魔法先生ネギま~とある妹の転生物語~   作:竜華零

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・このお話はあくまで可能性の話です。
(本編の未来がこうなるかは未定)
・時間軸的には、本編の100年後です。
(国際情勢や個人の関係が変わっている可能性ありです)
・本編には直接は関係しない予定です。
・試験的な物で、続編の予定は今の所ありません。
*こうした未来話、IF話が苦手な方はご注意ください。

では、以上の点をご了承して頂いた上で・・・。
どうぞ、未来編です。




未来編「フェリア姫のお友達」

Side フェリア

 

私の一日は、プニプニから始まるんだよ。

毎朝、私を起こしに来てくれる茶々丸のプニプニで始まるんだよ。

 

 

「・・・(プニプニ)」

「・・・んぁ・・・」

「・・・(プニプニプニプニ)」

「んっ・・・うにゅ・・・」

「・・・(プニプニプニプニプニプニ)」

「ふみゅ・・・んっ、みゅ、みゅー・・・」

「・・・(プニプニプニプニプニ「・・・んやーっ!」・・・おはようございます、フェリアさん」

「・・・にゃー!」

「ニャーでございます、フェリアさん」

 

 

ほっぺを突かれるのに我慢できなくなって起きると、目の前にいつも通り茶々丸がいる。

緑色の髪をポニーさんにした、メイドさんなんだよ。

茶々丸はいつも、私のほっぺをプニプニするんだよ。

私が「にゃー」って怒っても、全然やめてくれないんだよ!

それどころか、私から枕を取り上げたりするんだよ。

 

 

鬼だよ・・・これは、鬼だよ。

千影ちゃんが言ってた、とーよーの鬼に違いないよ。

 

 

「本日のアーリーモーニングティーは、旧世界から取り寄せたセイロンです」

「にゃー」

「朝食には食パンとスコーンとパンケーキが焼けておりますが、どれになさいますか?」

「にゅー」

「ジャムは、苺ですね?」

「にょー」

「はい、デザートは特製の苺ゼリーですよ」

「大好き―――っ!」

 

 

天使だよ、茶々丸は天使だよ!

ヘレナちゃんが「天使様は天国にいるんですよ」って言ってたけど、ここにいるよー!

 

 

「大好きーっ、茶々丸、大好き!」

「・・・(ジー)」

「・・・茶々丸?」

「いえ、録画はしていません」

「ろくが?」

「さぁ、顔を洗いましょうね」

「はぁーい」

 

 

茶々丸は、たまに固まって私を見てるの。

でも、しつこく聞かない約束なの。

 

 

朝のお紅茶を飲んだ後、顔を洗うの、寝癖のついた髪も綺麗にするの。

洗面室とか食堂に行く途中で、私の着替えも終わります。

歩いてる最中に茶々丸が脱がせて、通路に控えてる他のメイドさん達に渡すの。

着る時は逆、メイドさんが持ってるのを茶々丸がチェックして、歩いてる最中に私に着せてくれるの。

 

 

「おー、何だ、今日も寝坊かフェリア?」

「あーっ、ばーやだ!」

「ばーやはやめろ!」

「ばーや、ばーや!」

「だからやめろと・・・・・・ああ、もう、今日も可愛いなお前は―――――っ!」

「きゃ~♪」

 

 

食堂に行くと、同い年くらいの金髪の女の子・・・エヴァンジェリンのばーやに会えた。

同い年に見えるけど、実はフェリアの・・・えっと・・・な、ななじゅうばいも生きてるんだよ。

・・・だから、何なんだろう・・・?

 

 

エヴァンジェリンのばーやにムギュギュ~ッとされた後、朝ご飯を食べるの。

パンには苺のジャムをたっぷりつけるの。

一つ一つ、茶々丸がチェックしてくれるの。

 

 

「それで、今日は何をして過ごすんだ、フェリア?」

 

 

何が面白いのかわかんないけど、エヴァンジェリンのばーやは私がご飯を食べてる所を見てる。

たまに手を伸ばして、ほっぺのパンくずとかを取ってくれます。

 

 

「ん~・・・どうしよっかなぁ」

「もし何も無いなら、私と魔導機械学の復習を・・・」

「街に行ってきまーすっ!」

「・・・・・・」

「・・・マスター、うなだれないでください」

「・・・うるさい」

 

 

朝ご飯を食べた後は、お人形のチャチャゼロを頭に乗せて、街に出るの。

エヴァンジェリンのばーやは好きだけど、お勉強は嫌いなの。

 

 

「ケケケ、キョウハドースンダ?」

「アルト君の所に行くの!」

 

 

皆には内緒なんだけど、チャチャゼロはお人形さんなのに喋るんだよ。

内緒だよ、誰にも言っちゃいけないんだよ・・・?

