Fate/Grand Order × まほうつかいの箱『乙女聖匣 ケース:トライテン -星明かりの迷宮へようこそ-』   作:ひゅーzu

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 この物語は、引き続き『Fate/Grand Order』と、同じくTYPE-MOON作品『まほうつかいの箱』ならびに『スターリット・マーマレード』のコラボイベント風の二次創作です。
 また、FGO第2部本編「非霊長生存圏 ツングースカ・サンクチュアリ」までのシナリオ状況のネタバレを含みます。あらかじめご容赦ください。
 
 


第二節『スター&ノスタルジック』

 

 

 

 

  ───その日は、至って普通の日曜日だった。

 

 

 

 「今日もあんまり客は来ないなぁ…」

 

 

 もともと人気(ひとけ)の少ない店内で、()はモップがけをしながらそんなことをボヤいた。

 

 「チカちゃん! モップの()にアゴのせてると、顔に変な(あと)がついちゃうよー?」

 

 グラスを拭くバイト仲間の少女は、子供を叱る母親のように、めっ、とそんなことを言ってきた。

 

 「はいはい、ちゃんと掃除しますよー。……今日は店長(マスター)も用事で出掛けてるし、いっそ店仕舞(じま)いにしたらよかったんじゃないのかぁ? ……せっかく二人だけの日曜日だったってのにさ」

 

 「ほよ? チカちゃん、何か言ったー?」

 

 「なんでもないっ! 掃除な!掃除すればいいんだろっ!」

 

 そうして。

 そのままダラダラとモップがけを続けていると、

 

 

 ちりんちりん、と。

 店の扉をひらく呼び鈴の音が響いた。

 

 「あ!お客さんだ! はいはーい!いらっしゃいませー!"アーネンエルベ" へようこそ〜!」

 

 少女は元気よく小走りで接客に向かう。

 

 「相変わらず元気なヤツ…」

 

 そんな姿を私は眺める。

 

 

 それで、ふと。

 

 「あの人、はじめて見たな…」

 

 訪れたお客さんの方に目がいった。

 

 

 背丈は平均男性よりも高く、顔つきは、北欧系?だろうか。

 丁寧に結ばれた長髪は(きぬ)のように白く、年齢は20代後半に見えるが、正直 向こうの人の外見(がいけん)年齢はよくわからない。

 明らかに外国人…というか、貴族であることが見てとれたが、なんでそんな人がこの店に?という疑問は抱かなかった。

 

 この店は、"そういう変わった人" がよく来るからだ。

 

 高級そうなコートを小脇に抱え、接客をしにきた少女と会話をしている。

 

 

 しばらくして、彼は窓際の席へと座り、少女がこちらに戻ってくる。

 

 

 「あの人、なんて?」

 

 「ん? 紅茶を一杯、だって!」

 

 「それだけ? なんかもっと話し込んでいたように見えたけど…」

 

 それとなく気になって、そう少女に訊ねる。

 

 「えへへ、本当は、"パイを食べに来た" んだって! でもほら、今日って店長(マスター)いないでしょ? だから今日は出せないんですーって伝えたら、帰っちゃいそうだったから、紅茶も美味しいですよ!って言って、無理やり引き止めちゃったんだ!」

 

 そう言って、少女はてへへと微笑んでいた。

 

 「ったく、暇だからってお客さん困らせてどうするんだよ…」

 

 「でもでも!ちゃんと、ああして残ってくれたから、結果オーライだよ!私 紅茶 淹れてくるから、チカちゃんは席まで運んでねー!」

 

 そうして、少女はそそくさと厨房の方へと走っていった。

 

 

 「……ま、暇なのは私も同じか」

 

 

 しばらくして、少女がおそらくこの店で一番高そうなティーカップに紅茶を淹れてきたので、私は落とさないように気を遣いながら、例のお客さんのところまで運んだ。

 

 

 「ど、どうぞ。淹れたてのストレートティーです…」

 

 柄にもなく緊張しながら、私はそう伝える。

 

 お客さんはしばし香りを(たしな)んだ後、その紅茶をひと口飲んだ。

 

 さっさと戻ればいいのに、私はその一連の仕草をその場で見ていた。

 見蕩(みと)れていた…というと、語弊(ごへい)があるが、ようするに、なぜか理由もなく目が離せなかったのだ。

 

 「───────うん。悪くないね」

 

 彼はそう言って、淡く微笑んだ。

 

 その言葉で、少しほっとしたのだろう。

 

 「…あの、どうしてパイを食べに来たんですか?」

 

 つい、聞かなくてもよいことを聞いていた。

 

 「…………。」

 

 彼からの返答はない。

 やっぱり、余計なことを訊ねてしまったようだ。

 

 「す、すみません、出過ぎたことを…」

 

 「知人の紹介でね。……美味しいと聞いたから、少し、立ち寄ってみたかったんだ」

 

 「知人……?」

 

 

 私のその言葉に、彼はひと通り店内を見渡した後、

 

 

 「──────ああ。面白い(・・・)店だね、ここは。」

 

 

 そう言って目を伏せていた。

 

 

 「面白いって、なにが───?」

 

 そんな私の問いを他所(よそ)に。

 

 

 「──────もうすぐ。この冬木(・・)で "大きな戦争" が起こる。勝利を収めるのは、我が友(・・・)だが、表向きは異なるものにする」

 

 

 「え──────?」

 

 言われた言葉の意味が理解できなくて、失礼にもそう聞き返してしまった。

 というか、"フユキ" って?

