手にはまだ、彼女の手の感触が残っている。

そのぬくもりは、どうしてかはわからないけれどはっきりと記憶に残っている。

 

 

突然、湖の下から青色に輝く帯のようなものがいくつも飛び出してきた。

それらは一瞬で僕の周囲を取り囲み、かなり広い範囲に渡って道のようなものを作り出した。

とん・・・と、警戒しつつ、僕もその一つに着地する。

 

 

「・・・それで、いい」

 

 

どうしてかはわからないけれど、胸の奥が熱くなるのを感じる。

・・・いいよ、アリア。

キミは、とてもいい。

 

 

「・・・魔法具」

 

 

不意に、声が響く。

同時に僕の周りに、輝く羽根のような物が・・・。

 

 

「『エレクトリックフェザー』!!」

 

 

瞬間、僕の身体に電撃が襲いかかった。

・・・こんなもの。

 

 

「効かないことは、わかっています!」

 

 

背後に現れた彼女は、そのまま右の拳を繰り出してくる。

それも、無駄だ。

キミの動きは洗練されている、まるで自動で反応しているかのような近接戦闘技能。

機械的とすら言っても良い、模範のような武術。

だからこそ、読みやすいんだ。

 

 

彼女の攻撃を片手で捌いて、左足で蹴りを入れる。

それは彼女も反応できる、できるけど・・・。

メキ・・・と、ガードに使われた彼女の腕から骨の軋むような音が聞こえる。

蹴りの衝撃に耐えきれず、彼女は数メートルほど吹き飛ぶ。

 

 

「・・・空に道を・・・『翼の道』!」

 

 

彼女は、いつの間にか付けていた左手のブレスレットをかざした。

すると彼女の足下にまで青色の道が伸びて、彼女に足場を提供した。

なるほど、奇妙な道具だね。

 

 

でも僕も、すでに彼女が吹き飛んだ先にいる。

体勢を立て直した、彼女の背後に。

 

 

「・・・魔法具ッ」

「遅いよ」

 

 

彼女が何かする間もなく、振り向いた彼女の身体の中央に拳を突き入れた。

抵抗なく、拳が彼女の身体を貫いていく・・・・・・抵抗なく?

 

 

するとまるで鏡か何かのように彼女の身体が砕けて、消えた。

これは。

 

 

「・・・幻影」

「ご名答です」

 

 

振り向くと、光る道の一つに彼女が腰かけて僕を見下ろしていた。

ちょうど満月をバックにするように座っていて・・・まるで、輝いているようだ。

彼女の手には、コンパクトサイズの鏡のような物があった。

 

 

「魔法具、『ニトクリスの鏡』。効果は見ての通りです」

「・・・いつから、入れ替わっていたのかな」

「さぁ・・・それよりも、フェイトさん!」

「何かな」

「いきなり女の子の胸元に手を入れたりしてはいけません。嫌いになりますよ?」

「・・・それは、困るね。二度としないと誓おう」

 

 

よろしい。

そう言って、彼女は微笑んだ。

減点は、どうやらされないらしい。

 

 

「さて、それでは」

「そろそろ反撃と」

「させていただきますね」

 

 

正面の彼女は喋っていないのに、声が聞こえた。

それも、三方向から。

 

 

「・・・これも、幻影かい?」

「「「「さぁ、どうでしょう?」」」」

 

 

合計4人。

魔力も気配も同じ、かなり密度の高い分身体だね。

これは流石の僕も、骨が折れそうだ。

 

 

「「「「魔法具、『禁忌・フォーオブアカインド』」」」」

 

 

けど、それでいい。

それでこそだよ、アリア。

もっと。

僕はもっと、キミと楽しみたい。

 

 

 

 

 

Side 千草

 

「・・・どっちも化物やな」

 

 

フェイトはんと、あの白い髪の子・・・アリアはんとの戦いは、手の出しようがないえ。

あの中に入っていったら、間違いなく死んでしまうわ。

 

 

「・・・ま、スクナは手に入れたし、ゆっくり行こか」

 

 

フェイトはんも、飽きたら戻ってくるやろ。

どの道、明日には本山の援軍も関西各地からやってくるやろうから、今日はここにおる必要がある。

フェイトはんには世話になっとるし、今夜ぐらいは好きにさせたろ・・・。

 

 

「んん・・・」

 

 

・・・木乃香お嬢様は、今も眠り続けとる。

この子には、悪いことをした思うわ。

この子からすれば、私が親の仇になるかもしれんのやから・・・。

 

 

「・・・あ」

 

 

スクナで思い出した。

この力を使って東の連中に復讐する言うのは、ええけど・・・。

 

 

「・・・・・・どないしてスクナを東まで持っていけばええんやろか」

 

 

 

 

 

Side ネギ

 

「『魔法の射手 連弾・光の17矢』!!」

 

 

小太郎君に魔法の矢を放つ。

もう何度目かわからない。

正直、これ以上は僕がもたない。こうなったら・・・。

 

 

「はっはぁ! こんなもんきかんわ!」

 

 

魔法の矢を弾きながら、僕に突進してくる小太郎君。

まだだ、まだ・・・!