 

 

 

 

 

Side アルト・アルトゥム・ココロウァ

 

100年前に詠唱魔法が消えてから、魔法世界では魔導機械技術が発展した。

最初は弱っちかったそれも、100年もすりゃあ、それなりにはなる。

シュテット理論って言う難しい理論を使って、空気中の精霊の力を機械を使って発揮する技術。

旧世界の技術とはちっとばかし違う。

 

 

100年前は魔力量でほぼ人生が決まってたらしいけど・・・。

今時、魔力量なんて誰も気にしねぇよ、軍くらいじゃね?

 

 

「ふぃ――っ・・・親父ぃ! こっちの精霊エンジンの内圧、やっぱおかしぃぜ!」

「おーう! 後はこっちで調整してみらぁっ!」

 

 

俺が今いんのは、ウェスペルタティア王国首都駐留艦隊のドックだ。

オスティアの浮き島の一つを丸ごとくり抜いて造ったドックで、ここだけでも大小30隻の軍艦が停泊してるんだぜ。

他のも合わせると、150隻からの艦隊が首都防衛のために配備されてるわけだな。

 

 

俺の親父はその中でも最重要の艦、王国艦隊総旗艦『ブリュンヒルデ』の機関長なんだ。

100年前から動いてる艦で、今でも王様が乗る。

ま、最近じゃ戦争なんてねーから、整備だけしてる感じだけどな。

 

 

「つーかよぉ、おめーはまだ12なんだから、外で遊んでくりゃ良いじゃねぇか」

「んだよ、俺がいたら邪魔なのかよ?」

「そーじゃねーけどよ、俺が母ちゃんに怒られんだろーがよ」

「良いんだよ、俺はこう言う場所が好きなんだから」

 

 

整備服姿で工具箱を担いで歩く親父に、俺はそう言う。

実際、俺は機関室が好きだった。

ここは、火の精霊がたくさんいるからな・・・俺の家は、昔から火の精霊と親和性が高い。

だからか、俺も昔から熱い所とかが好きだった。

 

 

胸元の変な形のペンダントを指先で弄りながら、俺は何気なく親父を見た。

親父は、燃えるような赤い髪がツンツンしてる、イカす髪型だ。

正直、羨ましい。

俺の髪は婆ちゃんに似たのか、白いし細くて、無駄にサラサラしてる。

もっと、男らしい髪質になりたかったぜ。

 

 

「ア――ル――ト――く――んっ!!」

「・・・あ?」

 

 

機関室から出た所で、誰かに呼ばれた。

・・・つーか、あの声はぐぅあっ!?

 

 

横っ腹に、衝撃が走りやがった。

誰かのタックルを喰らった俺は、成す術もなく通路に倒される。

そいつは悶絶する俺に構わず、俺の上でピョンピョン跳びはねると言う拷問を加えてきた。

な、何て恐ろしいコンボなんだ・・・。

 

 

「わ・・・わかった、俺の負けだ。だからもう許してくれ・・・」

「・・・? アルト君、なに変なこと言ってるのー?」

「変なことじゃねぇよっ!? むしろ当たり前のことを言ってんだろ!?」

 

 

ガバッと腹筋だけで起きると、そいつはコロコロと俺の上から落ちた。

頭の上に人形を乗せた白いドレスの女の子。

一見、ただの頭の緩いお子様に見えるだろう。

だが驚くなよ、こいつは・・・。

 

 

「・・・で、今日は何の用すか、姫様」

 

 

そう、こいつはウェスペルタティア王国の第一王女にして第一王位継承権保持者。

フェリア・アマデウス・エンテオフュシア殿下なんだぜ?