 ここ、"加々美崎(かがみさき)" だけど…?

 

 

 「君も。平穏でありたいのならば、この店からは、決して出ないこと(・・・・・・・・)だ。」

 

 

 そう言い残して、紅茶代の金銭を置いて彼は席を立つ。

 

 

 そうして店の扉を開いて、そのまま帰ってしまった。

 

 

 その去り際、彼はもう一人の少女の方を見ていた気がしたけれど、そんなことよりも私は、ただ呆気に取られて、しばしの時間、彼が後にしたその扉を眺めていた。

 

 

 「───って、紅茶、結局ひと口しか飲んでないじゃんかよ…」

 

 彼が残していった紅茶を下げようとして、ふと、その席にコート(・・・)が忘れられているのに気がついたのだ。

 

 「あ、ちょっと! お客さん! 忘れ物───!」

 

 今ならまだ間に合うだろう。そう思って、私はそのコートをもって、扉まで走り───、

 

 

 「ダメ───! 待って、チカちゃん───!」

 

 

 そんな慌てた少女の言葉を背に、扉を開ける直前、彼が最後に口にした言葉がもう一度、頭の中で再生された。

 

 

 "君も。平穏でありたいのならば、この店からは、決して出ないこと(・・・・・・・・)だ。"

 

 ──────ああ。

 今にして思えば、その時の彼の表情は、まるで私を試していた(・・・・・)かのように微笑んでいて───、

 

 

 

 

 

 第二節『スター&ノスタルジック』/

 

 

 

 アルカトラスの第七迷宮、第二階層にて。

 

 

 「先輩? 怪我の具合はどうでしょうか?」

 

 「ああ。もうだいぶ楽になった。問題ないよ」

 

 そう言って、自分───藤丸 立香は、数刻前にマシュから巻いてもらった腹部の包帯を(さす)る。

 

 

 「ん、これ意外といけるぞ…」

 

 そう口にして、たった今 焼き上がったばかりの "チキン" を頬張るのは、このアルカトラスの第七迷宮で出会った一人目の生存者───桂木 千鍵だった。

 

 

 今現在、第一階層での石造りの迷路を突破し、第二階層への階段を降りた自分たちは、その階段口のスペースを占領していた。

 ───そう。なにを隠そう、自分たちは今、キャンプ(・・・・)をしているのである。

 ……というのも。それぞれの階層に住まう魔獣は、その階層の大源(マナ)に順応している影響か、階を超えて襲ってはこないだろうという、ダ・ヴィンチちゃんの判断を採用した結果である。

 

 

 「千鍵さん、よろしかったらこのお水もどうぞ」

 

 「あ、ありがとうマシュさん。…って、こんな水どこから汲んできたんだ!? まさか第一階層の水スライム!?」

 

 「いえ!私の盾の格納スペースには、寝袋、懐中電灯、レーションなどの糧食(りょうしょく)や携帯食料、飲料水、皿などの一式が入ったカルデア式 簡易キャンプ道具が常備されているんですっ!」

 

 そう言って、えっへんと胸を張るマシュ。

 

 「……しかし、やっぱり現地で調達した食べ物の方が、スタミナがつきますよね。ありがとうございます、ホームズさん!」

 

 ぺこりとお辞儀をした先には、キャンプ道具の簡易チェアに腰を下ろして、軽く汗を拭うホームズの姿があった。

 

 「お安い御用だとも。この私 単騎でも軽く仕留められる魔獣たちでよかった。討伐してきたのは、鶏や猪タイプのものがメインだったが、栄養価は(かたよ)っていないかい?……本当は()もあるんだが、どうだね? 我こそは、という猛者(もさ)は?」

 

 「いえ!偏ってはいますが、レーションで補うので結構です!」

 

 「虫って、結局タンパク質じゃねぇか───!」

 

 脊髄(せきずい)反射で拒否をする自分と、同じく猛スピードでツッコミをする千鍵。

 

 「…む。そんなことはない。昆虫にはタンパク質だけでなく、亜鉛や鉄分、カルシウム、マグネシウムといったミネラルのほか、ビタミン、不飽和脂肪酸などの栄養素がたっぷりと…」

 

 「ホームズさん!どうか、そこまでで! 私たちには、食事は必須ですので、どうか食欲を損なわさせない方針で…!」

 

 マシュからのストップに、ホームズは残念そうに眉をひそめた。

 

 「でも。おかげでだいぶ回復したよ。ホームズが食料調達に行っている間に、少しだけど仮眠も取らせてもらったし。これなら問題なく調査を続行できそうだ。……千鍵の方はどう?」

