魔法先生ネギま~とある妹の転生物語~   作:竜華零

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第65話「麻帆良祭二日目・茶会」

Side しずな

 

麻帆良祭には、本当にたくさんの人が来るの。

土日だからって言うのも、あるのかしらね。

その中には、昔の教え子達もいたりするの。

たとえば・・・。

 

 

「うっす、新田先生、お久しぶりッス!」

「相変わらずのダンディぶりッスね、新田先生!」

「おお、木村君に金田君、元気にしておったかね?」

 

 

とかね。

適当に歩いているだけで、新田先生は元教え子に囲まれてしまう。

カフェで休憩していれば、いつの間にか、新田先生の知り合いで座席が埋まってしまう。

こういう時、同じ教師としては、少し嫉妬してしまうわね。

 

 

「うっす、今年も持ってきたッス。最新号の『グレート・ティーチャー・新田』・・・略してGTN!」

「おお、毎年ありがとう」

「うっす!」

「ふん・・・バカは何年経ってもバカだな」

「んだとぉ加藤! てめー公務員だからって舐めてんじゃねぇぞコラァ!」

「ちょっと、もう、やめなさいよ! 102期の子はこれだから・・・」

「「96期卒業の年増は黙って(ろ)(いてもらいたい)」」

「・・・アアン?」

 

 

年齢はバラバラだけど、皆、在校生時代はひと癖もふた癖もあった子達なのは同じ。

今では、立派な社会人だけど・・・ここに来る時は、学生時代に戻った気分になるみたい。

 

 

「大変だー! 佐藤さんが久々に特攻(ぶっこみ)モードになったぞー!」

「なんだってぇ! おい旦那さん連れて来い、あの人しか止められねー!」

「ダメよ。さっきトイレに行っちゃったもの!」

「マジか!?」

「「うぎゃあああああああああ!?」」

「ああ、木村君と加藤君が言葉に出来ない状態に!?」

 

 

ちなみに、木村君達が毎年持ってくるGTNって言う冊子は、新田先生を恩師とする卒業生達が新田先生の教師としての素晴らしさや教育論を記事にした配布誌のことよ。

毎年、学園祭で密かに、そして表だって配布されているの。

 

 

「あら・・・?」

 

 

ノートパソコンで学園祭に関するネット情報をチェックしていたら、気になる物があった。

まほら武道会って言うイベントらしいんだけど、準優勝者の名前が・・・。

 

 

「あれー? しずな先生、何見てるんですか?」

「ああ、横田さん。少し気になって・・・」

「あ、この子可愛いー、先生のお子さんですか?」

「あらあら、うふふ・・・このくらいの年の子供がいるように見えちゃうのかしらー」

「す、すみません」

 

 

アリア先生の写真とプロフィールが、事細かに載っている。

これは、アリア先生が許可したのかしら?

そんなことをする子には、見えないのだけど・・・。

 

 

「キミ達、いい加減にせんか!」

「うはっ・・・出たよ鬼の新田!」

「久しぶり過ぎて、恐怖よりも先に懐かしさが来るな!」

「全員、正座――――――――っ!!」

「「「「キタ――――――――っ!!」」」」

 

 

新田先生の方は、変わらず賑やかね。

私は、カタカタと・・・ネット検索を続ける。

 

 

「この子、しずな先生の知り合いですか?」

「ええ、同僚よ」

「へー・・・子供ですよ!?」

「あら、よく気の利く子で、仕事も良く出来るのよ?」

 

 

哀しいくらいに、仕事ができてしまう子供。

 

 

「う・・・!」

「ど、どうしたのかね?」

「・・・大変だ、妊娠中の大谷さん(旧姓・轟さん)が、産気づいたぞ!」

「た、大変!」

「つーか、そんな身体でなんでこんな騒々しい所に!?」

「ここは、小児科医の私に任せろ!」

「おお、古河! どうすれば良いんだ!?」

「まずは・・・・・・救急車を呼べ!」

「「「医者関係ねーじゃねーか!」」」

「と、とにかく救急車を呼びなさい、早く!」

 

 

・・・調べている暇は、なさそうね。

後ろ髪を引かれる思いで、私はノートパソコンの電源を落とした。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

茶道は、姿勢が大事だと言われます。

両膝を拳一つ分あけ、足は親指が重なる程度に踵を開いて、腰を乗せて座ります。

両肘を拳を縦にした形が入る程度に軽く張り、背筋を真っ直ぐに伸ばし、顎を少し引くようにして、顔は真っ直ぐ前方を見て正座。

 

 

「・・・お先に」

「あ、はいー」

「・・・いただきます」

「はい、どうぞ」

 

 

エヴァさんの次にお茶菓子をいただきます。

次のさよさんに次礼をし、懐紙を出して膝前に菓子器を置きます。

菓子器に添えられた箸を右手で上から取り、左手で下から添えるように持ち、さらに右手に持ち替え、左手を菓子器に添えて、主菓子を懐紙に取ります。

その後、箸先の汚れを懐紙の角で清めた上で箸を菓子器に戻し、さよさんに菓子器を送ります。

懐紙ごとお菓子を持ち上げて、楊枝や菓子切りを使って、一口ずつ頂きます。

 

 

・・・「苺の魔大福」。

 

 

茶々丸さんが、薄茶を点ててくれました。

茶々丸さんに一礼をした後、もう一度エヴァさんとさよさんに断った上で、自分の膝正面に置きます。

 

 

「・・・お点前、いただきます」

「・・・はい」

 

 

茶碗を右手で取り、左手に乗せ、右手を添えて軽く押し、時計回りに二度回して向きを変えます。

一口、二口、三口・・・そして、すっ・・・と、丁寧に飲み切ります。

飲み口を軽く右手の指先で拭い、その指を懐の懐紙で拭います。

飲み終えた茶碗を反時計回りに二度回し、膝前に置きます。

 

 

そして、茶碗を拝見させていただく段になった所で・・・。

 

 

「も、もう、ダメだ・・・ぞ・・・」

「わ、わ、すーちゃん今私の方に倒れちゃダメ・・・」

「・・・ど~ん」

「ちょ、今ワザと・・・ひゃあぁ~あ、足がひゃうっ!?」

 