 

 

「楽しいでネギ! 初めてや、俺とこんなに戦れる男は!」

「・・・僕もだよ」

 

 

そう、それは僕もだ。

今まで同い年の男の子自体、近くにいなかったから。

 

 

「けど、どうやらお互いに限界みたいやなぁ!」

「・・・そう、だね」

 

 

それも同じ。

僕もそうだけど、小太郎君も随分とボロボロだった。

いつの間にかあの黒い犬みたいなものも、あまり出てこなくなった。

 

 

「もったいないけど・・・これで、終わりやっ!!」

 

 

そう言って、小太郎君は僕に突進してきた。

右の拳に、すごく大きな気が・・・!

 

 

「でぇりゃああっ!!」

「・・・!」

 

 

今だ!

 

 

「契約執行1秒間! ネギ・スプリングフィールド!」

 

 

自分への契約執行!

これで一瞬だけ加速した僕は、小太郎君の背後に回り込んだ。

 

 

「んなっ・・・!」

「『魔法の射手・光の1矢』!」

 

 

小太郎君の腹部に、無詠唱での魔法の矢をぶつける!

その衝撃に、小太郎君が膝をついた・・・今だ!

 

 

「ラス・テル・マ・ステル・マギステル 闇を切り裂く、一条の光、我が手に宿りて、敵を喰らえ」

「く・・・この」

「『白き雷』!!」

 

 

白色の雷が小太郎君を飲み込んで、吹き飛ばした。

吹き飛んだ先から小太郎君は・・・出て、こなかった。

 

 

「・・・ふはっ」

 

 

息を吐いて、その場にへたり込む。

か、勝った・・・。

 

 

「兄貴~」

「ネギ、大丈夫!?」

 

 

明日菜さんとカモ君が、駆け寄ってきてくれた。

 

 

「兄貴、自分への契約執行は厳禁って話だったじゃないっスか!」

「ご、ごめんよカモ君。でも、他に方法がなくて・・・」

「だから手伝うって言ったでしょ!? まったく妙な所で意地っ張りなんだから・・・」

「す、すみません。明日菜さん、でも・・・」

「何よ?」

「でも・・・勝ちました」

 

 

ちょっとだけ胸を張って言うと、明日菜さんは一瞬呆れたような顔をしてから。

ぽむっ、と、頭を撫でてくれた。

え、えへへ・・・。

 

 

「・・・ほら、立てる? 早く行かないと・・・」

「もう、儀式は終わってる感じですぜ!」

「・・・わかってる。急ごう」

 

 

小太郎君との戦闘に、かなり時間を使ってしまった。

急がないと・・・木乃香さんと、先に行った刹那さんのところへ!

 

 

 

 

 

Side 刹那

 

フェイトの放った石の柱とアリア先生の築いた氷の壁がぶつかった時、同じく橋の上にいた私はその余波をまともに受けてしまった。

石の柱と氷の壁の破片が降り注いで来た時は、正直もうダメかと思った。

 

 

だが、それらが私の身体に届くことはなかった。

なぜなら・・・。

 

 

「・・・これは」

 

 

私の頭上には、鎖がいくつも巻かれた大きな羽根のような盾が展開されていた。

これが、どうやら私を守ってくれたようだ。

そしてこの盾からは・・・アリア先生の魔力を感じる。

 

 

「・・・自分を、守るより先に・・・」

 

 

私のことを、守ってくれた・・・。

アリア先生に貰い、今は私が身に付けているコートの裾を握りしめる。

フェイトの相手で、手一杯のはずなのに。

 

 

「・・・アリア先生」

 

 

アリア先生は、今も空中でフェイトと戦っている。

どういう理屈で空中に足場を作っているかは、わからないが・・・。

とにかく、今アリア先生はフェイトと激しい戦闘を行っている。

フェイトも、もう私に構っている暇はないようだった。

 

 

・・・今なら。

今ならフェイトに邪魔されることなく、お嬢様の下まで辿り着けるはずだ。

だがそのためには、あの巨大な鬼の上にまで行かなくてはならない。

 