 

 「ん。私も問題なし。むしろ有り余ってるくらいだよ。あんなに迷宮の中 歩いたってのに、そんなに足も痛くないしな」

 

 自分の問いに、千鍵は全然 余裕とばかりにドヤ顔をしていた。

 

 「……では出発の前に。少しばかり情報の共有がしたい」

 

 「情報の共有…ですか? 私たちのこれまでの経緯でしたら、第二階層へと降りる過程で、ホームズさんにお話したことがすべてですが…」

 

 マシュのその言葉に、ホームズは首を横に振る。

 

 「私が知りたいのは、ミス・桂木。キミのことだ」

 

 その言葉に、千鍵は目を丸くする。

 

 『あれあれあれぇ〜?ホームズ氏ぃ〜?その歳でちょっと、女子高生を口説こうっていうのは、どうなんですカナー? ……もしかして、僕ら気が合う?…ソウルメイトゥ?』

 

 そして乱入する謎のケータイ。

 

 「───ふむ。この珍妙かつ不可思議な呪物(・・)に関しての考察は、今は置いておきたいが…、一応の確認だ。"コレ" はキミの私物かい?」

 

 「いえ。はじめて見るヤツです。」

 

 『そんなッ!千鍵くんッ!僕と君の仲じゃないか…ッ!どうして!どうして、そげなヒドイこと言うん、だいっ!!』

 

 ひとりでに飛んでくるケータイを、千鍵は小バエを払うかように吹っ飛ばす。

 

 「では話を戻そうか。…第一階層での話になるが、キミが私を平手打ちした時のことだ」

 

 「げっ、もしかして…まだ根に持ってます……?」

 

 「いいや。そんなことはない。……だが私の錯覚でなければ、あの時、キミの手は光っていた(・・・・・)ように見えたんだが、違うかね?」

 

 ホームズの指摘で、あの時のことを思い出す。

 そういえば、確かにあの時、千鍵の手は光り輝いているように見えたのだ。

 

 「……言われてみればそうです。あの時は色々なことが同時に重なったので、つい流してしまいましたが、あれはいったい?」

 

 どうやらマシュも目撃していたらしい。

 

 「え?なにって言われても……私もあんな風になったのはじめてだったし……」

 

 「もう一度 あれを出すことは可能なのかね? ……それとも、無意識下でのみ使えるものなのか。そこの判断をしておきたいと思ってね」

 

 「いや、もう一度と言われても……、もう一回、ホームズさんのことをビンタすればいいってことですか?」

 

 「いや。それは全力で断らせてもらおう。」

 

 やっぱり結構 痛かったんだ。ホームズ氏。

 

 『ならッ!僕を、僕をブツんだ!ほら早く!僕が、僕でなくなる前に…!ついでに、"この、ケータイのブタ野郎!" という(ののし)りもしてもらえると、グッド…!さぁ僕に、(みどり)くんの(みどり)を…!早く…ッ!』

 

 「っ!! このォ…! 誰が緑じゃ、このクソケータイのゴミブタ野郎ォ───!!!」

 

 『ゴミブヒィ───!!?』

 

 そんな迫真の罵倒とともに、先ほどとは比にならない勢いで、スマホさんが叩かれ、大地にめり込む。

 

 いや。よく壊れてないな、今回は。

 

 「ち、千鍵さん!出てます!また光ってます!」

 

 「な、なんなんだよ、これ……!?」

 

 千鍵自身も、光り輝く自分の右手を見て困惑していた。

 

 今度こそ間違いない。彼女には、本人でも知覚していなかった、何かしらの()が備わっているのだ。

 

 「……なるほど。どうやらその力は、ミス・桂木。キミの感情の起伏(きふく)によって発生するもののようだ。」

 

 「感情の、起伏……、」

 

 「そこでキミに確認したい。その力は、この迷宮を訪れる以前から、キミに備わっていたものかい…?」

 

 ホームズの問いに、千鍵は考え込む。

 

 「いや。こんなのははじめて(・・・・)だ。私の特技なんて、知恵の輪か、20時間寝れることくらいだし…」

 

 それはなんとも変わった特技である。

 

 「そうか。では最後の質問だ。キミがこの迷宮を訪れた経緯は思い出せない、という話はマスター・藤丸から既に聞いていたが、その前(・・・)、はどうかな? キミの記憶は、"どこで止まっている"…?」

 

 ホームズの問いに、千鍵は真剣に考え込む。

 

 「どこって…、今日はいつも通り、ひびきと一緒にバイト先の喫茶店で働いてて……」

 

 「その時、なにか変わった出来事はなかったかな。たとえば、"見知らぬ客がやってきた" とか」

 

 ホームズのその言葉で、千鍵は、はっとしたような表情を浮かべていた。

 

 「そうだ。そうだよ! あの時、変な客が店に訪れて───、」

 

 

 そうして、千鍵はその日 遭遇した、見知らぬ男の話を自分たちに聞かせてくれた。

 

