KAN-SENは歳を取らないⅡ   作:ペニーボイス

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シュッツエンゲル・グルッペン

 

 

 

 

 

 

 プラタ沿岸部

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()守護天使部隊(シュッツエンゲル・グルッペン)の歴史は、大戦の直後にまで遡る。

 

 

 

 世界を戦火の只中に放り込んだ戦争の最中、当時の鉄血の指導者はある特定の人々を文字通り絶滅させようとした。

 その人々の多くが魔の手に掛かったが、しかし生き残った人々もいて、彼らは大戦の終結後アズールレーンの支援を受けて中東に自らの国家を持つことに成功する。

 周辺諸国との絶え間ない戦争を繰り返しながらも、彼らは鉄血から受けた仕打ちを決して忘れることはなかった。

 その中東某国は軍の中から選り抜きの精鋭を集めて、旧鉄血の軍人…つまりは彼らにとって到底許し難い仇敵への追撃に当てたのだ。

 

 

 世界中で旧鉄血公国軍の関係者が狙われた。

 困ったのは"真っ当な旧鉄血公国軍"の生き残りだ。

 

 鉄血の指導者は自身の絶滅計画を効率的に進めるため、ある特定の組織を除いてはその活動を味方にも秘匿していた。

 故に鉄血公国軍の中には、積極的に活動に関与した者もいたにせよ、自らが関与していると微塵も思わずに手をつけてしまった人間も大勢いたのである。

 

 そういった人間は、アズールレーン側の軍人達と同じように"ただ命令に従っただけ"のつもりであった。

 命ぜられるままに"コンテナ"を輸送し、"列車"を警備し、化学兵器を"後送"した。

 大戦が終結した後になって初めて、自身の国家が絶滅戦争を遂行していたことを知った高級将校すらも多い。

 

 そういった軍人達の存在は、しかし中東某国の報復機関…通称"猟兵グループ"による報復行為が緩まることを意味しなかった。

 彼らは常に暗殺者の陰に怯え、ある者はエウロパ大陸から去り、ある者は身分と経歴を変えて過ごすしかなくなっていく。

 

 敗戦後の旧レッドアクシズ勢力残存艦の相互扶助を目的として創設された戦友会としても、この事態はただ黙認できるものではなかった。

 その初代会長を勤めた『ヴィットリオ・ヴェネト』と、副会長に就任したティルピッツは、そういった旧鉄血軍人への保護をも行うようになる。

 精鋭揃いの"猟兵グループ"から対象を保護するために、ティルピッツ達もまた強力な私兵組織を持つ必要に迫られたのだ。

 

 これが今や戦友会直属の、戦闘組織の始まりである。

 

 

『クルト・ゼーバッハ』は元鉄血連邦空挺部隊員で、今はシュッツエンゲル・グルッペンの3個チームを率いてゾディアックボートに乗っていた。

 この部隊の目的は、同じくゾディアックボートに乗っているインビエルノ海兵隊の3個チームと共にプラタ南端の沿岸部に上陸し、軍事独裁政権が輸出を試みているであろう大量破壊兵器を発見して無力化することであった。

 

 シュッツエンゲル・グルッペンの"大ボス"に当たる現戦友会会長…つまりはティルピッツ直々の命令が下った理由は不明だが、ゼーバッハは特にその点を疑ってはいなかった。

 何故インビエルノ海兵隊と共同する必要があるのか、何故その大量破壊兵器を無力化しなければならないのかの説明は受けている。

 説明には納得したし、仮に納得していなくともゼーバッハはゾディアックボートに乗り込んだだろう。

 彼にはそれだけの義務が生じるような給料が支払われていた。

 

 

 

 さて。

 目標となる沿岸部にはプラタ海軍のアイリス製コルベットが展開していた。

 これに6隻のゾディアックボートで立ち向かうなら無謀もいいところで、この脅威に立ち向かうために戦友会はインビエルノ海軍に協力を要請したのだ。

 

 

 

 M416自動小銃を抱えるゼーバッハの遥か向こうで、突如水中から一隻のKANSENが姿を現した。

 その艤装は魔改造と言っても差し支えのないほどの近代化が施されているが、元々の艦級故に改良に適応できるほどの余裕があったらしい。

 水中から姿を現したKANSENは、躊躇うことなくその艤装から4発のKANSEN用巡航ミサイル…トマホークSを発射する。

 ミサイルは予め指定された方向に飛んでいき、やがてはゼーバッハの進路の遥か向こうの夜空が明るいオレンジ色に染まった。

 

 

『こちらボイシ、プラタのコルベットを沈めた!…この湾の脅威は去ったけど、プラタもすぐに気がつくはずだから』

 

「ああ、ありがとう、お嬢さん!ついでと言っちゃなんだが、我々がつく前に浜辺を"掃除"しておいてくれ!」

 