見た目はただのお子様だけどな。

 

 

「・・・」

「機関室なんて、姫様の来る場所じゃねぇっしょ?」

「・・・」

「後、俺に会いに来るのも不味いっしょ・・・一応、遠縁の親戚と言えなくも無い相手とは言えね」

「・・・」

 

 

・・・何で、頬を膨らませてんだコイツ。

俺は、至極当然の主張をしてるはずなんだが・・・。

・・・はぁ・・・。

 

 

「・・・何の用だよ、フェリア」

「遊ぼ!」

 

 

名前で呼んだ途端、姫様・・・フェリアは、満面の笑顔でそう言った。

予想通りの態度と言葉に、また溜息を吐く。

 

 

勘弁しろよ、後でゲーデルの冷血女に睨まれるのは俺なんだぜ・・・。

 

 

 

 

 

Side ヘレナ・フォルリ

 

魔導機械文明の発展に伴い、ゲート管理の仕事も多様化しています。

特に短距離転移タイプのゲートは、人・物の物流を支える極めて重要なセクションです。

私の両親は2人とも、オスティアのセントラルゲートポートで働いています。

つまり、私の両親によってウェスペルタティアの物流の一部が機能しているのです。

共働きであまり会えないのは寂しいですが、私はそんな両親を誇りに思っています。

 

 

かく言う私もこの度13歳となり、首都の国立学校の入学試験をパスした上で、公務員になるための勉強中です。

ゲートポートで働くためには、様々な知識と資格が必要なのです。

 

 

コンッ、コンッ。

 

 

「・・・あら?」

 

 

その時、部屋の窓が誰かに叩かれたようです。

今日は休日、一人で静かに勉強しようと思っていたのですが、お客様のようですね。

2階にある私の部屋の窓を叩くのは誰か・・・候補は何人もいませんけど。

 

 

ガチャリ、と窓を開くと、そこにはオスティアの市街地の景色が・・・。

・・・見える前に、見知った顔が二つ、単車の上から私を見ていることに気付きました。

 

 

「よっ!」

「ヘレナちゃん、遊ぼ!」

 

 

そこにいたのは、単車を運転する白髪赤目の少年、アルトさん。

それと、そんな彼にくっつくようにシートに座ってる小さな女の子、フェリアさん。

金髪にオッドアイと言う、珍しい容姿。

王家の一人娘、本当ならこんな場所にいちゃいけない気もしますけど。

 

 

むぅ、遊びに誘われてしまいました。

勉強したかったのですが・・・誘われてしまったのなら仕方がありませんね。

そそくさと勉強道具を片付けて、窓から外へ。

そして、アルトさんの単車に乗せてもらいます。

3人乗りです、良い子は真似してはいけませんよ?

 

 

「お客さん、どちらまで?」

「地の果てまでーっ!」

「・・・それはちょっと困るので、とりあえず千影さんの所に行きましょうか」

「OK!」

 

 

まぁ、別に地の果てまで行っても良いのですけど。

それはまた今度、お弁当を持って行きましょうね。

 

 

「千影の野郎って、今どこにいんだろな?」

「この時間なら・・・オスティアのどこかにはいるでしょう」

「・・・全然、絞れてねぇじゃねぇかよ」

「れっつ、ごー!」

「安全運転で、行くぜ!」

 

 

・・・アルトさんは、意外と法定速度を守る方です。

なので、あまり速く無かったと言っておきましょうか。

これも、魔導機械文明の弊害ですね。

 

 

 

 

 

Side 天ヶ崎 千影(ちかげ)

 

ズズ・・・と、旧世界の日本から取り寄せた緑茶を啜る。

・・・実に、平和な休日や。

僕が10歳にしてここまで平和を愛するのは、それなりの理由がある。

 

 

僕の家は、代々旧世界と新世界の間を仲介する役目を担っとる。

旧世界連合代表特使と言うのが、その役目の名前や。

 

 

「まぁ、つまる所、喧嘩を仲裁する損な役回りやよねー」

 

 

旧世界と新世界は、ここん所すごく仲が悪いからなぁ。

詠唱魔法が使えんようになった新世界と、まだ使える旧世界との確執やね。

100年前からそう言うのがあって、戦争直前まで行ったこともあるけど。

まぁ、ガチでやりあったらお互いに消滅しかねへんから、戦争にはならんかった。

 

 

ま、おかげで僕の家も生活の糧を得れとるってもんやけどな。

ストレスは溜まるわな。

僕のおとんも爺さんも、40くらいで髪の毛無くなったくらいやし。

・・・やから僕も毎日、鏡を見て頭を確認しとる。

 

 

「ハゲるんわ嫌や・・・!」

 

 

ガタンッ、とちゃぶ台に拳を叩きつける。

僕は嫌やで、そんなストレスまみれの生活・・・!