 ──────そして、よりにもよって。

 その話に出てきた男の容姿と発言は、自分たちにとって、とても無関係とはいえない人物を彷彿(ほうふつ)とさせたのだった。

 

 

 

 

 

 「ホームズ───、今の話の人って…まさか…」

 

 「──────ふむ。我々は、冬木で執り行われた、"大きな戦争" をひとつだけ知っている。……しかしそれは、」

 

 「あ、あり得ません! ……だって、それは "西暦2004年" の出来事です…! 千鍵さんの話は、この迷宮を訪れる直近(・・)に起きたことですよ!?」

 

 マシュは、信じられないとばかりに声を上げる。

 

 「そうだ。ミス・マシュ。……だが、その話に出てきた人物について、名を口にせずとも、ここにいる全員が "同一の人物" を頭に思い浮かべた。これをただの偶然と流すのかね?」

 

 「そ、それは──────、」

 

 『──────うん。正直 私も驚いているよ。ここにいるカルデアのメンバー全員が、その人物を知っている。直接会話したことあるのは、以前の私(・・・・)と、現カルデアスタッフの数名だけだが…、その容姿は、肖像画や写真で誰もが見ている。』

 

 ケータイの通信越しに、ダ・ヴィンチちゃんの動揺した声色が聞こえてきた。

 

 「な、なんだよ。みんなして急に。そっちの知り合いだったのか……?」

 

 「知り合いどころか、発端(・・)だ。ミス・桂木。キミが出会った人物は、既に この世を他界している(・・・・・・・・・・)

 

 「は──────?」

 

 ホームズの言葉に、千鍵は訳が分からないと言わんばかりに硬直する。

 

 「名を、"マリスビリー・アニムスフィア"。───2004年、冬木の聖杯戦争に勝利し、人理継続保障機関 フィニス・カルデアを設立した男だ」

 

 

 

 ***

 

 

 

 ひと時の休息を終えた自分たちは、まずはもう一人の生存者───"日比乃ひびき" を見つけることを最優先とし、迷宮探索を続行した。

 

 

 「先ほどの千鍵さんの話……、私は嘘には思えません。ですがそれでは、どうしても辻褄(つじつま)が……」

 

 マシュは、そう言って先ほどの話が腑に落ちていない様子だった。

 

 「今はまだ、判断材料が少ない。……だが、辻褄を合わせることなら可能だ」

 

 「ホームズ、それって?」

 

 「ミス・桂木の喫茶店には、"よく分からないこと" が頻発するのだろう…? なら、今回のもそのひとつだった、ということだ」

 

 そう言ってホームズは、ははは、といつもの涼しげな表情で笑う。

 

 「ホームズさん!それでは答えになってませんっ!」

 

 思考放棄とは、まさにこのことか。

 

 とにかく今はまだ、判断を下すには情報が少なすぎるということを、ホームズは言いたいのだろう。

 

 

 「それにしてもさ、この第二階層、全然 上の階とは雰囲気 違うんだな……」

 

 千鍵のその言葉を聞いて、改めて辺りを、マシュから借りた懐中電灯で照らしながら見渡す。

 その光景は、第一階層の狭苦しい石造りの迷路とは異なり、無機質で殺風景な洞窟となっていた。

 

 「こういう洞窟を探索していると、もしかしたらどこかに、宝箱のひとつでもあるのではないか、と思ってしまいますね…!」

 

 マシュの言葉に自分も同意する。

 

 『迷宮の造設者(・・・)は、変わった性癖をお持ちの方でして。実際、第二階層には迷宮探索を手助けしてくれる魔術礼装なり、貴重な資源を、あちこちに宝箱として隠しているそうですよ?』

 

 「へぇ、随分と詳しいんだね ダ・ヴィンチちゃ──、」

 

 ───ん?

 今のダ・ヴィンチちゃんの声じゃないぞ?

 

 「もしかして、シオンさんですか───!?」

 

 マシュの言葉を聞いて、自分も納得する。

 今の声は、シオンのものだったのか。

 

 『ハーイ、元気そうでなによりですよ、藤丸くんにマシュさん。粗方(あらかた)の状況は、ダ・ヴィンチから伺っています。第一階層はお疲れ様でした。"ひねくれた(トラップ)" や "仕掛け扉" の処理は、さぞ神経をすり減らしましたかね?』

 

 「トラップ──────?」

 

 シオンの言葉に、目を丸くする。

 

 「…そんなものありましたか? 先輩、千鍵さん?」

 

 マシュの問いに千鍵と揃って、首を振る。

 

 『おっと? ……やはりこの手の迷宮は、入ってみないとわかりませんねぇ。この情報は、ただの脅し(・・・・・)でしたか! 即死級のトラップとか、普通に考えてナイナイ! だいたい、明らかに趣味が悪いのなんの───、』

 

 言葉の途中で、通信がぶつりと途切れる。

 

 「おや、シオンさん───?」

 

