魔法先生ネギま~とある妹の転生物語~   作:竜華零

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第66話「麻帆良祭二日目・嫉妬」

Side アリア

 

ベストカップルコンテスト。

古いテレビ番組みたいな名称ですが、麻帆良祭の見所イベントとして知られています。

参加者の大半は、ボディビル研によって拉致されてきた二人組の男女です。

カップルでもアベックでも無い方もいますが、険悪な雰囲気な方はいません。

 

 

まぁ、そこはきちんと見て判断しているのでしょう。

と言うことは、私とフェイトさんも「それなり」に見えていたと言うことでしょうか。

・・・などと、思い上がっていた頃が懐かしいですね。

 

 

『では、次のカップルは~・・・あら、彼氏の方は外国人の方でしょうか? フェイト・・・』

 

 

今の私は、そんな浮ついた気分では無いのです。

どうしてって?

うふふふ・・・。

 

 

『フェイト&夏美ペアでーすっ!』

 

 

「「なんで(村上さん)(夏美ねーちゃん)なん(ですか)(や)!?」」

 

 

私と声をハモらせて叫んだのは、言わずと知れた小太郎さんです。

千草さん達とお祭りを回っていた所、一瞬だけ村上さんと2人きりになり・・・拉致されたとか。

千草さんや月詠さんは、観客席にいるそうです。

 

 

それは良いのですが、登録の係の方が、どうも勘違いしたらしく。

まぁ、見た目年齢的にそうなりますよね。理解はできます。

でも納得はできません。

これは、私だけでなく小太郎さんも一緒なはずです。

 

 

『これはクオリティの高い美形の登場だ――っ、タキシードが映えます!』

 

 

それは映えるでしょうよ、私が選んだんですよ。

その白のタキシード。

もう、何にもわかってない顔で「どれにする?」とか聞いてきやがるのですから。

ちなみに、村上さんは白のドレス。

 

 

ただし、ウエディングドレスではありません。

そこは私と小太郎さんで阻止しました。

小太郎さんが阻止に動いたのは非常に意外でしたが、村上さんの婚期を遅らせるわけにはいかないと主張し、結果押し通しました。

 

 

『おおっと、イケメン彼氏に対して、彼女は俯きがちだが大丈夫かー?』

 

 

「そもそも、貴方がきちんと村上さんを捕まえておかないから!」

「何やと!? なんで俺が・・・ってーか、何やねあの兄ちゃん、京都で見かけた時よりでかなってないか!?」

「そう見えるだけです! 本来なら私と同じ背丈だったはずなんですよ!」

 

 

ちなみに、小太郎さんはフェイトさんを知っています。

と言っても、京都でも特に会話は無かったそうですが。

 

 

と言うか、やはり出口のムキムキを蹴り倒してでも逃げるべきでしたでしょうか。

それとも、私も年齢詐称薬を服用すべきで・・・。

 

 

『おお―――っと!』

 

 

その時、舞台の方から歓声が上がりました。

 

 

 

 

 

Side 千草

 

「えっは、げっほ、えほっ・・・!」

「あら、大丈夫ですか?」

「コップを預かるでござるよ」

「お、おおきに」

 

 

お、思わずむせてしもた。

飲み物の入った紙コップを、楓はんて言う、忍者の子に渡す。

心配そうにしとる千鶴はんに手を振りながらお礼を言って、呼吸を整える。

 

 

い、いやそれより、なんでこんな所にフェイトはんがおるんや!?

しかも普通に本名で登録しとるし!

京都で別れて以来、何をしとるんかなて、思っとったけど・・・。

 

 

「大丈夫どすか~?」

 

 

月詠はんは、何も気にした風も無く、うちの背中をさすってくれとる。

有り難いんやけど、もう少しこう、言うことあるやろ?

 

 

興味の無い人間のことは、覚えとらんだけなのかもしれんけど。

 

 

『おお――――っと!』

 

 

その時、舞台の上で恥ずかしそうに俯いとった夏美はんに、隣のフェイトはんが手を伸ばした。

何をするんかと思って見とったら、軽く手を取って、何かを囁いた。

夏美はんも驚いとる、何や・・・?

フェイトはんは、夏美はんが軽く頷いたのを確認すると、そのまま・・・。

 

 

踊り始めおった。

 

 

『だ、ダンスだ――! 彼氏が優しく彼女をリ―――ドッ!』

「ほぉ、西方の踊りでござるか」

「あらあら・・・夏美ちゃん、ダンスなんてできたのねぇ」

 

 

千鶴はんは感心しとるみたいやけど、そもそも小太郎と夏美はんを二人きりにしようて画策したんは、千鶴はんやで?

うちは反対したんやけど・・・月詠はんに引き摺って行かれてしもた。

 

 

まぁ、何にせよ、夏美はんがダンス・・・。

いや、あれは・・・フェイトはんのリードが上手いんやろうな。多分。

うちも、西洋のダンスは詳しくないけど・・・夏美はんが動かんでもええよう、きちんとステップを踏んどるんやろ。

 

 

フェイトはん、ダンスなんてできたんやな。

意外と言うか・・・京都で見たフェイトはんは、もう少しこう、大人しい言うか・・・。

人形みたいな子やったと、思うんやけど。

 

 

今は見た目、夏美はんと同じくらいやけどな。

・・・と言うか、小太郎はどこや?