 

足が痺れたスクナさんが、同じく足が痺れていたらしいさよさんの膝の上に倒れ込みました。

でもたぶん、半分くらい演技です。だって横に倒れる必要性がありませんもの。

 

 

「ち・・・バカ鬼め、作法と言う物を心得ておらんわ」

「まぁ、スクナさんの時代に茶道なんてなかったでしょうから」

 

 

日本にお茶の概念が入ってきたのが西暦800年頃。

その頃には、スクナさんは封印されていましたしね。

 

 

「この身体では、茶が嗜めんのぅ・・・」

「チャナンテワカンノカヨ?」

「平安の人間じゃぞ我は。鎌倉も室町の茶も嗜んでおる。薬にもなるしの」

 

 

人形組は、隅の方で談笑中。

一応、きちんと正座しているのがなんとも言えません。

晴明さん、やけに決まってますね・・・見た目は真紅ですけど。

 

 

「それで・・・これから、どうするんだ?」

「そうですね、とりあえず野外ステージの管理のお仕事がありますね」

「いや、それじゃない」

 

 

うん?

これからの予定のことでは無いのですか。

するとエヴァさんは、口にするのも嫌そうな顔で。

 

 

「超のことだ」

 

 

そう、言いました。

 

 

 

 

 

Side 茶々丸

 

「超さん、ですか・・・」

 

 

ふむ・・・と、思案顔のアリア先生。

あれから少し眠り、アリア先生も回復されたようです。

 

 

アリア先生は、薄い青色の着物を身に付けています。

雪輪の優しい柄行の小紋。

気温が高くなってきた今日、涼しげな印象を与えてくれます。

 

 

「超さんは、今の所待ちの手ですかね。茶々丸さんも居場所を知らないようですし」

「はい、高畑先生との戦闘後、地下に潜るとの連絡を受けましたが・・・今、どこにいるかは」

「ち・・・」

「それに、たぶん私の知っている通りなら、今夜あたり接触してくるんじゃないかと思います」

 

 

アリア先生の「知識」には、超の計画の大筋が把握されていました。

すなわち、世界樹の発光現象がピークを迎える明日、学園祭三日目に行動を起こすこと。

魔力溜まりを利用した、大規模強制認識魔法を発動すること。

 

 

そしてそのための対策を、アリア先生とマスターは進めています。

ただ・・・。

 

 

「とても手が足りませんので、超さんの計画自体を止めることができません」

「まぁ、そうだな。流石にこの街で詠春の戦力を使うわけにもいかんしな」

 

 

超は、その戦力不足をハカセの協力の下、ロボ軍団で補っています。

しかしアリア先生には、そこまでの戦力は用意できません。

学園側や、あるいは他の勢力を説得する材料が無いからです。

電子世界では「ぼかろ」が頼みの綱ですが、きちんと仕事を果たしているでしょうか・・・。

 

 

さらに問題なのは、超もアリア先生や学園側の妨害工作を予測している点です。

何かしらの対抗策を講じる可能性が高いのですが、私からマスターやアリア先生に漏れるのを嫌ってか、重要機密にはアクセスできません。

私の中にあるブラックボックスも、未だ開くことができません。

 

 

「そう言えば、茶々丸さんは手伝わなくて良いんですか? 超さんの」

「おお、そう言えばそうだな・・・別に手伝うなとは言わん、お前の好きにするが良い」

 

 

思い出したように、アリア先生とマスターがそう言いました。

 

 

「ただ、もしも茶々丸さんに何かあった時は、『銀河爆砕(ギャラクシアン・エクスプロージョン)』叩き込むって超さんに言っておいてください」

「なんだその技名・・・だがそうだな、壊すなと伝えろ。あと何も無くとも殺すとな」

「2人とも、言ってることがメチャクチャです・・・ひあっ、ちょ、すーちゃん足突かないで・・・」

「ワガママナダケダロ・・・テカ、ナニヤッテンダオマエラ」

 

 

さよさんと姉さんが、それぞれの感想を述べます。

ただ、さよさんは痺れた足をスクナさんに突かれて、悶えていますが。

 

 

「・・・呪殺して良いかの、あの1人と1柱」

「構わんぞ晴明、やってしまえ」

「ダメですよエヴァさん、馬に蹴られて死んじゃいますよ?」

「私は不死だ、蹴られても死なん」

「ソウイウリクツカ・・・?」

 

 

コト・・・と、茶器を置いて、私は空を見上げます。

超とハカセは、私の生みの親です。マスターやアリア先生達に出会わせてくれたことを、感謝しています。

そして超は、自分の計画はアリア先生を救うことに繋がると、言いました。

 

 

私には、その真意を探ることができません。

ブラックボックスは、未だ開かず・・・。

 

 

「茶々丸さん?」

 

 

アリア先生の声に、私は。

ただ静かに、次のお茶を点て始めました。

 

 

 

 

 

Side クルト

 

さぁ、どうしてやりましょうか。

実の所私は、「英雄の子供」を適当に丸め込んで仲間に引き入れよう・・・とか、それなりに悪いことを考えていたのですが。

 

 

幻とは言え、アリカ様に命じられた以上、私にはそれを守る義務があります。

そう言うわけで今、アリア様やその兄、ネギ君を中心とする情報を集めた書類を捌いているのですが。

 

 

「何と言うか、本国でデスクワークだけしていると、わからないこともある物ですね。本当」

 

 

麻帆良側にあてがわれた部屋の中で―――もちろん、盗聴、覗き見対策は万全―――部下が集めてきた大量の書類を前にしながら、そんなことを呟きます。

 

 

麻帆良から本国に上げられてきている報告では、アリア様は魔法の使えない役立たず。

兄のネギ君は、マギ・ステルマギを目指す将来有望な少年・・・とされていますが。

事実はどうも、違うようですね。

 

 

「まぁ、その事実に気付ける人間は少ないですが・・・」

 

 

どうも、ネギ君に関する報告は誇張して書かれている気がしますね。

正直、関西呪術協会へ親書を届けた以外の実績がありません。

大方「素直で純真」と言うネギ君を、自分達にとって都合の良い英雄に仕立て上げたかったのでしょう。

似たようなことを私も考えていたので、人のことは言えませんが。

 

