兄が妹にガチ恋している件 作:妹)
窓から差し込む光で、私は目を覚ました。
「ん……もう8時」
いつもとは違う、少し無機質な時計で時間を確認する。
名残惜しく思いつつも、隣で寝ている彼を起こさないよう、入った時と同じようにそっとベッドから抜けて床に足をつける。
(それじゃ、朝ごはん作ってくるね。お兄ちゃん)
お兄ちゃんのかわいい寝顔にしばらく見惚れてから、私は服を着て朝ごはんを作るために1階へと向かった。
これは、私とお兄ちゃんのごく普通の日常。
「お兄ちゃん、起きて……起きてよ」
「はあい……おきてますぅ……」
朝ごはんができて、お兄ちゃんを起こしに2階に戻ったものの、一向にお兄ちゃんの起きる気配が無い。
(せっかく、お兄ちゃんのために作ったのに……)
平日は登校する時間の違いもあって、朝ごはんを一緒に食べることもできない。だからこそ、休日くらいは一緒に食べたい……なのに、
「朝ごはん作ったんだから!おーきーてーたーべーてー」
「おれは……まけない……」
夢で何かと戦ってるらしきお兄ちゃん。この場合、普通なら敵は悪役か眠気とかだろうけど、お兄ちゃんの場合はきっと食欲だろう。お腹減っているのに我慢するのは、お兄ちゃんの昔からの悪い癖だ。
仕方ないので、もっと食欲をそそってお兄ちゃんを起こす作戦を実行する。
「今日はお兄ちゃんの好きなホットケーキだよ。ホイップ付き!」
そうすると、お兄ちゃんは長い間悩むように唸った後、
「………………んにゃ、あと10分待……そしたら……起きて食べぅ……」
「ほんとっ!それなら、また10分後に起こすね!」
(やった!お兄ちゃんが起きてすぐ食べられるよう、準備しておかなきゃ……)
一緒に食べられることに喜びを感じながら、部屋を出ようとして……お兄ちゃんが毛布を肩まで上げて「寒い……」と言っているのが耳に入った。
(あ、そっか。私が抜けちゃったから温度下がって……)
こういう時、一番暖かく感じるのは人肌らしい。そして、それをするのは恋人の役目……だよね。
「じゃ、じゃあさ、私が温めてあげるね。お兄ちゃん」
「おう……頼んだ……」
許しをもらったのでさっそく服を抜いで、服を綺麗に畳んでからになってベッドに入ろうとした時、ちょうど目覚めたお兄ちゃんと目があった。
「……は」
「あ……えへへ。おはよう。お兄ちゃん」
今更ながら、下着姿を見られるのは少し恥ずかしくなって顔が赤くなるのを感じて、照れ笑いを浮かべてしまう。が、お兄ちゃんはそんな私の心境などお構いなしに、
「おま何してんの」
「あ、その……ご、ごめんね。裸はさすがに恥ずかしくて……」
下着を付けてしまうと、人肌の面積が少なくなる。そんな当たり前のことを指摘され、申し訳なくなる私だが、お兄ちゃんは困った表情をするだけで特に怒ってはいなさそうだった。
(い、いつかはやってみせるからね)
突然、お兄ちゃんは黙って私をじっと見つめてきた。それも隅々まで見てくるかのように目を動かし、再び目があったときに私は更に羞恥で顔を赤くしてしまった。
「ず、ずっと見られると……は、恥ずかしい……よ……」
「あ、ごめん」
しかし、お兄ちゃんはこの行為がいたって当たり前のことのように平坦な声で謝罪してきた。
(……せめて、心の準備くらいは欲しいよ)
ひと声かけてくれれば、私も頑張って我慢するのに。
優しいお兄ちゃんは私を気遣ってすぐに寝返りを打ち、スペースを空けるために壁に避けてくれた。ここまでまったく動揺していないお兄ちゃんになんだか悔しさを感じた。でも、ベッドに入った瞬間にはもう、ちょっとあった悔しさも受け入れてくれた嬉しさで塗り潰され、幸せでいっぱいになった。欲張りな私はその幸せをさらに欲しがり、眼の前の大好きなお兄ちゃんの背中に飛びつきたくなった。
「い、行くよ……えいっ」
兄が寄せた分、ベッドは少しスペースがあった……が、私はそれを狭いと思い込んで、落ちないように腕をお兄ちゃんの横を通して前に回そうとした。
「せ、狭いね。し、失礼します」
つい敬語になってしまい、嘘がバレないかと緊張して……まるで全力疾走した直後のように心臓がドキドキとうるさかった。
そのとき回していた腕を伝って、どくんどくんという大きく、一定のリズムですべてを包んでくれるような鼓動を感じとって……私はそれに、心と体の全てを委ねた。
「お兄ちゃんのおっきい…………えへへ、私もドキドキしてるよ。お兄ちゃん……」
結局、お兄ちゃんは偶に呼吸音が聞こえるくらいでいたって普通……それはそれで、私に女の子としての魅力がないのかと残念に思ってしまう複雑な気分になる。そして5分も経たず、お兄ちゃんは再び寝返りをうって私と向き合い、優しい目つきで言った。
「か、風邪ひくから服着ろ……」
「あ、うん。分かった」
お兄ちゃんはもう十分だと言ってくれたが、私はその声から少し強がっているのを見逃さなかった……でも、それを指摘することなんてしない。
「……やっぱり優しいね、お兄ちゃんは」
こういうお兄ちゃんが、私は大好きで、愛おしくて、たまらなく恋しているからだろう。だから私は素直に、ベッドを降りて服を着ることにした。
(……下着姿をじっと見てくるのは恥ずかしいから辞めてほしいけど)
「お、お兄ちゃん……じっと見つめられると……恥ずかしい……」
こう言っても、お兄ちゃんはまた紳士的に寝返りを打つか、私を心配して見守ってくれるんだろう。
……だから私は、ほんの少し勇気を出してみることにした。
「……あ、でも……お兄ちゃんが見たいなら、見てもいい……よ?」
「……っ!?」
私にもこの誘惑は恥ずかしかったけど、勢いよく寝返りを打ったお兄ちゃんを見て、意趣返しできたような、そんな仄かな達成感を感じるのだった。
これが私達兄妹の、普通じゃないけど、ごく普通の日常。
『兄が妹にガチ恋している件』
これで「一章 エピローグ」は終わりです。続くかは未定ですが、感想・応援など頂けると嬉しいです。ここまで読んで下さりありがとうございました。
追記、赤評価ありがとうございます。平均は勝ってますからね。
ヒント増やしました。以上です(活動報告ができないのでここで)
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