兄が妹にガチ恋してると勘違いされた件   作:(兄

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B2.親父のアホ

 

大学生の朝は遅い。なんせ午前中講義がない日もある。というか俺が出来るだけ入れないようにしている。朝しんどいから。

 

今日も今日とて、俺の朝は遅かった。

 

9時ごろに起き、一階に降りて顔洗って食卓にある朝食食べて歯磨きして着替えていざ行かんと一階に降りると、父親がいた。ちなみに母親と妹はもう居ない。というか起きた時には出かけていた。それが我が家の日常である。

 

「おっす親父。なに?ついにリストラ?」

「テレワークだって知ってんだろバカ息子」

「いでっ!でぃーてぃーだ暴力はんたーい!」

「それをいうならDVな童貞野郎」

「どっどっどど童貞ちゃうわ!」

 

父親とはこんな風に気さくに揶揄う仲だ。親子っぽくはないが、それは親子であると同時に俺らが『オタク仲間』であるからだった。

 

「にしても今期のアニメは豊作だな」

「あーだめだめ。まだ観てないやつもあんだから、ネタバレ禁止」

「そっか。ならアレの最新話は覚悟して見ろよ、急展開だぞ」

「ネタバレすんなつってんだろ!バカ!ハゲ!」

「お?いいのか?俺が禿げるとお前もそうなるぞ」

 

最近ゲーム(桜色他もろもろ)しまくってて追いついてないんだぞ!大学のレポートもやってるとアニメ見る時間ねぇんだぞこちとら!

 

そう訴えたが、こなクソ親父には効くはずもなく、

 

「ま、俺は会議中に見てるがな。コツは時たまテキトーに頭振って頷くことだ」

「働け。そして全国のテレワーカーに謝れ」

 

こんな風に父親は俺と同じくガッツリオタク……というか俺にオタク文化を教えた張本人だ。マンガ、アニメ、アイドル、動画サイト、掲示板などなどあらゆる影響を俺は父親から受けた。

 

「そう、アレは中学2年生の時だっただろうか……」

「なに?今から回想シーン?俺とバカ息子の過去話とか誰も期待してねーぞ?」

 

黙れ。なんかバカ親父に俺とオタク文化の出会いを語らなきゃならん気がするんだよ。知らねーけど(謎電波)

 

 

 

中学2年生、それは子供が大人になっていく初期段階であり、同時に子供でもあり大人でもありたいという多感な時期である。

 

俺もその例に漏れず、厨二病で反抗期で思春期とかいうクッソ面倒な性格をしていた。

 

「ぼ、お、俺に触るな!!」

「無理して一人称変えてんじゃねぇ。とりまこれ見ろ」

「し、してねぇよ!な、なにこれ?アニメ?こんな子供向けのやつ誰が見るか!!」

「それは見てから決めろよ」

 

そんな俺を諭して……諭してるかこれ?まぁ、無理矢理でも面倒見てくれたのが父親だった。父親は俺に対して多く語ることなく、それまでは隠していたオタク趣味を俺に共有……もとい押し付けてきた。

 

そして俺は……見事にどハマりした。

 

「うおすげー!?カッケー!」

 

とあるバトルアニメには白熱のバトルシーンで盛り上がり、かっこいい技名とセリフに胸打たれた。

 

「そ、そんな……ミカァぁ!!」

 

とある感動系アニメには物語に引き込まれ、ラストシーンで号泣した。

 

「くくっ!あはははははは!!!」

 

とあるギャグアニメは終始笑い転がり、時折真面目なシーンに反則だろ……と思いつつ魅了された。

 

「うはっ、あ、え、」

 

とある恋愛アニメはエッチなシーンに目を奪われ、クライマックスではどの登場キャラよりドキドキしている自分がいた。

 

「はー。すげー……マジかよ」

 

とあるミステリーアニメには種明かしされるたび呆然とし、叙述トリックで視聴者まで騙されていたことに気づいては驚愕と恐怖に襲われた。

 

 

そうして、アニメから色んなことを学んだ(学ばされた)俺は無事に多感な時期をどうにか黒歴史少なめでやり過ごすことができた。これは素直に感謝だな。口にはしないが。

またほかにも色々とあるが、俺のオタク趣味の原点はこれだと言える。

 

それからも俺は父親のオタク影響を受けつつ、すくすくと育っていった。

 

しかし、俺が2次元沼にハマって行くと、父親は懸念していたこと、子どもにオタク趣味を打ち明けなかった理由を聞かせてきた。俺は興味無かったが。

 

「お前には、妹がいるだろ。俺の娘だ」

「あ、うん」

「……俺の娘は今、純真無垢に育っている。汚れを知らない清い娘だ」

「アニメは汚れてない」

「モノの例えだよ。そんでな………………」

「早く言えって」

「俺の娘がオタク趣味全開になる姿を見たくねぇ!!!」

「あ、うん」

 

想像以上に至極どうでも良い理由だった。反応が薄い俺に焦ったのか、父親は重ねて早口で言った。

 

「いやオタク文化に染まった我が娘を想像してみろ!ファッション雑誌より漫画雑誌、アクセサリーを買う金は推しに注ぎ込まれ、外で遊ぶよりインドアゲーム三昧!夜更かし上等!メイク不要!オタクで美女なんて二次元の世界だけの存在なんだよぉー!!」

「妹とアニメ見たり遊ぶの楽しそうだな」

「…………」

 

全くもって聞き入れていない俺に更に焦りを募らせた親父は、よっぽど動揺したのか、俺を物で釣り始めた。

 

「妹にオタク文化を共有しないなら俺のDVDとBlu-ray全部貸してやる」

「他には?」

「…小説もラノベもマンガも貸す。ゲーム機もつけてやる」

「えー。古いやつ、お下がりだけー?(ニヤニヤ)」

「ま、毎月1000円やる!これで最新作買え!な???」

「え、少な。子どもだからって足元見ない方がいいよ」

「く、無駄にアニメで知識つけやがって!3000円!」

「5000円」

「い、いやそれ俺の小遣いの半分……よ、4000円だ。それ以上は……」

「いいよ。それで」

「はっ図られた!?」

「ついでにPCもちょうだい。どうせ無駄に買って余ってんでしょ。かーちゃんから聞いてる」

「もってけドロボー!!」

 

こうして完全勝利を決めた俺は、活動資金も手に入れてオタク趣味三昧の日々を過ごすことになる。

 

まあ、その分の代償は重かった訳だが。

 

「その代わり、妹との不必要な接触禁止な」

「重すぎん?」

「お前頭緩いし、ふと零してバレそうなんだよ。破ったら小遣い無しな」

「はぁ、負け惜しみが強いぞ親父」

「……言うようになったなバカ息子」 

 

その後、マリカーで戦ってボコボコにされた。容赦なく子ども相手に本気を出し、誇らしげに煽ってくる父親に威厳なぞ無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄……ちゃん?」

 

……まぁ、その約束も今日で終わりかもな。すまん親父。

 

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