 

しかも、関西呪術協会とメルディアナから融通してもらった「明石レポート」、そして一般教員から学園長に出されたと言う「新田メモ」によると・・・。

このネギ君、教員としても人間としても未熟と判断せざるを得ません。

特に旧世界での魔法使いの行動規則を、公然と無視する行動が目立ちます。

 

 

そして、何よりも。

 

 

「紅き翼と相性が良さそうですねぇ・・・」

 

 

いえ、別に他意はありませんよ。

ナギに憧れていたり、タカミチに庇われていたり、アルビレオ・イマに師事していたりすることなど、人物評価に欠片の影響も与えませんとも。

 

 

ええ、私は公明正大な男です。ただ好き嫌いが激しいだけで。

 

 

「それに対して・・・」

 

 

アリア様は、なかなか面白い経歴をお持ちなようだ。

メルディアナでの卒業成績は、一部を覗いて兄に及ばず。

しかしながら、その存在感は旧世界の各勢力を陰ながら動かせてしまう程。

特に、関西呪術協会との繋がりが深い。

 

 

関西の長の娘とその護衛の保護権の一部を任されていると言うその実績。

しかも、そこに至るまでのプロセス・・・。

関西の騒乱における行動。その後の麻帆良での悪魔侵入事件時の行動。

ならびに、麻帆良での教員としての活動。

 

 

私は、理解する。

 

 

「確かに、似ている・・・しかし、違う」

 

 

アリア様は、アリカ様では無い。

基本的で、そしてだからこそ理解することが難しいそれを、私は理解する。

アリア様は、アリカ様でも無ければ、アリカ様に「なれる」わけでも無いと。

 

 

王族として、「周囲の求める自分」を希求したアリカ様。

そのアリカ様とアリア様は・・・決定的なまでに、何かが違うのです。

 

 

「ここを間違えると、痛い目を見てしまいそうですからね」

 

 

何せ、あの<闇の福音>の庇護下にあるのだから。

虚弱体質の私など、目を付けられただけで消し飛ばされてしまいます。

 

 

まぁ、おかげで感動的なストーリーの噂を流すことができるのですし、良しとしますか。

アリカ様の娘が、<闇の福音>の凍てついた心を溶かすストーリー。

親を知らず、蔑まれて育った一人の少女のストーリー。

 

 

「・・・皆、好きでしょうからね。悲劇のヒロイン、と言う物が」

 

 

関西やメルディアナが密かに交渉していると言う、アリア様のアリアドネー行き。

これを利用しない手は無いでしょう。

ナギに息子と娘がいることは、すでに知れ渡っています。

オスティア難民の中には、アリカ様生存を信じている一派もいることですし・・・。

 

 

ワンクッション、入れておきたい所ですね。

しかる後、新オスティアにアリア様をお迎えし、ウェスペルタティア王国を再興する。

そして元老院を叩き潰し、返す刀で帝国をも打倒する。

さらに、「始まりの魔法使い」を盟主と仰ぐテロリスト共をも踏み潰し。

 

 

世界の全てをアリア様にお渡しする・・・いえ。

しかるべき者の手に、世界を返すのです。

 

 

「・・・まぁ、アリア様のお気持ち次第ですが」

 

 

私一人が先走っても仕方のないことですし。

今の所、私の妄想の域を出ない話です。

 

 

そこの所を含めて、もう一度お話したい所ですね。

ええ、ぜひともお会いしたいものです。

とりあえずは・・・。

 

 

「麻帆良を潰す所から、始めましょうか」

 

 

 

 

 

Side 小太郎

 

「なんや、そんなとこにおったんか、楓ねーちゃん」

「おお、小太郎でござるか。怪我の具合は良いのでござるか?」

「別に、大した怪我や無い」

 

 

身体中包帯でグルグル巻きにされとるけど、ほとんど治っとる。

千草ねーちゃんや夏美ねーちゃんらが、大げさなだけや。

 

 

「よっと・・・」

 

 

市街地の高い塔の屋根の上に、楓ねーちゃんがおった。

試合の後、どこに行ったんかと思っとったんやけど。

マスコミの連中がうるさーて敵わん・・・。

 

 

「あー・・・終わってもたなー」

「なんでござるか、藪から棒に」

「いや、何と言うか・・・優勝できひんかったなって・・・」

 

 

夏美ねーちゃんは、気にしてへんって言ってたけど。

男としては、気にせーへんわけにもいかんやろ。

 

 

「結局、勝てへんかったし・・・俺、弱いんかなぁ・・・」

「ははは、拙者も負けた身なれば、その質問には答えにくいでござるなぁ」

「あー、そう言えばそうやったな・・・しかも一回戦負け。なんか、すまん」

「そこで慰める方向になると、拙者の立つ瀬が本気で無いでござるよ・・・」

 

 

その後は楓ねーちゃんと一緒に、麻帆良の街を見下ろした。

お祭りなだけあって、賑わっとる。

 

 

俺は、戦うしか能の無い、他には何の役にも立たん奴や。

京都ではネギにも負けたし、今日も負けたし・・・。

俺、弱なってしもて。

このままやったら、千草ねーちゃんらを守ってもやれへん。

 

 

「・・・楓ねーちゃんは、どこでそんな力を手に入れたんや?」

「ん? 拙者は山で育ったので・・・そこで修業していたでござるよ」

「山か・・・」

 

 

山でどないしたら、16人も分身できるようになるんや?

と言うか、山で修行するだけでそないに強くなるもんなんか?