 

 

 

 

 

Side 夏美

 

わ、わ・・・私、ダンスなんてできたっけ?

相手の男の人に合わせて、足を動かす。

まるで、自分の身体じゃ無いみたい。

 

 

「あ、あの・・・」

「・・・何?」

 

 

アリア先生の知り合いの人なんだろう、白い髪の男の人。

フェイトさんって言うらしいんだけど。

なんだか、あんまり表情が動かなくて、ちょっと怖いかも。

 

 

「なんで、ダンス?」

「・・・覚えたてでね」

「お、覚えたてって・・・」

 

 

私なんて、やったことも無いんだけど、踊れてる。

音楽も無いのに・・・。

これって多分、フェイトさんのおかげだよね?

 

 

何のために、ダンスなんて覚えたんだろ?

 

 

「で、でも私なんてほら、可愛くないですし、ほとんど偶然組まされたような物ですし・・・」

「だから?」

「え、えーと、何と言うか・・・ほどほどで、良いんじゃないですか?」

 

 

この人みたいに綺麗な人だったり、アリア先生みたいに可愛い人なら、わかるけど。

私みたいな、人生脇役な人がいても・・・ね?

フェイトさんにも、迷惑だと思うし。

 

 

「・・・聞いた話だけど」

「はい?」

「お揃い・・・と言うのは、良いらしい」

「はぁ・・・」

 

 

ふと、フェイトさんの視線を追いかけると・・・。

・・・ああ。

 

 

なんだ、そう言うことか。

意外と、ロマンチックな人なのかも?

 

 

「・・・それと」

「あ、はい」

 

 

ぴたり・・・と、ダンスが止まって、会場のお客様に頭を下げた後。

舞台袖に引っ込む時に、ぽつりと。

 

 

「・・・そのドレス、キミに合ってると思うよ」

 

 

なんて、言われた。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

ビキィッ!

バキンッ・・・!

 

 

ちなみに、前の音は私が柱にヒビを入れた音。

後の音は、小太郎さんが壁に拳をめり込ませた音です。

周囲の人間がかなり怯えたような表情を浮かべていますが、気にしている余裕はありません。

 

 

「・・・(まぁ、いいがの)」

 

 

壁にもたれさせている晴明さんが、何か言いたげな目をしているような気がしますが、それも無視です。

フェイトさんと村上さんは、私達がいる方とは反対側の舞台袖に行きました。

先ほどに比べて、村上さんの表情が柔らかい気がします。

 

 

「「あの野郎・・・」」

 

 

再びハモる、私と小太郎さんの声。

 

 

「小太郎さん、なんだか私、かつて無い程貴方とシンクロできている気がするんです」

「奇遇やなアリアのねーちゃん、俺もや」

「気が合いますね」

「せやな」

 

 

がすっ・・・と、拳を合わせました。

私と小太郎さんの友情度が、400上がりました。

クラス「親友」にランクアップしました。

 

 

「・・・いえ、別にね、良いんですよ? フェイトさんが誰と組もうと」

「俺も別に、夏美ねーちゃんが誰とおろうと、知らんし?」

「そりゃあ、村上さんは可愛らしい方ですし?」

「フェイトの兄ちゃんは、イケメンらしいしのぉ」

 

 

『次、11番のカップルは・・・』

 

 

私達の番のようです。

あと、断言しておきますが私と小太郎さんの間に恋愛感情はゼロです。

 

 

「行きますよ、狼さん」

「おうよ、赤ずきん・・・念のため言うとくけど、俺は犬やで」

 

 

どうでも良いような、それでいて重要そうな小太郎さんの発言を聞き流しつつ、舞台へ上がります。

衣装は、私が赤ずきん。小太郎さんが狼の着ぐるみです。

・・・この役、私がやって良かったんですかね。

 

 

『アリア&小太郎ペア、これは可愛らしい、赤ずきん&狼コスプレ♡』

 

 

会場の皆さんも、私達の姿を見て「可愛いー!」と言ってくださります。

・・・遠目に、千草さんや千鶴さん達を見つけました。

千草さんが、何かむせているようですが、そこはまぁ、比較的どうでも良いです。

 

 

それはそれとして、やはりインパクトの面でフェイトさん組に負けますね。

ここはやはり、赤ずきんと言う役所を生かして・・・。

 

 

「小太郎さん、私を抱き抱えてください」

「何や、急に」

「良いから早く。貴方、狼でしょう? 赤ずきんを攫いなさいな」

「よーわからんけど、こうか?」

 

 

小太郎さんは、私の肩と膝の下に手を入れ、抱き上げました。

いわゆる、お姫様抱っこと言う奴です。ちょ・・・!

