魔法先生ネギま~とある妹の転生物語~   作:竜華零

70 / 90
第63話「麻帆良祭二日目・母親」

Side 千草

 

「ぐ・・・」

 

 

一瞬、意識が落ちかけた。

身体の中身を、掴まれたみたいな感触があったかと思ったら、急に・・・。

 

 

「千草さん、大丈夫ですか?」

「あ、ああ・・・なんとかな。けど、これは・・・」

 

 

茶々丸はんに肩を抱かれながら、首を左右に振って、意識をはっきりさせる。

アリアはんの試合が始まった瞬間、クウネルとか言う男から光が出て・・・。

その瞬間、意識が遠くなるのを感じた、んやけど・・・。

 

 

「・・・月詠はんは!?」

「・・・うふふ~、的がいっぱいです~・・・」

「寝ているようですね」

 

 

確かに、手すりにもたれかかる様にして、寝とる。

何の夢を見とるのか簡単にわかってまうのは、なんでやろな。

 

 

それはそれとして、今、この会場で何が起こった?

月詠はんだけやない、この会場にいる人間は、全員寝てしもとる。

何やね、これは・・・。

 

 

「おそらく、これはアリア先生の・・・『ゲマインデ』かと思われます」

「『ゲマインデ』?」

「はい。夢の世界を作り出して周囲の人間の意識を取り込み、取り込んだ人間の意識を術者の作った夢の世界に誘う効果があります。本来の用途とは少し、違うようですが・・・」

 

 

まぁ、本来の用途とか、よう知らんけど・・・。

とにかく、アリアはんがここにいる全員を眠らせたわけか。

 

 

「私はガイノイドなので、効果がありませんが・・・千草さんに効果が無いのは、少し意外ですね」

「・・・うちは、呪破りの符を服の下に仕込んであるんや」

 

 

今、軽くバカにされた気がする。

まぁ、ええけど。

アリアはんはと言うと、変わらずリングの方で、見たことの無いねーちゃんと・・・。

 

 

「バカな・・・」

 

 

不意に横から、絞り出すような声が聞こえた。

クルト議員。

クルト議員が、手すりから身を乗り出すようにして、リングを見とった。

その顔には、さっきまでの皮肉めいた余裕は感じられへんかった。

 

 

「く・・・!」

 

 

クルト議員は後ろで倒れとる黒服達を一瞥すると、耳元に手を当てながら、走り出した。

 

 

「あ、クルト議い・・・」

「全員、武道会会場に近付くなっ! 内部に残っている者で意識のある者は外縁部に留まり、会場を完全に隔離しろ、誰も通すなっ・・・近付けるんじゃないっ!!」

 

 

クルト議員はもう一度、リングの方を見た後、いくらか逡巡して・・・。

駆け出した。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

「主(ぬし)が・・・アリア、かの?」

 

 

その女性は私を見ると、優しげに目を細めました。

私は、今自分が、どんな表情を浮かべているのかもわかりません。ただ。

ただ、笑顔で無いことだけは確かです。

 

 

私の手には、黒き魔本『千の魔法』があります。

№27『ゲマインデ』によって、周囲の人間は今頃、過去に相対した最大の敵と遭遇しているはずです。

それが戦闘なのか、学問なのかはわかりませんが。

夢の世界で、意識をたゆたわせながら・・・。

 

 

加えて、人払いの結界に『迷(メイズ)』と『輪(ループ)』のカードを併用し、会場周辺を隔離された無限の迷路に変貌させます。

右眼の『複写眼(アルファ・スティグマ)』で、全ての魔法・魔法具を掌握しました。

・・・やりすぎかとも、思いますが・・・。

しかし、この状況を他人に見られてしまうわけにも・・・。

 

 

「年は、10歳になるのかの? 私の意識上では、まだ生まれてもいないのじゃが・・・」

「・・・っ」

 

 

伸ばされて来た手を、ぱしんっ・・・と、反射的に、払いました。

私に手を払われた女性は、少し驚いた後、悲しみの色を瞳に宿しました。

・・・悲しみ?

悲しみなんて・・・。

 

 

「貴女は・・・誰ですか」

 

 

あえて、静かな声で・・・そう問います。

 

 

「私は・・・貴女なんて、知らない」

「・・・そうか。いや、そうじゃろうな。こうして主と話していると言うことは、私は主の側にいないと言うことじゃろうからな・・・」

 

 

息を吐くような、言葉。

地面に膝をつけて、目線を合わせてくるその女性を、私はただ見ていました。

 

 

「・・・私は、アリカと言う。父の名は知っておるかの? 主の父、ナギの妻で・・・」

「・・・ウェスペルタティア王国最後の女王で、<紅き翼>と協力して世界を救った女性」

「む・・・」

 

 

意外そうな表情。

でも、それくらいのことは知っています。

と言うか、自分の命が狙われる理由くらい調べます。

前世から引き継いでいる『知識』の中にも、大まかな流れはありましたしね。

そして、だからこそ。

 

 

「そして世界を救う代わりに自分の国を滅ぼし、戦争犯罪人として処刑された『災厄の女王』」

「・・・その通りじゃ」

 

 

