魔法先生ネギま~とある妹の転生物語~   作:竜華零

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第29話「3日目・舞踏会・中編」

Side 刹那

 

可能な限り高速で、そして千草に見つからないように注意して飛行する。

ギリギリまで近付いたところで、千草が私に気付いた。

 

 

「・・・また、あんたか」

「天ヶ崎千草!」

 

 

お嬢様を、返してもらう!

私は夕凪を構え、空を駆けた。

 

 

「『猿鬼』! 『熊鬼』!」

 

 

千草はいつか見た猿と熊の着ぐるみのような式神を召喚してきた。

く、体力はともかく、気は回復していない、やれるか・・・?

いや、やるんだ!

 

 

「はあぁっ!」

 

 

一閃。

まずは、猿の式神を倒した。

だがその間に、熊の方が後ろに・・・。

 

 

「くっ・・・!」

 

 

防御を!

だが間に合わない、そう思った瞬間。

 

 

アリア先生のコートの一部が伸び、私の身体に幾重にも巻きついてきた。

そしてそれが、熊の式神の攻撃を防いでくれた。

 

 

「ぐっ・・・」

 

 

衝撃で軽く距離が開くが、痛みやダメージはない。

このコート、もしかして・・・。

 

 

「魔法具、『獣の槍』」

 

 

次の瞬間、私の後ろからまるで両刃の剣のような刃の広い槍が飛来し、熊の式神を貫いた。

この声は。

 

 

「アリア先生!」

「の、分身体です」

 

 

私の後ろにはアリア先生(分身体・・・式神のようなものだろうか?)が、どういう理屈かはわからないが空中に立っていた。

ヒラヒラと手を振りながら、にこっ、と微笑んでくれる。

本物にしか見えないが、これもアリア先生の力なのだろうか。

 

 

「・・・そのコートは『夜笠』という名前でして、軽さと頑丈さが売りです」

「あ、これも・・・魔法具、なんですね」

 

 

私の言葉に、先生が頷こうとしたその時。

細い石でできた槍が突然、先生を貫いた!

 

 

「アリア先生!?」

「大丈夫ですよ、分身ですから・・・・・・あの人、意外と独占欲が強」

 

 

何かを言いかけたが、ぼむんっ、と音を立てて消えた・・・ほ、本当に分身だったのか・・・。

というか貫かれた瞬間、どこか嬉しそうだったのは気のせいだと思いたい。

 

 

とにかく、これで障害は、全て消えた。

ばさっ・・・と翼を羽ばたかせて、再び、行く!

 

 

「お嬢様っ!!」

 

 

今、お救いいたします!

 

 

 

 

 

Side 千草

 

「なんなんや、あんたは!」

 

 

神鳴流の小娘が、烏族とのハーフやったとは誤算やった。

まさかこんなところまで、追いかけてくるとは。

 

 

「何をそんなに頑張りよるん!?」

 

 

もう、札もない。

フェイトはんは、アリアはんに夢中や。

月詠はんも小太郎もおらん。

近すぎて、スクナの力を使うわけにも・・・。

 

 

「いったいどうして、そんな必死になりよるんや!?」

「大切だからだっ!!」

「・・・っ」

「守りたい人も、助けてくれる人も、大切だからだっ!!」

 

 

・・・なんやの、それ。

そないなこと、言われたら。

 

 

「お嬢様は・・・私が守る!!」

 

 

そないなこと、言われたら。

うちみたいな半端もんは、もう、なんにもできひんやないか・・・!

