兄が妹にガチ恋してると勘違いされた件 作:(兄
9/14 タイトルとサブタイ変更
「そいや、久原は『桜色の空』ってもうヤったか?」
「まだやってる途中だよ。だからヤってもねぇ。ネタバレすんなよ」
「しねぇって。ネタバレとか死ぬほど嫌いだわ」
午後8時、俺は自分の部屋のベッドに寝転がり、電話でサークル仲間と雑談に興じていた。ちなみに桜色の空は全年齢対象のギャルゲー…のR18バージョンである。俺がこいつから借りているゲームの一つだ。
「随分と時間かかってんじゃん。最速でエロシーン見に行ってると思ったわ」
「いや、俺も最初はそのつもりだったんだがよぉ」
「なに?どしたの」
そう、普段の俺なら、ギャルゲーパートはあらすじだけ見てほぼスキップしていた。だが、今回はそうしなかった。いや、できない理由があったとでも言おうか。
それもそのはず……
「めっちゃ好みの娘がいた」
「へー」
興味なさそうな返答。至極どうでも良さそうな返事に、俺はイラッとした。だから、もう一度言ってやった。
「めっちゃ好みの娘がいた」
「ア、ハイ」
「めっちゃ好みの娘がいた」
「…………」
「聞けよ。どの娘だってさ」
「はん。お前のことだしどーせ、むっつりOLのカレンちゃんだろうが」
「はぁ????」
分かったような口調で断言する電話相手に、俺はブチギレた。
今、コイツは言ってはいけない事を言った。確かに、普段の俺ならあの妖艶ボディ(ボンキュッボン)ホイホイ釣られてギャルゲーパート全スキップ後エロシーンを堪能して終わっただろう。んで、満足して「カレンエロすぎ」とかいうクソみたいな感想で終わっていただろう。
だが!!今回ばかりは違う!!俺は、声を張り上げ…ようとして親に怒られないよう小声で怒鳴った。
「俺はな!義妹(いもうと)のリセを愛してんだよ!!」
「は?」
リセとは桜色のキャラの1人で、桜リセといい、父親が再婚した母親の連れ子という良くある設定の義妹ヒロインだ。名前の通りメインヒロインの上、個別ルート前から会話もイベントも豊富なのが特長だ。
リセは天然スケベボディでありながら、兄に憧れを抱いていたために義兄に対してスキンシップが激しく、主人公の理性を瞬く間に溶かそうとする危険なキャラである。義妹要素はともかく、無垢かつエロいカラダという二律背反に萌えた。スケベボディに純粋無垢ハートとかまさに俺の好みドンピシャだった。あとボイスも。全部最高。
この娘が登場してからというもの、繰り返しイベントを見返すためにプレイ時間がヤバい。まだエロシーンのエの字も見えてないのに。
「………ぅゎぁ」
電話相手は受話器を遠ざけたのか、声が遠かった。だが、俺はあえて気にせず会話を続ける。
「マジで恋してんのよ。特に昨日見た風呂上がりとか、タオル一枚でマジやばかった」
エロいのに言動からエロスを感じない。萌えた。襲うという選択肢があったら選んでしまいそうになり……鋼の意志で悔いとどめていただろうには。(誤字にあらず)
「キャラにガチ恋とかキモ……」
心底呆れたような声がイヤホンから聞こえた。失礼なやつである。
「感情移入と言え、感情移入と」
「そんでもだよ
お前の性癖ヤバすぎだろ」
「性癖じゃねぇ。萌えポイントだ」
「いやエロゲだし」
「もはやエロ見たいってより、リセが愛おしい。リセと主人公とのやり取り自体が楽しい」
「今もなお熱心にアプローチ中なのに?」
俺は、あえて間を開けて暗い声で言ってやった。
「別に……こっちから接触しようとは思ってねぇよ」
「なに無駄に哀愁漂ってますみたいな話し方してんの?キモ」
本当に失礼なヤローだ。確かにエロゲーのキャラだが、もう俺はあの娘をそんな目で見ていない。掛け合いが見れればそれで良い。
もうさっさと切って続きをやろう、そう思っていると、通話相手も興味を失ってきたのか、投げやりな口調で訊ねられた。
「んじゃ、好感度稼いでエロ行かないのかよ」
「現状維持でバッドエンドかな」
このゲームにバッドエンドなどあるか知らんが、別にR18要素がなくとも俺は満足するだろう。そういう確信があった。
「へー、そうですか」
向こうから聞いてきたくせに、あっさりした返事で通話は終わった。なんなんだアイツ。
…………その時、俺は気づいていなかった。部屋の扉が数十cm空いていた事と、その奥に人が立っていたことには。
次の日の夜
「え、えっと……ちょっとだけ、お話してもいい…………ですか?」
「……はい?」
俺とは険悪な仲のはずである、リアル妹の久原理瀬(くはらりせ)が1人で俺の部屋を訪ねてきた。
…………なんで???