 

 

歓声が上がる中・・・私は、小太郎さんの顎にショートアッパーを叩き込みました。

「がふっ!?」とか言いつつ倒れる小太郎さん。

私はと言うと、ヒラリと床に降り立ち、熱を持った頬を両手で押さえながら・・・。

 

 

「い、いきなり何をするんですか・・・!」

「あんたが抱け言うたんやないか!?」

「だ、誰が抱き上げろと言いましたか、小脇に抱き抱えろと言ったんです!」

「そんなん、わかるかぁ!」

 

 

日本語って難しい!

あ・・・し、しまった、こんな調子では点数が・・・。

 

 

そう思い、観客の方を見ると・・・「カワイー♡」・・・は?

次の瞬間、わぁ・・・と、歓声が上がりました。

 

 

『素晴らしいです11番ペア、積極的になろうとする彼氏と、真っ赤になって牽制する彼女・・・いや、狼にお預けする赤ずきんか―――っ!?』

「・・・何や、それ」

「私も、さっぱりですが・・・」

 

 

ぐっ、と拳を握り。

 

 

「結果オーライ。流石は私です」

「俺、殴られたんやけど・・・」

「ごめんなさい。でもナイス演出です、小太郎さん。かろうじて親友クラスからの降格を免れましたね」

「・・・・・・いや、ええけど」

 

 

などと会話しつつ、舞台袖へ。

その途上、フェイトさんと目が・・・。

 

 

「どないかしたんか、立ち止まって?」

「・・・別に、何もありません!」

「お、おぅ・・・?」

 

 

・・・ふんだ。

そんな怖い目で私を見たって、やめてあげません。

 

 

 

 

 

Side 夕映

 

のどかが、目を覚ましたです。

嬉しい半面、もう少し寝ていてくれればと思う私は、何て嫌な人間なのでしょう。

 

 

「ごめんね、ゆえ。迷惑かけて・・・」

「い、いえ、こんなの迷惑でも何でもないです。本当に・・・」

「ゆえは、いつも優しいね」

 

 

ベッドの上で上半身を起こしたのどかは、そう言って微笑んだです。

いつもと同じ、控えめで優しい、そんな笑顔。

私が、守りたいと願う物。優先すべき宝物。

 

 

たとえ、それが・・・。

 

 

「・・・ネギ先生は、先に起きて先生の仕事に行かれたです」

「そっかー・・・図書館探検部は?」

「先輩方が代わってくださるそうで・・・」

 

 

嘘は吐いていないです。

でも、嘘を吐いている感覚が、どうしても離れない。

 

 

のどかは、私の親友です。できれば、嘘を吐きたく無いです。

でも、傷つけたくも無いです。

あれ程・・・。

 

 

あれ程、貴方の幸せを祈っていたはずなのに、私は。

私は、貴方を守りたい。

どうすれば、のどかを守れるのでしょうか。

 

 

「ゆえー・・・?」

「なんでしょう、のどか?」

「・・・大丈夫?」

「・・・何がですか?」

 

 

いけない、のどかに悟られないようにしなくては。

私が、のどかをネギ先生から引き離そうとしていることだけは。

 

 

それだけは、知られるわけにはいかないです。

 

 

「ゆ・・・」

 

 

のどかが、何かを言おうとしたその時。

ドドドドド・・・と、医務室の扉の向こう側が騒がしくなったです。

・・・なんです?

 

 

「な、なんだろー・・・?」

「さぁ・・・?」

 

 

のどかと二人、首を傾げている間に、その音はドンドン大きくなって・・・。

部屋の前で止まったかと、思ったら。

 

 

「魔法のアイテムは、ここかぁ――――っ!!」

「あ、あうぅ~!?」

「ハルナ!?」

「ネギせんせー!?」

 

 

ハルナが、ネギ先生を引き摺りながら、部屋に飛び込んできたです。

ま、魔法のアイテム?

 

 

「やっほ、お二人さん! 元気してる?」

「え、え・・・う、うんー・・・?」

「ハルナ・・・図書館探検部の方に行っていたのでは」

「自分の分担は終わらせてきたよ!」

 

 

ぐっ・・・と親指を立てるハルナ。

一方でネギ先生は、目を回しながら。

 

 

「ゆ、夕映さん、カモ君知りませんか~?」

「カモさんですか、さぁ・・・?」

 

 

そう言えば、ここの所見ていませんです。

 

 

「カモさんが、何か?」

「そ、それが・・・」

「えーと、のどか! あんたアレしてるんでしょ、あの、えー・・・」

 

 

その後、ハルナが思い出すように言った言葉。

それを聞いて、私はゾッとしたです。

 

 

「パクティオー・・・仮契約とか言うの!」

 

 

 

 

 

Side 学園長

 

瀬流彦君から連絡を受けたのは、タカミチ君との話の、直後と言っても良かった。

タカミチ君からもたらされた情報に、不安が掻き立てられたが・・・。

 

 

「・・・そうかの、3人とも無事か・・・」

『はい、でも超鈴音には、逃げられてしまいました。すみません』

「それは仕方が無いの・・・引き続き、調査に当たってほしい」

『了解です』

 

 

がちゃ、と緊急連絡用の電話を切り、息を吐いた。

顔を上げると、タカミチ君も安堵したような表情を浮かべておった。

 

