魔法先生ネギま~とある妹の転生物語~   作:竜華零

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第34話「エヴァ家・休息の一日 in別荘」

Side アリア

 

『―――そうね、あなた達のお父さんは、スーパーマンみたいな人だったのよ』

『スーパーマン?』

 

 

ああ・・・これは、夢だ。

そう気付いてしまうことって、ありますよね。

 

 

『そう♡ ピンチになったら現れて、助けてくれるヒーローなのよ?』

『へ~、ネカネお姉ちゃんも、助けてもらったことあるの?』

『ふふ、それはひ・み・つ・よ♡』

 

 

あれは雪の降る、寒い日のことでしたね。

斜め上を見れば、優しげに微笑むネカネ姉様の横顔。

私の右手はネカネ姉様の左手に包まれていて、姉様を挟んで反対側には、今より幼いネギ兄様。

 

 

『じゃが、奴は死んだ。散々無茶やったあげく、お前達をほったらかしてな。・・・バカな奴じゃ』

『もう、スタンさん。子供にそんな言い方・・・』

 

 

ふふ・・・スタン爺様は、いつもそう。

誰よりもお父様を嫌っているくせに、誰よりもお父様を待っている人。

 

 

『・・・死んだって?』

 

 

素朴な兄様の言葉に、ネカネ姉様は寂しげな微笑みを浮かべました。

そして、答えます。

 

 

『・・・もう、会えないってことよ』

 

 

・・・そういえば、あの時。

私、なんて、言ったんだっけ・・・・・・。

 

 

 

 

 

Side 茶々丸

 

あと10年は、戦えます。

 

 

毎朝、私はそのようなことを思います。

意味は、よくわかりませんが。

 

 

「・・・ん、ぅ・・・」

「う、むぅ・・・ぬ・・・」

 

 

目の前にはマスターの頭を抱きかかえるようにして眠る、アリア先生の寝姿。

マスターは多少苦しそうにむずかっていますが、アリア先生を押しのけるようなことはしていません。

むしろアリア先生のネグリジェの一部を握りしめ、放すまいとしているように見えます。

 

 

実はここ最近、新たにキングサイズのベッドを2つ購入し、共同の寝室を新築しました。

マスターの気が向いたときなどは、私を含め、ここで全員が眠ることもあります。

たとえば、今日とか。

 

 

「ふに・・・え、ぁさ・・・」

「・・・ん・・・りぁ・・・」

 

 

マスターだけでなく、アリア先生も意外と朝は弱い方なので・・・この瞬間は、私だけの時間。

最高画質で録画中、録画中・・・。

 

 

「茶々丸さ~ん、朝ご飯冷めちゃいますよ~?」

「スクナは、もう死にそうだぞ・・・」

「お静かに、マスターとアリア先生が起きてしまいます」

「オコシニキタンダロ」

 

 

この楽園の前には、そのようなことは些細なことです。

・・・とりあえず、外付けのメモリーを追加して・・・。

 

 

「んぅ~~?」

「・・・なんだ、騒々しい・・・」

 

 

なんということでしょう、起きてしまいました。

 

 

「ダカラ、オコシニキタンダロ」

「スクナ、死ぬのかな・・・」

 

 

なぜかスクナさんが床に倒れていますが、今さら慌てる程のことでもありません。

今はとにかく、目をこすりながらキョロキョロしているアリア先生を画像に・・・。

 

 

「むぅ・・・なんだか首が痛いな、寝違えたか・・・?」

「エヴァさん、おはようです」

「む、さよか。おはよう・・・おい、いい加減に起きろアリア」

 

 

マスターは寝癖を撫でつけながら、横でフラフラしているアリア先生の肩を揺すりました。

アリア先生は、「む~?」と言いながら、マスターの方を向き。

 

 

「ふに・・・ありあです。ごさいです・・・」

「幼児退行!? 本気でしっかりしろアリア!?」

 

 

マスターが両肩を揺すると、アリア先生はようやく意識が覚醒してきたのか、目をぱちり、と開きました。

そして、マスター、さよさん、姉さん、スクナさん、私を見た後、安心したような笑顔を浮かべて。

 

 

「・・・おはようございましゅ」

 

 

がはっ、と声を上げて、マスターがベットに手をつきました。顔を押さえているようです。

至近距離で見た分、威力が大きかったものと思われます。

 

 

