魔法先生ネギま~とある妹の転生物語~   作:竜華零

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今回は少し話が飛んで、期末テストです。

主人公の立ち位置が少しずつ固まってきました。

では、7話です。


第7話「期末テスト」

Side アリア

 

突然ですが、ネギ兄様と一部生徒が消息を絶ちました。

ネギ兄様はともかくとして、木乃香さんたちが心配でなりません。

しかも図書館島です。

危険極まりありません。

そんな所に行かせる意味がわかりせんよ・・・・・・学園長?

 

 

「突然ですが、ネギに・・・ネギ先生他数名が行方不明になりました」

「「「「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!??」」」」

 

 

非常に騒がしいですね。

まぁ、無理もありませんが。

何人かの生徒に至っては、今にも倒れそうな・・・宮崎さん、大丈夫ですか?

 

 

でも、理解してほしいのです。

私の感じているストレスは凄まじい物があるのです。

 

 

明日菜さんに違法な薬品(惚れ薬)を渡して騒動を起こす。

他校の生徒とコートの取り合いで揉め事(むしろ助長)を起こす。

他にも頭痛の種には事欠かないというこの状況、もうどうにかなってしまいそうです・・・。

そして今回の失踪・・・・・・ふふ、兄様はいったい私をどうしたいんでしょうね。

 

 

 

・・・閑話休題。

 

 

 

「・・・お静かに、また新田先生に怒られますよ? まぁメンバーがメンバーだけに、学園長あたりが確実に事情を知っていそうなので、聞いてきます。それまで静かに授業を受けていてください。なお、英語の授業は私が担当しますので」

「なっ・・・アリア先生はネギ先生が心配ではないですか!?」

 

 

欠片も心配ではありません。

でもそれを言うと雪広さんがさらにヒートアップしそうなので黙っておきます。

 

 

ネギ兄様も教師の端くれです、生徒くらい守るでしょう。

それすらできないなら、本気でウェールズに帰った方が良いです。

そして今は私も教師です。

2-Aの生徒を守る義務があります。

なのでその義務を軽視する輩には、怒りを禁じ得ません。

 

 

「それも含めて、確認してまいります。学園長先生も無能ではないでしょうから、事態の把握くらいしているでしょう」

「でも・・・」

 

 

というか、極めて高い確率で学園長の陰謀であるような気がしてなりません。

 

 

「話は以上です」

 

 

何やら雪広さんあたりが騒いでいますが、今は捨て置きましょう。

さて・・・。

 

 

「私の生徒に手を出したらどうなるか・・・思い知らせてさし上げましょう」

 

 

 

 

 

Side エヴァンジェリン

 

「・・・なんか、アリア先生怖かったね~」

「いつももっと柔らかい話し方だもんね~」

 

 

ガキ共がなにやら騒いでいるが、もしあれが兄を心配する妹のように見えているのなら、大きな勘違いだな。

 

 

「くくっ・・・・・・」

 

 

あのアリアが、兄が失踪したぐらいで動じるものか、あいつはそんなに可愛い娘ではない。

まぁ、普段教師をしているあいつしか知らんクラスの連中からすれば、兄が心配で仕方がないように見えるのかも知れんがな。

 

 

あれは心配というよりも・・・自分の領分を汚されたことに怒っているな。

クク・・・じじぃめ、良い様だ。

何やらさきほどからクラスの連中が怪訝そうな顔でこちらを見ているが、私はこれからアリアがどんな面白いことをしてくれるのか、楽しみで仕方がなかった。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

・・・アリアです。

今さらですが、なんだかとても嫌になってきました。

 

 

「・・・つまり、要約すると、こういうことですか?」

 

 

言葉に棘があるのを自覚しながら、私は目の前の学園長に対して確認しました。

 

 

「ネギ兄様他数名は行方不明になったのではなく・・・図書館島で勉強しているだけ。故に心配いらない・・・と?」

「そうじゃ」

「・・・その説明で、納得しろと?」

 

 

そこでなんでこの人は「できないの?」みたいな顔で私のことを見るんでしょう。

・・・できるわけないでしょう。

 

 

「・・・そもそも、何故図書館島に行く必要があるんですか?」

「それはもちろん、合宿形式での勉強をの」

「図書館島である必要がありません。というか、むしろあそこは勉強する環境として、不適切です」

 

 

侵入者迎撃用のトラップとか、わんさかあるじゃないですか。

あと誘惑とかも多いでしょうに。

 

 

