ギャグを詰め込みづらい話でした…
「さぁさぁ張った張った!攻略組の有名な面々がいる中張らないなんてありえないだろ!?秘刀クライン!閃光のアスナ!二刀流のキリトになんと神聖剣ヒースクリフまで参加してるぜ!」
剣技大会当日、75層の闘技場の周りはお祭りかのように花火が上がり、たこ焼きやチョコバナナなどの露店に多くのプレイヤーが飲食を楽しんでいるが、特に盛り上がっていたのはどの出場選手が勝つかを賭ける賭博だった。主催のテンガロンハットを被った男の横には参加者と倍率が載っている看板が立てられ、その前でプレイヤー達は大穴に賭けるか確実に取りに行くかなどを議論している。
「キリトと団長の倍率は1.05倍、アスナは1.2倍か。まぁ妥当だな。取り分少ないが取り敢えず団長に賭けようかなぁ」
「いやいや、賭けるんだったら俺に賭けろよコノハ。絶対優勝するからさ」
「嘘だよ。誰がハイリスクローリターンに賭けるか。あと前回もお前そう言って決勝で負けたよな。そのせいで俺の全財産吹っ飛んだ訳だが」
「う…い、いや、今回こそ優勝してみせる!」
出来るといいなと心にもない事を言いながら自分の倍率がどれくらいか探し、2.1倍とキリトに比べたら高いが比較的良かった事を確認した後、時間を確認すると10:42だったのでキリトと闘技場一階にある4つの選手控え室のうち第一控え室に入った。
控え室には多くの人がこれから始まる戦いにうずうずしたり自分の武器のメンテナンスをしていた。
知り合いがいたのでその内の一人に話しかける。
「よっ、サチ」
「あ、コノハにキリト」
「サチも参加したんだな」
「うん、欲しい物があったからね」
「大会に出る程なのか。何が欲しいんだ?」
「絶対壊れない幸運上昇装備かな…今朝も転移門が作動しなくてね…」
サチからどんよりした空気が漏れ始め、不幸話が長くなるのを察知した俺とキリトは「ゆ、優勝出来るといいな」と言ってすぐその場を離れた。おかしい、もうちょっと楽しく話をする筈だったのにどこで選択肢を間違えた?と思いながら壁に寄りかかっている次の知り合いに話しかけた。
「よっ、クライン」
「おー!コノハにキリの字、お前らもやっぱ参加したか」
「当たり前だろ?前回の借りは返さないとな」
「俺はアルゴに嵌められたんだけどな」
「そりゃご愁傷さまだな」
「クラインは優勝したら何を…捕まるなよ?」
「なんで察したような顔で憲兵の厄介になる前提の話すんだよ!?」
「だってクラインって幼女ハーレム作るのが夢なんじゃ」
「違ぇよ!変な言いがかりはやめろよな!そういうコノハとキリの字はなんなんだよ?」
「俺はまだ候補から絞りきれてないな」
「俺は秘密だ」
「あのキリトさん、俺をチラチラ見ながら言うのやめてくれませんか?」
「相変わらずブレねぇなキリの字。っと、もう始まるみてぇだな」
クラインがほれと親指を向ける先、壁に張り付けられた巨大な電光板にトーナメントの組み合わせが発表されていた。
何人出場者がいるのか数えたら68人で、俺の場所はキリトとアスナ、クラインとは決勝まで当たらないが代わりにリズと団長、サチと同じブロックのシード枠の横に位置していた。俺はシード横なため7回試合があるがまぁ仕方ない。あと正直団長にはキリトと同じブロックにいて欲しかったが団長なら決勝まで行ってくれるだろう。しかし万が一の事もあるので不安要素は出来る限り潰しておこう。
『それでは11時を以って、第二回剣技大会を開始します。参加者が最大定員の64人集まりましたので第三試合まで2試合同時に行います。名前を呼ばれた方は速やかに闘技場に入場してください。カイ選手、ロココ選手、コノハ選手、ジーニア選手、入場お願いします』
「頑張ってこいよコノハ!」
「決勝で待ってるからな」
「おう!」
クラインとキリトの声援を受け、俺は控え室から活気溢れる闘技場に入った。
以下第一、二試合は特に山なし落ちなしだったのでダイジェストで送る。
第一試合は同じ控え室から闘技場に入った槍使いのジーニアスさん。
槍はリーチが長い分小回りが利き辛く、扱い辛いためプレイヤースキルの高さが顕著に出る物だ。ジーニアスさんには申し訳ないが余りプレイヤースキルが高くなかったためレベル差に物を言わせて懐に入り込み一撃、試合開始から10秒余りという速さで終わらせた。
第二試合はシード枠の両手剣使いのタナボタさん。
タナボタさんはフロアボス攻略時によく見かける攻略組の一人でダメージ狙いの両手剣使いなのだが、両手剣は攻撃スピードが遅く、片手剣との相性が悪い。隙をわざと作って振り下ろし攻撃を誘発させた所を突きで勝った。
そして第三試合、次の試合の相手を見て装備を入れ替えた俺は気合を入れて闘技場に出ると反対の控え室から禍々しい邪気と共に次の試合相手、サチが右手に黒色の単槍を、左手には盾がくっついたような形をした前腕の半分まである銀色の籠手を装備して出てきた。
まさかあのサチが、今朝も転移門が作動しなかったというバグを起こすほどの凶運の持ち主がここまで来るとは失礼だが思いもしなかった。
「まさかここまで上がってくるとは正直思わなかったぞサチ」
「ふふ…今日は運が良いのか、まだ突然の武器喪失が3回しか起きてないの」
サチは短槍をくるっと手元で回しながら微笑するが、武器喪失3回って2回の試合で6個武器を使ったとしても半分で相当だと思うんだが。
「それじゃあ始めようか?」
「あぁ」
サチから来た初撃決着モードのデュエルメッセージを受諾し、カウントダウンが始まる。
俺はジャッドシュヴァリエ、ではなく無名の剣をぎゅっと握りしめ、サチの手元にある短槍をもう一度見る。
サチの事だ、自身の不幸が発揮されても大丈夫なように、または発揮される前に終わらせる為に何か策を練っている筈だ。例えばあの黒色の短槍。短槍というのは槍の利点の一つであるリーチを捨てた代わりに貫通力はそのままに、突きからの引き戻しを早く出来る、槍にはない小回りが利く物だ。
アレを装備したのは恐らく俺の戦闘スタイルであるディフェンス&ヒットのディフェンスされた後の隙を少なくするため、もしくは短槍自体が武器喪失を起こさないくらい耐久度が高いのだろう。
それと左手の盾付きの籠手。盾の表面が妙に丸みを帯びている事から恐らくあれはパリィ用の装備だ。俺と同様に相手の攻撃を流す事で生まれた隙を攻撃するといった戦法を取るつもりなのだろうか。
まぁ始まればわかるかと思考を放棄し、空中に浮かぶ数字を目の端に入れつつサチを見る。
カウントダウンが0になり、ブザーが試合開始を告げた
『WINNER Konoha!!』
「「「「え?」」」」
と思ったら一回も撃ち合うことがなく俺の勝ちになり、俺とサチ、そして観客と隣で試合を終えて控え室に戻ろうとしていた選手二人が驚きの声を出す。え?この場合どうなるの?