そして、だからこそ、私はこの人が嫌いでした。

母として側にいない以上に・・・何よりも、私が危険に晒される確率を上げた存在として。

だって、理解ができなかったから。

 

 

「アリカさん・・・あえて、アリカさんと呼ばせていただきますよ」

「・・・うむ」

「アリカさんは、どうして・・・世界なんて救ったのですか?」

 

 

自分よりも、顔も知らない民のことを。

自分の民よりも、世界を優先したこの人の考え方は、受け入れられなかったから。

私の命が、母親が赤の他人を救ったせいで狙われるなんて、許容できるはずが無いではありませんか。

 

 

「貴女のせいで・・・私は、余計な荷物を背負わなければならなかった」

「・・・そう、じゃろうな」

「今さら母親面されても・・・受け入れることなんてできません。私は、貴女が」

 

 

大嫌い。

 

 

「そうか・・・」

 

 

目を閉じて、震えるように息を吐くアリカさん。

涙こそ流れていませんが、泣いているようにも見えます。

・・・なんだか、見ていたくなかった。

 

 

だから、左眼の『殲滅眼(イーノ・ドゥーエ)』を起動させました。

私の右眼には、この人の身体を形成する『イノチノシヘン』の構成が見えています。

どこを壊せば良いのかも、簡単にわかる。

だから・・・。

 

 

だから、これで。

 

 

「すまぬ」

 

 

 

 

 

Side アーニャ

 

不意に、立ち止まった。

なんだか、奇妙な感覚がして、戻りたくなったんだけど。

でも、どこに?

 

 

「アーニャさん?」

「え・・・あ、ああ、なんでもないわ」

 

 

何かしら、なんとなく・・・。

誰かの側に、いなくちゃいけない気がする。

ウェールズにいた時も、何度か感じたことがあるの。

 

 

「アーニャ!」

 

 

声をかけられて、そっちを見ると、会議室の中からドネットさんが出てくる所だった。

一緒にいるのは、関西呪術協会の人達かしら。

廊下を通ってこっちに来たから、隅に下がって、ちびアリアを後ろに隠して、できるだけ優雅に頭を下げた。

 

 

関西の人達が見えなくなった後、改めてドネットさんの所へ。

 

 

「ドネットさん!」

「アーニャ、お疲れ様。ネギ君とアリアには会えたかしら?」

「はい・・・ただ、その」

 

 

きょろ・・・と、周りを見る。

ここでは、話せない。

 

 

ドネットさんもそれを察したのか、軽く頷いて、ついてくるように言った。

部屋に戻って、覗き対策をした上で、情報を交換する。

でも・・・。

 

 

「・・・アーニャさん? 大丈夫ですか」

「大丈夫よ、エミリー。心配してくれてありがとう」

「当然です。パートナーですから」

 

 

エミリーの首筋に指を這わせて、軽く笑い合う。

それから、ちびアリアの方を見て。

 

 

「ありがとう、おちびさん。アリア・・・御主人の所に戻って良いわよ?」

「使うだけ使って、後はポイですかぁ?」

「人聞きの悪いこと言わないでくれる!?」

「アーニャさん。ちびアリアさんは普通の人には見えないので・・・」

「う」

 

 

そうか、一人で叫んでいるように見えるのね。

横を見ると、ドネットさんが目を丸くしてた。

 

 

「ドネットさん・・・見えてる、わよね?」

「何がかしら?」

「何がって・・・」

「ステルスは完璧ですぅ」

 

 

く、アリアの使い魔(式神?)だけあって、高機能ね・・・。

 

 

 

 

 

Side 美空

 

あははははははは・・・。

・・・こんちくしょーっ!

 

 

「ちょ、ちょちょ、ちょっと――――っ!」

「ミソラ、右・・・」

「右!? 本当に右なのココネ!?」

 

 

な、なんで!?

なんで学園・・・と言うか、龍宮神社がラストダンジョン化してるの!?

突然、人払いっぽい結界が張られたと思ったら、迷路みたいになって、出れなくなったし!

しっかも・・・。

 

 

「何か、田中さん増えてるし――――っ」

「兄弟機デス」

「律儀に説明された!」

「苺・・・」

 

 

そう、苺のアップリケつけた田中さんの他に、そっくりなロボットが2体。

合わせて3体の田中さんに追いかけられてる。

もう、こんなことなら神社の中じゃなくて、外に逃げれば良かった!

 

 

「ドリフト―――って、行き止まり!?」

「間違えたみたイダ・・・」

 

 

角を曲がると、行き止まりだった。

ココネはまったく、まったくもう!

 

 

「捕捉シマシタ。捕獲致シマス」

「マジで!?」

「マジデス」

 

 

やっぱり律儀に答えて、田中さん達が突撃してきた。

く・・・っ!

