本当にありがとうございます。
今後もみなさまから力をもらいつつ、がんばっていきます。
では、第5話です。
Side 刹那
「・・・数が多い・・・」
学園長の連絡を受け学園への侵入者を排除しに来たはいいが、次から次へと召喚される鬼は一向に得る気配を見せない。
術者の姿も、いつの間にか見失っていた。
「不味い・・・」
「刹那!」
「なんだ!?」
鬼と切り結びながら、相棒である真名の声に応じる。
「何か来る!」
「何かってなん・・・あぅ!?」
真名に気を取られたためか、横からの鬼の攻撃に対応できなかった。
吹き飛ばされ、木に叩きつけられた。
刀は手放さなかったが、まずい・・・!
「刹那!」
真名が援護に来てくれようとするが、別グループの鬼たちに阻まれ、できない。
その間に、鬼たちが私にとどめを刺しに来た。
(お嬢様・・・!!)
目を閉じて思うのは、大切なお嬢様。
(私が死んだら、お嬢様は悲しんでくださるだろうか・・・?)
場違いとは思いつつも、そんなことを考えてしまう。
そして私は、次の瞬間に来るだろう衝撃に、覚悟を決めた。
そして・・・。
「・・・・・・・・・・・・?」
いつまでも来ない衝撃。
不審に思って、おそるおそる、目を開ける。
すると、そこには・・・。
「・・・・・・・・・大丈夫ですか?」
真っ白な女の子が、そこにいた。
Side アリア
鬼というものは初めて見ました!
とはいえあまり可愛くありませんので、大して興味は湧きませんね・・・。
と、あれは・・・?
(真名さんと・・・桜咲さん・・・?)
って、桜咲さん殴られました! 殴られましたよ!?
あの野郎・・・鬼? とにかくとっちめましょう!
そう考えた私の手には、一冊の本がありました。
この本の名は、『魔法事典』。
本自体は何も書かれていない白紙の本ですが、そこに魔法の効果を書き込むことで、その通りの魔法を使用することが可能となります。
ド○えもんですね、わかります。
本来ならば『殲滅眼(イーノ・ドゥーエ)』で魔法の使用できない私ですが、魔法の使用条件に「殲滅眼による吸収効果を受け付けない」などの条件付けを行うことで、巧妙に魔眼を騙しています。
ただやはり限界があり、あまり攻撃的な魔法には使用制限がかかってしまうのですが・・・。
そこで。
「『コズミック・マリオネーション』・・・!」
本を持っていない方の私の手から、魔力で編まれた無数の見えない糸が放たれ、刹那さんを取り囲んでいる鬼たちを拘束しました。
この糸に拘束された者はもはや、自分の意志では身体を動かすことが出来ません。
すべからく、私の操り人形と化すのです。
よもやド○えもんの道具で星○の技を使うとは、私の発想力も底が知れているのやもしれません。
でもやめませんけど。
かっこいいじゃないですか、ミー○ス様。
何よりこの『糸』の良いところは、傍目には私が何をしているのかがわからないところです。
通常の魔法術式とは根本からして異なりますから。
「何かしている」ことはわかっても、「何をしているか」はわからないはずです。
「・・・・・・・・・大丈夫ですか?」
何やら呆然としている桜咲さんに、声をかけます。
そしてその片手間に、拘束している鬼たちの首をもいでおきます。
真名さんの方の鬼も同様に拘束、全身の骨を砕いて還しておきましょう。
話もできやしません。
「・・・2人とも、大丈夫ですか?」
「あ、アリア先生・・・?」
「これは・・・」
真名さんと桜咲さんが、目を丸くして驚いています。
ふむ、残りを殲滅しつつ事情を説明しますかね。
「それはですね」
ミシミシ・・・・・・バキッ!
「私は2人の担任ということになってますから」
ゴキッ・・・バキンッ!
「・・・で、来てみたらピンチのようでしたから・・・」
ゴリッ・・・バキビキィッ「ぎゃ!?」!
