第20話 狂気再び
ユーリ達と別れ、ダングレストから出たリョウとリタは森の中をあるいていた。
『エアルクレーネを調査するっていうけど、まずはどこに行くんだ?リタ』
「そうね…でもその前に、ヘリオードへ行きたいわ」
『ヘリオード?』
「あそこの魔導器が気になるのよ」
『ああ、前に暴走したやつか…分かった』
「決まりね」
まずはヘリオードへ向かうことになり、森を歩いているとリョウがある異変に気付き、突然、足を止める。
「どうしたの?置いていくわよ」
『なあリタ。さっきからなんか妙じゃないか?』
「なにがよ?」
『魔物をまったく見かけないんだ』
ふたりはダングレストから出て、一度も魔物に遭遇していない。そのことにリョウは違和感を感じた。
「それもそうね…いいじゃない、面倒くさくなくて」
『まあ、そうだけど…でも、逆に不気味だ……ん?』
「今度はなに?」
『向こうの方で声が聞こえたような…』
ふたりが声のした方へ行ってみると、そこには驚愕の光景が広がっていた。
大量の魔物の死骸が転がっており、異臭が漂っていた。
「な、何よこれ…」
『一体誰が……「魔物ごときが!私の邪魔をするな!」
突然、ふたりとは違う男の声がし、声のした方へ目をやると、目つきが悪い黒髪の男…ダフィエルが魔物を斬っていた。
「あいつ…エフミドの丘でリョウを襲ったやつ…」
『ああ、名前はダフィエル…』
すると、ダフィエルがふたりの存在に気付いた。
「リョウ・ゲキショウ……貴様から殺されに来るとはな」
『笑えねえ冗談だな…この魔物はおまえが?』
「そうだ。私の邪魔をするものには容赦はしない、たとえそれが魔物でもな…そして、次は貴様だリョウ・ゲキショウ!」
「あんた何でリョウの命を狙っているの?」
リタがダフィエルに問いかけるが、ダフィエルは
「小娘、貴様には関係ないことだ…だが!前のように邪魔をするのであれば貴様も殺す…」
「そんな脅しにビビると思ってんの?リョウ、一緒に戦うわよ!」
戦闘体勢をとるリタだがリョウは
『リタ、おまえは逃げろ』
「何言ってんのよ!?あんたひとりで戦うって言うの!?」
『こいつの狙いはあくまでも俺の命だ。リタを危険にさらすわけにはいかない』
「あたしは黙って見てろって言うの!?そんなことできるわけないでしょ!」
『じゃあ、リタは助けを呼びに行ってくれ』
「助け…?」
『ダングレストでもどこでもいい、騎士団かギルドの人間を何人か呼んで来てくれ、やつが不利になればこっちのもんだ』
ふたりでは倒せないと考えたリョウはリタに騎士団かギルドの人間を連れて来てもらい、数で勝負しようという作戦を伝えた。
「分かったわ…死んだら承知しないわよ!」
『俺は死なない。約束だ!』
リョウの言葉を聞き、リタは助けを呼びに走って行った。
「その約束は果たされることはない…貴様はここで死ぬのだからな!」
ダフィエルの姿が消える。
〖あの時の技か!落ち着け俺……〗
リョウは落ち着いてダフィエルのいた場所を見ている。すると、前方から刃が迫って来るのが見えた。
『そこだっ!』
ガキィィン
「なんだと!?」
銀雪花でダフィエルの刃を防いだ。
『あの時の俺だと思うなよダフィエル!』
ダフィエルはすぐさま離れ、リョウと距離をとる。
「刹那を防いだことはほめてやる…だか!これはどうだ!冥王剣!!」
ダフィエルは刀を振り上げ前方に黒い斬撃を発生させる。斬撃はリョウに速い速度で向かって行く。
『魔神剣!!』
リョウは魔神剣で相殺させようとしたが、魔神剣は黒い斬撃に真っ二つにされた。
『なに!?ぐあぁぁぁぁ!』
驚いたのも束の間、黒い斬撃はリョウに直撃し、後ろへ吹き飛ばされた。
リョウは受け身をとり体勢を整えるが、ダフィエルの姿が見えなかった。
『どこだ!?』
ダフィエルはいつの間にかリョウの後ろへ移動していた。
「刹那・凶刃…」
次の瞬間、無数のカマイタチがリョウを襲う。
『うわぁぁぁぁ!』
リョウの身体は切り刻まれ、そのまま仰向けに倒れる。
「手こずったが、貴様はこれで終わりだ」
ダフィエルは刀の尖端をリョウの喉に当てる。
〖ごめん…リタ…約束守れそうにない…おまえだけでも生きてくれ…早く新しい助手見つけろよ…〗
「死ねぇ!リョウ・ゲキショウ!」
ダフィエルがリョウの喉を突き刺そうと刀を上げたその時
「スパイラルフレア!!」
「ぐあ!?」
回転する炎がダフィエルに直撃し、吹き飛ばされる。
スパイラルフレアを放ったのはリタだった。
『リ、リタ…もう助けを呼んだのか…?』
「いるのはあたしひとりよ」
『バカ…野郎…なにしてんだ…』
「走ってる途中であんたの叫び声がして…助けを呼ぶどころじゃなくなって…、引き返してきたの」
「小娘ぇぇぇぇ!邪魔をするなと言ったはずだぁぁぁぁ!」
ダフィエルは起き上がり、リタに向かって走って行く
(なんて速さなの!詠唱が間に合わない!)
『やめろぉぉぉぉ!ダフィエル!リタは関係ない!』
ダフィエルはリタの後ろへ回り、リタを捕まえて首に刀を突きつける。
リョウは傷だらけでありながら立ち上がる。
「動くな!動けばこの小娘を殺す!」
「リョウ…」
『リタは関係ない…おまえの目的は俺の命のはずだ…』
しばらくの間沈黙が流れる。
「武器を捨てろ」
『え?』
沈黙を破ったのはダフィエルだった。
「武器を捨てて、私に殺されろ。そうすればこの小娘の命は助けてやる」
『……分かった』
リョウは銀雪花を後ろへ投げ捨てた。
「リョウ!ダメよ!キャッ!」
ダフィエルはリタを突き飛ばし、リョウの方に向かって行く。
「小娘、貴様はここで見ていろ。この男が殺される瞬間を」
ダフィエルはリョウに向かって刀を振り上げる。
『じゃあな、リタ…』
リョウは目をつむる。
「リョウ――――――」
リタの叫びが森の中を木霊した。
To be continued