 

「とりあえずは、安心かの・・・」

「ええ、超君の計画の発動まで、どれくらい時間があるかはわかりませんが、なんとか・・・」

「なんとかそれまでに、打開策を見つけんとの」

 

 

考える時間ができたと喜ぶべきかは、まだわからんがの。

それに、超君の計画阻止と同時に、クルト議員らの動きにも注意せねばならんし。

何せ、相手は元老院議員じゃ、わしの首など5分後に切られてもおかしくは無い。

 

 

おまけに、修学旅行の一件で戦力を減じたはずの関西が、いつの間にやら我々よりも存在感を発揮しておるのじゃからな。

婿殿もやるわい・・・。

 

 

「それで、クルト・・・議員は、何を?」

「わからんが、どうやらアリア君やエヴァンジェリンを、アリアドネーへ行かせる計画があるようじゃ」

「アリアドネーに?」

 

 

議場を麻帆良に置いてくれたのが、せめてもの救いか。

まだ何とか、情報を拾えるからの。

今も、それに関する話し合いをしているようじゃ。

 

 

わしとしても、アリア君のアリアドネー行きは悪くは無いとは、思う。

アリアドネーは、学習意欲・研究意欲があれば死神だろうと何だろうと受け入れる独立魔法学術都市じゃ、アリア君やエヴァンジェリンのような人材なら、むしろアリアドネー側から是非にと言って来るかもしれん。

しかも独自の武力をも保持しておることを考えれば、麻帆良よりも元老院の影響を排除できるとも考えられる。

 

 

じゃが、その前提にネギ君、アリア君が麻帆良から離れるとなると・・・。

 

 

「・・・まぁ、今の所、合意の気配は無いと言う情報もあるがの」

「そうですか・・・そうでしょうね。木乃香君の問題もありますし」

「そうじゃの」

 

 

と言うか、そこまで一枚岩で来られると、わしにはどうすることもできんよ。

 

 

 

 

 

Side クルト

 

「・・・本気ですか?」

「私はいつでも、ほどほどに本気ですよ、マクギネス特使」

 

 

マクギネスさんは、驚いたような目で私を見てきました。

詠春殿も、似たような表情を浮かべています。

 

 

「しかし、当方としては些か、承服できかねます」

「ふむ・・・近衛殿は何かご不満なようですね?」

「ええ、これはメルディアナ側にもすでに回答しているのですが・・・」

 

 

詠春殿は、少しばかり政治にも詳しいですからね。

ここ最近は、特に頑張っているようですし。

 

 

「アリア君のアリアドネー行きには、賛成しかねます。しかも・・・」

「しかも?」

「教職での、アリアドネー行きとなると・・・」

 

 

そう、私の提案は「アリア様のアリアドネーでの教授職への就任」。

そもそも、アリア様は卒業を取り消される必要など無いのです。

アリアドネーに行くのであれば、それなりの待遇が成されるべきです。

 

 

もっとも教授職と言っても、いきなり教授になれるわけでは無く、最初は講師などの立場になるでしょうが。

まぁ、重要なのはそこではありません。

 

 

「こちらとしては、アリア君には麻帆良にいてもらわねばなりません」

「ああ・・・なんでしたか、確かご息女の後見人とか」

「それはですから、こちらで責任を持ってお預かりすると・・・」

「こちらにも、事情がありまして・・・」

 

 

マクギネス特使が、詠春殿に噛み付いています。

なるほど、そこが最後の論点なのですね。

まぁ、仕方が無いでしょう、ご息女・・・近衛木乃香が関西での地位を拒否しているばかりか、魔法への関わりを拒否している以上はね。

しかも、それをまだ表向きは公表していないのですから。

 

 

詠春殿の隣に座っているのは、強硬派の方と聞いていますし。

なかなか、イエスとは言い辛い状況でしょう。

 

 

メルディアナも、アリアドネーにおけるアリア様とその「家族」の待遇の話し合いの大半を済ませていると言います。

だからこそ、すぐにでも結論を出したいのでしょう。

 

 

マクギネス特使の隣にいるのは、アリア様の幼馴染だとか。

彼女の手前、自分達の意見を取り下げるのも難しいでしょう。

 

 

・・・え?

なぜ、そんなに詳しいのか、ですって?

それは簡単なことですよ。

 

 

「まぁ、一朝一夕に結論の出る議論ではありませんし、一度論点を整理してみましょう」

「しかし、クルト議員!」

「・・・そうですね、もう一度問題点を探って」

「・・・詠春殿まで!」

 

 

一見、まとまりの見えないこの会議。

誰がどう見ても、決裂以外に道は無いように思えるでしょう。

そう、誰が、どのように見ていようとね・・・。

 

 

でも、もし。

 

 

「まぁ、それに・・・本人達の意思も確認せねばなりませんからね」

 

 

 

もし、我々が裏ですでに「アリア様のアリアドネー行き」に合意しているのだとしたら?

 

 

 

この会議に来る以前に、すでに詠春殿から了承を取り付けていたのだとしたら?