「助けに来たと・・・おや?」
2人に話しながら背中越しに『糸』を放っていたのですが、何か悲鳴のようなものが聞こえましたね。
鬼? も、どうやらいなくなったようですし。
「い、いてぇ、いてぇよ~・・・っ!」
「おや・・・」
茂みから、両足を折られて転がり出てきた人がいました・・・ふむ、この方が鬼の召喚師でしょうか?
何やら「足が」だの「痛い」だのとうるさいですね・・・。
「・・・うるさいですよ」
話ができないじゃないですか。
私は『糸』でその方の全身を拘束し、地面に叩きつけてさしあげました。
まだくぐもった叫び声がしてうっとうしいので、さらに骨盤を砕いてあげます。
のたうちまわる音がさらにうるさいので、両腕を折り、肋骨の半分を半ばから砕きました。
・・・そこまでしてようやく、静かになりました。
あ、一応聞いときませんと。
「生かしたままの方がよいですか?」
「え、ええできれば・・・」
いくらか強張った表情で、桜咲さんが答えます。
まぁ危機的状況でしたから、今になって怖くなったのでしょう。
よくあることです、私もウェールズにいた頃はありました。
私は『糸』を消し、『魔法事典』をしまいました。
えっと、どこまで話しましたっけね。
「・・・アリア先生は・・・」
「はい?」
「何者なんですか?」
「・・・?」
なかなか哲学的なことを聞きますね。
というか、なんだか心なし怖がられているような?
「・・・あれ、もしかして私、怖かったりします?」
「そ、それは・・・」
「あんなものを見せられては、仕方がないんじゃないかな?」
桜咲さんは困惑したように、真名さんは苦笑して、そう言いました。
ええっ!?・・・軽くショックです。
「・・・敵を薙ぎ払っただけじゃないですか・・・」
「問題はそこじゃないんだけどね」
困りましたね・・・。
魔法に関してはまぁ、関係者のようですから良いとして、私のことを話してよいものかどうか・・・。
どうしますか・・・。
Side 学園長
「どういうことじゃ・・・?」
タカミチ君からもたらされた報告に、ワシは困惑を隠せんかった。
今夜の警備中に、一部の魔法生徒が危機に陥った。
対策が必要じゃが、これはそれほど驚くことではない。
2人の侵入者らしき者が、縛られて放置されておった。
内一人は、タカミチ君が回収する前に、自害してしまったらしいが・・・。
問題なのは、その2人を無力化した者の名前じゃ。
「アリアちゃんです」
タカミチ君自身、困惑しておるようじゃが、ワシはもっと混乱しておる。
「アリア君は、魔法が使えんはずじゃろう?」
「はい、その・・・魔法は、使っていませんでした」
「・・・・・・どういうことじゃ?」
タカミチ君の話によると、アリア君は生徒の危機にさっそうと現れ、十数体の鬼をものともせず、こともなげに相手を無力化して見せたらしい。
しかもその方法が、タカミチ君にはわからない、というのは・・・。
「何か、本を持っていたようなのですが・・・すみません、僕も純粋な魔法使いではないので・・・」
「むぅ・・・」
情報が不足しておるな。判断がつかん。
だが、アリア君がこちらに何かを隠しているのは、わかった。
一度呼び出して・・・いや、おそらく素直には教えてくれんじゃろうな。
確たる証拠もないようじゃし。
今のところこちらに害があるわけでもない。
「・・・・・・しかたないの、この件はとりあえず保留しておこう」
「はぁ」
「今は警備の強化の方を優先したいしの」
ただでさえ人手不足なのじゃ、不確定要素にまで手が回らんわい。
じゃが捨て置けもせんし、一応軽く監視はしておくかの・・・・・・。
Side 刹那
「ど、どうしてこんなことに・・・」
「まだそんなことを言っているのかい?」
むしろ真名、お前はどうしてそんなに自然体でいられるんだ・・・。
そして何よりも!
「あの・・・先生?」
「はぁ~い、もうすぐできますからね~」
どうして、アリア先生がエプロン姿でお料理していて、私は座ってそれを待っているのでしょうか・・・。
Side アリア
「ふんふふふんふ~ん~♪」
私は鼻歌を歌いながら、お料理をしています。
あれからいろいろ考えてみたのですが、まぁ何を話すにしろ時間がかかるかとも思いましたので、我が家に招待することにしました。
そう、我が麻帆良女子中女子寮管理人室に!