 

 

 

 

 

Side アリア

 

分身体の一つが、フェイトさんに消されました。残り一体。

刹那さんは、上手く木乃香さんを救えたでしょうか。

気になるところですが、今私はそれどころではありません。

 

 

「家桜・・・」「・・・端敵」

「退隠・・・」「・・・柴車」

「彫板――!」「――泥眼!」

 

 

せっかくなので、2人1組で放つ合気の技をフェイトさんに仕掛けてみます。

戯○シリーズですね。わかります。

ちなみに、右が私。左は、残った最後の分身体です。

・・・できれば、3人でジェットス○リームアタックとかやりたかったですね。

 

 

「なるほど、実に多彩な武術だね。中には、僕の知らない拳法とかもあるみたいだったし・・・」

 

 

南斗鳳凰拳を止められた時は、正直、どうしようかと思いました。

そんなことを考えている間に、フェイトさんの姿が消えます。

次の瞬間には・・・分身体の上!

 

 

「けれど、キミの動きは、手に取るようにわかるよ」

「私だって、フェイトさんのこと、わかっちゃいますよ」

 

 

上段からの、左足の蹴り。それでもう、分身体は消えてしまいます。

一撃もらえば、消えてしまうのが、この精度の高い分身体の欠点です。

これまでのパターンから、ここから・・・。

 

 

「・・・左の、ストレートです」

「右手で拳を弾いて、左手で掴もうとする・・・」

「・・・手を引いて、左の膝です」

「膝を受け止めて、一歩下がる・・・」

「・・・一歩前に出て、右手でフェイント、もう一度、左です」

「受けると見せかけてかわし、いなした所で右の掌底・・・」

「・・・右手で弾いて、左手で」

「「『石の槍』!」」

 

 

上体を逸らして、何とか『石の槍』をかわします。

しかし、それでバランスを崩した私は、フェイトさんに腕を掴まれ、『翼の道』の上から、空中に放り出されてしまいました。

く、魔法具・・・。

 

 

 

目の前に、フェイトさんがいました。

 

 

 

空中で、組み合います。

右拳で顔を狙うも、左手で軽く受け止められます。

そして、繰り出された彼の右拳を、左手で弾くように外へ。その左手も、フェイトさんの右手に掴まれてしまいます。

フェイトさんの両足が、それぞれ私の足を押さえるような位置にあるので、蹴りも放てません。

 

 

「ヴィシュ・タルリ・シュタル・ヴァンゲイト・・・」

 

 

・・・!

この距離で、詠唱魔法なんて、撃たせません。

魔法具。

 

 

「・・・『静(サイレント)』!」

 

 

 

 

 

Side フェイト

 

彼女の口元に現れたカードが弾けると、全ての音が消えた。

詠唱も、途中までで止めざるを得ない。

 

 

空中で、彼女と見つめ合う形になる。

左右で色の違う彼女の瞳は、見ていて飽きがこない。

その瞳に浮かぶ赤い光が、まるで炎のように揺れている。

 

 

互いに魔法を使用していないから、自由落下している状況だ。

本当は、ここで胴体を打って、距離を取るんだけど・・・胸はダメだと言うから。

 

 

・・・ここまでの戦闘で、少なくとも彼女には3つ、特別な力があることがわかった。

ひとつは、こちらの魔法式に介入できる力。

さらに、こちらの魔法構築そのものを阻害する力。

そしてもうひとつ、魔法具。

魔法具については、転移でもしているのか、どこからともなく出現する。

 

 

ただ魔法具の出現までにはタイムラグがあるから、対処することは可能だ。

前の二つについても、原理はわからないが僕の作り出した石属性の槍を防げないところから見て、物理的なものには効果がないのだろう。

そして何よりも・・・彼女自身の身体は、魔法使いにとって最低限あるべき、魔法障壁によって守られていない。

 

 

そのまま僕とアリアは先ほど僕の『冥府の石柱』が防がれた場所へ、落ちた。

僕はもちろん、アリアも・・・多少、痛がってはいるみたいだけど、怪我はしていないようだ。

また、何かの魔法具を使ったのかもしれない。

 

 

かろうじて残った橋の一部と、今にも崩れてきそうな瓦礫の間で、僕はアリアを押さえつけている。

 

 

「・・・っ・・・こういうのは、私達には、まだ早いと思うのですけど」

 