 

 

ぎゅんっ・・・アーティファクトでスタートダッシュ、目の前の壁を蹴って跳んだ。

空中で一回転、一体目をかわす。

次いで、二体目の田中さん(苺のアップリケ装備)の肩を踏んで、さらに跳躍。

身体を捻って、空中で三体目もかわした。

 

 

「私ヲ、踏ミ台ニシタ!?」

「できた!? 私凄くない!?」

 

 

すたっ・・・と、着地して、再びダッシュ。

だけど、いつまでも逃げ切れるとは思えない。

気のせいで無ければ、あのロボットは地の果てまで追ってきそうな気がする。

 

 

く~・・・箒があれば、飛んで逃げれるのに。

途中で、ココネだけでも隠せないかな。

ココネは、私のマスターさんだからね。

この子だけは、何があっても・・・。

 

 

「ミソラ・・・」

「ん? どしたのココネー?」

 

 

ぎゅ・・・と、肩車してるココネが、私の頭の上に置いてる手に力を込めた。

頑張らなくっちゃ、ね。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

「すまぬ・・・?」

「・・・苦労を、かけておると思っておる」

「苦労を、かけている・・・?」

 

 

そんな言葉なんて、欲しくも無い。

謝られた所で、私の負担が減るわけでもありません。

私は、ただ。

 

 

「言い訳の一つも、しないんですか・・・?」

 

 

この世界に生まれ落ちた時、母親がいないと言う事実を知った。

でも、私は特に何も感じませんでした。

前世でも、いはしましたが、それほど仲が良かったわけでもありませんし・・・。

母親なんて、いてもいなくても、そう変わらない。

そんな風に、どこか冷めた感想を持っていました。

 

 

「言い訳などせぬ。私は主の側にいてやれなんだ・・・それは変わらぬ。また、私の所業で、娘のそなたに多大な負担をかけたであろうことも、事実じゃ」

 

 

でも時間が経つごとに、私は何かを求めるようになっていきました。

大人達との確執、周囲の冷めた目線、肉親に関心の無い兄。

温かな友人に囲まれるようになってからも、心のどこかで、何かを求めていました。

いくつになろうとも、変わらない何かを、抱えていました。

 

 

「じゃが・・・謝った所で、そなたの負担を減らすことも、心を癒すことも、私にはできぬのじゃろう」

 

 

満たされない何かを充足させてくれる誰かを、探していました。

エヴァさん達と言う家族を得て、ようやく満たされるかに見えたそれも。

 

 

「私には、主の母を名乗る資格は、もう無いのかもしれぬ。いや、無いのじゃろう・・・」

 

 

エヴァさんの温もりも、茶々丸さんの慈しみも、チャチャゼロさんの優しさも、さよさんの安らかさも、スクナさんの和やかさも・・・全てが。

その全てが、私にとってかけがえの無い物で。

 

 

「今の私が、どのような状況でどのような状態にあるのか、幻に過ぎぬ私にはわからぬ。じゃが・・・」

 

 

だけど。

だけど私は、きっと。

ただ・・・。

 

 

「きっと私は、今この瞬間にも、そなたのことを想っておる」

「・・・・・・それなら」

 

 

私は、ただ。

 

 

「それならどうして、貴女は私の側にいないんですか・・・?」

「・・・わからぬ。じゃが、側にいられぬ理由があるのじゃろう」

「私はなぜ、一人のままなのですか・・・?」

「・・・すまぬ、私には答えてやることができぬ・・・」

 

 

沈痛な表情で、アリカさんは私を見ています。

その表情は、まるで・・・。

 

 

「じゃが・・・共にいてやりたいとは、思っておったはずじゃ」

「そんな、言葉」

「言葉以外に、今の私には主に渡してやれる物が無い・・・すまぬ」

「謝罪なんて・・・・・・いらないんですよっ!」

 

 

なんで、わかってくれないのでしょう。

世界はどうして、私の欲しい物を与えてくれないのでしょう。

 

 

「あ、貴女・・・貴女が、あんな、世界を救うとか、意味のわからないことをしなければ、私はもっと安全に、楽に生きられたっ・・・赤の他人なんて、放っておけば良かったのに!」

「アリア・・・」

「なんで、なんで・・・自分と身内だけ連れて、逃げるなり隠れるなり、してくれなかったんですか!」

「オスティアの民は、私にとって身内だからじゃ」

 

 

民が・・・身内?

会ったことも無い人なのに?

 

 

「オスティアの民は、その全てが私の身内であり・・・宝。だからこそ、王族・・・それも女王である私には、彼らを救う義務があった。願いでもあった」

「一度だって、会わないかもしれない人達なのに?」

「それでもじゃ」

 

 

アリカさんは、そこだけは厳しい表情で断定しました。

一瞬、言葉が詰まりました。久しぶりに、感じる気持ち・・・。

直後、ふ・・・と表情を緩めて、アリカさんが私を見ました。

 

 

「主にも、我が民の営みを見せてやりたかったの・・・」

「・・・興味無いです」

「ふふ、そうか・・・」

 

 

かすかに微笑んだ後、アリカさんは、どこか緊張した表情を浮かべ、おそるおそる・・・手を。

私は、その手を・・・。

 

 

払わなかった。

 

 

「・・・っ」

 

 

両腕で、アリカさんに抱き締められました。

一瞬、息を飲み、身を固くしました。

初めて会う人に抱き締められれば、そうなるでしょう?