10歳が管理人とかなんですか! と抗議しましたがあの学園長、聞く耳持ちません。
まぁ責任をとってくれるならなんでもいいですが・・・と。
「できましたよ~♪」
「あ、手伝います」
「お気になさらず~」
居間にいる真名さんと刹那さん(自己紹介しました)のところへ、膳を運びます。
今日は2人に合わせて、和食です。
こうみえて、お料理のレパートリーは豊富です。
・・・・・・嘘です、ごめんなさい。
『わ~おいしそうですね~』
さよさんに手伝ってもらいました(レシピ的な意味で)。
なぜここにさよさんがいるのかというと、60年ぶりの友達に感激したのか、よくついて回るようになりました。
・・・・・・まさかとは思いますが、取り憑かれたわけではありませんよね?
リアル幽霊と接するのは初めてなので、判断に困ります。
「こ、これは・・・ありがとうございます」
「いただきます」
「はい、どうぞ~」
そのまま食事タイムに突入します。
初めて作ったにしては上出来なようで、2人からも「あ、これ美味しいです・・・」などと言ってもらえました。
しばし静か、かつ楽しい時間が続きます。
「・・・って、先生! それより話を・・・!」
「食事中はお静かにですよ~」
「あ、はい、すみません・・・」
意外に素直な刹那さんでした、まる。
30分後・・・。
「・・・さて、何をお聞きしたいのですか?」
片付けを済ませ、食後のお茶などを入れながら、そう言います。
いくらか落ち着いたようですし、いい頃合いでしょう。
「先生が何者なのか、です」
「・・・何とも抽象的ですね、もう少し具体的に聞いてくださるとありがたいのですが」
「では・・・さきほど鬼を薙ぎ払った力は・・・?」
「ああ、あれですか。あれを説明するには、一つ先に言っておかなくてはならないことがあります・・・」
「・・・と、言うと?」
「はい、実は私は・・・」
私の真剣な様子に、真名さんと刹那さんは息を飲みました。
『私は飲みたくても息できませんから・・・』
無意味に悲しみを誘う発言をしないでください、さよさん。
さよさんに心の中で突っ込みを入れつつ、私は告げました。
「私は・・・・・・魔法使いだったのです!!」
明かされる、衝撃の真実!
「「知ってますよ」」
「・・・・・・ですよね」
何もそんな冷たい目をしなくても良いじゃないですか・・・。
『え?え? 魔法使いってなんですか?』
一人、さよさんだけが驚いていました。
ある意味魔法使い以上に摩訶不思議な存在なんですが、貴女。
「真面目に言いますと・・・あれは魔法具ですよ、ただの」
「魔法具にしては、強力すぎないかい?」
「使用者の魔力に比例しますから・・・つまり私の魔力がすごいということですね」
「まぁ・・・それは、いいです」
ひそかな自慢がスルーされました。
軽くショックです。
「では、どうして私達を助けてくれたんですか?」
「生徒だからですよ」
ここは即答しますよ。というか、それ以外に何かあり得るんでしょうか・・・?
「私は先生で、貴女たちは生徒です。助けない選択肢はありません」
私が10歳で貴女たちの方が年上というのは、この際問題ではありません。
ようは関係性の問題です。
「ですが・・・」
何やら刹那さんはご不満な様子。
私は真名さんの方を見て。
「何か変なことを言いましたか?」
「いや? 何も変わったことは言っていないよ」
そう言う真名さんの顔は、どことなく面白がっているようでした。
まぁ、それ以上のことは話しようがありませんので、その後は、他愛のないことを話しました。
最後には刹那さんもぎこちなくですが、笑顔を見せてくれたように思います。
『あ、あの~、魔法使いって・・・』
・・・さよさんへの説明は、どうしましょうか。
幽霊って扱いが面倒です。シンシア姉様。
アリアは、悩ましいです。
『魔法事典』のアイデア:水色様。
ありがとうございます。
*注意です。
魔法具などの投稿はすでに終了しております、ご了承くださいませ。
(再投稿作品なため)