今はまだ10歳やから無理やけど、15になったらこんな家、出てったるねんや。

 

 

国とか世界とか、どうでもええわマジで・・・!

僕は、僕のために生きるんや!

天ヶ崎家の家訓にもある、「封印された鬼はそのままにしとけ」!

・・・意味は、良くわからんけど。

 

 

「せや、時代はノットストレス社会! 公務員も労働組合に入る時代や!」

「ああ、わかりますわかります。ゲートポート職員にも組合に入る人が多いんですよね」

「軍属には組合とかねーけど」

「お父様がダメって言ってたって、ばーやが言ってたよー?」

 

 

・・・ああ、あかんわ、10歳にして幻聴が聞こえるわ。

あはは、うん、幻覚まで見えてきたで。

 

 

長い黒髪の姉ちゃんが、勝手に人数分のお茶を淹れたり何てするわけ、無いわな。

白髪のイケメンが勝手に僕のお茶菓子を食べてるわけ、無いわな。

後、僕の隣に金髪でオッドアイの瞳をした超絶美少女なんておらんよ。

緑と青の瞳が宝石みたいで、フェミニンな白いシルキーワンピースが死ぬほど似合うてる同い年の娘なんておるはずが・・・。

 

 

・・・うん、そろそろ現実を見よか、僕。

 

 

「我が家へようこそ、フェリアちゃん。今日も可愛ぇな・・・結婚してんか」

「ふん?」

「現実を見た結果がそれかよ」

「あ、何、フェリアちゃんの耳ふさいどんねん、ボケアルト!」

 

 

僕の愛の告白が、届かへんやろが!

はっ・・・お前、いつもは「興味無い」みたいな面しとって、いざとなると僕の邪魔をする言うことは・・・さては!

 

 

「さては、じゃねぇよ」

「心を読まれた!? バカな・・・呪符で読心の類は防いどるはずやのに・・・!」

「それ以前の問題だろ、バーカ」

「はぁ!? 旧世界でかの晴明様の手ほどきを受けた、僕がバカやとぉ!?」

 

 

こんな・・・ちょっと火の精霊に好かれとるだけの男にバカ呼ばわりされるなんて・・・屈辱や!

良し、ここはちょっと良い所を見せてフェリアちゃんをお嫁さんにゲフンゲフン。

 

 

「アルト君、千影ちゃん・・・喧嘩はダメだよー?」

「喧嘩!? おいおい・・・おーいおいおい、フェリアちゃん。この肩を組んで顔をくっつけるまでに仲の良い僕らが、喧嘩? そんな、まさかやわ~」

「・・・離れろよ、お前」

 

 

うっさい、ボケェ!

僕かて、お前なんざと仲良くなんかしたないわ。

でも・・・。

 

 

「良かった♪」

 

 

くぅ―――・・・この笑顔のためなら、しゃーないわ!

可愛ぇなぁ・・・こん畜生め!

癒されるわぁ~・・・。

 

 

「・・・仲が良いですねぇ」

 

 

ポワポワと笑いながら、黒髪の姉ちゃん・・・ヘレナはんがお茶を飲んどった。

 

 

 

 

 

Side クレア・ゲーデル

 

・・・王女殿下は今日も、市街地へ「避難」できたようだな。

眼鏡を押し上げながら、私は王女殿下につけている部下からの報告文に目を通し、そう判断した。

 

 

「こう言う時は、ノーマークの駒の方が使い勝手が良いと言う物だ」

 

 

アルト・アルトゥム・ココロウァは国王派の技術官僚の息子。

ヘレナ・フォルリはやはり国王派の経済官僚の娘。

そして天ヶ崎千影は、魔法世界の混乱を望まない旧世界大使の家系。

いずれの親も、この国にとって無くてはならない存在だ。

 

 