 

 

「・・・側に、いてやりたかった」

「ほ・・・」

「今の私もきっと・・・いや、必ず、そなたのことを案じておる。食事は取っているか、風邪など引いていないか、誰かに苛められておらぬか・・・それを側で見てやれず、口惜しいと、思っておる」

「本当に・・・?」

「ああ、もちろんじゃ。なぜなら・・・私は、そなたを」

 

 

私は、ただ。

たった一つの言葉が、欲しかった。

 

 

「愛しておる」

 

 

この世界では、誰にも言われたことが無い言葉だから。

 

 

 

 

 

Side エヴァンジェリン

 

泣き声が、聞こえる。

 

 

「イイノカヨ、トメナクテ」

「止めてどうする・・・そこまで野暮じゃない」

「その割には、不機嫌そうじゃの?」

 

 

選手用の座席に腰掛けながら、そんな会話をする。

今の所、周囲の人間は全てアリアの『ゲマインデ』の中だ。

当然、私はそんな物にかかる程抜けていない。

 

 

それにしても・・・良く似た母子だ。

母親は、「女王」と言う役職に従い、義務を果たして国民を救った。

その代わり、自身は処刑されることになった。

娘は娘で、「教師」と言う役職に従い、義務を果たして生徒を救おうとしている。

いつも狂ったように仕事を抱え、京都では文字通り身体を張って。

 

 

「不機嫌そうに見えるか?」

「ミエルナ」

「むしろそれを不機嫌と呼ばなくば、この世の全ては喜びであろうよ」

 

 

うるさい人形共だ・・・だが、外れてもいない。

なぜなら・・・。

 

 

「・・・あいつは今でも、一人なんだそうだ」

 

 

先ほど、アリアはそう言った。

なぜ、自分は今でも一人なのかと。

 

 

「ふふふ・・・どうも、教育が足りなかったらしい」

「オオ、ワルイカオダ」

「西洋の鬼の趣味は、よくわからんの。しかし・・・母者か」

 

 

晴明が、どこか懐かしむように頷いた。

伝承によれば、こいつの母親は白狐だと言うが・・・。

 

 

「お前でも、母親が恋しかったりするのか?」

「無論じゃ。幾年過ぎようとも、母は母。子は子。この輪廻は永久に変わらぬ」

「ゴシュジンハドウダヨ」

「私か? 私は・・・」

 

 

目を閉じれば、今でも思い出せる。

600年も以前のことだが・・・記憶の中に、しっかりと刻まれている。

両親の温もりを。

 

 

「・・・忘れたな」

「ソウカヨ」

 

 

確かに、親と子の関係はいつまでも変わらないだろう。

だが、いつか子は親になる。

自分の親から受けた愛を、自分の子に注ぐ時が。

それは・・・。

 

 

「アリカ様!」

 

 

その時、聞き慣れぬ声が響いた。

誰かと思えば、それは、あのクルト・ゲーデルだった。

元老院議員。

その手には、一本の野太刀。リングに駆け上がって行く。

 

 

それを見て、まずチャチャゼロが反応したが・・・それを、手で制した。

 

 

「ナンダヨ」

「待て・・・様子がおかしい」

 

 

クルトは、息を切らせながらリングの中を進むと、立ち尽くすようにして、止まった。

 

 

 

 

 

Side クルト

 

叩き斬ってやろうと思った。

このような所で、アーティファクトの記録とは言え、アリカ様のお姿を晒したバカを。

おまけに、元老院が必死で隠匿している「ネギ・アリア兄妹の母=アリカ様」の事実を、暴露してくれやがりましたからね。

どう言うわけか、会場内の人間は大方眠っていますが・・・。

 

 

斬り殺しても、特に問題無いと判断しました。

むしろ斬り殺さない方が、世の中を害する気がしてなりませんからね。

 

 

「アリカ様・・・」

 

 

けれど、当時と変わらないアリカ様のお姿を見ると、斬れなかった。

例え幻でも・・・彼女だけは。あのお方だけは、斬れるはずがなかったのです。

 

 

「主は・・・」

 

 

アリカ様は、ご自分の娘を胸に抱いたまま、顔だけをこちらに向けてきました。

座っておられるからかもしれませんが・・・昔は、見上げることしかできなかったアリカ様。

今は、見下ろすことができてしまう。

 

 

「・・・お久しぶりです、アリカさ「誰じゃ?」・・・・・・クルトです、アリカ様」

「クルト・・・クルト・ゲーデルか? あの?」

「左様です、アリカ様」

「ほぉ・・・何と言うか、ヒネ・・・立派になったの」

「あ、ありがとうございます」

 

 

こほん、と咳払いをし、眼鏡を押し上げる。

 

 

「アリカ様・・・私は、あな「むーっ!」た・・・?」

「むぐっ・・・ぷはっ! ちょ、苦しいです・・・!」

「お、おお、すまぬアリア! 思わず胸に抱き込んでしまった・・・い、息は大丈夫か? 喉は・・・」

「だ、大丈夫ですから・・・!」

 

 

・・・非常に、心苦しくはあるのですが。

私としても、母子の再会を邪魔したくはないのですが・・・。

 

 

「・・・私の話は、聞いていただけ無いのでしょうか?」

「い、いや、聞くぞ? 何じゃ、申してみよ。大戦では主にも世話になったからの」

「そんな、私は・・・」

 

 