 『oh...どうやら少し、この階層は電波の調子が悪いのカナ?ウーン、それなら仕方なしっ!迷宮調査は、君たちの手にかかってるというワケだ! Let's(レッツ) Dungeon(ダンジョン) Master(マスター)!』

 

 回線は、いつものケータイに切り替わっていた。

 

 「おい。今明らかにお前が意図的に切っただろ?」

 

 『なによっ!アンタには私のこの "ケータイ心" がわからないのっ! 他の女とばっかり通話してっ! もう知らないんだから!ぷんぷんッ!』

 

 千鍵は露骨(ろこつ)に、相手にするのも億劫だ、という表情を浮かべてスルーしていた。

 

 「…む。見たまえ、諸君。あの通路の先に、随分と大きな水晶があるようだ」

 

 ホームズの指摘で、通路の先をライトで照らす。

 確かに、かなり大きめの水晶が鎮座しているように見える。

 

 「ま、これがダンジョンだっていうんなら、ああいうのって中間地点のチェックポイント…みたいな感じじゃないか?」

 

 「確かにそれっぽいですね! もしかして千鍵さんは、よくゲームとかをなさるのですか?」

 

 「ご、誤解だ…っ! 一般的なイメージだよっ、イメージ…!」

 

 千鍵は少し恥ずかしそうに、そう否定していた。

 

 『休日に家でごーろごろナニやってるのかと思ったら、ゲームしてたんですか、千鍵くぅーん? もしかして…みんなには言えない、ムフフな感じのヤツぅ〜?』

 

 「…ああ。ケータイ電話をひたすら へし折るゲームをやってるよ。とてもじゃないが、恥ずかしくて言えないね。せっかくだから、この場でやってやろうか?」

 

 『オー、マイ、ゴッ! …遠慮しときマス』

 

 そんなやり取りを繰り広げながら、自分たちはその巨大水晶のもとへとたどり着いた。

 

 

 「この先も、まだ道がいくつも分岐していますね… 第一階層よりも時間を要しそうです」

 

 「まだまだ先は長そうだなぁ。……そういえば、シオンさん、だっけ? さっきここに来る途中で、資源が入った宝箱があるかもって話をしてたけど、どこにもそんなもの見当たらないぞ?」

 

 「迷宮内部の情報は、あくまで噂の域をでないからね。……しかし、罠のひとつもないのは、確かに妙だ」

 

 ホームズは、そう言って顎に手を当てて考え込む。

 

 「遭遇するのは魔獣だけ…か」

 

 これでは、まるで迷宮というよりも "魔獣の巣穴" だ。

 

 「こんなデカい水晶があったって、なんの役にも立たないっての」

 

 そうボヤいて、千鍵はその水晶を軽く足で小突く。

 

 「─────────ん?」

 

 唐突に、辺りが謎の地響きに包まれる。

 

 「! 諸君、その水晶から離れたまえ───ッ!!」

 

 「うわあああああああああ!!!?」

 

 大地を揺らし、中央に鎮座していた巨大水晶が、ぐらぐらと動き出す(・・・・)

 

 

 「こ、ここ、コレ(・・)もなのかよ────ッ!!?」

 

 

 全長およそ15メートル。

 第一階層で遭遇したものとは比べ物にならないサイズの、巨像(・・)が、こちらを見下ろしていた。

 

 「水晶の巨像(クリスタル・ゴーレム)か───ッ!!」

 

 「先輩、千鍵さん!私の後ろに───!」

 

 その言葉に頷いて、二人でマシュの方へと駆け寄る。

 

 「■■、■■■■■■■ッッ!!!」

 

 迷宮内を震わすほどの奇怪な叫び声を発し、水晶の巨像(クリスタル・ゴーレム)による拳が、千鍵へ目掛けて振り下ろされる。

 

 「ちょ、間に合わな───、」

 

 「私が受け止めます! 千鍵さん───!」

 

 マシュは、強引に霊基外骨格(オルテナウス)を即時起動させて千鍵を助けようとする。

 

 ──────が。

 その巨像の拳を、ホームズが蹴り飛ばす。

 

 「ホームズさん───!?」

 

 「今回の作戦を忘れたのかい? … "キミの戦闘は極力 控えること"。これを守れなければ、私はダ・ヴィンチやミス・シオンに合わせる顔がなくてね」

 

 そう言って、ホームズは僅かに微笑してマシュの前に立つ。

 

 「ホームズさん、しかしこれほどのゴーレムを単騎で相手にするのは流石に───、」

 

 「ああ。それは私も承知している。この巨体相手では私のバリツも形無(かたな)しだ。故に、キミには一撃だけ(・・・・)協力してほしい」

 

 「! はい、ホームズさん!」

 

 マシュの返答を聞いて、ホームズは軽やかに駆ける。

 

 

 「■■■■──────ッ!!!」

 

 暗闇に包まれる洞窟の中で、巨像の攻撃を器用に躱しながら。

 

 「ふむ。ここかな」

 

 右へ、左へ。

 傍から見れば、ただ逃げ回っているだけのようにしか見えないが、彼の表情には、一切の恐怖心も焦りもなかった。

 