 

 

山、かぁ・・・。

 

 

「小太郎はん」

 

 

しゅたっ・・・と、瞬動なのか何なのか、月詠のねーちゃんが現れた。

 

 

「皆、待っとりますよー?」

「せやかて、マスコミとかうるさいやん」

「千草はんが追い払いましたえ」

 

 

マジか。

千草のねーちゃんも最近、染まってきとるからなぁ。

そう思って、下の方を見てみると。

 

 

「小太郎――――――っ!」

 

 

千草ねーちゃんが、呼んどった。

横には、夏美ねーちゃんと千鶴ねーちゃんもおる。

夜の演劇部の出し物に行くことになっとるんやけど、それまではブラつこうて話や。

 

 

・・・俺はもっと、強くならなあかん。

もっと強なって、ねーちゃんらを守れるようになるんや。

 

 

「おねーさんも、一緒にどうですー?」

「良いのでござるか?」

「大丈夫やと思いますー・・・ふふ、おねーさんも、美味しそうですな~・・・」

「月詠のねーちゃん、自重してや」

 

 

そら確かに、楓ねーちゃんは強いけどな。

相変わらずやな、月詠のねーちゃん。

・・・俺が強なったら、月詠のねーちゃんが戦わんでもええようにできるかな・・・。

そしたら、月詠のねーちゃんも・・・。

 

 

「ほな、行こか!」

「ははは、小太郎は元気でござるな~」

「でも、斬りたいとは思わんのです~」

 

 

思われても困るわ!

 

 

 

 

 

Side 刹那

 

ちびせつなから、報告が上がって来ない。

何かあったのだろうか、それとも、何も無いのか?

まぁ、便りが無いのは元気な証拠とも言うし・・・。

 

 

「あ、ありがとうございました!」

「おねーちゃん、ありがとー」

「いえ、そんな・・・学園祭ではぐれると大変やから、気を付けてください」

 

 

このちゃんは今、迷子の男の子を母親に引き合わせている。

それにしても、迷子の子供をあやすこのちゃんは、その和み能力をいかんなく発揮していた。

私など泣き喚く子供を前にうろたえるばかりだったが、このちゃんが相手をするとピタリと泣き止んだ。

 

 

流石、このちゃんだ。

 

 

「よぉ、可愛いねぇお嬢さん」

「お茶でも飲まね?」

「ええよぉ♪」

「いやいやいやいや! このちゃん、こんなゴロツキ共と付き合ってはいけません!」

 

 

このちゃんに声をかけてきた見る目ある若・・・ゴロツキ共を追い払いつつ、このちゃんに注意した。

一年前は、このちゃんを怒鳴るなど考えたことも無かったが、今では普通になってしまった。

 

 

「えへへ、ごめんなぁ、つい」

「つい、じゃありません!」

 

 

このちゃんには悪気が無いと言うか、無邪気と言うか・・・。

何と言うか、このちゃんは自分がいかに男性の目を引くかと言うことを考えてほしい。

 

 

「た、たたたた大変だーっ、サーカスの動物達が逃げ出した―――っ!」

「なっ!?」

「ゾウさんやねぇ」

 

 

ゾウだけでなく、キリンやダチョウが群れを成してこちらへ・・・。

私は迷うことなく、このちゃんを両手で抱えあげると、瞬動で離れた。

街灯の上に降り立ち、そこからさらに空へと跳ぶ。

 

 

「せっちゃ・・・」

 

 

下を見ると、一般客が逃げ惑っていた。

当然だろう、動物の群れが迫っているのだ・・・逃げ出すに決まっている。

だが、私はこのちゃんを優先した。

正しい選択だとわかってはいても、胸が痛む。

 

 

「・・・すまない」

「いい・・・」

 

 

誰にともなく謝ると、驚いたことに答えが返ってきた。

抑揚の無い、それでいて良く通る声。

このちゃんでは無い、その声の主は・・・。

 

 

「・・・ザジさん?」

 

 

どこに繋がっているのかわからないが、空中ブランコに乗ったザジさんだった。

ザジさんはくるんっ、と回転すると、動物達の前に着地した。

そのまま、感情の色の見えない瞳で動物達を見ると。

 

 

「・・・だめ」

 

 

言葉が通じたのか、いやまさか。

だが、動物達はそれで止まった。

あれほど興奮していた動物達が、大人しくなり・・・ザジさんは、ゾウの背中に立つと。

「お騒がせしましたー!」と頭を下げ、被害に合った観客に対しチケットを配り始めた。

 

 

「ザジちゃんも、頑張っとるんやなぁ」

「そ、そうですね・・・?」

 

 

このちゃんは素直に関心しているが、私としては首を傾げざるを得ない。

クラスでも、あまり会話がある仲ではないが・・・。

 

 

改めて考えてみると、クラスの中でも異彩を放っている女生徒だ。

 

 

「せっちゃんせっちゃん、そろそろ降ろしてくれん? 皆に見られて、うち恥ずかしい・・・」

「え・・・あ! ひゃ・・・も、申し訳ありません!」

 

 

そう言えば、このちゃんを抱っこしたままだった!

私は慌てて、このちゃんをその場に降ろした・・・。

 

 

「も、申し訳ありません・・・」

「気にせんでええよ、嫌やったわけやないもん」

「た、たたた大変だ―――っ! 工学部のロボティラノが暴走したぞ――――っ!」

「そ、そそそ、それは、どういう意味で・・・」

「そのままの意味やよ?」

 

 

収納結界『月衣(カグヤ)』起動、『錬金鋼』を掌に出す。

掌サイズのこの鋼は、気を流すことで瞬時に記憶していた形に戻る。

私の場合、小太刀の形状に。

 

 

「危ない、ティラノが倒れるぞ――――っ!!」

「ほな、次行こ、せっちゃん」

「はい、このちゃん」

 

 

神鳴流―――斬岩剣・弐の太刀。

 

 

「せっちゃん、一緒にわたあめ食べへん?」

「あ、はい・・・お金は私が」

「ええよ~、うちが出すから」

「い、いえその・・・あわわわ」

 

 

このちゃんを含めた周囲の人間に危害を加えることなく、ロボティラノとやらを斬り伏せた。

首が落ち、胴体が沈黙する。

『錬金鋼』を『月衣(カグヤ)』の中に戻すと、このちゃんが両手にわたあめを持って、にっこりと微笑んでいた。

 

 

「ありがとうな、せっちゃん」

「な、何ですか、いきなり」

「うふふ~・・・な~んもあらへんよ♪」

 

 

このちゃんは、何やら機嫌が良さそうだ。

私は笑みを返すと、わたあめを受け取った。

このちゃんは、ずっと嬉しそうに笑っている。

 

 

変なこのちゃん。

 

 

 

 

 

Side ネギ

 