特にフォルリ運輸局長は国内の物流のトップ、重要なポストだ。

平時には、軍の移動にも影響力を持つ。

 

 

「そしていずれも、100年前から王家と親交の深い家柄・・・狙ってやったのカ?」

 

 

応接室の上質なソファに腰掛けた少女が、どこか皮肉な声音で私にそう言った。

ウェスペルタティア王国工部省魔導技術局長の娘、超鈴音。

白を基調とした不思議なドレスを着た、黒髪の少女。

そして私と同じ15歳、そして最年少の正式官僚。

まぁ、2カ月誕生日がズレているだけで、私も事実上の最年少なのだが。

 

 

「偶然よ、超。私はそこまで万能では無い」

「その偶然が起こる確率を上げにかかったりは、したのだろうがネ?」

「・・・さぁ、どうかな」

「・・・面倒な女だヨ、お前は」

 

 

口元に笑みを浮かべてそう言うと、超はうんざりしたような表情を浮かべた。

腹の探り合いには疲れたと言わんばかりの動作で、肩を竦める。

 

 

「・・・で、今日はどうだったのカ?」

「着替えに3つ、食事に5つ、それと枕の中に1つ」

「・・・」

 

 

私の返答に、超は顔を顰めた。

まぁ、当然ね。

 

 

 

フェリア様の着替えと食事、そして枕に毒が仕込まれていれば、そう言う反応になるわよね。

 

 

 

それも毎日、毎朝・・・毎晩ともなれば。

ここまであからさまだと、逆に犯人の候補が多すぎて絞りきれない。

コックや使用人を捕らえても、肝心の情報は入らない。

茶々丸の存在が無ければ、確実に王女殿下の命は無いだろう。

 

 

「王女殿下のお父君・・・エリア陛下はご病気がちだ。正直、そう長くは無いだろう」

「不敬罪では無いのカ、それ」

「だが事実だ。エリア陛下が崩御されれば、当然玉座は王女殿下の物になる。そうなって困るのは・・・まぁ、順当な所で第2王位継承者」

「・・・フェストル殿下カ」

「そうだな、まぁ、あからさまと言えば、あからさまだが」

 

 

現国王と王弟の不仲は、公然の事実だからな。

宮中の勢力は二分されているし、実際の所・・・。

 

 

王女殿下は、宮殿よりも市街地にいた方が安全なのだ。

外だと襲われるだろう、と思うだろうが、実は表だった警備兵の方が信用できない。

事実、王室顧問のマクダウェル様も、過去に暗殺を企てた警備兵を何人も血祭りに上げている。

今までは王女殿下に気付かれること無く、全てを処理してきたが・・・。

 

 

「・・・アリア様がご存命であった12年前までなら、私などが心配する必要は無いのだがな」

 

 

私の言葉に、超の顔から表情が消えた。

アリア・アナスタシア・エンテオフュシア。

100年前、王国を再興した中興の祖。

超はどうも、私とは別の意味でアリア様に対して思い入れがあるらしい。

 

 

・・・まぁ、それは私にとってどうでも良い話だ。

重要なのは、超が王女殿下を裏切らない駒の一つだと言うことだけなのだから。

 

 

・・・私?

ふふん、私は王女殿下の卑しい犬の一匹に過ぎんよ。

そう、あれはまだ私がしがない学生に過ぎなかった頃の話だ・・・・・・。

 

 

 

 

 

Side 超

 

あー、全く、面倒な話だヨ。

あの後、フェリアの写真を見てトリップし始めたクレアを放って、私は執務室を出たネ。

15歳の新人官僚のくせに、執務室持ちとは嫌味だネ。

 

 

それにしても、本当に面倒な話だヨ。

過去にしろ未来にせよ、何かしかの問題はある物だが・・・。

 

 

「権力闘争とか、人間は進歩しない生き物だネ・・・」

 

 

100年前にも、そして今も。

人間は、進歩が無いネ・・・だが。

だが、フェリアだけは何としても守らねば。

そうでなければ、色々と無茶をした甲斐が無いと言う物ヨ。

 

 

「ちゃおちゃお―――っ!」

「ム?」

 

 

散歩がてら、宮殿の中庭を通りがかった所、上から声がしたヨ。

両手を前に出して力を込めると、そこに小さな塊が落ちてきた。

・・・・・・腕、折れるかと思ったネ。あと足とか腰とか。

その後に落ちてきたチャチャゼロさんも、結構トドメに近かったけどネ。

 