『うん、分かってる。アマ…んんっ、指揮官、トマホークSの発射許可を。』

 

『許可する、ボイシ』

 

 

 水中から現れたKANSEN…ボイシがまたもトマホークSを発射した。

 ミサイルは沿岸近くで燃え盛るコルベットの向こう側で炸裂し、その防衛陣地に深刻なダメージを与える。

 KANSENから提供された強大な火力のおかげで、ゾディアックが沿岸に差し掛かる頃には残骸しか残っていなかった。

 

 

「お嬢さん、支援に感謝する!…よし、お嬢さんの言った通り我々には時間がない!とっととブツを見つけて無力化しよう!」

 

「「「Jawhol(了解)!!」」」

 

 

 インビエルノ海兵隊の一個チームをボートの護衛に残して、ゼーバッハ達は浜辺へと駆け上がっていく。

 しかし上陸を果たしてまもなく、腹の底から響くようなエンジン音が聞こえてきた。

 見るとレオパルト1A2戦車が2両とMTLB装甲車が1両、上陸したチームの方へ向かってくる。

 

 

「すまん、お嬢さん!敵の戦車だ、吹き飛ばしてくれ!」

 

『分かった、伏せていて!』

 

 

 今度はミサイルではなく砲弾が飛んできた。

 大戦以来の艦砲射撃はコンピュータ制御によって正確に実行され、プラタの戦車と装甲車を鉄屑へと変える。

 

 説明を受けていたとはいえ、ゼーバッハはインビエルノに協力を要請したティルピッツの判断力に改めて感心せざるを得なかった。

 

 元々潜水を特技としていたボイシは、その特技を活かすように艤装を改修されている。

 ボイシは水中では潜水艦のような隠密性を確保できると同時に、水上に出れば水上艦の火力を提供できるのだ。

 KANSENの艤装用にサイズダウンされたトマホークSは射程を犠牲にしているが、ボイシならその短所を補い長所を引き出すことが可能だ。

 コルベットの連中は可哀想だが、恐らくはボイシの接近にすら気がついていなかっただろう。

 そうして、気づかぬ内に巡航ミサイルの大火力を受けて今は海の藻屑と化している。

 

 

 ゼーバッハは感心こそしていたものの、ボイシの挙げた戦果を呆然と眺めている時間はないことも承知していた。

 標的はこの防衛陣地から目と鼻の先にある軍倉庫で、情報によると大量破壊兵器はそこに保管されている。

 ゾディアックボートで乗りつけた連中に躊躇いなく戦車を繰り出すのだから、よほどの重要目標が守られていることは間違い無かった。

 

 

 

 チームは迅速に行動し、倉庫の制圧にかかる。

 ガスマスクを装着して武器を準備すると、無駄のない動きで倉庫へと急接近していった。

 

 倉庫にはまだ戦意旺盛な守備隊が残っていたらしく、沿岸から接近してくるチームに気がつくと即座に銃撃を浴びせてきた。

 しかしその頃にはゼーバッハは部下を展開し、既にチームは倉庫を制圧できるポジションについている。

 

 

「"ドライ"は敵に制圧射撃、"アイン"と"ツヴァイ"は挟撃に移れ。Los!Los!Los!」

 

 

 M416を高く構え、鉢合わせしたプラタ兵の胸と頭を撃ち抜きながらもゼーバッハはチームに的確な指示を出していく。

 M4カービン銃で武装したインビエルノ海兵隊のチームもゼーバッハのチームを的確に補助し、G3やG36、AK74といった小火器で抵抗を試みるプラタの守備隊を流れるように掃討していった。

 

 ゼーバッハのチームはやがて倉庫の管理室と思しき部屋へと至っていく。

 ドアを銃床でこじ開け、フラッシュ・バンを投げ入れると、爆発を待ってから一気に突入した。

 

 強烈な閃光で目をくらませたプラタ兵3名が、手に持つG3の銃口をどうにかゼーバッハ達の方へ向けようとしたものの、ゼーバッハのM416の方が遥かに早く火を吹く。

 最後の守備隊兵を排除したゼーバッハは、早速"探し物"の捜索を命じた。

 

 

 

「全員、探し物は分かっているな?この倉庫のどこかにあるはずだ。…見つけ出すんだ。」

 

 

 しかしゼーバッハのチームが捜索を始めた直後に、彼の副官が1枚の書類を持ってくる。

 それは今制圧したばかりの管理室にあったもので、2つの重大情報が記載された目録だった。

 ゼーバッハはそれに目を通すと、軽くめまいを覚える。

 

 重大情報の1つ目。

 それはゼーバッハ達が探していたものはここにはないということ。

 

 それから2つ目。

 プラタ軍事独裁政権がコルキスタンに送っていたのは、決してガスの製造設備ではなく、それよりも遥かに厄介な物だったらしい。

 

 

 

 

 

 

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