 

どうやら消音の効果が消えたのか、アリアの声が聞こえた。

耳に残る、それでいて耳障りにはならない、綺麗な声だ。

 

 

「・・・我慢が、きかなくてね」

「ふ、ふふ・・・紳士と思って油断しまし・・・・・・っ!」

 

 

瞬間、これまで彼女の身体を守っていた何かが消えるのを感じた。

アリアの顔が、青ざめる。

すかさず彼女から手を放して、首を掴む。

 

 

これまでの彼女なら、今の動作にも反応で来ていたはずだけど・・・どういうわけか、今は素人のような動きだ。

左手はそのまま、彼女の右手を押さえている。

そして僕の右手は・・・彼女の白くて細い首を掴んでいる。

アリアは自由になる左手で僕の手首を掴んでいるけど・・・先ほどまでに比べて、随分とか弱い力しかなかった。

 

 

さっきまで感じていたプレッシャーなんて、微塵も感じなくなってしまった。

・・・魔力切れか、意外とつまらない幕引き・・・。

 

 

 

「・・・・・・つまら、ない幕引、きだと、思ったで、しょう?」

 

 

 

首を絞められながら、彼女は嗤う。

何を・・・。

 

 

ぱきん、と、音を立てて、僕の何重にも張られた魔法障壁に、亀裂が走った。

 

 

「・・・障壁が」

「・・・『式』を、解析・・・・・・そして、『喰ら』います・・・」

 

 

・・・バカな。

僕の魔法障壁は、並みの魔法使いには理解すらできない構成と密度で、しかもそれが十数層にも及んでいる。

それが次々と無効化、いや、破壊されていく・・・?

 

 

不意に、彼女と目が合う。

その両眼が、赤く、鮮やかに輝いていた。

 

 

 

  ―――――――ぞくり――――――――

 

 

 

「・・・それで、どうするの? 僕がキミを落とす方が先だと思うけど」

「いえい、え・・・私が、貴方を食べてしまうのが、先、かも・・・?」

 

 

そう言って笑むアリアに、僕は。

僕はどうしようもなく、たまらない気持ちに、なった。

 

 

「く・・・フ、ハハ・・・」

「うふ、うふふ、ふ・・・」

「ハハハ、ハハハハハハハハハ―――」

「ふふふ、ふふふふふふふふふ―――」

 

 

僕が右手に力を込めるのと、アリアの両眼が輝くのは、おそらく、ほぼ同時だった。

 

 

 

「キミが欲しいよ、アリアッ・・・!」

「私も、フェイトさんが欲しっ・・・!」

 

 

今の僕には、アリア。

キミだけが、僕の。

 

 

 

 

「『魔法の射手・戒めの風矢』!」

 

 

 

その直後。

比喩ではなく、僕は、僕達は、世界が終わる音を聞いた。

 

 

 

 

 

Side 明日菜

 

「でかいっ!! 何よあれ、でかすぎるでしょ!?」

「落ち着け姐さんって、オイオイオイちょっと待てよデケェ!!」

 

 

なんとか、湖にはたどり着けたけど・・・なんというか、滅茶苦茶だった。

腕が4本くらいある光る巨人がいるし。

橋は半分くらい沈んでるし、大きな岩が湖に刺さってるし!

 

 

「刹那さんは!?」

「わ、わかんないわよ」

 

 

木乃香は、まだ捕まってるの?

刹那さんがどこ行ったのかもわからないし・・・。

 

 

「・・・・・・アリア?」

「へ? アリア先生って・・・」

 

 

アリア先生は、鬼と戦ってるはずじゃ。

やっぱり、さっき見た白いのって、アリア先生・・・?

 

 

「・・・って、あれピンチじゃないの!?」

「白髪の奴と一緒じゃねぇか!?」

 

 

ネギの視線を追いかけると、橋の先、石の柱みたいなのが刺さってる所に、アリア先生がいた。

しかも、あの白髪の子供が、馬乗りになって・・・って!