 

「ちゃーおちゃお――っ!」

「お、おおぉ・・・フェリア」

「ただいまっ!」

「お、おかえり・・・」

「ち――っす、鈴音さん」

 

 

ムギューッと私の首にしがみついてくるフェリア。

は、ははは・・・嬉しいのだが、元気な子だヨ。

その時、ドッドッドッ・・・と重低音を響かせて、上から一台の単車が降りてきたネ。

宮殿の一番小さな中庭とは言え、そんな物を乗りいれて良いのカ?

 

 

「一応、宰相府から許可は貰ってるんで。もちろん、ゲーデル名義っスよ」

 

 

単車に乗っているのは、白い髪に紅い瞳の少年。

アルト・アルトゥム・ココロウァ・・・私はアルトを見ると、いつも彼を思い出すネ。

アリア先生の隣にいた、あの3番目に・・・。

 

 

・・・まぁ、この記憶とも適当に折り合いをつけねばとは、思っているのだがネ。

なかなか、そうもいかないヨ。

 

 

まぁ、アルトは顔の造りは似てるけど、親戚ってだけだしネ。

性格は、むしろ・・・。

 

 

「んじゃ、姫様「むー!」・・・フェリアも、またな」

「うん!」

 

 

いつも通りのやり取り、これを聞くと、私は思うのヨ。

・・・血筋かな。

 

 

「あー、そうだ、鈴音さん」

「何カナ?」

 

 

アルトは、私に指を4本立てて見せてきたネ。

・・・今日は、4人。

クレアの配置したフェリアの護衛を除いて、4人の人間がフェリアに尾いていた。

まぁ、コレも毎日のことヨ。

 

 

嫌に、なるネ。

 

 

「ばいばーい~」

 

 

空に上がるアルトに手を振るフェリアを見て、思う。

この子には、あまり知られたくないな・・・と。

 

 

「ちゃおちゃお」

 

 

その時、腕の中のフェリアが私のことを見上げてきたネ。

真顔で、じっ・・・と、見つめてくる。

な、何カナ・・・。

不意に、ニコッ、と笑みを浮かべたネ。

 

 

「お腹すいた」

 

 

・・・コケそうになったヨ。

まぁ、お腹がすくと言うのは元気な証拠、良いこと良いこと・・・。

 

 

「・・・・・・知ってるよ」

「?・・・何か言ったカ?」

「んー、何が?」

 

 

さて、今日もフェリアは無事に帰って来たヨ。

まったく・・・オスティア王家は毒蛇の巣とか言ったのは、誰だったカナ。

 

 

まさか私が、身をもってそれを知るハメになるとはネ。

でも、これからもフェリアは私達が守るヨ。

だから・・・見守ってて欲しいネ。

 

 

・・・アリア先生。




竜華零:
こんばんは、衝動のままに書きました未来編、いかがでしたでしょうか。
あれ・・・?
おかしいですね、途中まではほのぼの路線だったのですが。
途中から、王宮サスペンスな香りが漂ってきましたよ・・・?

今話に登場してきたキャラの簡単な説明を以下に記載します。

・アルト・アルトゥム・ココロウァ
ファミリーネームからおわかりかもしれませんが、アーニャさんの子孫です。
アーニャさんの相手についてはあえて秘密です。
12歳の男の子、技術屋の父と病弱な母を持つ、火の精霊に愛されし少年。
『アラストール』を受け継いでいる模様。

・ヘレナ・フォルリ
こちらはカップリングが確定、ロバートとシオンの子孫です。
ファミリーネームから察するに、ロバートさんが婿養子。
共働きの両親を持つ、グループ最年長の女の子です。

・天ヶ崎千影
100年後まで残る天ヶ崎家。
千草さんの子孫です。旧世界に一般人な親戚がいます。
典型的な陰陽師でもあります。

・クレア・ゲーデル
ファミリーネームでばっちりわかる、クルトさんの子孫。
王女至上主義者な所は先祖代々受け継いでおります。
流派は神鳴流、でも志望は政治家。
得意技は陰謀、そんな女の子。

・・・では、またお会いしましょう。

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