とてつもなくロクでなしなトレーナーから離れられないトウカイテイオー 作:はすき
「――いやあ、凄いな。メジロマックイーンの走り。確かにあれは長距離も優秀だよなあって」
「――いきなり真面目な話から始めるのやめない?」
ボクとトレーナーでひたすらメジロマックイーンの対策をするための映像を見ていた。スタート付近だけずっと再生したり、コーナー周りだけを再生している。今までとのギャップが激しい。ギャップの激しさで言ったら、高低差200mぐらいの坂みたいな激しさだ。
「いや……ほら大事じゃん。これから迫ってくる、メジロマックイーンとのレース。勝ちたいだろ?」
「確かに勝ちたいけどさ…………ほら、普段もっと変なのやってるじゃん。もちろんそれは参考にはなっているんだけど、いつもとまるで違うからさ」
レースに勝つため、映像研究するのは普通のことではある……でもボクたちの普段やっていることを振り返る。投網、新聞紙丸め、ウルトラクイズラン、大縄跳び、ロープクライミング、トランポリン、高鉄棒、輪投げ、射的、逆立ち坂道上り下り…………多分半分以上は普通のトレーナーだと練習にすらならない種目だと思う。今だって半信半疑で練習を受けているのには変わりない。それでも勝っているから全て練習メニューは任せているけど。
「でもやっぱり長距離になると速くなってるよねえ、マックイーン。スタミナがあるからなのかも知れないし。多分3000m過ぎてくると、『本領発揮』みたいなのかも」
「良い視点だな、テイオー。その見立てでほぼほぼ間違いないかな。2500mまでなら多分今のテイオーでも十分勝負できるさ。でも、そっから先になると怪しいかもなあ。3000m過ぎると、五分五分に持っていくのが精いっぱいそうだ」
レース映像を見ながら、今の状況を振り返る。確かにボクは色々なレースに勝っているし、強いウマ娘だとは思う。でも強いウマ娘の方向性が、映像の中のマックイーンとは違う。映像のマックイーンはまさに長距離に向けた最高のウマ娘だと感じる。自分の土俵で勝負すれば勝ちやすいだろうが、これからマックイーンと対峙するレースは彼女の独壇場だ。だからこそ、研究して、対策して、勝機を見出さなければいけないのだ。
「――でもこの映像集、普通に売ってるやつなんだね。結構色々なレース入ってるし、結構色々なカメラで撮ってるんだね」
「ああ、と言っても普通に売ってはいなくて、トレーナー向けの専売だけど。大体G1とか出れるウマ娘は大体こうやって映像出してるんだよ。」
「確かにトレーナー達も映像資料とか無いと対策も大変かあ……」
映像を二人で見たり、巻き戻したりしながら話す。一応レースを直接観戦して独自に映像を仕入れたりすることは、出来なくはない。実際極一部のトレーナーは映像資料だって自分で撮影したり、編集したりもしているらしい。けどこの映像集を見て、多くのトレーナーは行えないのが分かる。
――労力に対して見返りが保証出来なさ過ぎる。それで担当ウマ娘が100%勝てるならいいけど、レースに絶対はない。だから他のことでサポートするんだろう。
「それでも色々勝てるように考えるのが、トレーナーの腕の見せ所だからな。――でもこのタイトルにある『エレガンス・ライン』ってどこのラインなんだろうな。すらっとしたあの身体つきかな」
「…………トレーナーが平常運転で安心したよ」
――ある意味で安心した。このままずっと普通のトレーナーだったら、病院に連れていかないといけなくなってしまう。
「ほら、確かにメジロマックイーンはお嬢様じゃん。だからエレガンスなのは分かるんだけど、エレガンスラインってなると悩むんだよ」
「トレーナーの悩みは多分どうでもいいし、あまり意味はないと思うけど」
エレガンスラインで悩むってなんだ。レースの走りとかで悩むんじゃなかったのか。
「でも確かにメジロマックイーンの胸元からお尻までのすらっとしたラインは、エレガンスなんだよな。ほら、大和撫子みたいな日本のウマ娘っぽいし、高貴なお嬢様だよ。お嬢ママだよ。お嬢ママが一生懸命に作るごはんとか食べたら素晴らしいんよ」
「――平常運転で安心はしてるけど、言ってることはダメだからね」
元の調子を取り戻したように出てくるのがロクでもない話である。お嬢ママは取りあえず良いとしても、他の範囲はトレーナーの変な妄想である。変なイメージが付いたら困るだろう。ボクたちウマ娘はイメージも大事なところだし。
「よし、取りあえずエレガンスお嬢ママのメジロマックイーンのレースも見てある程度対策も練れそうだ。――ちょうどいい時間だし、前にテイオーが言ってたパフェのお店でもこれから行くか。準備してるから、遅くても10分後ぐらいには集合しろよ」
「結構映像とか見て脳の糖分とか使った気がする……これはパフェ食べて補給しないとね」
対策が練れたのだろうトレーナーは、時間を見ながらボクに外出の提案をした。少し前に二人組で行くとお得にスイーツが食べられるお店が雑誌で紹介されていたのだ。いつも愛読している雑誌の中に入っていたからトレーナーに教えていたのだが、ちょうど良かった。ボクたちはそのままレース映像の研究を切り上げ、雑誌に紹介されていたお店に向かったのであった。
――――その帰り道にマックイーンみたいなウマ娘とトレーナーを見かけた気がするが、きっとメジロ家特製のあれこれとかがあるから、見間違いだったに違いないだろう。
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