「新たな合宿場所として管理人室を提供します。すぐに連れ戻しますがよろしいですね?」

「それは困るのぅ」

 

 

むしろ困ってほしい。

というか、この人なんなんでしょう。

すごく鬱陶しいです。

 

 

「ネギ君達のことは大丈夫じゃ、だから安心して・・・」

「できませんね。兄のことです。生徒のことです。私は家族としても教師としても今回の事態を許容できません。どうしても嫌だとおっしゃるなら、こちらも相応の行動で答えざるを得ません」

 

 

というか、何なのだろうこの人は。

大方兄様の修行の一環とか言いだすのだろうけれど、これは無いでしょう。

これ以上、面倒事を引き起こさないでください。

ホントに。

 

 

「では、迎えに行きますので」

「待ちなさい!」

 

 

そのまま学園長室を出ようとしますが、呼び止められました。

今度は何を言うつもりなのでしょうか。

 

 

「勝手な行動は許さん」

「・・・勝手な行動? どこがです? 極めて普通の対応だと思いますが?」

「とにかく、図書館島に行くことは許さん。詳しくは言えんが、テスト当日までには、ネギ君たちは戻ってくるからの」

「ですが」

「安全は保障されておると、さっきも言ったぞい」

「・・・・・・安全? 安全なものですか!」

 

 

もうこれ私、キレていいですよね?

っていうか、本当になんなんですか、この人は。

 

 

「修行か何か知りませんが・・・・・・それならネギ・スプリングフィールド個人にやらせなさい! 無関係な一般人を巻き込んでどうする!」

「なっ・・・」

「大方ネギ兄様のパートナー候補とか考えているのでしょうが・・・生徒の人生を、なんだと思ってる!」

 

 

兄様は魔法を秘匿する認識が薄い。

まぁ、私も高いとは言えないかもしれませんが。

しかし、兄様は初日で明日菜さんにバレたほどです。

それを学園長が把握していないはずがない。

しかも場所は図書館島、何もない方がおかしいでしょう!

 

 

「この世で最も愚劣な行為とは何か! それは他人の人生を、自分のエゴで踏みにじることです!」

 

 

そもそもクラス構成がおかしいのです。

魔法使いの関係者を集中させ、そこに英雄の子を教師として入れる。

何を考えているのかなど、一目瞭然ではありませんか。

 

 

「私は生徒たちを迎えに行きます。邪魔をするなら、たとえ学園長といえども・・・障害として排除します」

「・・・ぬぅ」

 

 

身体中から魔力を放ち・・・学園長と向き合います。

相手は関東最強の魔法使い・・・しかし『殲滅眼(イーノ・ドゥーエ)』がある限り、正面からの対魔法使い戦ではまず負けないでしょう。

私は黒い指輪、その名も魔法具『黒叡の指輪』を取り出し指にはめます。

ここでカードのひとつを切るのは面白くありませんが、仕方ありません。

排除します。

 

 

「・・・ぬ」

 

 

加減しているとは言え、想定外の私の魔力量に学園長の額に汗が浮かんでいるのが見えます。

構わずに、私は指輪をはめた手を振り上げ、そして。

 

 

「・・・闇よ」

 

 

ぞわり――と、私の影が揺れる。

そして。

 

 

「そこまでにしてくれないかな・・・アリアちゃん」

 

 

その声に、私は動きを止めます。

腕を下げて、声のした方を見ます。

 

 

「・・・タカミチさん」

 

 

そこにいたのは、タカミチさんです。

しかもポケットに手を入れて、臨戦態勢ですか。

・・・こんな時にまで、ちゃん付けですか。

 

 

「ここで止めるということは・・・貴方も学園長に賛成と言うことですか?」

「・・・・・・」

「・・・そうですか」

 

 

さすがに2対1、というのは、厳しいですね・・・。

負けるとは思いませんが、長引けば、面倒なことになります。

 

 

「・・・・・・そうですか」

 

 

もう一度同じことを言って、魔力を霧散させます。

そして学園長を見ないままに、タカミチさんの横を通り過ぎ扉に向かいます。

 

 

「・・・アリアちゃん」

「そちらの望み通り、迎えには行きません」

 

 

扉の前で立ち止まり、呟くように言う。

 

 

「でも勘違いなさらないでください。私は彼女たちを、彼女たちの人生を守ります。無理かもしれないけれど・・・せめて、彼女たち自身で選択できるように」

 

 