 

 

「ネギ、行くわよ!」

「え、あ・・・はい!」

 

 

アーティファクトのハリセンを出して―――いつも思うけど、なんでハリセン?―――走り出す。

助けに行かなきゃ!

 

 

 

 

 

Side ネギ

 

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル 風の精霊11人、縛鎖となって敵を捕らえろ・・・」

 

 

いつの間にアリアがここに来たのかは、わからないけど。

これ以上、白髪の好きにはさせないぞ!

 

 

「『魔法の射手・戒めの風矢』!」

 

 

牽制として、拘束用の魔法を放つ。

当たるとは思えないけど・・・・・・いや、当たった!

やった!

 

 

「やったぜ兄貴!」

 

 

白い髪の少年は、なんだか、すごく驚いた表情で、僕達の方を見た。

もしかして、僕達に気付いていなかった?

よろめくようにアリアから離れて・・・拘束から逃れようとする。

けどその拘束魔法は、まともに受けた以上、最低でも数十秒は解けない。

 

 

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル 風の精霊31人。集い来たりて・・・」

 

 

その間に、次の魔法を撃つ!

 

 

「ネギ先生、ダメです!!」

「刹那さん!?」

 

 

突然、後ろの方から、刹那さんの声。

横から、明日菜さんの驚いた声が聞こえる。

だ、ダメって・・・魔法はもう、完成しちゃってる!

 

 

「『魔法の射手・連弾・雷の31矢』!」

 

 

『魔法の射手』を、撃った。

これで!

 

 

攻撃が、命中する。そう思った。

その時、倒れたままだったアリアが、急に起き上がった。

白髪と、僕達の間に立つ、つまり、僕の魔法の射線上に。

あぶ・・・。

 

 

「『全てを喰らう』・・・」

 

 

危ない、と叫ぼうとした瞬間、僕の魔法が消えた。

そしてアリアはもの凄いスピードで白髪の所へ行って、『戒めの風矢』を掴むと。

 

 

それを、引きちぎった。

なっ・・・。

 

 

「・・・ヴィシュ・タルリ・シュタル・ヴァンゲイト 小さき王、八つ足の蜥蜴、邪眼の主よ!」

 

 

白髪が『戒めの風矢』から解放されて、空に飛び上がって詠唱を。

あの呪文は。

 

 

「その光、我が手に宿し、眼差して射よ!」

「やべぇ、明日菜の姐さん、奴を止め」

「ダメ、間に合わない・・・ネギ!」

「わっ・・・」

「『石化の邪眼』!!」

 

 

明日菜さんが、僕を庇うように抱きしめて。

視界が、白く染まった。

 

 

 

 

 

Side フェイト

 

・・・あと、少しだった。

あと少しで僕は、「何か」になれた。

 

 

そんな思いが、僕に石化の魔法を撃たせた。

ただ魔法無効化能力を持つ女の子のおかげで、あまり効果がなかったみたいだ。

 

 

「ちぇ――――――――――りお――――――――――っっ!!!!」

 

 

アリアはそんなことを叫びながら、橋の残った部分を叩き割っていた。

それはかなり強い力で行われたようで、水柱が上がるほどだった。

彼女はすかさず一振りの刀を手にすると、その水柱に切りつけて・・・凍らせた。

それは氷の壁と化して・・・ネギ・スプリングフィールド達と、僕達を隔離した。

 

 

本当に、不思議な魔法具を使うな・・・。

・・・ちぇりおって何だろう?

