魔法先生ネギま~とある妹の転生物語~   作:竜華零

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第2話「学園長」

 

 

Side アリア

 

学園長室に案内された途端、私に衝撃が走りました。

故郷のみなさん、どうやら私に早くも第一の試練が訪れたようです。

まさか、まさか、麻帆良学園の長がこんな存在だったとは!

 

 

「兄様、下がってください! あれは妖怪です!」

「ええ!?」

「ふぉ!? 違うぞっ!?」

 

 

涙目で否定する学園長を名乗る妖怪、しかし私の眼はごまかせません。

魔法生物・・・否、これはもはや妖怪レベル。

私の魔眼にも、そこはかとなく妖気的な物が見える気がします!

 

 

「笑止! 人間の後頭部がそんなに長くてたまるものですか!」

「くっ・・・」

 

 

私の言葉に、誰かの笑いをこらえたような声が響きました。

しかし、私は至極真面目です。

 

 

「アリアちゃん、この人は人間だよ。僕が保証する」

「・・・・・・・・・本当ですか?」

「もちろん」

 

 

タカミチさんにそう言われて、とりあえず納得することにします。

というか、最初からわかっていました。けれどなぜか言わずにおけなかったんです。

・・・それにしても、本当に長い後頭部ですね。

 

 

「子供が教師なんて、どういうことですか!? しかも2人も!」

 

 

そうこうしているうちに話が進み、明日菜さんがもっともなことを言います。

たしかに、旧世界の法律には違反してますしね。

多少は知っています、労働基準法でしたか?

 

 

「大丈夫じゃ。2人とも外国の大学を飛び級して、教員免許も持っておるからの」

 

 

持ってませんよ。

というか、ネギ兄様はなぜさも当然というような顔をしているのでしょう。

 

 

「で、でも・・・」

「ええやんか明日菜、子供先生言うのも楽しそうやん」

「こ、木乃香まで何言って・・・」

「大丈夫だよ明日菜君、ネギ君もアリアちゃんも優秀だから」

「・・・高畑先生がそう言うなら、まぁ・・・」

 

 

高畑先生の言うことには素直な明日菜さん。

・・・素直に、可愛らしいなと、思いました。

これから兄がかけるであろう迷惑を思うと、少々胸が痛いですね。

しかし私には、どうすることもできません。

 

 

「それで、ネギ君とアリア君には2-Aの担任、副担任を担当してもらうことになっておる。担当は英語じゃ。それに伴い、タカミチ君には担任をやめてもらうことになるの」

「ええ!? タカミチ先生、担任辞めちゃうんですか!?」

「うん、出張がたまっていてね」

「そ、そんな~~~」

 

 

あからさまに落ち込む明日菜さん。木乃香さんが肩を叩いて慰めています。

まぁ、恋する相手との接点が減るというのは、女性として辛いですよね・・・。

・・・・・・よし。

 

 

「あの、学園長先生」

「うん? なんじゃ、アリア先生」

「タカミチ・・・高畑先生のことなんですけど、できれば2-Aの担当のままにできませんか?」

 

 

私がそう言うと、その場にいたみなさんが、少し驚いたような顔をしました。

まぁ自分でも結構無茶なこと言っている自覚はありますが、これくらいしても罰はあたらないでしょう。

学園長は豊かな髭をなでながら、困ったように眉根を寄せています。

 

 

「しかしのぅ」

「私と兄様のことを思ってのこととは、理解しています」

 

 

私たちの修行のためには、タカミチさんのような方は、言い方は悪いですが、邪魔でしかありません。

特に兄様には、良い影響を与えないでしょうね。

私はそうでもありませんが、といってあれこれ構われるのも面倒ですし。

 

 

「でも、それはあくまでもこちらの都合です。生徒のみなさんのことも、考えてほしいのです」

「何が言いたいのかな?アリアちゃん」

「高畑先生を慕って、高畑先生の指導を楽しみにしている生徒の方もいるのではないか、ということです」

 

 

ね? と明日菜さんと木乃香さんを見ると明日菜さんは激しく頷き、木乃香さんは苦笑しながら、小さく頷いた。

 

 

「うーん、でも僕も出張がたまっていて、とても担任の仕事まではできそうにないんだよ」

「はい、ですから担任に、という無理は言いませんので・・・なんとか、2-Aに何らかの形で関わる役職に就いていただけないでしょうか? カウンセラーとか、進路指導員とか、副担任補佐とか・・・」

 

 

お願いします。そう言って深々と頭を下げる私に、場が静まり返りました。

・・・今日一日で、すでに二回頭を下げています。

考えたくないことですが、まさかここにいる間中、頭を下げ続けることにはなりませんよね・・・?