その選択の幅も、狭くなりつつあるけれど。

せめて自分の人生の選択を、悔いのないように。

私のようにならないように。

 

 

「彼女たちをこちら側に・・・こさせはしません。他人のエゴで、人生を棒に振らせはしません」

 

 

覚えておきなさい。

そう言って、私は学園長室を後にしました。

 

 

 

 

 

Side 学園長

 

「・・・ふぅ」

「大丈夫ですか、学園長?」

「おお、タカミチ君、助かったわい」

 

 

正直、アリア君のことを舐めとった。

タカミチ君が来なければ、どうなっていたかわからん。

 

 

「しかし学園長、今回のことはアリアちゃんが怒るのも無理ないですよ」

「・・・むぅ」

 

 

最善の方法だと思ったんじゃが・・・図書館島には彼もおるし。

まさか学園長室まで乗り込んでくるとはのぅ。

しかも恐ろしいことにこちらの考えを看破し、かつこのわしを脅迫しよった。

 

 

「・・・恐ろしいの」

「はい・・・まさかあれほどとは」

 

 

先ほど当てられた魔力を思い出す。

勝てぬとは思わなんだが、彼女は本当に10歳なのか?

兄ほどではないものの、強大な魔力量。

それに途中で取り出した指輪・・・禍々しい気を放っておった。

まだ何か隠しておるやもしれん。

 

 

「それで、学園長、どうするんです?」

「どうするも何も・・・このままじゃよ」

 

 

タカミチ君も結局は優しいからのぅ。

しかし、これが最善なのは間違いないのじゃ。

アリア君には、悪いがのぅ。

 

 

「・・・監視を増やすしかないかの」

「・・・アリアちゃんにですか?」

「うむ・・・タカミチ君も、出来得る限り接触してくれんかの」

 

 

彼女をこのままにしておくのは、危険じゃ。

彼女は今回の件でこちらに見切りをつけた可能性が高い。

このままでは魔法使いに、いや、世界に敵意を抱きかねん。

 

 

魔法が使えない、と言うだけでも、彼女が歩んできた道の困難さは容易に想像できる。

ネギ君と違って自分の立場を理解し、周囲への、特に大人に対しての猜疑心に満ちておるのがわかる。

子供が、大人の意思で振り回されるのを許容できておらん。

 

 

今のうちに、なんとか修正しなければならん。

でなければ・・・。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

結論から言えば、期末テストはうまくいきました。

というか、学年トップです。

正直、作為的なものを感じます。

 

 

この数日間で実感したのは、ネギ兄様がいかにクラスの方に愛されているか、ということです。

みんな、兄様のためによく勉強してくれました。

図書館島組も、とてもよく勉強してきたようです。

 

 

打ち上げパーティの最中、より親密さを増している兄様とクラスのみなさんの様子に複雑な気持ちになります。

嬉しくもある半面、不安も増します。

 

 

「どうした、不景気な顔をして」

「・・・エヴァさん」

 

 

今や私のマスターとなった、エヴァさん(そう呼べとのこと)が、グラス片手にやってきました。

 

 

「・・・場を弁えてくださいよ・・・」

「ふん、知ったことか」

「申し訳ありません。アリア先生・・・」

「茶々丸さんは悪くありませんよ」

「それでは私が悪いみたいではないか!?」

 

 

先日の学園長室での騒動を話した時には、腹を抱えて笑っていたエヴァさん。

エヴァさんは咳払いをすると、改めて私の隣に腰掛けました。

 

 

「・・・悩んでも仕方ないだろう。なるようにしかならん」

「・・・そうですね」

 

 

付き合ってみてわかったのですが、エヴァさんは意外と優しい方です。

面倒見も、結構良いのです。

 

 

「・・・優しいんですね、エヴァさん」

「んなっ!? わ、わたしはだな・・・」

 

 

慌てて否定する姿に、少し笑顔になります。

そう、今は悩んでも仕方ないのです。

私にできることは、少ないのですから。

 

 

「アリアせんせ―!」

「・・・ほら、生徒が呼んでるぞ」

「・・・そうですね」

 

 

そう、私は私にできることをするしかない。

両手に抱え込める人数には、限りがありますけど。

・・・・・・そうですよね、シンシア姉様。

 

 

 

アリアは、大切なものを守れるでしょうか。

 




最後まで読んでくださりありがとうございます。

今回の第二のタイトルは、「主人公、キレる」です。

多少無理な表現もあるかもしれませんが、楽しんでくだされば嬉しく思います。

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