開かれていた綴込表紙をパタンと閉じると茶柱先生は話し終えた後、一間置いて息を吐いた。
「これで説明は以上だ。今日はこの場で解散とする」
その言葉をしきりに多くの生徒が立ち上がり、今日構築したであろう友達の卵の元へと歩み寄っていく。
「そういえば、ここってなんでもあるんだよな?」
「そうみたいだな。茶柱先生も言ってたし」
「じゃあさじゃあさ!せっかく10万も貰ったことだし服とか買いに行こうよ!」
「ゲーム機欲しかったからラッキー!マジでこの学校最高だわ」
「だな!流石国営の学校。太っ腹だよな!」
やはり各々から出てくる言葉には、それらが含まれている。
Sシステム
この学校独自のシステムで1ポイント=1円の価値があり、校内のあらゆるものが購入可能、さらには毎月初めに支給されるらしい。あの時の周囲の驚きようからして異常であることは間違いない。それとは別に、確実に何かあるのだろう。
後ろと前の対角線上に監視カメラが一つづつ。少し過剰すぎやしないか?それでも俺には関係ない。何事も始まらなければ何も起きていないのと変わらないからだ。
俺が求めるのは、普通で平穏な高校生活。わざわざことを起こすような行動はしない。俺は事なかれ主義だからな。俺に害がないならそれでいい。
「清隆~君!」
「え、ちょまっ...」
廊下から一直線に飛び込んできた神谷の頭突きが俺の鳩尾にクリーンヒット。考え込んで居たのが仇となったか。というか人に突っ込んで来るような場面などそうそうないわけで...。
「痛い...」
「だ、だいじょ~ぶ?」
「ああ...」
というかいつから教室の外に...?まだ、HRが終ってから数分も経ってないんだが...。
「ほぇぇ...」
「?どうかしたか?」
「...うんん、何でもないっ。それより!」
即座に立ち上がり、意気揚々と天井へ人差し指を立てる。どこか怪しい笑みにも見えるような満面の笑みを放つそんな神谷に嫌な予感が、いや間違いなく面倒くさいことに巻き込まれる。
何度も言うが目立ちたくない俺としては、ここで神谷うりという存在感が独り歩きしているような人物は関わりたくはない。これ以上邪魔されるというなら...。
「...っ」
浮かびかけた人間味のない言葉とやらをどうにか飲み込みこむ。駄目だ。このレベルでは、目的など遂行できる筈がない。...普通って難しいな。
「...清隆君?大丈夫?」
「...大丈夫だ」
俺の顔を覗き込みながら不思議そうに膝を抱えてしゃがむ神谷。とりあえず急いで立ち上がる。座ったままだと怪我をしたとでも思われそうだ。
「そっか。それでね!この学校を探検しよっ!」
「は?探検?」
「うん!色々見て回りたいな~って!」
「俺でいいのか?」
「もちろん!清隆君となら絶対面白いから!」
そこまで言われると流石に断りづらい。それに...はぁ。
「ああ、いいぞ。丁度俺も見て回りたいものがあったからな」
ここで断れば、普通とはかけ離れた存在になるのは間違いなかった。今以上に目立つのは避けたい。
「やったー!──それじゃあ、行こっか!」
「えっ、ちょっとま...」
「レッツゴー!」
俺の手を引いて駆け出した神谷に引っ張られて視線の集中する教室を後にする。こればかりは少し助かった。あの場ではどう動こうと良くも悪くも注目の的だからな。
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──-なにあれ!面白そう!
──-あ!ほらお花だよっ!かわいいねー!
──-おいしそう!食べてみよっ!
「はぁ...」
ベンチに腰掛けると足腰にドッと疲労感がのしかかる。
あれから数時間。神谷に引っ張られながら学校の敷地内をくまなくノンストップで走り回った。本当に怒涛の展開だった。すぐに店へ飛び込んだかと思えば、息つく暇もなく次の店へ。
そのまま、大まかにではあるがこの敷地内の店を回りつくした。驚くべきは興味関心への意欲の高さと無尽蔵な体力か。神谷は一切疲れた様子もなく、表情をコロコロ変えながら俺を引っ張り続けた。
本当に俺の今後が心配で仕方ない。この調子でいくと気疲れしてしまうのは間違いない。どうしたものか...。
だが不思議と満足感もある。今日1日で俺の知らないものをたくさん体験することが出来た。特にあのアーケードゲームと言うのは思った以上に楽しかった。チュウニズムか...俺を唯一負かしたあのゲームは興味深い。ただ単にリズムを刻むものだと思っていたが早く流れてくる譜面に対応する動体視力も必要になる。また、やってみるとしよう。
ふとスマホの残高を確認する。そこには94890ptと記載されていた。意外と消費は少なかった。それは店で商品を買わないことが大きかったな。その名の通り見て回るだけだったから消費自体は少なく済んだのか。
「ん...?」
あれは...
この調子だと30話くらいでまだ、暴力事件してそう。
あんまりハーメルンの作品投稿画面に慣れなくて悪戦苦闘気味です。マジで頑張れ俺。