多分次が最終話になると思います。
・・・夢を見ていた。
夢の内容までははっきりとは覚えてないが、確か家族と一緒に食事をしている夢だったと思う。
父さんと母さんがいて、僕がいて、それはいつもの食事の光景だった。
僕がご飯のおかわりを頼むと母さんがついでくれる。
父さんは食事中にあまり話す人ではなかったが、僕の話はしっかりと聞いてくれる人だった。
家族と会話をしていた。
一体どんな会話をしたのだろうか。
覚えていない。
多分とりとめのない日常会話なんだろうと思う。
これが現実だとどれほど良かっただろうか。
戻ることができるかどうか分からない僕が元いた場所。
家族がいる場所。
僕の今の状態はいったいどういったものなんだろうか。
まだ生きているのか? それとももう・・・。
そんな考えが頭の中に浮かんでくる。
不安だ。
不安で仕方がない。
でもそれを表に出すわけにはいかない。
声に出してしまうと恐怖で先に進めなくなる気がした。
少し寝たおかげもあるのか、疲労は大分とれていた。
そういえば夢の中での僕ってどんな格好をしてたんだ?
夢の中の自分は理想の格好になっているとどこかで聞いたことがある。
せっかく自分が出てくる夢を見たんだ。鏡でも見ておけばよかったな。
そう思った瞬間、体に電流が流れるような感覚がした。
「鏡・・・?そうだ!鏡だ!」
体が小さくなった1回目も、宙に浮くような感覚になった2回目のどちらも僕は鏡を見てから頭痛に襲われたんだった。
もしかしたら、鏡を見ることがあの頭痛をおこす原因なのかもしれない。
どうしてこんなこと忘れていたんだろうか。
少し希望が見えてきたような気がした。
とりあえずは鏡を探すところから始めるとしよう。
もう一度部屋を見渡してみる。
あるのは変わらず本棚とクローゼット、それにさっきまで寝ていた布団だけだ。
ぱっと見ただけでは鏡のようなものは見当たらない。
調べていなかったクローゼットの中を見てみると、同じ服が大量にあるだけでこれと言ってめぼしいものはなかった。
あと家の中で鏡がありそうな場所といえば・・・洗面所と風呂くらいか?
でもそこに行くにはどうすればいいんだ?
星野さんを呼べば連れて行ってくれるのか?
・・・考えていても仕方が無い。覚悟を決めて彼女を呼ぼう。
「星野さーん。ちょっと良いですかー?」
数秒待っただろうか、星野さんが扉を開けて入ってきた。
「どうしたの?さっきまで寝てたから起こさないようにしてたんだけど。」
どうやら寝ていた僕を起こさないようにしてくれていたらしい。
ますますこの人の意図が分からない。
結局なにがしたい人なんだ?
まぁいい、とりあえず聞くべきことを聞かなければ。
「さっきまで寝てたんで寝癖があるかどうか見たいんですけど、鏡ってありますか?」
「寝癖ねー」
星野さんが僕を見てくる。
なんだか人間を相手にしている気がしない。
「ぱっと見た感じついてないわよ。」
とりあえずこの返答は予想はついていた。
「そうですか・・・じゃあ顔洗いたいんで洗面所に行きたいんですけど、どこにありますか?」
さすがに洗面所に行けば鏡くらいはあるだろう。
「洗面所ね。ドアをでて左にあるわ。」
しめた。今ならドアからでられるらしい。
星野さんに軽くお礼を言ってドアノブに手を掛けた。
もしも
もしもこの扉の先が日記にあったようになにもない空間だったら
僕はきっと発狂してしまうだろう。
恐る恐る扉を開けるとそこには、
普通の廊下があった。
何の変哲もないただの廊下だ。
やはりあの日記自体が嘘だったのか?
とりあえずでて左の部屋に入る。
そこは星野さんの言ったとおり洗面所だった。
ただし、洗面所には僕の期待していたものは存在しなかった。
あるのは蛇口だけ。
こんなことってあるのか?
洗面所には鏡がなかった。
焦りからか少しの苛立ちを覚えていた。
とりあえず気持ちを落ち着かせる。
顔を洗い部屋に戻った。
戻る前に他の部屋も見ようかと思ったが、変に帰りが遅いと怪しまれる気がしてそのまま部屋に戻ることにした。
部屋に戻ると、星野さんが待っていた。
「どう?すっきりした?」
「はい。ありがとうございます。」
どうする?聞くべきか?鏡のことを
・・・一瞬考えたが星野さんに聞くことにした。
「そういえば洗面所に鏡がなかったんですけどこの家って鏡ってないんですか?」
「そんなわけないじゃない」
彼女は笑いながらそう言った。どうやら鏡自体は家にあるらしい。
「じゃあどこにあるんですか?」
「どこって、そこにあるじゃない」
彼女は本棚の横を指さした。
「いや、この部屋って、え?」
そこには鏡があった。
おかしい
ちょっと前に調べたとき、それこそ顔を洗うためにこの部屋を出るときまではそこに鏡なんてものはなかった。
なぜだ・・・?疑問が頭に浮かぶ。
しかし今はそんなことを考えている場合ではない
「どうしたの?鏡をじっと見つめちゃって」
「いえ、なんでもありません」
彼女にそう答えつつ鏡に近づく。
「もしかして鏡に何か用事でもあったの?」
「そうですね、少し鏡を見たくなって」
「へぇーそうなの」
彼女が少し笑みを浮かべたような気がした。
「ところで鏡を見たら頭が痛くなったりするかしら?」
唐突に彼女がそう聞いてきた。
背中を変な汗が流れる。もしかして僕の聞き間違いか?
後ろを振り向くことができない。
そんな状況をお構いなしに彼女は続ける。
「もしかしたら耐えられないくらい頭が痛くなって、
気がついたら別の場所にいたりするのかしら?」
聞き間違いなんかじゃない。
なぜだ?なぜこの人は僕の状況をしっているんだ?
鏡越しに彼女を見る。後ろは怖くて振り向くことができない。
鏡越しに写っていたのはさっきまで見ていた星野さんではなかった。
それは今までに2回みた、もう二度と見たくもない、歪んだ顔の人間らしきモノだった。
今までは一瞬だけだったが今回は違う。
常に顔の形を変えながらじっとこちらを見てくる。
自分の気がおかしくなっていくのが分かった。
だが僕はソレから目を離すことはできなかった。
精神の限界が近づいたとき、突然耐え難い頭痛がした。
やった!これでここから抜け出せる!
根拠のない自信がそこにはあった。
僕の意識がなくなる寸前
ソレが、あの歪ん顔の人間らしきモノが、高笑いをしたような気がした。
読んでくださりありがとうございました。
今回は今までのと比べたときに文章の量がちょっと多くなってしまいました・・・
許してヒヤシンス