「ひゃわわっ、エヴァさん血が! え~と、首をとんと~んすればいいんでしたっけ?」

「ば、ばか、やめろさよぶふぅっ!?」

「恩人―――っ!!」

「うわひゃっ!? ・・・・・・す、スクナさん!? なんですかホームシックですか!?」

「それだけは絶対にないぞ!」

「ケケケ、ダンゲンシタナ」

「チャチャゼロさんも頭に乗らないでください」

 

 

・・・楽しそうです。

 

 

「・・・とーう」

 

 

私はガイノイドです。

決して、マスターやアリア先生に粗相を働くようなことはしません。

 

 

「きゃっ・・・ちょ、ちょっと茶々丸さんまで!?」

「ば、ばかっ、まだ止まってないん・・・!」

「わ、私も~っ」

「うぉっ・・・重――――くないぞ! 紙のように軽いぞ! 本当だぞ!?」

「ケケケ・・・ウデガチギレソウダゼ☆」

 

 

・・・至福の時間です。

 

 

 

 

 

 

Side さよ

 

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!」

「させませんよ、アデアット! ・・・『千の魔法』№48!」

「氷の精霊29頭、集い来たりて敵を切り裂け!」

「鳴り響くは召雷の轟き 天より灰燼と化せ!」

「『魔法の射手・連弾・氷の29矢』!!」

「『雷天の雨』!!」

 

 

エヴァさんの撃った氷の矢がアリア先生の放つ雷の束に飲み込まれて、消えました。

ひゃわ~、いつ見ても、あの二人の模擬戦はすごいです。

ただ・・・。

 

 

「よくも、私の苺を!」

「だから、すまんと言っとるだろうが!」

「最後に食べようと、取っておいたのに~!」

「嫌いだから、残してるのかと思ったんだ!」

「苺が嫌いな人間がいるわけないでしょう!?」

 

 

いえ、いると思います。

会ったことはないですけど。

ちなみに苺は、朝食の時に出たデザートに入ってました。

つまりエヴァさんとアリア先生は朝食以降、ずっと喧嘩してるんです。

魔法戦を始めたのは、ついさっきですけど。

 

 

「さよさん、キャベツの千切りはできましたか?」

「あ、は~い」

 

 

茶々丸さんは、さっきから一心不乱に焼きそばを作っています。

お昼ご飯は何がいいかって茶々丸さんが聞いたら、アリア先生が「浜辺で焼きそばが食べたい」とねだったからです。

アリア先生が何かをねだるのは珍しいので、そこはエヴァさんも了承しました。

 

 

そんなわけで今、私達はエヴァさんの別荘内の海に来ています。

外は春なのに海水浴ができるなんて、変な気分です。

 

 

私はひたすらに、野菜を切っています。

お料理は、実際にしたことがあんまりないので、得意じゃないです。

でもこの魔法具『匠の包丁』ならば、慣れない人でも華麗な包丁さばきが可能なのです!

・・・自動で。

 

 

「ただいまだぞ!」

「モドッタゼ」

 

 

そこへ、麦わら帽子にオーバーオールという格好をしたす-ちゃんが、泥だらけになって戻ってきた。

にかっ、と笑って、肩に鍬を担いでいます。

麦わら帽子をかぶった頭の上には、チャチャゼロさん。

 

 

「おかえり、すーちゃん。本当に畑作ってるんだね」

「もちろんだぞ! ただ、ここは外と気候が違うから、ややこしいぞ・・・」

 

 

手に持っていた鍬を砂場に刺して、すーちゃんはフラフラと茶々丸さんの方に。

・・・お昼ご飯の焼きそばに吸い寄せられてるみたい。

 

 

「スクナさん、つまみ食いはダメです。あと手を洗ってきてください」

「1600年前にそんな習慣はないんだぞ」

「1600年後の現代にはあるんです」

 

 

焼きそばに手を伸ばそうとしたすーちゃんを、茶々丸さんが追い払います。

横で座り込むその姿は、なんというか、お預けされてる犬さんみたいで、なんだか可愛い。

 

 

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!」

「『千の魔法』№12!」

 

 

一方、海上では、エヴァさんとアリア先生の模擬戦が、佳境に入ったみたいです。

ものすごい魔力の高まりを感じます。

 

 

「さよさん、焼きそばを死守してください。最悪、姉さんとスクナさんは巻き込まれても構いません」

「ソリャヒドクネーカ?」

「あ、はーい、焼きそばだけでいいんですか?」

「さーちゃんもひどいぞ!?」

 