メルディアナ校長が動いたのは、その詠春殿の意思を受けてだとしたら?

そして今やアリア様個人を守る立場になった私が、当初は慎重論を唱えていた姿勢を転換し、積極的に動いているのだとしたら、どうでしょう?

 

 

全ての前提が、崩れるとは思いませんか?

 

 

詠春殿が慎重論を唱えているのは、全て演技で、ご息女に関してはすでに腹を決めていたら?

マクギネス特使が動揺し、不信感を露にしているのも演技だとしたら?

まぁ、急に方針転換した私の意図が読めず、困惑しているのは本当でしょうけれど。

 

 

ここは麻帆良、あの老人の目や耳がどこにでもある場所。

なればこそ、それなりの準備をしてくるに決まっているではありませんか。

 

 

政治と言うのは、政治家が表立って話し合う段階では、すでに全てが終わっている物なのですよ。

会議を監視したり、すでに死んだ情報を掴んだ所で・・・。

 

 

情勢には、何一つ影響を与えない。

我々がここで、茶番とも言える議論を続けているのは、それぞれの組織内をまとめる時間が必要だからですよ。

いくらトップが合意しても、下がついてくるとは限りませんから。

まぁ、つまり、我々が表立って合意したその時には。

 

 

ちら・・・と、詠春殿を見やります。

彼は、私の視線を受けると、軽く頷いてきました。

 

 

我々が表立って合意した時には、麻帆良の現体制は崩壊していることでしょう。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

「・・・すみません、小太郎さん」

「いや、まぁ・・・何やわからんけど、気にすんなや」

 

 

ぽん・・・と、肩を叩いて来る小太郎さん。

なんだか、この小太郎さんは私が知っているよりも、優しい気がしますね。

気遣いができると言うか。

 

 

ちなみに、私達がいるのは参加者の控え室。

今は、私達の他に誰もいません。と言うのも・・・。

 

 

「そろそろ、結果発表の頃かな」

「そうじゃろうのぉ、水着審査と言うものが、どう言う物かは知らんが」

 

 

水着審査と、結果発表のためです。

スタッフの方もいませんし。

おかげで、晴明さんも喋ることができます。

 

 

・・・で、なんで私達だけここにいるのかと言うと。

 

 

「・・・なんで、棄権しちゃったんでしょうね・・・」

「そりゃ、あんたが水着を着れへんかったからやろ?」

「・・・すみません・・・」

「いや、せやから、別にええて・・・」

 

 

小太郎さんが、弱りきった声で言いました。

困らせているのは、私です。

村上さんのことがあったとは言え、無理に参加させておいて・・・。

 

 

水着を着る段になって、私は怖くなったんです。

 

 

どうしてかは、私にもわかりません。

ただ、村上さんを含めて、周りの人の多くは大人な女性です。

一方で、子供用の水着な自分が、どうしようも無く不安になってしまって・・・。

たまらなくなって、動けなくなりました。

 

 

気にすることなんて、何も無いのに。

フェイトさんの目が、どうしようも無く、気になってしまったんです。

だって・・・だって?

 

 

だって、何なんだろう・・・?

 

 

「・・・あー、それじゃ、俺は会場に行ってみるわ、夏美ねーちゃんも気になるし」

「あ・・・はい、ごめんなさい」

「やから、ええって・・・ほなな、元気出しや!」

 

 

気にすんなや!・・・と言い残して、小太郎さんは行ってしまいました。

晴明さんを抱えたまま行ったのは、それも気遣いの内なのでしょうか。

ふぅ・・・と息を吐いて、私は部屋の隅に蹲り、膝に顔を押し付けました。

 

 

・・・何やってるんだろ、私。

 

 

 

 

 

Side 小太郎

 

「何なんやろな、女ってのは、やっぱわからん」

「まぁ、我の時代から女子とはそう言う物じゃよ。男(おのこ)にはわからんよ」

「晴明のじーちゃんでも、そうなんか?」

「・・・この姿で爺呼ばわりされるのは、激しく違和感があるのぅ」

 

 

カチカチ・・・と手を動かしながら、晴明のじーちゃんがそう言うた。

まぁ、確かに今は女物の人形みたいな姿になっとるけど。

でも、男やろ?

 

 

「にしても、主もやるのぉ、怒りもせずに慰めるとは」

「千草ねーちゃんとの約束や。女の子が落ち込んどったら、まず慰めろて」

「基本に忠実じゃが、応用力が無さそうじゃのぉ・・・」

「何か言うたか?」

「いやいや、我は何も言わんよ」

 

 

その時、わぁ・・・と、歓声が聞こえた。

 

 

『優勝は、フェイト&夏美ペア――――っ! 総合力の高さで他を圧倒しました!』

 

 

夏美ねーちゃん、勝ったんか・・・。

そんなことを考えとったら、誰かにぶつかってしもた。

 

 

「・・・っと、すんまへ・・・って、あんたは」

「キミは・・・」

 

 

そこにおったんは、白髪の兄ちゃん。

夏美ねーちゃんと組んどった、フェイトとか言う奴やった。

何や、大事そうに赤い小箱抱えとるみたいやけど。

 

