感情を君へ   作:味噌汁豆腐

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お前らしい

「あれは...」

 

「ふふふ、なるほどねぇ」

 

同じクラスのやつか。確か高円寺…だったか?少し話しかけてみるか。今後の学校生活もあるしな。

 

「なぁ、ちょっといいか?」

 

「ん?私に何の用かな?」

 

「確か同じクラスだったよな?だから話しかけてみたんだが」

 

「なるほど。私に話しかけるなんて君はいいセンスをしているじゃないか。あのCheerfulガールといい、見苦しくない」

 

「は、はぁ…?」

 

とりあえずは褒められたと言うことでいいのか?神谷の印象が強すぎて分からなかったが高円寺も相当癖が強いみたいだ。人選を間違えたみたいだな。

 

「だがすまないねぇ。私は男を優遇するつもりはない。女の子は別ではあるが。おっと、長話は私の主義じゃないからこれで失礼させてもらおう」

 

「待ってくれ。一つ聞いていいか?」

 

「いいだろう。なにかな?」

 

「さっきまで何を見てたんだ?」

 

「簡単な事さ。この学校は少し特殊だからねぇ。君なら少し考えればわかるだろう?」

 

「俺か?...悪いが分からないな」

 

「今はそういうことにしておこうじゃないか。君の隠し事など私には関係も興味もないからねぇ。ただ、私は本気の戦いをしてみたい。だから期待しておこう。()()()()()()

 

高円寺はそれだけ言うとどこかへと歩いて行った。実際、神谷とは違ってあまり積極的ではなかったから助かった。面倒なやつが二人に増えたら対処がさらに面倒だからな。はぁ..。

 

「そういえば、神谷どこ行ったんだ...?」

 

ちょっと待っててとは言われたがあまりにも長い。何しているんだ?

 

「────いや~助かったよ!」

 

遠くの店から店員の弾むような声が聞こえてくる。ふと店を覗いて見るとそこには、店員から頭を下げられている神谷の姿があった。

 

「あんなに沢山の商品今日中には運び終らないとは思ってたけど、まさか陳列まで終わるなんて...本当にありがとう!」

 

「いえいえ、私も楽しかったので!」

 

「それじゃあお礼として来店するときがあったらたくさんサービスするよ」

 

「やった!じゃあまた来ます!」

 

そう言って店から出てきた神谷に横から声をかける。

 

「なかなか帰ってこないと思ったら店の手伝いをしてたんだな」

 

「あ、清隆君。まぁね!思った以上に時間取られちゃって、待ったよね?」

 

「別にいい。でもなんで急にそんなことを?」

 

そう問うと神谷は後ろで腕を組みながら歩き始めた。そうして振り返りながら優しく笑った。

 

「面白そうだったから、だよっ!」

 

「!」

 

神谷が、なぜこんなにも不可解な行動をするのか俺には分からなかった。だがそのなぞは今、解けた。神谷はすべての行動を感情に基づいて決めている。それは、俺には欠けていて見ることのできない行動。だからこそ分からない。理解できない。

 

前を歩く神谷にふと問いかけてみる。

 

「なぁ...」

 

「ん?な~に?」

 

「なんで俺に関わってくるんだ?」

 

「君が面白そうだったからだよっ!」

 

「どんなところがだ?どう見ても俺は面白そうには見えないんだが」

 

「その無表情なところだよ」

 

神谷は振り返り、俺の目と鼻の先まで近寄って立ち止まる。そして俺の目を真っすぐに見つめてくる。

 

「君は私があの教室に入ってきてからずっと無表情だった。何があってもずっと変わらない。それで私は気づいちゃったんだよ」

 

──-君を笑わせたらどんなに面白いだろうって。

 

「だから私は君を楽しませたい。笑わせて笑顔になってその無表情を壊してみたい。でも、今日君をどんなに楽しませようとしても君は無表情だった」

 

「...」

 

そう言った時、神谷の目は今日、ずっと見てきた中で一番輝きを放っていた。その言葉に俺の心には期待と関心がどんどんと湧き上がる。あの不可解な行動すべてが俺に対する無条件の奉仕だったわけだ。嬉しくないはずがない。

 

「だから私はこれからも君に関わり続けるよ。私が君を笑わせるまでずっと。それが私の自己満足だったとしても」

 

それを言い終えたと同時に神谷の表情は一気に緩んでいく。

 

「そんなところが清隆君の魅力なんだよっ!分かった?」

 

「...ああ、よくわかった。ありがとな神谷。今日は楽しかった」

 

「うんっ!どういたしまして!」

 

少し沈黙を置いて神谷は指を指してまた、笑顔になった。

 

「よしっ!じゃあ寮に向けて出発進行~!」

 

今度は二人並んで歩み始める。そこそこ日は落ち始め、俺たちの影を長く伸ばしていく。そんな中俺は、神谷にある提案を持ちかけた。

 

「なぁ神谷」

 

「なぁに?清隆君」

 

「俺と友達になってくれないか。お前とならこの無表情が克服できる気がするんだ」

 

「もっちろん!これからよろしくね!清隆君!」

 

「ああ、よろしく」

 

こうして俺と神谷は友達になった。今朝の嫌悪感はすでに消え、俺の中にあるのは

 

 

 

 

 

 

 

 

───やはり()()()()()だけだった。

 

感情主体の神谷うりという人物を近くで観察し、関わり続ければ俺はいつか、感情を知ることができるはずだ。偶然というべきか神谷自身も俺に感情を持たせようとしてくれている。好都合だ。

 

神谷自身にあれだけのメリットがある以上、多少の注目は目を瞑ろう。得られる対価さえあるのなら俺はそれでいい。

 

俺は神谷うりという人物に期待している。

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