 

えっと、限定範囲の攻撃を防ぐ魔法具は、確かこのあたりに・・・。

がさがさと、荷物を探ります。急がないと。

 

 

「来たれ氷精、闇の精。闇を従え吹けよ常夜の氷雪!」

「大地の底に眠り在る凍える魂持ちたる覇王、汝の暗き祝福で我が前にある敵を撃て!」

「『闇の吹雪』!!」

「『覇王氷河烈』!!」

 

 

2つの強力な魔力の凍気が、アリア先生とエヴァさんの中間でぶつかって、余波がこっちに。

食材箱の横に置かれた私の鞄から取り出したのは、一抱えもある鏡。

名前を、『神無の鏡』。

 

 

『神無の鏡』を抱えて、茶々丸さんと焼きそば(というか、それを焼いてるバーベキュー台)の前に。

・・・吸収~。

 

 

濁った鏡の表面が波打って、凍気の余波を飲み込んでしまいます。

そして、反転。飲み込んだ分を、反射します。

それはそのまま、半月上に広がって、ちょうど魔法を打ち終えた2人に・・・・・・あ。

 

 

「当たりました」

「・・・アタッタナ」

「当たったぞ」

 

 

どぼんっ・・・という音を立てて、2人が海に落ちて、バシャバシャと溺れ始めます。

上空でやってたから、下の海は凍らなかったんだ。

あわわわ・・・。

 

 

 

 

 

 

Side アリア

 

「ふぁいふぁい、えふぁはんはいひひははいんえふよ!」

「やかましい! 食べるか喋るかどっちかにしろ!」

 

 

口いっぱいに焼きそばを詰め込んでいるので、喋れません。

仕方が無いので、食べることに専念します。もぐもぐ。

 

 

「・・・ああ、もう。私が悪かった。食べるのをやめて喋ってくれ」

「んぐんぐ・・・大体、エヴァさんは意地汚いんですよ!」

「口が開いた途端にそれか! 案外こだわる奴だなお前も!」

 

 

さよさんに撃墜(?)された後、スクナさんに救出された私は、浜辺に設置されたテーブルで焼きそばを食べています。

美味です。無意味に美味です。流石は茶々丸さんです。

 

 

「しょうがない奴だな・・・わかったよ。茶々丸、明日の朝食にも苺を出してやれ。私の分もアリアにやれ」

「わかりました。これから一週間、マスターのデザートをアリア先生に」

「一週間苺ですか~?」

「うまいぞ! もう一杯!」

「ちょっと待て、明日だけだ! あと3杯目はそっと出せバカ鬼!」

 

 

説明が遅れましたが、メイド服の茶々丸さんと、チャチャゼロさんを除き、私達は全員水着です。

スクナさんも、海に飛び込んだので、水着に着替えていますね。

全身タイプのアレです。

エヴァさんは、フリルのたくさんついた黒のワンピースタイプ。

さよさんも、青のワンピースに、白い薄手の上着を着込んでいます。

私は腰にパレオのついた、白のセパレートタイプです。

 

 

「恩人の身長よりも低かったな、水!」

「水深が1メートルだろうと5メートルだろうと、水は水です。侮ってはいけません」

「あわわ・・・ご、ごめんなさい、つい」

「騒ぎ方が尋常ではありませんでした。・・・マスターも」

「う、うるさいぞ茶々丸! ここが別荘でなければだな!」

「カンケーネーダロ、ケケケ」

 

 

無意味に命の危機を喧伝しないでください。

あと茶々丸さん、私のお皿に山盛りで焼きそばを盛らないでください。

太っちゃいますよぅ。

 

 

昨日・・・というより、まだ外は修学旅行の5日目ですね。

別荘に入ったのが15時過ぎ、今が別荘内の2日目のお昼ですから、外は16時を過ぎたあたりでしょうか。

外の時間で、17時半くらいには出ないといけないので、ここではもうあと一日と少し、休めるでしょう。

 

 

その間くらいは、好きに過ごしても良いですよね。

 

 

 

 

 

 

Side エヴァンジェリン

 

「んっ・・・」

 

 

血の味は、個人によって違う。

血液型によっても異なるし、含有する魔力によっても変わる。

吐き捨てるほど不味い物もあれば、我を忘れるほど美味い物もある。

 

 