 

 「おい、なにするつもりなんだよ…?」

 

 千鍵も、ホームズのしている行動のわけがわからずにそう訊ねる。

 

 「…ここには少し足りない(・・・・)か」

 

 よく見ると、ホームズは何かしらの道具(・・)を置いているようだった。

 

 「なにをしてるんだ──────?」

 

 新体操もさながらの身のこなしで、巨像の攻撃を()なしながら、一通り巨像の周囲を巡ったホームズは、あっさりとこちらの方へと戻ってきた。

 

 「よし。もうこのあたりで十分だろう」

 

 「いや。このあたりって、あのゴーレムには一撃も攻撃をしてないけど…?」

 

 自分の言葉を聞いて、ホームズは逆に目を丸くする。

 

 「当然だとも。私は戦闘向きのサーヴァントではないからね」

 

 「いや、開き直ってんのかよ───!」

 

 千鍵のツッコミに軽く微笑んで、

 

 「すまないが。マスター・藤丸、その懐中電灯(・・・・)を、私に貸してもらえないかね?」

 

 「え、これ……?」

 

 「ああ、それだ。ここは暗いからね。ひとつ(・・・)明かりがあれば、問題ない」

 

 

 そうして、ホームズは水晶の巨像(クリスタル・ゴーレム)の方へと懐中電灯のライトをかざす。

 

 「な──────!?」

 

 照らされた巨像は、周囲に置かれたいくつもの()を通して、その身体を白く発光させていた。

 

 「■■■、■■──────!?」

 

 

 「ただ一度(ひとたび)照らすだけでは、キミのその巨体の全貌を(つまび)らかにすることはできないがね。……その光を逃がさないよう、周囲にいくつもの鏡を置いておけば、キミの身体は常に光を散乱させながらも発光し続ける。天然水晶で出来た身体というのは、不便ではないのかね?」

 

 「■■■■、■■■■■■───ッ!!!」

 

 巨像は、そんなことになんの意味がある、と言いたげな叫び声を発する。

 

 「───ああ。今の行動で、キミの敗北(・・)は決定した。そんな悠長に叫ぶ暇があったら、真っ先に "鏡を叩き割っておくべき" だったね」

 

 そんなホームズの言葉に、自分も目を丸くしていると。

 

 「おい、藤丸。マシュさんはどこいった───!?」

 

 千鍵に指摘され、辺りを見渡す。

 気がつくと、既に自分たちの近くにマシュの姿はなかった。

 

 「その身が水晶で構築されていようとも、キミはゴーレム(・・・・)だ。であれば、必ず生命の(みなもと)───()となりうる弱点が存在する。」

 

 ホームズのその言葉で、発光し続ける巨像の中に、ひとつだけ。

 一際 "光を通さない" 箇所が、存在していることに気がついた。

 

 

 「右肩(・・)だ、ミス・マシュ───!!」

 

 

 「はい! 既に捉えています、ホームズさん───ッ!!」

 

 発光する水晶の巨像(クリスタル・ゴーレム)の頭上。

 洞窟内の遥か天井に跳躍した聖盾の騎士が、その()に目掛けて魔力圧(ブースト)を伴い、急速落下する───!

 

 「はぁぁぁあああ──────ッ!!!」

 

 天を見上げよ。大自然の神秘を身に纏う巨像。

 その不要な(まなこ)に焼き付く光は、人工の光を弾きながらも劣ることなき、人理の盾の担い手である───!

 

 「■■■ッ、■■───!!」

 

 流星の如き聖盾の一閃(いっせん)は、巨像の右肩口から袈裟(けさ)斬りのように、その身を貫いていった。

 

 

 その一筋の亀裂が、巨像の身体を粉々に砕いていく。

 

 

 

 ──────その後に残ったモノは。

 

 まるで宝箱を開けたかのように。

 煌びやかな水晶片だけが、宝石のように散らばっているのみだった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 巨像の沈黙を確認し、マシュはこちらに戻ってくる。

 

 「見事だ、ミス・マシュ。宣言通り、一撃だけ(・・・・)頼らせてもらった。……勢い余って、100%の出力は出していないかね?」

 

 彼が先ほど言っていた、"一撃だけ協力してほしい" というのは、"その一撃で決着をつける" という意味だったのか。

 

 「いえ。ホームズさんが、明確に弱点部位を見つけてくださったおかげで、必要最低限の出力での攻撃で仕留められました。ありがとうございました!」

 

 マシュは丁寧にぺこりとホームズへ礼を伝える。

 

 「あの手の手合(てあ)いは、正面から相手取っても無駄なエネルギーを消費するだけだからね。ただ一箇所を破壊すればよいのなら、その方が効率がいい。あれが岩石のゴーレムだったのなら、こうも上手くはいかなかったとも」

 

 ホームズは、そう言って軽く微笑む。

 

 「いや、確かにすごかったけどさ。あの大量の鏡はどこから持ってきたんだ?」

 