『え、えー、私の目にはどちらも一撃も入れてないどころか動いてすらいないように見えたのですが、決闘システムがコノハ選手の勝利と宣言したのでコノハ選手の勝ちです、と先程運営が判断しました』
「ふ、ふふふ…今日は不幸が少ないと思ったらここで大きいのが来るなんてね…ふふふ…」
サチはそう言って邪気を増幅させながら控え室に帰っていった。
後でサチには装備出来るか分からないが幸運値が上がる装備を送ろう…。
第四試合の相手は褐色肌に厳つい顔、見事なスキンヘッド、上半身装備なしのエギルだった。
「エギルも参加してたのか」
「オレの筋肉を大勢の人に見せてやりたくてな」
そういってエギルはボディビルダーのような筋肉を惜しみなく観客に見せつけ、観客はヒューヒューと口笛や歓声を上げて盛り上がる。
エギルは優秀な商売人として名を知られているが他にも筋肉馬鹿としても有名だ。
ゲーム世界なのに「健全な筋肉には健全な精神が宿るなら、健全な精神には健全な筋肉が伴うだろ?」と筋トレをし、ステ振りは「当たらなければ問題はない」と言って8割の振り分けポイントを筋力に振り、武器は使う人が全くいない超近接武器であるメリケンサックを使用している。
筋肉の素晴らしさを共有したいのか偶に筋肉の素晴らしさを客に語る位で、基本安く物を売ってくれる気さくで良い奴だ。アスナやリズ、キリトには見習ってほしい物だ。例え好きだからと言って他人に迷惑はかけないでくれ。主に俺に。
「そういえば今日はメリケンサック装備してないのには何か理由があるのか?」
「ああ、聞いて驚け。つい昨日、『素手の決闘』をクリアしたんだ」
「まじかよ!?」
「素手の決闘」、65層にある、総アイテム重量50%以下、武器、盾などの武装無しでしか受けられない討伐クエストだ。総アイテム重量50%以下でなおかつ素手で山奥にいるフィールドボスを倒さないといけないという「絶対茅場ネタで作っただろ」とプレイヤー間で囁かれ、発見されてから二日後に超鬼畜クエストの一つに認定されたあのクエストをクリアしたと聞けば驚かない訳がない。
「装備なしと関係があるって事はクリア報酬はスキルだったのか?」
「エクストラスキル『
それを聞いて俺はエギルにピッタリすぎるスキルだなと感想を持つと同時に待てよとエギルの台詞を頭の中で復唱、すぐにメインメニューから今回の大会のルールを確認する。
引っかかっていた何かが確信に変わった俺は右手を上げて近くにいた大会関係者にその事を話すと運営と連絡を取り始め、数秒後に『エギル選手、不正により失格です』とアナウンスが流れた。
「なっ!?一体何を話したんだ!?」
「おいおい、自分の言った事をもう忘れたのか?」
「…?」
「お前こう言ったよな?『筋力、敏捷性が2倍、器用さが1.5倍になる
「…あ」
今になって思い出したような顔をするエギル。そう、今回の大会は前回のようになんでもありではなくルールがある。そのうちの一つ、『ドーピングアイテム、スキル使用禁止』にエギルは引っかかっていた、ただそれだけだ。
最初の二回以外まともな試合をしていない俺は観客からの白い視線に耐え切れずすぐに控え室に戻った。
まともに試合しろよコノハ!
タイトルは「剣技大会とはなんだったのか…」にしようと思うくらいまともに試合しませんでした
いやサチの所はまともな戦闘にしようと思ったんですけどあんまりギャグにならなさそうでしたのでこうなりました(
剣技大会に参加した人の倍率は
キリト、団長:1.05倍
アスナ:1.2倍
コノハ:2.1倍
クライン:2倍
サチ:3.3倍
エギル:4.5倍
です。他にも参加しているキャラはいるのですが本編で出なかったので省略
なんで私は剣技大会なんてものを書き始めたんだろう…
早くギャグを突っ込みたい…