「ん、く・・・お、思ったんです、けど・・・んっ」

「・・・ふ、む・・・なんだ・・・?」

 

 

アリアの血はなんというか、こう・・・若者らしく爽やかでありながら、女性らしくまろやかだ。

そして・・・。

 

 

「石化した身体から魂を抜いて、外の新しい肉体に・・・んっ、入れるのは・・・?」

「ん・・・ああ、250年くらい前に、似たようなことをした奴がいたな・・・」

「どう・・・あぅ、なりまし、た・・・?」

「石の身体の方に魂が引っ張られて、裂けた」

 

 

アリアの首筋から口を放して、手首についた血を舐めとる。

・・・ふむ。

 

 

「あ~、それは無理そうですね・・・やっぱり薬品とかの方がいいのでしょうか」

「新しく術式を作ってもいいだろうがな」

 

 

やはり、多いな。

血を飲むようになって大分立つが、ここに来て確信できることが一つあった。

アリアの血液には、常人に数倍する情報量が含まれている。

単純に、一言で言えば・・・。

 

 

「・・・というか、別に首筋から飲まなくても・・・」

「心臓に近い方が美味いんだよ。なんなら胸に噛みついてもいいんだが?」

「首で良いです」

 

 

一言で言えば、魂の情報量が多い。

身体は10歳だ。血液の新鮮さも、それを証明している。

だが含まれる魂の情報は、それを否定している。

・・・これは、どういうことだ? まるで・・・。

 

 

「・・・エヴァさん?」

「・・・・・・あ、ああ」

 

 

不思議そうな・・・見方によっては不安そうにも見えるアリアの表情に、笑みを返す。

・・・まぁ、いい。

 

 

「それはそれとして・・・もう少し、飲ませろ」

「ええ? 今、飲んだばっかりじゃないですか」

「若いんだから、すぐ回復するさ・・・それにあの程度では、全然足りぬ・・・」

 

 

直したばかりの水着の肩口をまたズラして、口を近付ける。

アリアは少し身を固くしたが、すぐに嘆息して私の後頭部に手をやり、受け入れる姿勢を整えた。

さら・・・と、私の指がアリアの髪に触れ、同じようにアリアの指が私の髪に触れる。

 

 

「・・・ん」

 

 

矛盾を抱えた不思議な味を楽しみながら、アリアのことを考える。

魔眼のことといい、魔法具のことといい、こいつは不思議なことばかりだ、が。

いつか、自分で話すだろう。

私はそれまで、待っていれば良い。

 

 

 

「あわわわ・・・////」

「恩人と吸血鬼は何やってんだー?」

「静かにしてください。余計な音が入ってしまいます」

「カワッタナ、オマエ。ヨロコブベキナノカ・・・?」

 

 

 

・・・まったく、あのバカ共は隠れる気が―――ないな。断言できる。

ボケの入った元幽霊に、非常識なバカ鬼、ネジの緩んだロボット、生意気な刃物人形。

我ながら、奇妙な家族構成になったものだ。

 

 

・・・私達は待っているぞ。アリア。

 

 

 

 

 

 

Side アリア

 

「かゆいところはございませんか~?」

「あ、はい。大丈夫です・・・」

 

 

わしゃわしゃとさよさんに頭を洗われながら、目の前にいる魔法具『草の獣』と戯れてみます。

外観は、草に覆われた6本足のトカゲ。

自律行動できる魔法具を作ろうと、試しに創ってみたのですが・・・。

 

 

「・・・なんだ。そのトカゲは相変わらずか?」

「トカゲって言うか・・・植物なんですけどね」

 

 

生物の疲労を余剰熱として食べてくれる植物で、本来は片言で喋れるのですが。

動物的な意思やら何やらが、全くと言っていいほどありません。

やはり、独立した意思を持った魔法具は上手く創れないなぁ・・・。

ご覧の通りナマケモノよりもゆっくりとした、「癒し系」として別荘の浴場にいます。

 

 

「まったく、お前はたまに妙な物を作るな。この前はやたらと手の長いロボットを作ろうとしてなかったか?」

「いざと言う時のためには、日頃の試行錯誤が重要なんです! あと手が長いとか言わないでください。かの天空の城を守護した『ロポット』です! 完成していれば、ここの門番として大活躍でしたよ!?」

「だが、実際には置物同然だからなぁ」

 

 

湯船につかりながら、どこかバカにしたように言ってくるエヴァさん。

むむむむ、『ロポット』が自律稼働さえしてくれていれば・・・!