 

 

「・・・どうやら、時間のようですね」

 

 

気が付くと、アリアがひどくつまらなさそうな顔で僕のことを見ていた。

魔力切れだと思っていたけれど・・・。

 

 

「・・・楽しい時間は、すぐに過ぎてしまいます」

「・・・・・・そうだね」

 

 

その顔はなんだか、玩具を取り上げられた赤子のようで。

見ていてとても、妙な気分になった。

 

 

「せめてものお詫びに、私のもうひとつの武器を見せてさしあげましょう」

「・・・へぇ、まだ、何かあるの?」

「どんなものかは、私も知らないのですけど」

「なんだい、それは・・・」

 

 

よくは、わからないけれど。

どうやら、まだ何か僕を楽しませてくれるつもりらしい。

それなら僕にできることは、ひとつだ。

 

 

「・・・来るといい。受け止めてみせるよ」

「・・・素敵」

 

 

彼女は、微笑むと・・・。

左手の刀を、振った。

 

 

「霜天に坐しなさい、『氷輪丸』!」

「・・・・ヴィシュ・タルリ・シュタル・ヴァンゲイト 小さき王、八つ足の蜥蜴、邪眼の主よ」

 

 

アリアの刀から氷でできた龍が放たれ、空中の僕に襲いかかってきた。

・・・氷でできているのなら、石化できるはずだ。

 

 

「時を奪う毒の吐息を 『石の息吹』!」

 

 

石化の煙が、氷の龍を迎え撃つ。

・・・多少、範囲が大きすぎたかもしれない。

だけど、石化魔法は目論見通り、氷の龍を石化して止めた。

アリアは・・・。

 

 

「・・・アデアット!」

 

 

やけに近くから響く、声。

そして何かがすぐ横を通り抜ける感覚。

・・・上、か。

 

 

「石化の煙の中を・・・」

「・・・アーティファクト、『千の魔法』!」

 

 

何をするつもり?

避ける選択肢も逃げる選択肢も、ない。

受け止めると、そう言った。

 

 

頭上を、仰ぎ見る。

そこには・・・。

 

 

「・・・・・・っ」

 

 

白い髪、赤く輝く瞳、黒の服、黒の本。

そして、桃色の光に包まれた、アリアがいた。

 

 

彼女の周囲にはおそらくは魔力と思われる小さな光が、まるで彼女を求めるかのように集まっていた。

その桃色の光の粒はまるで星のようで・・・桜の、花弁のようだった。

 

 

そういえば、初めて出会った時も、二度目も。

アリアは、桜の花弁を背負っていた。

そして今、彼女は桜色の輝きに包まれている。

・・・だから。

 

 

「・・・キミの色だよ、それは」

 

 

僕にとって、キミの色はそれだ。

 

 

「その色は、キミにこそ、相応しい」

 

 

僕の言葉に、アリアは少し戸惑ったような表情を浮かべた。

少し、喋りすぎたかもしれない。

だけどアリアは、戸惑った直後に。僕に。

 

 

 

桜の花のような笑顔を、見せてくれた。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

あと、少しでした。

あと少しで私は、「何か」になれた。

 

 

そんな思いが、私に「ちぇりお」と叫ばせました。

あの兄は・・・!

 

 

「・・・アデアット!」

 

 

空飛ぶ高速飛行箒『ファイアボルト』に掴まりながら、フェイトさんの石化魔法の中を抜けます。

時速240Kmは伊達ではありません・・・!

魔力残量があれば、もっと別の方法を取ったのですけど・・・。

 

 

一瞬でフェイトさんの頭上を取り、効果もわからないアーティファクトを取り出します。

 

 

ちなみに私の左手に巻かれた『リボン』も、れっきとした魔法具です。

一部を除いたバッドステータスを防止することができます。

この場合は、石化。

 

 

右手に黒の魔本『千の魔法』を持ち、『複写眼(アルファ・スティグマ)』で視ます。

効果、効力、特性、特徴、条件、使用法を、一目で解析、理解します。

・・・なるほど。

 

 

「<登録>します・・・」

 

 

『千の魔法』の第一号として<登録>したのは、魔力残量の少ない今の私に利点の高い、収束吸収型の魔法。

 

 

「・・・『星光の殲滅者(スターライトブレイカー)』・・・!」

 

 

周囲から集められるだけの魔力を集め。

それを自分の物として、吸収・・・。

 

 

「・・・キミの色だよ」

 

 

突然、眼下のフェイトさんが、そんなことを言いました。

なんのことでしょう、色?

