とてつもなくロクでなしなトレーナーから離れられないトウカイテイオー 作:はすき
「なあテイオー、フジキセキのショウタイムって結局どこがショウタイム何だろうな」
「そんなこと急に聞かないでくれる? フジキセキさんはほら、エンターテイナーってことでいいんじゃない?」
こんな変な話をしているのは、夏合宿の間に行っていたトランプで遊んでいた時だった。なんでトランプで遊んでいるかって?まあ暇つぶしの一つではある。というか夏合宿中になると海に行ったことがない砂浜の周りで遊んだり、リフレッシュする子が多いからちょっと離れたこの合宿施設の空き場所を借りて遊んでいた。
「――それにしてもトレーナー。なんでボク、トレーナーの手品とか見ながらジャグリングの練習させられてるのさ。」
「指先と体幹のコントロールだって言ったろ? ほらまだ簡単なお手玉で練習してるんだから頑張りなって」
「――それをいきなり5個から教え始めるのがどうかしてるって言いたいんだけど。後は普通こんな一輪車乗りながら練習することがじゃないでしょ」
――なおトランプマジックで遊んでいるのは、ボクではなくトレーナーだ。じゃあボクは何をしているかといえば、お手玉だ。トレーナーがマジックをひたすらやっているのを傍目に、ボクは指先のコントロールや体幹トレーニングと銘打ってトレーナーから渡された少し重めのお手玉をひたすら回している。それも、なぜか一輪車を乗りながらだ。サーカスとか路上でパフォーマーでは無いんだけど、ってことはすでにカイチョーもやってたって言うから、渋々付き合っているような形だ。
「テイオーならすぐ慣れるし問題ないって。さあさあ、テイオー。早く続きやれって。安定してこのぐらいできるようにならないと、憧れのルドルフには追い付かないぞ?」
「あーもう、分かってるってさ! 完璧にしてみせるから、そこでマジックでもしながら待っててよね!」
カイチョーの名前を出されると、流石に負けん気が出る。目の前でやられているマジックに気を取られないようにしながら、ボクは両手に持ったお手玉を何とか一輪車乗りながら出来ないかと挑戦していくのであった。投げるものはお手玉から始まったが、その後はボックスやボウリングのピンみたいななんか変なものでもやらされていく。難易度が多分最初からベリーハードな気がしているのは、決して間違ってないと思う。
「――いやあ、やっぱり人に見られがらやると、緊張するなあ。これを大勢の前とかでやれるフジキセキは凄いなあ」
「まあ、その気持ちは今わかる気がする。――ボクもこれ今練習だから出来るけど。流石に誰かに見られたらちょっと満足に出来るかは怪しいかも……」
一通り出来るようになったから、持参していたスポーツドリンクを飲んで休憩中。色々試していたが、成功したり失敗したりと、まだ精度が甘い。確かにこのパフォーマンスを完璧に人前でこなせたら素晴らしいと思う。
「まあ、そんなパフォーマンスも凄いけど。やっぱりフジキセキの勝負服の胸元だよ。ネクタイの下には何が詰まってるんだろうな?」
「――夢とか希望とかでいいじゃない?」
「いいな……それに母性が詰まってるんだよ、テイオー。フジキセキは将来立派なママになれる可能性があるさ……」
「それ誰にでも思ってるなら流石に病院や警察行かないとね」
なんとなくそれっぽい回答をしたら、更に下回る回答が出てきた。どれだけ下回ればいいんだろうか。それはともかく、流石に病院とか探した方が良いじゃないだろうか。多分マックイーンとかなら知っているだろう。立派な主治医とかいるし、そういうお医者さんネットワーク的なものにも明るいだろう。ボクにとっては嫌な注射を打たれた思い出しかないけど。
「――まあ、何はともあれウマ娘にとってママみと母性は、あればあるだけ幸せになれるからな、なっ? テイオー」
「――ねえ流石に擁護できないからさ。もうちょっと普通な対応しようよ」
僕自身も寮でお世話になっている寮長を思いだして、ふと自分の身内で寮長についてこんなこと考えてたら、流石にどんな人でもアウトでしょ。よくカイチョーも投げ出さなかったよなあって不安になる。
「でも前から言ってるように、母性は大事なんだ。それが勝負服のネクタイの下に潜んでるんだ。夢と希望に添えてな……」
「あーはいはい。そんな感じですよね。そんなこと言っても多分、今まで通りの評価値は変わらないから安心してね。ボクがいて安心だねトレーナー」
適当なことを喋っているトレーナーに呆れるところはなく、もう堂々としている。ボクの評価も最低値のストップ高とは言わないが、最低評価をずっと低空飛行している。でもこんなトレーナーは教えるのが上手くても誰も拾ってくれないし、他の子に回したら大変なことになる。だからこそ今の契約で担当しているボクがちゃんとしないといけないはずだ。
「――やっぱりあのフジキセキの勝負服のネクタイになって、毎レースごと首に巻かれてえなあ……」
――もうすでにこれだから、手遅れじゃなきゃいいんだけど。
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