懐かしいな
クラスの全員が固まったのは言うまでもない。登校初日に教室でみんなにこんな挨拶をする人間などまともな筈がない..よな?これは俺でも分かる。
それでも何とか反応するようにぎこちなくもぽつぽつと挨拶をし返すクラスメイト。それでもその少女は不満そうに頬を膨らませた。
「も~!みんな元気が足りてないよ?そんなのじゃこれからの学校生活楽しめないよっ。ピリピリしちゃ駄目っ!」
cheer──そんな言葉が似合うそんな彼女の話し方にはクラス一同を納得させる何かがあった。理論じゃない。ただの感情という不確定なものだけで。
「それでー私の席はどこかな~?」
皆が話をやめ、視線を向けているのを気にすることもなく黒板の座席表を見ている。そして自分の場所を目視するべくこちらに視線を向けた。ん?なんでこっちに...
「後ろから2番目...あそこだっ!」
自分の座席に指を向ける彼女。それとは対照的に俺の気分は沈んでいった。彼女が示した席──それは俺の前であり、平穏になおかつ目立たぬ生活を送るうえでもっとも大きな障壁になるであろう人物の席だった。
「あ、君!名前教えて!」
ほら言わんこっちゃない。他からの視線が突き刺さるように集まる。ここでは、どう返すのが正解なんだ?断る...は駄目だ。それだと誰とも関わりたくないようなやつだと思われそうだ。なら正直に教えるか?...いや教えたら教えたで絡まれて面倒くさそうだ。...これ詰みじゃないか?
「綾小路清隆だ。その、よろしく頼む」
仕方がないので諦めて考えうる限りダメージの少なそうなものを選ぶ。無難な選択しを選ぶことこそが普通だろう。
「おい、あいつマジか...」
「あんなに堂々と名前を...」
どうやら選択肢を間違えたらしい。
「うん!よろしくね!清隆君!...ところでなんでそんな無表情なのー?」
「昔からこんな感じだったからな」
「へぇ~不思議だねっ!」
自分で聞いといて感想が雑過ぎるのは俺の気のせいか?それにすぐに名前を...いや普通の高校生の会話なんてこんなものだろう。きっと、多分。
「お前ら席につけ」
そんな声が教室内に響く。少し高めの足音を鳴らしながら教鞭に立った担任らしき人物。厳しそうな鋭い声にどの生徒も委縮して...
「はい、は~い!分かりました!」
例外が今目の前に現れていたのを失念していた。一体何がしたいんだ...こいつは。
「あ、ああ?」
軽快な返事と宣言、それと共にしっかり座るその生徒に先生も困惑を隠しきれていないようだった。
「私の知る限りそんな返事をして座るやつなど...いや、まぁいい。お前ら、神谷を見習って早く座れ。HRを始める」
そういえば、名前を聞かれてはいたが聞いてはいなかった。神谷っていうのか。
「あ、言い忘れてた!私の名前はね...神谷うりっていうんだ」
先生が前で話している中、こっそり教えてきた神谷は満足そうに前を向くと鼻歌を歌いながら肩を横に揺らしていた。
この理解できない行動の数々に眩暈を起こしそうになったが、どうにか耐えることが出来たらしい。先生が自己紹介を始め、説明を進めていく。これからが始まりだというのに...この先、学校生活が不安で仕方ない。
「?」
神谷うりという人物のせいで。
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