カモ君、どこ行ったんだろ。

武道会でアーニャと会った時から、いないんだけど・・・。

 

 

「ごめんねーネギ君、私とじゃつまんないでしょ?」

「そ、そんなことないです、楽しいですよ」

「そう?」

 

 

僕は今、図書館探検部の探検大会に来てる。

のどかさんにチケットを貰ったんだけど、のどかさんと夕映さんはいないらしい。

もしかして、まだ医務室にいるのかもしれない。

 

 

「いやー、それにしても凄かったね、ネギ君。高畑先生には負けちゃったけどさ」

「は、はい・・・」

 

 

ハルナさんの言葉に、僕は気分が重くなるのを感じた。

そうだ、僕、タカミチに負けたんだった・・・。

右手の親指に付けている、超さんから貰った指輪を、左手で撫でる。

ポケットの中には、カシオペアの感触がある。

 

 

これだけの力を貰っても、僕はタカミチに勝てなかった。

手も足も出なかった。毎日、マスターの所で修行してるのに。

 

 

あ・・・でも、マスターもアリアさんに負けてるんだった。

そのアリアさんも、エヴァンジェリンさんに負けた。

やっぱり、エヴァンジェリンさんに弟子入りした方が良かったのかな。

そうすれば、僕もきっと・・・。

 

 

きっと・・・何だろう?

 

 

「・・・よねー・・・って、ネギ君、聞いてる?」

「・・・・・・え、あ、はい!」

「はい、嘘! 聞いてなかったでしょー、もう」

「す、すみません・・・」

 

 

い、いけない、今はハルナさんの話を聞かないと。

えーと・・・。

 

 

「なんでしたっけ?」

「だからさ、負けちゃったけど、ネギ君もあの遠当てとか、気とかって言うの、使えるの?」

「え、ええ・・・まぁ・・・?」

「んー、そっかー、やっぱりか~・・・でもさ」

 

 

ハルナさんは、笑顔のまま、僕の方を見てきた。

・・・それは何と言うか、面白い物を見つけた、みたいな顔だった。

 

 

嫌な予感。

 

 

「さっきの大会・・・気って言うより、さ」

「は、はい」

「どっちかと言うとさー・・・」

 

 

ハルナさんは、ガシッ・・・と、僕の両肩を掴むと、言った。

 

 

「魔法って、感じだよね?」

 

 

 

 

 

Side 学園長

 

「むぅ、よもやそんな大それたことを企んでいようとは・・・」

 

 

タカミチ君から上がってきた報告に、わしは思わず唸った。

超鈴音が、全世界に魔法を公表しようとしている・・・にわかには、信じ難い話じゃ。

通常時であれば、気骨ある若者と言ったかもしれんが。

 

 

生憎と今は、通常時では無い。

関西呪術協会やメルディアナ、おまけに元老院の議員までおるのじゃ。

そんな時に、このようなことをされては・・・。

 

 

わし、オコジョ刑ではすまんかもしれん。

 

 

「しかも、ネギ君が一枚噛んでおるとは・・・」

「ええ・・・」

 

 

タカミチ君の表情が、沈痛な色を浮かべる。

わしとて、同じような気持ちじゃ。

これからのことを思うと・・・。

 

 

ネギ君もネギ君じゃ、なぜこのような計画に加担しておるのか。

魔法使いとして、魔法を秘匿するという文言だけは、知っておるだろうに。

 

 

「・・・とにかく、対策を」

「そうじゃな・・・ネギ君については、臨時出張とでも言って、麻帆良の外に出そう」

「それが、良いでしょうね。彼をこの件の当事者から外すべきです」

「うむ・・・」

 

 

麻帆良から離れておれば、最悪の事態は防げるはずじゃ。

最低、彼の将来を守ることもできよう。

 

 

タカミチ君の話によれば、ネギ君は今、医務室で気を失っているとのことじゃし・・・。

 

 

「超鈴音を、拘束せねばなるまい」

「しかし、それは・・・」

「大丈夫じゃ、すでに神多羅木君達を向かわせておる」

 

 

魔法先生を数人送り込んでおる、タカミチ君程では無いかもしれんが、拘束ぐらいは・・・。

 

 

「な・・・なんてことを!」

 

 

ところが、タカミチ君は、顔色を変えて机を叩いた。

な、なんじゃ?

 

 

「呼び戻してください、今すぐに!」

「ふ、ふぉ・・・?」

「彼女は普通じゃない・・・数人程度の戦力では、無理です!」

 

 

し、しかし彼らはすでに・・・。

 

 

「我々が全員でかからねば・・・超鈴音には、勝てません! 勝てない理由があるんです・・・!」

 

 

な、なんじゃと・・・!

 

 

 

 

 

Side 超

 

ふふふ、武道会はアリア先生に一定程度の影響を与えたようネ。

重畳、重畳・・・それは良かった。

これで少しは、学んでくれると良いのだがネ。

 

 

「人一人にできることなど、タカが知れているヨ・・・」

 

 

ただ、まぁ、それは私も同じかもしれないガ。

いずれにせよ、今夜にでも会いに行くカ・・・。

などということを考えながら、龍宮神社の廊下を歩いている。

 

 

エヴァンジェリンから逃げた後、しばらくはここに隠れていた。

灯台下暗し・・・よもや、放棄した拠点に留まっているなどと、思いもしないだろうネ。

古典的な手だガ・・・効果があるからこそ、現在でも使われる戦法ヨ。

 

 

「ネギ坊主は、しばらくは使えないだろうし・・・頼りはハカセと龍宮サンかナ」

 

 

どちらも、私の志に共感して、協力してくれている。

五月は、志以外の理由で私を手伝ってくれているからネ。

だから、五月は特別枠ネ。

 

 

・・・とにかく、何かの形で、報いてやりたいと思う。

そしてそれは、計画の成功以外に有り得ない・・・。

 

 

「超鈴音」

 

 

不意に名前を呼ばれて、私は立ち止まった。

すると、私を取り囲むように、神多羅木先生、明石教授、瀬流彦先生の3人が姿を現した。

3人か・・・予想よりも少ないネ。

高畑先生は、来るかと思っていたガ。

 

 