 素朴な疑問を千鍵は投げかける。

 

 「私が普段 身につけているレンズ型の魔術礼装があるだろう? あれをただ鏡面(きょうめん)加工に転じただけだとも。」

 

 いや。そんなことできるなぞ、初耳である。

 

 「ははは、盗賊が七つ道具を持つように、探偵も秘密のアイテムの一つや二つがあるのだとも」

 

 「へぇ、じゃあ他にはどんな?」

 

 「……ふむ。私が普段持ち歩いている、このキャラバッシュパイプだが、実はこのマウスピースの部分に注射針をはめ込んでコカイ──、」

 

 「ゴメン!色々とアウトな気配がするので、やっぱり聞かなかったことにする…!」

 

 ヤバそうな秘密の香りがしたので、前言撤回。

 

 

 

 「へぇ、随分と楽しそうにしてんじゃん…?」

 

 

 「え──────!?」

 

 唐突に聞こえてきた、ここにはいなかった第三者の声に、思わず警戒する。

 

 

 「なぎこ(・・・)さん──────!」

 

 マシュの言葉で、視線を向ける。

 見ると、先ほど倒したゴーレムの広間から先に繋がってた道のひとつから、入口ではぐれた、あの清少納言こと、"なぎこさん" の姿があったのである。

 

 

 「──────大きな音がしたから来てみれば。なぁんだ、ようやくお出ましってわけ…?」

 

 

 「なぎこさん! 無事で良かった───!」

 

 そう言って、彼女の方へと駆け寄ろうとするも、ホームズによってその行く手を(さえぎ)られる。

 

 「ホームズ? どうしたの?」

 

 「──────いや。思い出してみたまえ。私は最初、何者かによって "ある種の洗脳" を受けていた」

 

 ホームズの言葉の意味を理解して、自分も冷や汗をかく。

 

 「おい、まさか……あの人もなのか?」

 

 千鍵も、なぎこさんへと警戒の眼差しを向ける。

 

 

 「───ふーん。また仲間はずれにするんだ?」

 

 

 その冷めた声色に、思わず生唾を飲む。

 

 「ミス・マシュ、キミは後衛でマスター・藤丸とミス・桂木の護衛を、!?」

 

 

 「とりあえず、いっぺん殴らせろ、ちゃんマス───ッ!!!」

 

 

 そんな雄叫びとともに、爆速でこちらへ駆け抜けてくる清少納言。

 

 「対人の徒手空拳(としゅくうけん)なら受けて立つとも、ミス・なぎこ───!」

 

 バリツの構えを取り、その指の先でかかってこいと挑発をするホームズ。

 

 「邪魔すんな、ホッピー───ッ!!!」

 

 そんな挑発もなんのその、どこかしらから取り出した蹴鞠(けまり)を彼女は蹴り飛ばす。

 

 「飛び道具は卑怯ではないのかね───!?」

 

 そう言いつつも、彼は忍ばせていた自身の腰に装着したアーム型の魔術礼装を広げ、そのレンズ先から光線を撃ち放つ。

 

 「どの口で言ってんだッ!おりゃぁあ!!」

 

 開いた番傘(ばんがさ)を回転させ、盾代わりにしてその光線を弾き返しながら直進する。

 

 「くっ! 機転が効きすぎだ、平安作家!」

 

 「うっさい!顔だけはいいな、ヤク(ちゅう)探偵!」

 

 互いに罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせながら、一進一退の攻防を続けるホームズと清少納言。

 

 

 しかし──────、

 

 「てりゃりゃりゃりゃ───!!!」

 

 彼女があらぬ方向へと投げ飛ばした手毬(てまり)に、彼は思わず意識を傾ける。

 それは、本人でも自覚せぬ(くせ)。"何事にも理由がある" と。解明せねばと考える探偵(・・)であるが故に()いた、余分な思考の(スキ)

 

 だが悲しきかな。

 その手毬、特に理由などない(・・・・・・・・)───!

 

 「そこ、取ったぁあ──────!!」

 

 そんな叫び声とともに、ノールックで自身の足を振り払い、この場に散らばっていた "水晶の巨像(クリスタル・ゴーレム)の破片" を蹴り飛ばす。

 

 「なんと──────!!?」

 

 直撃したホームズは、そのまま洞窟の壁へと吹っ飛ばされる。

 

 

 「いとあはれ…いや、いと哀れ(・・)なり。」

 

 しゅばっと、呆気に取られていたこちらを余所(よそ)に、彼女は瞬きの間にマシュの背後を取って、

 

 「ちょっち、ごめんねー!後輩ちゃん!」

 

 「え?ちょっと、ひゃ───っ!?」

 

 その脇の下をこちょくり回した後、閉じた番傘でマシュを吹っ飛ばした。

 

 

 「え、は─────────っ!?」

 

 あまりにも荒唐無稽(こうとうむけい)

 だがそうして彼女───清少納言は、こちらの戦力をわずか数刻で二つも()いで、こちらに近づいてくる。

 