 

アリア先生は、フェイトとの戦いに集中している。

とてもお嬢様の救出まではできないはずだ。

ネギ先生達は・・・まだ、来ない。

ここには、私しかいない。

私が、やらなければ・・・。

 

 

 

怖い。

 

 

 

思わず、自分の身体を抱きしめるように両肩に触れた。

私なら、私ならお嬢様の下まで行ける、その方法がある。

私、なら。

 

 

烏族のハーフである私なら、あそこまで行ける。

 

 

顔が強張るのを感じる。息もしにくい。

あの、あの姿をお嬢様やアリア先生に見られたらと思うと、怖くて仕方がなかった。

嫌われるかもしれない、醜いと蔑まれるかもしれない。

そう考えただけで、私は・・・!

 

 

じゃら・・・。

 

 

「・・・・・・あ」

 

 

拳を握りこんだ時、何かが触れた。

それはアリア先生から与えられた、数珠と指輪だった。

・・・・・・コートに、触れる。

それから、頭上でまだ私を守ってくれている盾を。

 

 

(「刹那さんのためですよ」)

 

 

アリア先生の言葉が、今も聞こえてくるようだ。

アリア先生は今も、必死に戦っている。

私は、何をしている?

 

 

巨人の方を見る。

お嬢様が今も助けを待っているだろう場所を、見る。

私は、何をしている?

 

 

「・・・ああ、あ」

 

 

私は、何をしている。

今、私が助けなければ、誰がお嬢様を救える。

私がお嬢様を救わなければ、アリア先生がなんのために時間を稼いでくれているのか、わからない。

自分のことばかり考えていて、どうする。

 

 

私は、一人でここまで来たわけでは、ない。

そうだ。

たとえ嫌われても、蔑まれても。

私はもう、やらなければならない。

やらないということは、許されない。

 

 

「・・・あああああぁぁぁぁっ!!」

 

 

怖い、怖いけど・・・。

 

 

お嬢様を救うために!

アリア先生に報いるために!

 

 

「行きます!!」

 

 

 

 

 

Side アリア

 

それに気付いた時、私はまず驚きました。

次いで、困惑。

そして最後には。

 

 

「・・・綺麗」

 

 

白い翼を広げて、木乃香さんの下へと向かう刹那さん。

大切な人のために自分の全霊を懸けられるその姿は、本当に。

本当に、美しかった。

 

 

「・・・よそ見かい?」

 

 

目の前に、突然、フェイトさんが現れました。

それも、鼻の先が触れあいそうなほどの近さです。

 

 

「・・・嫉妬ですか?」

「まさか」

 

 

そして、発動されるフェイトさんの『石の槍』。

それを魔法具、『M0プレート』で防ぎます。

この魔法具は単純に言えば、相手の魔法を無効化する磁場を発生させる魔法具です。

範囲はごく一部で、こうして向かい合ってしか使えません。

さらに言えば相手がその魔法のために使用した魔力と、同量の魔力を消費する必要がありますが・・・。

 

 

「・・・魔法が、使えない」

「その通り」

「・・・です!」

 

 

背後から私の分身体の一体が、私の身長よりもはるかに大きな大剣『護式・斬冠刀』を振り下ろす!

しかしフェイトさんは流れるような動作でそれをかわすと、分身体の私のお腹に強烈な一撃を放ち、分身体を消滅させました。

あらゆる意味で良く出来た分身体なのですが、耐久力のなさが難点です。

 

 

私はその場に突き刺さったままの『護式・斬冠刀』の峰に付属している投擲用の三日月剣、『月燐』を2本手に取り、距離を取りつつフェイトさんへ投擲します。

それは、フェイトさんにかわされますが・・・。

 

 

その間に分身体の一つを、刹那さんの下へ送ります。

 

 

「大変だね、先生?」

「わかってくれるのは、貴方だけですよ」

 

 

私を労ってくれる人間は、実はかなり希少なのです。

ポイントを2点、追加しておきますね。

累計、7点です。

 

 

「・・・では、続きといこうか、アリア」

「そうですね、フェイトさん」

 

 

貴方とならば、いつまででも。

 

 

 

 

 

Side 瀬流彦

 

アリア君の罠にかかった侵入者も、これで4組目だ。

それにしてもアリア君の罠はすごいな、見たこともないものばかりだ・・・。

どれも強い魔力を感じるから、魔法具使いとしてのアリア君は僕らが思っている以上に優秀なのかもしれない。

 

 

「新田先生にも、気に入られてるみたいだしなぁ・・・・・・うん?」

 

 

自販機コーナーを通りがかった時、入口にまたもや相坂さんを見つけた。

頭に何かねずみ色の奇妙な帽子をかぶってる・・・破れてるけど。

入口の側に張り付いて自販機コーナーの中を見ているようだけど、どうしたんだろう・・・?