手で触れて命令すれば、動いてくれるのですけど・・・。

 

 

「は~い、終わりましたよ~」

「あ、ありがとうございます。じゃあ、お返しに私がさよさんの髪を洗いますね」

「え、大丈夫ですよ~。私は自分で洗えますから」

「ああ、そうで・・・って、それじゃ私が一人で洗えないみたいじゃないですか」

「洗えんじゃないか。実際、お前が一人で髪やら何やらを洗っている所を見たことがないぞ」

 

 

それは、エヴァさんやさよさんが面白がって私の髪や身体を洗うからじゃないですか。

一度だって自分でやらせてくれないんだから・・・。

 

 

「とにかく、私は自分で洗いますから」

「そうですか・・・残念無念です」

「なら、スクナがやるんだぞ!」

「あ、すーちゃんがやってくれるの?」

「スポンジをダメにするなよ。茶々丸がうるさいぞ」

「あはは、じゃあさよさんはスクナさんにお願いして、私は・・・・・・って」

 

 

いやいやいやいやいや。

 

 

「な、なんでスクナさんがいるんですか―――!?」

「うん? なんだ今さら。昨日もいただろ」

「いたぞ。恩人は覚えてないのか?」

「あ、昨日はアリア先生、疲れてましたからね。半分寝てたんじゃないですか?」

 

 

当たり前のような顔をして、エヴァさんとさよさんは言ってますけど。

スクナさんは見た目10歳ですけど、実は1600歳ですからね!?

 

 

 

 

 

 

Side 茶々丸

 

「スクナさんは明日、朝食抜きです」

「ナンダイキナリ」

「いえ、別に」

 

 

姉さんを頭に乗せながら、明日の朝食の仕込みをしています。

その中から、スクナさんの分を片づけておきます。

 

 

「・・・私も、防水と放熱の問題さえ解決できれば」

「オーイ、ダイジョウブカ?」

「問題ありません。ハカセへの要望が増えただけです」

「マァ、イイケドヨ」

 

 

私も、マスターの髪を洗ったりアリア先生の身体を洗ったりさよさんとお喋りしたりしたいです。

浴場で。

 

 

「オーイ、アタマガアツイゾ。ホントニダイジョウブカ?」

「大丈夫です。ハカセへの要求が増えただけです」

「ビミョウニチガワネーカ? ナントイウカ、ホントウニカワッタナ」

 

 

変わった、ですか。

自分では、判断できかねますが。

 

 

「私は変わったと思いますか?」

「ン? アア、ソウダナ。マエダッタラ・・・」

「以前だったら?」

「ソモソモ、ソンナコトキイテコネーダロ」

 

 

・・・やはり、自分ではわかりかねます。

ただ、姉さんの機嫌も良いようなので、悪いことではないと思います。

 

 

「トコロデ、アレハナンダ?」

 

 

テーブルの上に積んである物に、姉さんが不思議そうな声をあげます。

 

 

「知人からいただいたものです」

「・・・ホドホドニシロヨ」

「はい」

 

 

・・・楽しみです。

 

 

 

 

 

 

 

Side エヴァンジェリン

 

「・・・おい茶々丸。これは何だ?」

「本日のパジャマでございます」

「それはわかってる。だが、これは、お前・・・」

 

 

人によって差異があるとは思うが、寝る前には寝間着、つまりはパジャマに着替えるものと思う。

ただ・・・。

 

 

「知人からいただいたもので、『着ぐるみぱじゃま(仔狸ver)』というらしいです」

「まぁ、確かに着ぐるみでパジャマでタヌキさんですね」

「全員分いただきました」

 

 

渡されたそれを、アリアは両手で持ってしげしげと眺めている。

いったい誰がこんな物を茶々丸に。

知人というのは、超やハカセではないようだが・・・。

確かに着ぐるみでパジャマでタヌキだが・・・って。

 

 

「おいバカ鬼。何を躊躇もなく着こんでいるんだお前は」

「吸血鬼は着ないのか?」

「いや、お前以外に誰が着るんだこんな物」

「茶々丸さ~ん、これどうやって着ればいいんですか~?」

「・・・って、さよ! お前もか!?」

「ケケケ、コッチモオーケーダゼ」

 

 

見れば、茶々丸に手伝ってもらって、さよも着ようとしている。

いつの間にか、枕元のチャチャゼロまで着ぐるみになっていた。

 

