~衛星軌道上~『スラブラスター内部』
姉上が自分を囮にして私をワープさせたお陰でなんとか迎撃に来たあの騎士達から逃れることが出来た。
だがあの様子では姉上だけで逃げ切れるか………
姉上のワープも万能という訳ではなく長距離を移動するには長い時間集中する必要がある。
だが戦闘中にそんな集中をするのは不可能であり、やれたとしても視界に移る範囲が限界となる。
周りの風景から察するにどうやら今回は壁か床、天井を抜けたワープを行ったようだ。
ダメージ覚悟でなおかつ自分ではなく私をワープさせたから上手く行ったような物だが慎重に動かないと姉上の覚悟を無駄にしてしまう。
そう思った途端背後から強大な気配がする。
「ッ!?」
「ほう、悪くない反応ではないか。」
すると背後には迎撃に来た騎士と似た姿をした人物?がいた。
違う点としては騎乗している巨大な毬のような妖怪がとても大きく、髭を生やしてマントを付けている(どうやって付けているんだろうか………)
そして上に騎乗している騎士はこれまた立派な髭を生やしており、頭には王冠を被っている。
迎撃に来た騎士達は片手剣と盾だったが、この者は両手に一振りずつバスターソードを持っていた。
「先程まで気配すら感じず姿も見えなかったのですが………」
「ファッファッファ、簡単な事よ。
我が主も使えるステルスという呪文よ。
これは気配も姿も完全に消すことが出来る。
攻撃しようとすれば見えてしまうがな。」
騎士………いや、騎士王とでも言うべきその人物は愉快そうに笑いながら話す。
「成る程………しかしそのような情報を簡単に教えてしまって良いのですか?」
「なに、問題ないとも。
我らが一方的に貴様らの情報を知っていては不公平だからな。我らは力の拮抗した戦いを望む。」
「私達の事を知ってる………ということは幻想郷の者ですか………貴方達のような妖怪は確かあそこには居なかったはずですが………」
「それも簡単な話よ。最近主共々国ごと引きずり込まれただけであるな。」
ということは幻想入り………国ごとということはやはり……
「八雲紫の仕業……ですか。」
「まぁ元凶じゃの。
とはいえ一度しばき倒しておるから我が主含めてもう怒りは収まっておるがな。」
「八雲紫を………倒した………」
「さて、自己紹介といこうかの。
我が種族名は『スライムジェネラル』名前は『クラウン』と申す。
もっぱら種族名か冠じいさんと呼ばれておるがな。」
スライムジェネラル………早速目的の人物と遭遇しましたか……。
「私の名は綿月依姫、月面都市の防衛や地上の監視の役割を持つ月の使者のリーダーの一人です。
とはいえ軍部では階級としてはそこまで高くないので悪しからず。」
「ふむ、して綿月殿はこの『スラブラスター』に何用で参ったのかな?」
「私には姉がおり、そちらも綿月なので依姫で結構です。
目的としましてはこれ以上の攻撃をやめてもらうべく交渉する為に参りました。」
「ふむ、これは失礼。
だが依姫殿、先に攻撃してきたのはそちらではないか。
我らはそれに対する反撃と報復の一撃を行わせて頂いたが自分達の戦況が悪くなり降伏するのではなく攻撃を止めてくれとは………いささか勝手が過ぎるのではないか?」
「ええ、それを承知で来させて頂きました。
まともに交渉させて貰うだけの事をしていないのは百も承知です。
ですが私達としてもこれ以上月面都市に被害を出すわけにはいきません。」
するとスライムジェネラルはしばらくの沈黙の後に大きく笑い始める。
「がーっはっはっはっは!!
危険も無理も百も承知か!誠に愉快愉快。
我らは貴様らのような人物はとても気に入っている。
そうじゃな、ではどうするべきか………答えは依姫殿も分かっているのではないか?
いや……………それを覚悟してこちらに来たのではないか?」
やはりお見通しのようですね。
「ええ、こちらとしてはこれ以上の攻撃をやめて貰い、こちらの謝罪をしっかり受けて貰いたい。」
「我らとしては喧嘩を売った相手に灸を据えたい。」
「「お互い敵同士であり、意見が食い違うのであれば決闘にて決めるのが筋というもの!!」」
「お互いに刀剣を扱う剣士同士。」
「これで燃えぬわけが無し!」
すると部屋のモニターに一匹のスライムが現れ、部屋のスピーカーから機械的な音声が響く。
『READY・>
スラブラスター・・決闘システムオートスタート。
ヤりあうなら・・僕二・・被害が出なイようにしてください。>』
すると部屋の内部にかなり強大な防御結界が発生する。
「おお、すまぬなスラブラスター殿。
この部屋への配慮を忘れておったわ。」
「スラブラスター!?
まさかこの攻撃衛星そのものとでも言うのですか!?」
「そういうことじゃな。
元々このスラブラスターは我らスライム族が作り出した兵器の一つなのだがな………いつしか魔物となったのだよ。」
「魔物…………」
「まぁそなたらの言う妖怪と似たようなものと思って貰えれば結構。
それでは………………始めようか。」
『READY・>』
月の命運をかけた戦いが始まろうとしていたのだった。