私は、アリカ様を守れなかった。

いや、今でも守れていません。未だにアリカ様は『災厄の女王』であり、名誉を回復できていない。

元老院は何も変わらず、不正と虚偽に満ち溢れている。

 

 

私は結局、アリカ様のために何もできていないのです。

だが、今の私は昔とは違います。

ナギに訴えることしかできなかった、あの頃とは。

 

 

「・・・私は今、元老院議員の役職にあります」

「元老院に? そうか・・・それは、出世したの。それで・・・その元老院議員になった主が、私に何を話すと言うのじゃ?」

「あ・・・」

 

 

庇うように娘を肩に抱き、アリカ様は私を見た。

そのお姿は、女王として立っていたあの時と同じ、凛とした空気を纏いつつも・・・。

 

 

母親のような強さが、そこにあった。

 

 

「も・・・」

 

 

ざっ、とその場に膝をつき、刀を捧げ持つ。

臣下の礼。

この世界で唯一、私が剣を捧げるお方。

 

 

「申し訳ありません、アリカ様・・・!」

「・・・何を謝る、クルト」

「私は、貴女様をお守りすることも、お救い申し上げることもできなかった・・・!」

 

 

アリカ様処刑の日から今まで、それを考えない日は無かった。

あの時の私に、今ほどの力があれば。

今の私があの場にいれば、アリカ様を救える自信が、ある。

今の私なら。

 

 

ナギなどに頼らずとも、きっと。

 

 

「そしてあまつさえ、貴女様の名誉を未だ回復することも叶わず、私は・・・!」

 

 

アリカ様が『災厄の女王』と呼ばれる度に、胸が張り裂けそうでした。

そして、世界を変えられない自分が、もどかしくも情けなく。

私は。

 

 

「私は・・・!」

「もう良い、クルト」

「・・・!」

 

 

顔を上げると、目の前にアリカ様が立っておられました。

ああ・・・かつて見上げたままのお姿。

私は、このお方のために。

 

 

「クルト・・・主の私に対する忠義と想い、有難く思う」

「アリカ様・・・」

「だが、クルト。私の名誉を回復しようなどと思わずとも、良いのじゃ」

 

 

アリカ様は、かつて私が憧れた優しい笑顔で、そう言った。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

「私のことなどよりも、民達のことを頼む。彼らは、何の罪も無いのじゃから」

「そ・・・それは当然! 何があろうとも同胞を守り、いずれは・・・いえ、それよりも、アリカ様にも罪は無いのです。ならば」

「くどい!」

 

 

アリカさんの背中を、私はただ、見つめていました。

その姿は、とても力強くて、引き込まれてしまいそうな何かがありました。

あれが・・・この世界の、いえ、世界など関係無い・・・。

 

 

あれが、私の母親か。

 

 

「主は、大戦から今まで、何を学んできた! 為政者たる者、常に下々に気を配り、規範として生きねばならん。己が身の保身は、しかるべき後に行う物! それも、民が貧苦に喘いでいる間は特にじゃ」

「しかし、アリカ様・・・!」

「もし、それでも主が私のために、何かをしたいと申してくれるのであれば・・・」

 

 

アリカさんは肩越しに私を見つめると、再びクルト議員を見て。

 

 

「私の子らを頼む。私の代わりに、守ってやってはくれんか?」

「それは・・・アリカ様」

「ちょ・・・」

「だが、甘やかせとは言わん。主の目から見て価値無しと断ずれば・・・捨て置いて構わん」

 

 

命令じゃ。

そう言って、アリカさんはクルト議員から目を離し、私の方へ。

クルト議員はまだ何か言いかけていましたが・・・表情を引き締めると、刀を捧げ。

 

 

仰せのままに(イエス・ユア・)、女王陛下(マジェスティ)・・・!」

 

 

震えるような声で、そう言いました。

・・・あの人にとって、アリカさんはきっと、特別な人なのでしょう。

 

 

「・・・どうやら、時間のようじゃの。できればネギとも話したかったのじゃが」

「え・・・」

 

 

見れば、アリカさんの姿が、淡く輝き始めていました。

右眼の魔眼で視ても、確かに、『イノチノシヘン』の再生効果が切れてきているのがわかりました。

そんな、まだ。

まだ、私は。

 

 

「アリア」

「あ、の・・・」

「このようなことを言えた義理ではないのかもしれぬが・・・元気に育つのじゃぞ。幸せにの」

 

 

目を細める、その微笑み方。

 

 

「食事は3食、栄養に気を配るのじゃぞ。できれば、好き嫌いは少ない方が良い。あと、眠る時には温かくしての。それから、手洗いと歯磨きはちゃんとするのじゃぞ。服装にも気を配って・・・無理をして、病気になどならぬようにな、それから・・・」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 

そんな、急にいろいろと言わないで。

母親みたいなことを、延々と。

 

 

「か、勝手過ぎます! さっきの話もですけど、私の意見も聞かずに・・・!」

「勝手・・・か、そうじゃろうな。じゃがな、仕方が無いのじゃ、アリア。これが母親と言う生き物なのじゃから」

「は・・・」

「子供がどれ程嫌がろうとも、例え普段側におらず、時間を共にしていなくとも。子供のために、勝手な世話をいろいろと焼いてしまうのが、母親なのじゃ。私の母もそうじゃった」