 

フェイトは軽く周囲を見渡すと、俺を見て。

 

 

「アリアは?」

 

 

とか、聞いてきよった。

・・・あ、何やろ、急にムカついてきたで。

今すぐにコイツ、ぶん殴りたい衝動に襲われとんのやけど、俺。

 

 

「知らんのぉ」

 

 

せやからやろか、俺の声に、妙な棘があった。

フェイトは、静かに俺を見とる。

 

 

「んん? 何や、怒ったんか?」

 

 

フェイトは、何も答えへん。

その代わりに、何も言わずに俺の横を通り過ぎようとしよった。

ち、無視・・・。

 

 

「すんなや!」

 

 

振り向きざまに、フェイトの肩を掴んだ。

いや、正確には・・・掴んだと思う、やな。

 

 

いつの間にか、ひっくり返されとったんやから。

 

 

「・・・っ」

 

 

ゴキンッ・・・と、鈍い音が頭の中に響いた。

身体ごとひっくり返されて、床に頭を打った音やろ。

俺はいつも気で身体を強化しておるから、痛いわけや無いけど。

 

 

それでも、あんなにあっさり投げられるとは思わんかった。

強いやんけ、あいつ。

・・・って言うか。

 

 

「また、負けた・・・」

 

 

いや、いつもやったら「勝負はこれからや!」とか言うて、立つんやけど。

今はそんな気分やないし、そもそもこんな所でガチでやったら、千草ねーちゃんに怒られるし。

まぁ、ええわ・・・とにかく。

 

 

俺、やっぱ弱いなぁ・・・。

そう言えば、晴明のじーちゃん、どこに飛んだんかな。

 

 

「小太郎君?」

 

 

晴明のじーちゃん探そうとした時、逆さまな視界の中に、夏美ねーちゃんがおった。

青い水着の上に、タオルケットを羽織っとる夏美ねーちゃん。

不思議そうな顔で、俺を見とった。

 

 

「何やってるの、倒立?」

「・・・そんなようなもんや」

 

 

適当に答えて、ゴソゴソと身体を起こす。

さっきの所は、見られてへんかったみたいやな、良かった・・・。

・・・良かったって、何がやろ。

 

 

なんとなく、目ぇ合わせられへんかった。

 

 

「ごめんね、小太郎君」

「・・・何がや」

「優勝の景品、さっきの人にあげちゃった」

「景品?」

 

 

そういえば、そんな物があったかもな。

興味なかったから、あんま覚えて無いけど。

 

 

「ええよ、別に」

「あれ? 何拗ねてるの?」

「拗ねてるわけやない・・・」

「・・・やきもち?」

「はぁ!?」

 

 

やきもち!? 俺がか!?

なんで俺が、やきもちなんて焼かなあかんのや?

 

 

そう言おう思うて、夏美ねーちゃんの顔を見たら。

 

 

「・・・ん?」

 

 

何や、えらい上機嫌そうで。

・・・言う気が、失せてもうた。

 

 

 

 

 

Side フェイト

 

怒ったか、と、彼に問われて。

まず最初に、バカな、と思った。僕にそんな感情は無い。

 

 

けれど、ならどうして僕は、こんなことをしているのだろう?

 

 

「・・・アリア」

 

 

アリアの魔力を頼りに、控え室まで戻ってきた。

そこには、誰もいなかった。

だけど、彼女の気配を感じる。ここに、いるはずだった。

 

 

返事が無い、姿も見えない。

つまりは、隠れられている・・・と言う事実に、どう言うわけか、身体が重くなったような気がした。

 

 

「アリア」

「・・・っ」

 

 

息を飲む音が聞こえた。ついで、ガチャ・・・と、何かがぶつかる音。

奥の方に進むと、そこは、一次審査で使った衣装がしまわれている部屋。

その部屋の一番奥に、かすかな呼吸音を感じる。

 

 

カチャ・・・と、クローゼットを開けると、いた。

 

 

「・・・アリア」

「・・・どうも」

 

 

バツの悪そうな顔で、アリアが膝を抱えていた。

いつもより小さく見えるその姿は、何だか儚い印象を僕に与えてくれる。

 

 

しばらく、沈黙が続いた。

1分くらい経ってからだろうか、彼女が口を開いた。

 

 

「・・・村上さんは、良いんですか?」

「うん」

「・・・随分と、仲良くなってたみたいですね」

「うん」

「・・・村上さん、良い人ですもんね」

「うん」

「・・・村上さん、可愛いですものね」

「・・・うん?」

 

 

最後のは、ちょっとわからないけれど。

アリアは顔を俯かせたまま、ワナワナと震えていた。

・・・?