「一緒に、来てもらおう」

「・・・どう言う理由で?」

「いやね、ちょっと話を聞きたいな~なんて、思ったり思わなかったり」

「瀬流彦先生?」

「あ、すみません・・・」

 

 

瀬流彦先生は、随分と腰が低いネ。

明石教授も、苦笑しているヨ。

まぁ、この2人は比較的、穏やかな性格をしているからネ。

この中で注意すべきなのは・・・神多羅木先生カ。

 

 

まぁ、そうは言っても脅威では無い。

ただ、時期が悪いネ・・・

 

 

「話、ネ・・・どんな話カナ?」

 

 

かちゃ・・・と、懐のカシオペアに触れながら。

私は、にっこりと微笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

Side 瀬流彦

 

「・・・どんな話カナ?」

 

 

神多羅木先生や明石教授と一緒に、超君に接触した。

正直、何をしてくるかわからないから、油断はできない。

まぁ、油断してなくても、対応できないことはあるんだけどさ。

 

 

「・・・キミがやろうとしている、計画のことだ」

「計画・・・ああ、アレの話カ」

 

 

と言うか、悪魔襲撃の時と言い、もしかして僕、戦闘要員の方に数えられちゃってる?

じゃないと、こんな大事な場面に呼ばれるわけないよね?

地味に僕、重要人物になりつつあるのかもしれない。

 

 

・・・勘弁してほしかった。

 

 

「なぜ、魔法を公表しようなどと?」

「・・・古今東西、魔法使いはその存在をやたらに隠したがる話が多いガ・・・何故カナ?」

「どういう意味かね?」

「何、簡単な質問ネ」

 

 

ばさっ・・・と、服の裾を翻しながら、超君は言った。

 

 

「なぜキミ達はその存在を世界に対し隠しているのカナ? 強大な力を個人が所有することを秘密にしている方が、世界に対して危険では無いカ?」

「そ・・・それは違う! 強大な力を持つ魔法使いなどごくわずか! むしろ無用の誤解や混乱などを起こさないためにも、僕達は秘密を守って・・・」

「そのせいで、救える命を救えなくとも・・・奪わなくて良い命を奪ったとしても?」

 

 

明石教授の言葉に、超君は冷静に答えた。

まぁ・・・確かに、そういう面もあるのかもしれないけど。

 

 

「私は、この力を世界に公表する。私のやり方こそが、弱き者・・・神に祝福されぬ者達を救う。疑いは無いネ。魔法の力を皆が知れば、世の何割かの人間を救うことができると・・・」

「・・・それは、違うんじゃないかなぁ・・・?」

「・・・どうしてカナ、瀬流彦先生?」

 

 

超君の言葉に首を傾げていると、興味を持たれたのか、声をかけられた。

ちょっと意外、彼女のように信念を持って何かをしている人間は、話を聞いてくれないのかと思ってた。

と言うか、無視してくれて良かったんだけど。

 

 

「いや・・・普通に考えてさ、世界中の人が魔法を知ったら知ったで、不幸になる人もいると思うんだよね」

「ほう、その心は?」

「魔法が、たくさんある技術の一つに過ぎないと考えるから」

「ふん?」

 

 

これはあくまでも、個人的な意見だけど・・・。

もし僕ら魔法使いの使命が、額面通りの「世のため人のため」であるのなら、治癒魔法でも学んで紛争地帯に行けば良い。平和な学校で警備員なんてやってないでね。

僕らだってバカじゃないんだ。それくらいは思いつく。

 

 

じゃあ、どうしてそれをしないのか?

答えは単純、僕らが助けすぎるとかえって困る人達がいるから。

 

 

「例えば、治癒魔法を世界中の人に教えたとする。すると、たぶん保健衛生面で人々の生活は向上するかもしれない。医療では治せない大怪我や難病を、皆が治せるようになるかもしれない」

「その通りだナ」

「でも一方で、病院や医薬品関係で働いている人達は、どうなると思う? 彼らの存在意義は、著しく低下するだろう・・・悪くすれば、廃業せざるを得ない。それに関連する企業の人達も困ったことになる」

「・・・変化に対応して、発展するかもしれナイ」

「そうだね、でもしないかもしれない」

 

 

先進国の人達は、対応できるかもしれない。

でも、途上国の人達は? 対応できるだけの体力を持たない企業や病院だってあるんだ。

先進国の病院や企業からの援助で生きている人達には、医薬品や医者の治療が行き渡らなくなるかもしれない。

魔法の治療と言っても、宗教とかの関係で受け入れられない人も、いるかもしれない。

 

 

そう言う人達は、どうすれば良い?

魔法を無差別に広めれば、確かに何割かの人間は救えるのかもしれない。

 

 

「でも、それで新しく救われない人達を作りだしてしまえば、意味が無いじゃないか」

 

 

だから僕達魔法使いは、バランスを取るために日々努力している。

制限が多い中でも、できるだけのことをしようとしているんだ。

たとえそれが、超君の計画で救われるかもしれない人々にとって、偽善でしか無いのだとしても。

 

 

「ふむ・・・」

 

 

超君は、片手を口元に当てると、少し考えて・・・僕を見た。

 

 

「確かに、そう言う意見もあるネ。瀬流彦先生は、意外と柔軟な思考ができるのだナ」

「あ、そう? じゃあ僕達と一緒に来てくれたりとか・・・」

「しないネ」

「だよねー・・・」

 

 

期待はしてなかったけどさ・・・。

超君は僕を見て笑いながら、ちゃら・・・と、懐中時計を取り出した。

 

 

「では・・・」

「いかん、押さえろ!」

「3日目にまた会おう、魔法使いの諸君♡」

 

 

次の瞬間、超君の姿が消えた。

転移の反応も無いし、本当に消えてしまったみたいだ。

 

 

「むぅ・・・トレースできん」

「どうやったんだ? 凄いなあの子・・・」

「いやぁ、僕にもさっぱり・・・」

 

 

2人にそう答えながら、たぶん、あの懐中時計の効果か何かなんだろうなぁ、と考えていた。

そして、ああ言うマジックアイテムに詳しそうな子を、僕は知ってる。

 

 

アリア君だ。

 

 

 

 

 

Side 亜子

 

「苺のミルフィーユ3つ――っ!」

「注文良いかな――?」

「はい・・・はいっ!」

 

 

ひええ~、目の回る忙しさや。

保健委員よりも、サッカー部のマネージャーの仕事よりも大変て、どう言うことなん?