「い、今さら・・・」

「今さら、でもじゃ」

 

 

アリカさんは、しゃがみ込んで私と目線を合わせると、静かに微笑みました。

どこまでも優しくて・・・どこか、痛そうな、辛そうな、そんな顔。

 

 

「すまぬの・・・私のせいで、迷惑をかけてしまって」

「あ、いえ、それは、でも」

「じゃが、心残りはあっても、後悔はしておらぬ・・・反省すべき点も、多々あるが」

 

 

そ・・・と、私の両肩に触れて、アリカさんが言います。

正面から、まっすぐに視線を交わし合います。

 

 

「主も、後悔だけはせぬように生きよ。私が主に望むのは・・・それだけじゃ」

「アリカさ・・・」

「そなたは、そなたで在り続ければ良い」

 

 

そう言うと、アリカさんは、私から離れました。

反射的に、手を伸ばしてしまいます。

アリカさんも、手を伸ばして・・・私の手に触れる直前で、手を引きました。

 

 

待って・・・まだ。

まだ、私は貴女に、言っていないことがあるんです。

私は、まだ、貴女を。

 

 

光が。

 

 

 

―――――かあさま。

 

 

 

 

 

Side 茶々丸

 

泣き声が、聞こえます。

 

 

「・・・まぁ、良くある話やろ」

「そうなのですか?」

「せや・・・女王様も庶民も、一緒や。大して変わらん」

 

 

月詠さんを膝枕しながら、千草さんがそう言いました。

ただ、先ほどからこちらに背を向けて、どのような表情をしているのかは見えません。

 

 

『・・・茶々丸』

「マスター」

 

 

マスターからの念話です。

 

 

『先ほどのやり取りの映像と音声を、全て削除しろ。もちろん、会場内に設置されているカメラなどからもだ』

「承知いたしました」

『頼むぞ』

 

 

目の前の端末を操作し、さっそくマスターの命令の通りに。

アリカさんが登場してからの全ての記録を削除します。

この会場内の全ての電子機器は、私の統制下にあります。映像処理程度、造作もありません。

 

 

『問題は、肉眼の方だな・・・ほとんどは、アリアの魔法に引っかかっているだろうが』

「魔法発動の直前に、3人の人間が会場からの離脱に成功しているようです」

『ち・・・面倒だな。足取りを追えるか?』

「現在検索・捜索中です」

『頼む・・・それにしても、アルめ。余計なことを・・・』

 

 

マスターとの念話が切れました。

アリア先生の準決勝の目撃者を消すおつもりなのでしょうか。

しかし、相手の足取りが掴めないことには、対処ができません。

 

 

責任、重大です。

 

 

ちら・・・と、リングを見てみると、クウネル選手を中心にして、かなり揉めているようです。

アリア先生も加わっているようですが・・・。

 

 

・・・アリア先生。

 

 

 

 

 

Side ???

 

・・・確実な情報を掴んだ。

クルト議員に張り付いてきた甲斐があったと言う物だ。

 

 

ネギ・スプリングフィールドの情報は掴めなかった物の、もう一人のガキの情報は仕入れた。

この情報を、本国の政治屋共に売れば、高く売れるだろうよ。

何せ、あの『災厄の女王』の情報だ。

 

 

こりゃ、政変が起こるかもしれねぇな。

もしかしたら、俺も議員様になれるかも・・・。

 

 

「ま、アリア・スプリングフィールドとか言うガキにゃ悪いが・・・」

 

 

と言うか、なんだあの会場、逃げ出す直前に妙な魔力を感じたんだが。

何人か捕まっちまったみたいだ、間抜け共め・・・。

 

 

「へぇ・・・どう悪いのか、気になるね」

「あ?」

 

 

声をかけられて、立ち止まる。

周りを見ても、誰もいねぇ。

気のせいか・・・と思って前を見れば、いた。

 

 

白い髪の、ガキだった。

 

 

「んだ」

 

 

てめぇ、と言葉を続ける前に、そのガキが、目の前に。

俺の目に手をかざして、何か。

 

 

「『永久石化(アイオーニオン・ペトローシス)』」

 

 

 

 

 

Side フェイト

 

・・・これで、3人目か。

ごそ・・・と、会場から出てきた男の懐から、情報の入ったディスクを抜き取りつつ、そんなことを考えた。

 

 

ディスクの中身は、やはり『災厄の女王』に関する情報。

いや、正確に言えば、スプリングフィールド兄妹の母親の情報だ。

どこに持っていくつもりだったかは知らないけれど・・・。

 

 

バキンッ、と、ディスクを砕く。

 

 

「悪いね。彼女は僕が勧誘中なんだ」

 

 

石像と化した男に、そう告げる。

勝手に彼女を連れて行かれると、とても困る。

ちなみに、無差別に出てきた人間を石化しているわけじゃない。

きちんとリストと照らして顔を確認した上で、石化している。

昨日石化した男の一人に話を聞いた時、クルト・ゲーデル以外の意思で動いている彼の部下のリストを貰った。

 

 

それにしても、ここで『災厄の女王』の情報を漏らすとは・・・アルビレオ・イマは何を考えている?