 

 

「そこまで、生徒のことを考えてくれるか・・・」

 

 

学園長が、溜息と共に、感慨深そうに言いました。

 

 

「・・・わかったぞい。それなら、タカミチ君には2-A専属の不定期の生活相談員になってもらうとしよう、よいかの、タカミチ君?」

「・・・わかりました」

「ありがとうございます」

 

 

明日菜さんの顔を見てみると、さっきよりは表情が明るくなっていた。

その顔を見て、ほっとしました。

100点満点とは言えませんが、少しはお詫びができていればと、そう思います。

 

 

 

 

 

Side 学園長

 

「・・・・・・優しい子じゃのう」

「・・・・・・そうですね」

 

 

あの後、明日菜君と木乃香を下がらせた後、魔法使いとしての話をネギ君とアリア君にした。

今頃は、しずな先生に導かれて、2-Aの教室に向かっている頃じゃろう。

 

 

「生徒の想いも汲んでほしいとは・・・まだ年端もいかぬ子供なのにのぅ」

「思えば、アリアちゃんは昔から、周囲に対する気配りのできる子でしたから」

 

 

タカミチ君の言葉に、深く頷くことで答えた。

そして、ネギ君とアリア君についてのことが書かれた資料に目を落とす。

ネギ君は成績優秀で、純粋にマギステル・マギを目指す将来有望な魔法使い見習いじゃと言える。

対して、アリア君は・・・。

 

 

「・・・魔法が使えない、とはの」

「はい。でも僕とはまた違う体質のようで、魔力自体はネギ君同様高いようなんです」

「資料にも書かれておるのう。ふむ・・・治癒術師志望、とな・・・」

 

 

まぁ、人には得手不得手があるからの、それは良いのじゃが・・・。

 

 

「保護者の欄が、空白のままじゃの・・・」

 

 

事前に提出させたアリア君の書類の保護者欄が、空白のままじゃった。

 

 

いや、ネギ君とアリア君は両親の保護下にはないので、そのこと自体は間違いではない。

ただ、ネギ君は父親の欄にナギ・スプリングフィールドと誇らしそうな字で書いておるのに、アリア君は何も書いておらん。

かわりに、保護者代わりの従姉妹の名前を欄外に書き込んでおる。

 

 

それだけがすこし、気になった。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

 

教室に向かう途中、ネギ兄様のやる気に満ちた背中を見ていると、なんとも言えない不安感が募ります。

空回りしないといいんですけど・・・。

まぁ、がんばってフォローしてみましょう・・・どこまでやれるかは不安ですが。

兄様自身はともかく、周囲に迷惑がかかることは阻止しなければなりません。

 

 

・・・でないと、私まで修行を失敗してしまいますからね。

それほど執着はありませんが、好き好んで失敗したいわけではありません。

 

 

ただでさえ、明日菜さんと木乃香さんの部屋に居候するという無茶な状況に陥っているのです。

原作を読んでいたころも何度か思いましたが、本当に何考えているんでしょうねあの学園長。

男女を同室とか、教師と生徒で相部屋とか、あらゆる意味でぶっちぎってますよ。

 

 

私ですか? まだ未定です。

放課後にまた来るよう言われています。

・・・よもや男性と相部屋とか、ないですよね?

 

 

・・・・・・もしそうなら修行とか無視して暴れましょう。

たぶん許され・・・ないでしょうね。

 

 

と、私がこの世の理不尽について考えていると、どうやら教室の前についたようです。

教室の前につき、しずな先生という、私と兄様の指導をしてくださるという女性と別れた時、兄様が突然、私の方を向きました。

・・・なんだか久しぶりに、兄様の顔を正面から見た気がします。

 

 

「ねぇ、アリア」

「はい、なんでしょう兄様」

 

 

珍しい。

兄様から話しかけてくるなんて・・・。

 

 

「アリアは、マギステル・マギにはなりたくないって、ほんと?」

 

 

・・・・・・藪から棒に何を聞いているんでしょう。この人。

たしかに私は正義の魔法使いとか興味ないですけど、なんで兄様がそのことを知っているんでしょうね?

ネカネ姉様か、アーニャさんにでも聞いたんでしょうか。

あの2人にだけは、私の目的を話してありますから。

 

 

・・・兄様が待っていますね。早めに答えてあげましょうか。面倒ですし。

私は、努めてにこやかに、兄様に答えました。

 

 

「ええ、私はマギステル・マギにはなりたくありません」

「どうして? 僕はアリアよりは成績はいいけど、アリアだって頑張ればマギステル・マギになれると思う」

 

 

・・・若干、馬鹿にされたような気がしますが、兄様に悪気がないのはわかっています。

 

 

「・・・私には、マギステル・マギになるために必要な資質が欠けていますから」

 

 

正義感とか、正義を信じる心とか、悪を憎む気持ちとか、赤の他人を救うという奉仕の心とか。

そんな面倒なもの、私にとっては何の役にも立ちません。

私はあくまで、私の目的のために、魔法を求めたのですから。

 

 

「でも」

「兄様? その話は後にしませんか? 今はお仕事中ですよ?」

「あ・・・そっか、そうだね」

 

 

というか、廊下でする話でもありませんよ。一般人も通るのですから。

改めて教室の扉を前にすると、兄様は緊張のためか、がちがちに固まっていた。

 

 

「がんばってください、担任なんですから」

 

 

私がそう言うと、兄様は意を決したように、扉を開きます。

私たちにとって、新しい世界を開く、そんな扉を。

 

 

 

見ていてください、シンシア姉様。

 





引き続きの投稿になります。
原作キャラクターの動きは難しいですね。
まだまだ精進が必要なようです。

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