 

 

「その色は、キミにこそ、相応しい」

 

 

色というと、この桃色の魔力光でしょうか?

つまりは、桃色が、私に似合うと、そういうことなのでしょうか。

ち、ちょっと、恥ずかしいですね・・・。

 

 

「・・・ふふ」

 

 

にっこりと、機嫌良く、微笑みます。

顔が、なんだか熱いです・・・。

5点、あげちゃいましょう。累計12点・・・。

 

 

な、何かイベントを考えませんと。

何がいいでしょうね・・・?

 

 

・・・その間に、『星光の殲滅者(スターライトブレイカー)』が完成します。

周囲から集められた膨大な魔力は、まるで星の煌めきのように、輝きます。

 

 

「・・・・・・行きます、フェイトさん」

「いつでもいいよ、アリア」

 

 

フェイトさんが「アリア」と言い終わるよりも早く、私は彼の目の前に。

まずは、左足。

『複写眼(アルファ・スティグマ)』と『殲滅眼(イーノ・ドゥーエ)』の力を加えたその一撃は、かろうじて残った魔法障壁を、根こそぎ破壊します。

 

 

「・・・障壁が」

 

 

その言葉を聞き終わる前に、右拳に、集めた全魔力を収束します。

星光の殲滅者(スターライトブレイカー)』は、集めた魔力を吸収して活用する魔法。

取り込んで、急激に身体強化することも・・・。

そして、一気に撃ち放つことも可能。

 

 

 

・・・実のところ今の私は、飛行しているわけではなくて。

ほとんど落下しているような、そんな状態でした。

その程度の魔力も、残っていないのです。

だから、フェイトさんが受けずに、避けたりすれば、それで終わりでした。

けれど・・・。

 

 

 

「・・・ブレイク」

 

 

収束、完了。

撃ちます。

これが私の、全力、全開。

 

 

「シュ―――――――――――――――トッッ!!!!」

 

 

全魔力を解放。

障壁を失ったフェイトさんの身体に、直接。

叩き付けます!

 

 

 

・・・フェイトさんは、避けませんでした。

言葉通り、受けてくれたのが、嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の一刹那。

 

 

 

 

 

桃色の光の中で。

 

フェイトさんの手が、私の頬に、触れました。

 

交わされた視線は、とても優しくて。

 

そこには、きっと。何かの「感情」が宿っていたと、そう。

 

 

 

 

 

そう、信じても、良いでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・フェイトさん。

 





アリア:
・・・気持ちよかったです。
また、やりたいです。
途中、10歳らしからぬ会話もあった気もしますが、そこは私、転生者ですから。
・・・全力でしたぁ・・・。


今話で使用した魔法具は、以下の通りです。
『獣の槍』:元ネタは「うしおととら」、提供者は月音様です。
『夜笠』:元ネタは「シャナ」、提供者はゾハル様です。
『氷輪丸』:元ネタは「ブリーチ」、提供者はグラムサイト2様です。
『リボン』:元ネタは「FF」、提供者はプチ魔王様です。
『ファイアボルト』:元ネタは「ハリーポッター」。
提供者は、司書様です。
ありがとうございます。

また、今話で使用した『千の魔法』は、以下の通りです。
『星光の殲滅者』:元ネタは「リリカルなのは」。
提供者は、kusari様です。
ありがとうございます。

「登録」魔法の詳しい内容は、いずれまた、まとめて報告させていただきます。



アリア:
次話でようやく、長かった3日目も終わるかと思います。
最後の後始末がいくつか残っているわけですが、私の魔力はほとんど尽きています。
これは、どうしたものでしょうか・・・。
では、またお会いしましょう。

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