 

「まぁまぁエヴァさん。せっかくの頂き物ですし、今夜くらい良いじゃないですか」

「いや、しかしだな。こんな物私には似合わん・・・というか、何も全員で同じ物を着なくともいいだろう」

「ダメ・・・でしょうか。マスター」

「え~、私もう着ちゃいました。それにすーちゃん、寝ちゃいましたよ?」

「む・・・」

 

 

確かに、バカ鬼がベッドの片隅で眠りこけているな。というか、寝付き早過ぎだろ。

ま、まぁ、茶々丸にはいつも世話になっているしな。

 

 

「・・・今夜だけだぞ」

「ありがとうございます。マスター」

「エヴァさんって優しいですよね~」

「うふふ・・・」

 

 

着ぐるみパジャマとやらをひったくって、適当に着こむ。

まったく、くだらん。実にくだらん。

こんな物、何が楽しいと言うのだ。

 

 

「その割には、嬉しそうですね」

「や、やかましい! 明日は早いんだ、さっさと寝ろ!」

 

 

まったく、バカ共が。

・・・・・・まったく。

 

 

 

 

 

 

 

Side アリア

 

翌朝、朝食を取った後、私達は別荘から出ました。

外は、ちょうど良い時間ですね。

 

 

「アリア先生、来たえ~」

「お邪魔します」

 

 

5分後に、刹那さんと木乃香さんが来ました。

本当なら、もう少しゆっくりしてもらいたかったのですが・・・。

昨夜の遅くに、今日の18時から魔法先生での会議をすると極秘連絡がありましたから。

別荘は、エヴァさんが「まだ秘密だ」と言っていましたしね。

 

 

「よし、では行くか・・・さよはここに残って、近衛木乃香と桜咲刹那に私達の映像を見せてやれ」

「はいです」

「チャチャゼロとバカ鬼も残れ。まさかとは思うが、一応な。侵入者がいれば容赦するな」

「わかったぞ」

「ケケケ・・・タノシミダゼ」

 

 

茶々丸さんは、私達と一緒に来ていただきます。

というか、本人の強い要望で、ついて来てくださるそうで。

 

 

「あの・・・何を見るのでしょう?」

 

 

エヴァさんの言葉に不安になったのか、刹那さんがそんなことを聞いてきます。

その後ろでは、木乃香さんもどこか不安そうにしています。

・・・私としても、できれば見せたくはないです。

 

 

「・・・見てればわかるさ」

 

 

決意の鈍らない内に現実を見せた方がいいと言うのは、エヴァさんです。

まぁ、遅かれ早かれ知ることになりますし、何より。

今、実際に頑張る必要があるのはエヴァさんであり、私です。

 

 

・・・気のせいか、エヴァさんはどこか楽しそうですけど。

 

 

「行くぞ」

「はい、マスター」

 

 

休息は終わり。

ここからは、面倒事が渦巻く、現実の世界です。

またまた面倒になってまいりましたね。シンシア姉様。

 

 

 

 

 

 

アリアは、また頑張らねばならないようです。ただ。

今回は、一人ではないです。

 




アリア:
アリア・スプリングフィールドです。
今回は、別荘内での息抜きを描きました。
こんなにのんびりしたのは、久しぶりですね。


今回の作中に出てきた魔法具と『千の魔法』は以下の通りです。
匠の包丁:提供は霊華@アカガミ様です。
神無の鏡:元ネタは「犬夜叉」、提供はゾハル様です。
草の獣:元ネタは「終わりのクロニクル」、提供はFlugel様です。

あと、直接出てはいませんが。
ロポット:元ネタは「ラピュタ」。提供は司書様です。

『千の魔法』は。
覇王氷河烈(ダイナスト・ブレス):元ネタは「スレイヤーズ」、提供は伸様です。
雷天の雨:提供は霊華@アカガミ様です。

『千の魔法』の詳しい登録法などは、弟子入り編、または悪魔編前の主人公設定公開時に解説を載せたいと思います。

さらに魔法具ではないですが、『着ぐるみぱじゃま(仔狸ver)』は、月音様のアイデアをいただいています。

皆様、ありがとうございます。


アリア:
次話は、京都編の後始末的な話になるでしょう。
エヴァさんが詠春さんから引っ張ってきた条件とは、どんなものか。
では、またお会いしましょう。
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