まったく、アリアは面倒な連中と良く関わるね。

この調子じゃ、将来がとても心配だ。

 

 

不意に、武道会会場を覆っていた魔力が、霧散していくのを感じた。

どうやら、アリアが魔法を解いたらしいね。

 

 

「・・・アリア」

 

 

どうしてだろう、今すぐに彼女の所に行かなくてはならない気がする。

でも、少し時間を置いた方が良いような気もする。

 

 

それに、やらなくてはならない事もある。

手元のリストに目を落とす・・・まだ、半分程残っている。

どれもこれも、元老院の政治家の誰かと繋がっている。

中には、僕ら「完全なる世界(コズモエンテレケイア)」と繋がりのある人間もいるから、そこには手を出せないけれど。

 

 

そうでない人間は、ちょうど良い。

ここで退場してもらおう。

僕のためにも、彼女のためにも。

 

 

「・・・こう言うのは、ポイントにならないんだけどね」

 

 

まさか、言うわけにもいかないからね。

まぁ、仕方が無い。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

落ち着くのに、それ程時間はかかりませんでした。

1分くらいでしょうか?

 

 

「・・・何を見ているのですか」

「いえ、別に」

 

 

ぐし・・・と、目元を擦りながら睨んでも、アルビレオさんは気にした様子もありません。

残り時間、どれくらいですか。

ちょっとあの人、殴ります。

その時。

 

 

ザンッ・・・と、アルビレオさんが、身体を真っ二つにされました。

右肩から真っ直ぐ、斬られたようです。これは・・・。

 

 

「おや・・・?」

「斬魔剣・弐の太刀」

 

 

ゆらり・・・と、クルト議員が野太刀を構えていました。

 

 

「神鳴流は人を護り、魔を狩る退魔の剣。斬るモノの選択など、造作もありません」

「なるほど、魔力で構成された私では、敵わないと言うわけですね・・・」

 

 

アルビレオさんが私から離れるのと同時に、クルト議員が私とアルビレオさんの間に入ります。

私を背に、庇うような立ち位置。

・・・あれ?

 

 

「ぬけぬけと・・・自分がやったことを、理解しているのですか? 揉み消しにどれだけの労力がかかると思っている・・・」

「うふふ、クルト君も大きくなりましたね」

「貴様・・・」

「えーと、クルト議員。申し訳ないのですけど、下がっててもらえますか・・・?」

 

 

おそるおそる声をかけると、クルト議員は身体全体で私の方を向きました。

胸に手を当て、やたらと綺麗な笑顔で。

 

 

「これはアリア様。どうぞ議員などと呼ばず・・・フレンドリーにお呼びください」

「いや、それもどうかと・・・と言うか、様付けとかやめてください」

「ふふふ、アリカ様に対する昔のクルト君を見ているようですねぇ」

「貴様は、黙っていろ」

 

 

・・・なんだか、凄くややこしいのですけど。

でも、議員呼びがダメとなると・・・なんでしょう?

さん付け? 何かしっくりこないような。

この人は、アリカさんに頼まれたから私に好意的なのですよね、となると・・・。

 

 

「・・・クルトおじ様?」

「・・・・・・っ!?」

 

 

今、ズキューン・・・とか言う音が聞こえたような。

気のせいですかね。

まぁ、今はそれよりも・・・と、衝撃を受けて固まっているクルトさんの横をすり抜けて、身体が半分切れているアルビレオさんの前へ。

 

 

「アルビレオさん」

「はい、なんでしょう?」

「パクティオーカード、見せて貰っても良いですか?」

「・・・一応言っておきますが、再生はもう・・・」

「わかっています」

 

 

と言うか・・・。

貴方に、二度と再生させるつもりはありません。

 

 

『ゲマインデ』を解除。

睡眠状態解除を90秒後に設定・・・。

続いて、バララ・・・と、『千の魔法』のページがめくられていきます。

 

 

「どうぞ」

「ええ、どうも・・・」

 

 

そ・・・と、彼のパクティオーカードに手を伸ばして。

発動、『千の魔法』№62。

 

 

「『悲しき玩具(ラグドール)』」

 

 

笑みを浮かべながら、一つ一つの発音をしっかりとしつつ、宣言します。

瞬間、アルビレオさんのパクティオーカードから、全ての力が失われました。

 

 

「な・・・?」

「あら・・・素敵なカードですね、アルビレオさん?」

 

 

悲しき玩具(ラグドール)

自身に触れた存在を有機物、無機物問わずに玩具へと変化させることができます。

この場合、パクティオーカードをただの「玩具のカード」に変化させたわけです。

身体は幻影でも・・・カードは本物。または本物と繋がっています。

それでも結構、構成の書き換えが面倒な魔法ですが・・・。

 

 

私には、『複写眼(アルファ・スティグマ)』と言う最大の武器があります。

そして、もう一つ。

ぐっ・・・と、右拳に力を入れます。

 

 

その右拳を覆うのは、グローブ型概念武装、『王者の終焉』。

表裏問わず、自他共に認められる強者、特に『王者』『英雄』の称号を冠せられた者に対して絶対的な天敵になりうる魔法具です。

もう何と言うか、この人を殴るためにできたんじゃないかと思うような魔法具です。

ただし、殴る力を増すのではなく、私に有利な状況を作ってくれるのがこの魔法具の真髄。

 