どうも、誰かが口コミでここの情報広めてるらしいんやけど。

 

 

「イケるっ、この調子で行けば催し物順位ランクイン行けるよーっ!」

「ああ、ネギ先生っ・・・!」

「もうっ、いい加減テンション上げなよ、いいんちょ!」

 

 

ゆーな達が何か騒いでるけど、いいんちょが浮上してこーへん。

まき絵も、ちょっと気にしてるみたいやし・・・。

 

 

ネギ君に、アリア先生。

お父さんもお母さんもおらんで、10歳やのに頑張って。

まるで・・・。

 

 

「亜子! そろそろライブのリハーサルの時間なんじゃない?」

「あ・・・そうやった!」

「ここは良いから、行ってきな! 釘宮達、先に行ってるよ」

「頑張って、亜子!」

「応援してる・・・」

 

 

ゆーな、まき絵、アキラが、そう言うてくれる。

そろそろ、交代の子も来るから、ちょうどええかな。

 

 

うちは今夜、柿崎達に混ざって、ライブ(ベース担当)をやることになってるんやけど・・・。

あ、何か、ちょっと後悔・・・もとい、緊張してきた。

 

 

今からでも、やめられへんかな。

うん、わかってた、無理やて。

 

 

「行ってきます・・・」

「あれ!? ライブなのにテンション低くない!?」

 

 

そんな、うちみたいな脇役に何を求めてんのっ・・・!

 

 

 

 

 

Side ドネット

 

「おや・・・」

「これは・・・関西の」

 

 

クルト議員に指定された時間に議場に行くと、そこには関西の長、詠春殿がいた。

傍らには、この度麻帆良に常駐する大使、西条殿もいる。無口な方だ。

合わせて、2人。これもクルト殿が指定した人数だ。

 

 

私も、アーニャだけを連れている。

もっとも・・・アーニャの懐には、使い魔のオコジョがいるけれど。

でも、関西側も同じようなことはしているでしょう。

 

 

「そちらも、議員に呼び出されたのですか?」

「ええ、どうも内密に話があるとか・・・」

 

 

詠春殿は、私の耳元に口を寄せると。

 

 

「・・・どうも、我々の動きがバレたようですね」

 

 

その言葉に、私は気が遠くなった。

呼び出された時点で、もしやとは思ったのだけれど・・・。

元老院に、アリアのアリアドネー行きや、ネギ君のメルディアナ召喚が漏れたとなると。

 

 

これは、計画を変更する必要が。

・・・でも、ならば何故、関西側も同席させるの?

必要性が、無い。

いえ、まさか関西側を抱き込むつもり・・・?

 

 

「ドネットさん・・・」

「・・・大丈夫、大丈夫よ・・・」

 

 

不安そうなアーニャに、笑みを浮かべて見せる。

そう、まだ大丈夫なはず。

まだ、こちらの動きの全てが掴まれたわけでは無い。

 

 

校長のアリアドネーへの働き掛け次第では、私がここでクルト議員の目を引き付けておく意味も・・・。

 

 

「無いと思いますがねぇ」

「・・・!」

 

 

声に反応して振り向いてみれば、そこには、今まさに私が思い描いていた人物。

クルト・ゲーデル元老院議員。

 

 

綺麗に撫でつけられた髪に、線の細い長身。

顔の造り自体は整っているのだけど、その瞳は、まるで全てを見下しているかのような印象を相手に与える。

 

 

「まぁ、何と言うか・・・頭が良く無いのに勝手に動かれると、困るのですよねぇ」

「な・・・」

「・・・それは、どう言う意味ですか、クルト議員?」

「いえいえ・・・部下がヘマをやらかしましてね、愚痴が聞こえたのなら謝ります」

 

 

詠春殿の言葉に、にこやかな笑顔を浮かべて、クルト議員は言った。

ただし、にこやか過ぎてかえって胡散臭く見えると言う、器用なことをしている。

 

 

「さて・・・時間通りですね。一応、麻帆良側にも声をかけたのですが、何か緊急の事態が起こったようですね」

「緊急の事態?」

「私達は、そんな連絡は受けていませんが・・・」

「ふむ・・・そうですか、情報網の違いですかね」

 

 

眼鏡を押し上げながら、クルト議員は私と詠春殿を見た。

レンズの向こうの瞳が、細められた所で・・・。

 

 

「まぁ、良いでしょう。麻帆良の人間がいない方がはかどる話もあるでしょうし」

「・・・と、言うと?」

「いえ、大したことではありません」

 

 

クルト議員は、私や詠春殿を追い抜き、議場の扉を勢いよく開くと。

 

 

「さぁ、この茶番にケリを付けてさしあげましょう!」

 

 

 

 

 

Side アリア

 

休息は取った。

あとはまた、頑張るだけ。

 

 

「・・・とはいえ、最近いろいろな方が私の負担を減らそうとしてくださいますが」

 

 

おかげで、私がやるべきことが無くなるのではないかと思ってしまうくらいです。

どうも最近、自分が腑抜けているのではないかと思ってしまう時があります。

でも、嫌ではありません。

良い意味で、余裕ができたと考えるべきなのでしょうか。

 

 

「そこの所どう思います、晴明さん?」

「さぁな、我に聞かれてもの」

 

 

私の腕の中で、晴明さんが興味無さそうに答えました。

茶道部での野点の後、私はライブ会場の舞台運営に加わることになっていましたので、エヴァさん達とは別行動に。

超さんのことも、なるべく探すようにと言われました。

一人で行こうかと思ったのですが、超さんの動きも読めないのに一人はダメと、強硬に主張されまして。

 

 

あらゆる意味で万能そうな晴明さんが、私と一緒に来ることになりました。

さらに言えば、西洋人形「真紅」の姿である晴明さんを持つに相応しい格好をしろと言われ・・・。

仕事に行こうかと言うのに、黒のゴスロリ服を着せられています。

 