 

 

「相坂君?」

「ひゃわわっ!? な、なんでわかったんですか!?」

「いや、なんでって・・・」

「ふぇ・・・い、いつの間にか『石ころ帽子』が破れてました・・・!」

 

 

わたわたと慌てている相坂君。

よくわからないけど、もう生徒は就寝時間だ。

 

 

「早く部屋に戻りなさい。新田先生にでも見つかった、ら・・・」

 

 

というか、新田先生は自販機コーナーにいた。

やはりというか何というか、アリア君(偽)も一緒だった。

 

 

新田先生が、缶コーヒーを飲んでいる。

これはいいと思う。休憩中か何かだと思う。うん。

問題はその隣で、アリア君(偽)が缶ジュースか何かを飲んでいることだ。

しかも右手で缶ジュースを飲んで、左手は、どういうわけか新田先生のズボンの裾を握っている。

 

 

身代わりなのにジュースとか飲んで大丈夫なのか、とか、そもそもなんで新田先生のそばを離れようとしないの、とか、なんで新田先生はそれを受け入れてるの、とか、いろいろ言いたいことはあるけど・・・。

一番言いたいのは、普段のアリア君と違いすぎるでしょ、ということだった。

 

 

「・・・あれは、大丈夫なのかな・・・?」

「え、え~っと・・・あははは・・・」

 

 

乾いたように笑う相坂君。

と、アリア君(偽)が缶ジュースを飲み終わったのか、空の缶を左右に振った。

そして何故かその缶を持ったまま、横の新田先生を見上げた。

気のせいでなければ、ズボンを掴む手にほんの少しだけ力がこもったと思う。

 

 

アリア君(偽)の視線に気がついたのか、新田先生がアリア君(偽)を見る。

じ~、と、新田先生を見つめるアリア君(偽)。

数秒ほどして、新田先生が咳払いをしながら。

 

 

「・・・もう一本だけですぞ」

 

 

と、言った。

それに対してアリア君(偽)は、にこり、と笑った。

 

 

・・・あれ、新田先生ってあんな人だったかな・・・?

 

 

「・・・さよさん。瀬流彦先生」

 

 

その時、絡繰さんがやってきた。

就寝時間なんだけど・・・。

 

 

「マスターを見かけませんでしたか?」

「エヴァさんですかぁ? 見てないです」

「僕も、見てないけど・・・」

 

 

・・・え、ちょ、まさか。

 

 

「ホテル内に、マスターの反応がありません」

「ええ!? じゃあエヴァさん外に出ちゃったんですか!?」

 

 

・・・・・・始末書ですむといいなぁ。

でも無理なんだろうなぁ、と考えている自分がいることに気付いた。

 

 

「・・・あ、ところで絡操さん。あのアリア君(偽)、大丈夫なのかい? なんというか、随分と・・・」

「問題ありません」

 

 

絡操さんは、妙にはっきりと答えた。

な、何か対策があるのかな・・・。

 

 

「最高画質で録画中です」

 

 

・・・始末書、今から書いておこうかな・・・。

 





アリア:
アリア・スプリングフィールドです。
現在、非常に疲れています。
しかしそうは言っても、フェイトさんとの舞踏会。
残り時間、しっかりとお相手しなければ・・・。


今回の魔法具は、以下の通りです。
『クトゥグァ&イタクァ』・『ニトクリスの鏡』:
元ネタは「デモンベイン」、提供者はおにぎり様です。
『黒の剣』:元ネタは「お・り・が・み」。提供者は、華燐様です。
『エレクトリックフェザー』:元ネタはMÄR。
元ネタ提供者は、司書様と松鳴様です。
『翼の道』:提供は景鷹様です。
『護式・斬冠刀』:元ネタは、「無限のフロンティア」。
提供は同じく、景鷹様です。
『禁忌・フォーオブアカインド』:元ネタは「東方シリーズ」。
提供者は、アレックス様と、ぷるーと♪(笑)様です。
『M0(エムゼロ)プレート』:元ネタは「エム×ゼロ」。
提供者は、司書様です。
『石ころ帽子』:元ネタは「ドラえもん」。
提供者は、kusari様です。


アリア:
次回は、舞踏会の中編。
私とフェイトさんの舞踏会の佳境です。
なんだか、横槍が入りそうな予感がします・・・。
では、またお会いしましょう。

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