 

つまり、今です。

当然、『殲滅眼(イーノ・ドゥーエ)』の力も乗せて。

さらに、『闘(ファイト)』『力(パワー)』『雷(サンダー)』・・・『消(イレイズ)』。

 

 

「お、おや・・・? これはかなり、困ったことに・・・」

「申し訳ありませんが・・・」

 

 

コツ、と足音を立てて、アルビレオさんを見上げます。

すでに、あらゆる状況が私の味方。

 

 

「貴方にとって、ここから先は一方通行・・・通行不可能地点です」

 

 

関係の無い、物語です。

 

 

「大人しく尻尾を巻いて、無様に元の居場所へ、引き返しなさい」

 

 

それでは、ごきげんよう。

そう呟いて、右拳を思い切り引き・・・前へ!

 

 

「・・・『雷光電撃(ライトニングボルト)』!!」

 

 

雷撃を纏った、渾身の右ストレート。

がすんっ・・・と、拳に伝わる、確実な手応え。

幻影体を完膚無きにまで消滅させるその一撃は、アルビレオさんの顔面を捉え・・・。

 

 

吹き飛ばしました。

 

 

ドバンッ・・・と、激しい水柱が上がり、アルビレオさんの姿が消えました。

そのまま、浮かび上がってきません。

・・・本当に消えたのかはわかりませんが。

 

 

アーティファクトを封じた以上、彼はただの「かなり強い魔法使い」です。

 

 

『んぁ? ・・・あれ、何か今凄く怖い夢見てたような・・・って、あれ!? クウネル選手は!?』

 

 

まず、朝倉さんが目覚めました。

他の観客も、随時目覚めて来るでしょう。

 

 

・・・・・・?

何か、誰かに見られているような感覚が・・・?

 

 

「お見事です、アリア様」

「・・・そのアリア様って言うの、やめていただけません?」

 

 

復活してきたらしいクルトおじ様が、どこからともなく取り出したタオルを、とても素敵な笑顔で差し出してきました。

一応、受け取りますけど・・・断ると後が怖いですし。

 

 

「普通に、アリアで良いですよ・・・私の方が年下なわけですし」

「では、とりあえずアリア君とお呼びしましょう」

「・・・じゃあ、それでお願いします」

仰せのままに(イエス・ユア・)王女殿下(ハイネス)

「それもやめてください・・・」

 

 

アリカさん、やっぱりこの人はちょっと・・・。

かなり、扱いに困る気がしてなりません。

はぁ・・・と、溜息を吐きます。

 

 

シンシア姉様、若いお母様に会いましたが、特別私は変わりません。

 

 

 

アリアは、これまで通りに生きていきます。

 

 

 

 

 

<おまけ?>

 

「ふぅ、本体の魔法は凶悪ですぅ」

 

 

アリアの『迷(メイズ)』が解除されると、スタンドアローンであるが故にその術に嵌っていたアリアの式神「ちびアリア」も、その中から出てこられた。

彼女としても、アリアの魔法は怖いらしかった。

 

 

「もう5分待っても変化がなければ、ちびアリア49の隠し技を見せてしまう所でしたぁ」

 

 

49も隠し技があるのかはともかく、彼女はようやく、本体のいる会場に辿り着いた。

そして・・・。

 

 

「なかなか、遠い道のりでしたぁ」

「そーですねー」

「ですですぅ・・・およよ? なんともう一人の自分から返答が」

「違いますよー」

 

 

ちびアリアの隣には、いつの間にかもう一人、「ちび」が存在していた。

ちびアリアが白髪であるのに対し、その「ちび」は、黒髪だった。

名を、「ちびせつな」。

 

 

「こんにちわっ♪」

「おおぅ、よもやこんな所で同類に出会うとは・・・」

 

 

その時、ちびアリアは思った。

 

 

(き、キャラが被ってるですぅ・・・!)

 

 

「むむむ、ですぅ・・・!」

「・・・?」

 

 

ニコニコと向かい合う、二人の「ちび」。

これが、世界を変える出会いになるのかは・・・正直、まだわからない。

 

 

続く・・・の、だろうか。

 




エヴァ:
エヴァンジェリンだ。皆が忙しいようなので私がやる。
・・・べ、別に私だけが暇なわけじゃないからな!
ち・・・今回起こったことをまとめると、2つだな。
アリアが実母に会った。
で、アルが殴り飛ばされた、以上だ。
あとは、クルトとか言う元老院議員がアリアにくっついていたりとかだな。
鬱陶しいことこの上ない。


アリアが今回使った新規魔法・魔法具はこんな所だ。
王者の終焉:Big Mouth様の提供だそうだ。
悲しき玩具:元ネタは「レジンキャストミルク」。提供は水色様。
ゲマインデ:元ネタは「灼眼のシャナ」、提供は司書様だな。
一応、礼を言っておくことにする。
うちのアリアが世話になったな。


エヴァ:
次回は、私がアリアと「遊んで」やる回だな。
武道会も終わりか・・・さて、そろそろ超に地獄を見せてやらねばな。
では、機会があればまた会おう。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。