 

「まぁ、仮装と言うことで誤魔化せますかね」

「先ほどから独り言が多いようじゃが、それはもしや我に話しかけておるのか? 我は答えた方が良いのか?」

「自分との対話と言う奴ですよ」

「そうかの、まぁ、我の時代にもいたがの・・・」

 

 

そっけない晴明さん。

でも、私がマスコミや群衆に囲まれずに済んでいるのは、晴明さんのおかげです。

晴明さんが、周囲の人間の目を騙す術をかけているために、私はスイスイと人混みを抜けることができています。

 

 

そう言う意味でも、エヴァさんが晴明さんを押しつけて来た理由がわかります。

 

 

エヴァさん・・・。

ふと立ち止まって、後ろの空を見上げます。

 

 

「どうした?」

「いえ・・・別に何も」

 

 

頑張れ、私。

 

 

「・・・はい、頑張ります!」

「そう・・・応援してる」

 

 

・・・ん?

 

 

「晴明さん、今何か言いましたか?」

「何も言わんよ」

 

 

ですよね・・・。

でも、今どこからか、聞きなれた声が聞こえたのですけれど。

感情の起伏の少ない、平淡な声だったのですが・・・。

 

 

どこか、惹かれて止まない声音。

 

 

キョロ・・・と、辺りを見渡して、声の主を探す。

すると、「彼」はすぐに見つかりました。

 

 

麻帆良にはスターブックスカフェと言う、ス○バに良く似たカフェがあるのですが。

私はちょうど、そこを通りがかったようで・・・。

 

 

「・・・何をやっているんですか?」

「コーヒーを飲んでいるんだけど?」

 

 

麻帆良と言う敵地の真ん中で、堂々とコーヒーブレイクをかましている姿は、ある意味あっぱれと言わざるを得ませんね。

彼・・・フェイトさんは、静かにカップを傾けて、コーヒーを味わっていました。

うん・・・何やってるんでしょう。

 

 

「僕は一日にコーヒーを七度飲む、言って無かったかな?」

「ああ、コーヒー好きなんでしたっけ・・・」

「なんじゃ、知り合いか」

「まぁ、知り合いと言うか・・・なんと言えば良いのか」

 

 

そう言えば、晴明さんはフェイトさんを知りませんね。

第一印象で全てが決まりますね・・・いや、何を言っているのでしょうか私。

 

 

私がどうした物かと思案していると、フェイトさんは私を見て、次いで晴明さんを見て、そしてまた私を見ました。

無機質な、綺麗な瞳が、私を真っ直ぐに見つめていました。

・・・まさか、晴明さんに自分を何と紹介するのか、探っているのでしょうか。

まさかぁ・・・。

 

 

と、思いつつも、ごくり・・・と、唾を飲み込んでみます。

 

 

「ええと・・・」

 

 

この人は、私の何だろう?

そんな、今さらなことを考えてみたりしますが・・・。

しかし、適当な単語が見つからないことも事実。

と、なると・・・?

 

 

「この人は・・・」

 

 

その時。

 

 

「ねぇねぇキミ達」

「こんなイベントに、興味は無いかね」

 

 

シンシア姉様、筋肉ムキムキな男性二人に声をかけられました。

 

 

 

アリアは、嫌な予感しかしません。

 

 

 

 

 

 

<おまけ―――ちび達の冒険①・哲学研>

 

ちびアリアとちびせつなは、とりあえず一緒に行動することにした。

主人は違えど、目的は同じ。

一人では遠い道のりも、二人で進めば二分の一になるはずと言う謎理論によって、彼女達は結ばれたのである。

ただ・・・。

 

 

『ハイデガーによれば、存在は存在者ではありません。つまり存在は存在しないと言うのです、しかし・・・』

「む、難しいですー・・・」

「お、おおぅ、わ、私はわかりますですぅ・・・よ?」

 

 

絶賛、道に迷っていた。

しかもなぜか、「哲学研勉強会」なる物に参加している。

彼女達の姿は、他の人間には見えないものの・・・。

 

 

「じゃあ、はいでがーって何ですかー?」

「むむむ、良い質問ですぅ、それがわかれば話の9割は理解したことになるですぅ」

「つまり、どう言う意味ですー?」

「・・・・・・え、偉い人・・・ですぅ」

 

 

ちびせつなの質問に、ちびアリアは苦しんでいる。

スタンドアローンであるが故に、本体に聞くことができないのだ。

と言うか、見栄を張らずにわからないと言えば、それで済む問題である。

 

 

ちびアリアにも、それはわかっている。

わかっているが・・・。

 

 

(き、キャラ間の差別化を図らねば、潰されてしまうですぅ・・・)

 

 

と言う、彼女なりの危機感が、ちびアリアを追い詰めていた。

 

 

「偉い人ですか! ちびアリアさんは物知りですー」

「ち、ち、ち、私は物知りでは無く、博識なのですぅ」

「おお~」

 

 

ちびせつなの視線の中に、尊敬の念が混ざる。

それを心地良さげに受け止めながら、ちびアリアは何度も頷いて見せた。

その頬が、嬉しそうに緩んでいる。

 

 

そんなちびアリアに、ちびせつなが邪気の無い一言を浴びせた。

 

 

「それで、博識ってどういう意味ですか?」

「・・・・・・や、やるじゃな~い?」

 

 

ちびアリアは、その後も順調に泥沼に嵌って行った。

 




茶々丸:
茶々丸です。ようこそいらっしゃいました(ぺこり)。
今回は、激しく視点が動くお話でした。
アリア先生を巡る動きは、日々激しくなっております。
ネギ先生に対する行動も、キナ臭さを増していくと思われます。


今回新規で使用された投稿アイテムは、以下の通りです。
G・T・N(グレート・ティーチャー・新田):霊華@アカガミ様。
錬金鋼:水色様提供、元ネタは「鋼殻のレギオス」です。
ありがとうございました(ぺこり)。


茶々丸:
次回は、学園祭を進行させつつ、今回同様様々な動きがあります。
アリア先生は、ある意味大変な事態になります。
私も、大忙しです。
では、またお会いすることを楽しみに。
失礼いたします(ぺこり)。

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