 

 

「ひ・・・」

「ひ?」

「一つくらい、否定してくださいよ―――――っ!!」

 

 

突然そう叫んで、僕のことを突き飛ばしてきた。

僕が、何が何だかわからない内に、彼女は僕に飛びかかってきた。

そのまま、僕の胸をポカポカと叩き始める。

 

 

「もう・・・もう! 何なんですか、教室では和泉さんにちょっかいかけて、ここでは村上さんですか!? 浮気性? フェイトさん浮気性なんですか!?」

「い、いや別に」

「そう言えば、前に会った時は可愛い子2人も連れてましたもんね! モテモテですか、モテモテなんですね! 付き合ってられませんよぉ―――――っ!!」

「・・・?」

 

 

ポカポカと叩かれながら、考える。

どうして、彼女は怒っているのだろう。

 

 

「・・・ええと、アリア?」

「わかってますぅ、最初の段階で色々間違えられちゃって、フェイトさんも困ってたのはわかってました! でもでも、私にだって考えがあったと言うか、そこの所をもう少し察してくれても、良いじゃないですか!」

「え・・・うん。そこは、わかってる。それについてはもう終わり」

「終わり!? まだ何にも終わってませんよ!? 始まってすらいないと言うのに! まだ話し合いの余地は残っているでしょう・・・2人で築いてきた関係を、一人で一方的に終わらせるなんて、どう言う了見ですか!?」

 

 

僕達がいったい、どんな関係を築いてきたというのだろう。

あと、何が始まって終わるのだろう。

正直な所、彼女の言っていることの意味が、僕にはわからなかった。

 

 

ただ、アリアを落ち着かせなければならないと言うことだけはわかっている。

とりあえず、思ったことを口に出してみる。

 

 

「・・・村上さんは、良い人だね。よくわからないけれど」

「やっぱり!」

 

 

何が「やっぱり」なのだろう。

 

 

「どうりで妙に優しいなと思っていました・・・情が移ったんですねそうなんですね。こんなことならボディビル研の予算をカットするよう上申しておけば良かった・・・!」

「・・・優しくしたつもりは、無いんだけど」

「はいダウトー、優しくしてました! すっごく優しくリードしてましたぁ!」

「うん」

 

 

それはそうだろう、僕には村上さんに優しくしなければならない理由があったのだから。

 

 

「村上さんは、キミの生徒だからね」

「へ?」

「キミの生徒だから、丁重に扱った」

 

 

でなければ、気を遣ったりもしない。

村上さんが、アリアにとって大切な物の一つだと思ったから、そういう風に扱った。

 

 

「キミにとって大切な物だから、僕もそうしようと思った」

「へ・・・い、いえ、騙されませんよ、ドレスが似合うって口説いてましたもん!」

「くど・・・? あれは、キミが選んだドレスだから、合うって言ったつもりなんだけど」

「・・・・・・ら、『秤(ライブラ)』!」

 

 

突然、アリアは何かのカードを取り出して、叫んだ。

それから、僕のことをキッと睨んで。

 

 

「い、今の言葉に嘘はありませんか!」

 

 

なんて、聞いてきた。

どうやらあのカードは、相手の嘘を見抜くらしい。

もちろん僕は、嘘なんて吐いていないから、正直に。

 

 

「うん」

 

 

そう、答えた。

 

 

するとアリアは、目を丸くして。

次いで、急激に顔を赤くしていく。そして・・・。

 

 

「・・・っ!」

 

 

もの凄い勢いで、クローゼットの中に戻り、かけられている衣装の中に隠れた。

何やら、モゴモゴとした後・・・。

 

 

「だ、騙されませんよ!」

 

 

そう、叫んできた。

 

 

「そ、そうだとしても、最後までやる必要は無かったじゃないですか・・・!」

「ああ、それは」

 

 

側に転がっていた小箱を手にとって、中身を確認する。

無事だった。

そして、それを持って、アリアの傍に行く。

 

 

「これ」

 

 

蓋を開けた状態で、見せる。

アリアは赤い顔のまま、なかなかこちらを見ようとはしなかったけれど。

しばらくして、諦めたようにこっちを、僕の手元を見た。

 

 

その顔が、小さな驚きの色に染まった。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

「これ・・・」

 

 

フェイトさんの持っている小箱の中には、このイベントの優勝景品。

お揃いのアクセサリー。ペアブレスレット。

 

 

「お揃いの物を贈るのが、良いと聞いた。よくわからないけど、これはオリジナルで・・・同じ物は無いと説明された」

「だ、誰から聞いたかは知りませんが・・・」

 

 

お揃い・・・それも、身に着ける物系を贈るとか。

どれだけ、自分に自信があるんでしょう、この人。

・・・まぁ、わかっていない可能性もありますが。

 

 

「キミに」

 

 

フェイトさんの、無機質で綺麗な瞳が、私を見ていました。

と言うか、今気付いたんですけど、フェイトさん水着じゃないですか・・・!

薄い青色のパーカーを着ているとは言っても。

 

 

え、じゃあ私、そこに飛び込んで胸叩いてたんですか?

と、とんでもなく恥ずかしい・・・!

穴があったら入りたいとは、このことでしょうか。

 

 

とてもではありませんが、フェイトさんの顔が見れませんでした。

赤くなる顔を、目の前の衣装に埋めます。

 

 

「キミに・・・受け取ってほしい」

「ちょ、ちょっと待ってくださっ・・・今、顔が熱くてそのっ」

「暑いの?」

「そ、そうです! だから・・・ふぇっ?」

 

 

シャ・・・と、視界が明るくなりました。

何事かと思えば、フェイトさんがクローゼットを完全に開け放ち、しかも衣装を全部放り出していました。

 

 

「な、何してるんですか!?」

「いや、暑いって言うから・・・換気を」

「な、ちょ・・・あ! ワザとですね、ワザと天然なフリを・・・!」

「・・・さぁ、良くわからないな」

 

 

す・・・と、フェイトさんの手が伸びてきます。

私は思わず身を硬くして、ぎゅっと目を閉じました。

 

 

頬に触れるか触れないかと言う位置に、フェイトさんの手の気配を感じました。

でも、それは私の肌に触れることなく、下へ。

私の左手に、そっと触れました。

 

 

まるで、壊れ物を扱うかのような、大事な物を扱うかのような、優しい力加減で。

掌から感じるフェイトさんの体温が、何故かすごく、その・・・。

 

 

「こ、こそばゆい、です」

「そう・・・」

 

 

フェイトさんは小箱の中から、小さい方のブレスレットを取り出すと、それを私の左手の前に。

右手で私の左手を持ち上げ、左手でブレスレットを。

え、あ、ちょ・・・!

 

 

「ちょ、ちょっと待っ・・・!」

「嫌かい?」

「そ、そういう言い方は、何と言うかその」

 

 

モゴモゴと、自分でも何を言ってるんだか、わからない状態で顔を上げると。

フェイトさんが、不思議そうに私を見ていました。

その顔を前にすると、なんだかもう、何も言えなくなってしまって。

 

 

「そういう言い方は、その・・・」

「うん」

「・・・ず、ズルい、です」

「そう・・・それで?」

 

 

かぁ・・・と、顔がまた一段と赤くなるのを感じました。

それから、左右に視線を彷徨わせて。

結局。

 

 

「・・・い、嫌では・・・無い、です」

 

 

小さな、本当に小さな私の声に。

フェイトさんは、いつものように。

 

 

「・・・そう」

 

 

と、答えました。

 

 

 

シンシア姉様、殿方からアクセサリーをいただきました。

しかもペアです。

 

 

 

アリアは、なんだか、その・・・す、少し、少しだけ、その。

う、嬉し・・・なんでもありません!

き、聞かなかったことにしてください・・・!

 

 

 

 

 

<おまけ――――ちび達の冒険②・図書館探検部>

 

「あ、あわわわわ」

「ちびアリアさん、大丈夫ですかー?」

「も、ももももちろん、大丈夫に決まってるですぅ!」

 

 

ちびアリアとちびせつなは、未だに迷っていた。

と言うか、もはや主人の命令を忘れているのではないかとすら、思えてくる。

 

 

今は、どう言うわけか図書館探検部の「図書館島探検大会」に紛れ込んでいる。

断崖絶壁の中に本棚がズラリと並んでいる様は、見る者を魅了すると同時に、圧倒するだろう。

そしてそれは、ちびアリアと言えど例外ではなかった。

 

 

(あ、ありえねーですぅ。どんな神経の人間が作ったんですぅ!?)

 

 

ちびアリアは、おっかなびっくり、遅々としたスピードで、探検大会の人間の最後尾を歩いていた。

最初は「ついてくるですぅ」とか言って、最前列にいたのだが・・・。

 

 

「ちびアリアさん、もしかして怖いですか? おてて繋ぎますですか?」

「ば、バカな、この私に限って怖いなどと、引かぬ・媚びぬ・省みぬが私の信条ですぅ」

「じゃあ、先に行きますねー」

「ちょいと待つですぅ」

 

 

ガシッ。

ちびアリアは、ちびせつなの手を掴んだ、それも両手で。

 

 

「そ、そこまで言うなら、手を繋いでやらなくも無いですぅ」

「信条はどうしたですか?」

「そんな物、そこの滝に捨てて・・・なんでこんな場所に滝が!?」

「綺麗ですねー」

「他に言うことがあるはずですぅ・・・!」

 

 

もしかして、意外と大物なのではないか。

ちびアリアはそう思うと、恐れおののいたような目で、ちびせつなを見た。

一方のちびせつなは、楽しそうに歩いている。

 

 

「じゃあ、れっつごーです!」

「だ、ダメです走って跳んで回っちゃあぁ~~~!」

 

 

その後、ちびアリアはちびせつなによって、KO寸前まで追い込まれた。

「あの時、ちびせつなが転ばなければ、わからなかったですぅ」とは、後のちびアリアの証言である。

 




エヴァ:
エヴァンジェリンだ!
なぜだか無性に、今すぐアリアの所に行かねばならないような気が、する!
なんだ、この感覚は・・・?
具体的に言うと、アリアがどこぞの誰かに口説かれているような・・・ふ、まさかな。晴明もいるのだし、大事にはなるまい。


それはそうと、今回の新規魔法具はこれだ。
秤:haki様の提供だそうだ、元ネタは「CCさくら」だな。


エヴァ:
では次回は、おそらくはライブの話になるかと思う。
では、縁が合えば、また会おう。
さらばだ!

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