 その表情は、明らかにムスッと。

 直情的であるが故に非常にわかりやすく、キレている(・・・・・)

 

 

 「おい──────、」

 

 

 そんな彼女と自分の間へ、割って入るように千鍵が立った。

 

 「ちょ、どうして───!?」

 

 「(どうしてって、そりゃ目を覚まさせるためだろ? 前回ホームズにやったみたいに、また私がバシッとやるんだよ…!)」

 

 いや、それはわかるがあまりにも危険すぎる。

 小声で理由を伝える千鍵に、首を振ってやめた方がよいと強く伝える。

 

 「……なに、そこのあんた。どこのモンよ。まーた、新しいオナゴを契約(たぶらか)したわけ? ちゃんマス」

 

 「(よし。落ち着け、落ち着け私……、あぁいや、落ち着いてたら "あの力" は使えないんだっけか…!)」

 

 千鍵は、パンパンと自分の頬を叩いて。

 

 「誰が(たぶら)かされるか!……私は千鍵。加々美崎(かがみさき)高校一年、桂木 千鍵だ……!!」

 

 「─────────。」

 

 その言葉を聞いて、彼女は目を丸くしていた。

 

 「どこの誰だか知らないのはお互い様だろ! いいから黙って、一回 私にビンタされろ、多分 どっかの偉い人───っ!!!」

 

 戸惑いはあれど、勢いだけは真っ直ぐに。

 

 千鍵は彼女の頬へと平手打ちをしようとして、

 

 ガシッ、と。

 

 あっさりとその手首を掴まれてしまった。

 

 「千鍵──────ッ!!」

 

 

 「(…あ、やば。やっぱり正面切ってやらない方がよかったかぁ…!!)」

 

 反撃を恐れて、千鍵は思わず目を閉じる。

 

 しかし──────、

 

 

 「ぶっ、はっはっはっはっは───っ!!!」

 

 

 彼女、清少納言は。

 千鍵の手を掴んだまま、盛大に笑っていた(・・・・・)のだった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 「はぁ〜、笑った笑った。うん、スッキリしたからもういいや!」

 

 そう言って、清少納言───なぎこさんは笑い泣きをしたのか、目を擦っていた。

 

 「スッキリって、え───!?」

 

 千鍵と同じく、自分も困惑する。

 

 

 「……ミス・なぎこ。さてはキミ、"洗脳を受けていない" のか?」

 

 こちらに戻ってきたホームズの問いに、なぎこさんは目を丸くする。

 

 「洗脳……? んー、あたしちゃん、そんなの食らってないけど?」

 

 「え!? じゃあ、さっきまでの敵対心むき出しの状態はなんだったんだよ!?」

 

 千鍵も思わず面を食らってツッコミをする。

 

 「そーれーはー! ちゃんマスたちが、あたしちゃんのこと置いてどっか行っちゃってたからじゃーんっ!」

 

 ああ、そういうことか。

 ようするに彼女は、"自分たちとはぐれてしまっていたこと" に怒っていたのである。

 

 「そのことならごめん。謝るよ。……言い訳をするようで忍びないけど、みんなとはぐれたのは、こっちも想定外だったんだ」

 

 その言葉を聞いて彼女は、むーっと口を尖らせるも、それ以上の抗議はしてこなかった。

 

 「しかし、なぎこさん。なぎこさんは今までどちらにいらっしゃったのですか…?」

 

 「迷宮に入った途端、先に入ったリンリンも、後ろにいた後輩ちゃんたちもいなくなってたからさー。"やばっ、置いていかれたー!" と思ってここまで進んだんよ」

 

 こちらに戻ってきたマシュの問いに、なぎこさんは腕を組んでそう答えた。

 

 「でも、どんだけ進んでも誰にも会えないし、迷宮には魔獣が湧くようになる(・・・・・・・・・・)し、面白そうなものは何にもないから、もうめっちゃ()んでたワケ!寂しかったんだぞっ、このヤロー!」

 

 病んでたという割には、語気が強い なぎこさん。

 

 「どうやらこの迷宮は、入るタイミングで時間軸にズレが生じるようだね。マスター・藤丸とミス・マシュは、およそ三日間のタイムラグの末にこの迷宮の入口に来たそうだ」

 

 「え? じゃあ、先に行ってたわけじゃなかったの? なーんだ、あたしちゃんの早とちりだったのか!わはははーっ!」

 

 早とちりで殴られそうになっていたのか、自分は。

 

 「……ったく。なんなんだよ、この人。こっちの頭が痛くなってくるな」

 

 そう言って、千鍵はなぎこさんの振り回しっぷりに思わずため息を吐いていた。

 

 「っと、そうだ!そこの緑の子! さっき言ってたのって、マジなん!?」

 

 「え? ……マジって、なにが?」

 

 「だーかーらー! 女子高生(J K)って言ってたじゃん!あれってデジマ!? 現役(げんえき)なの!?」

 

 なぎこさんの予想外の食いつきように、若干 引き気味になる千鍵。

 

 「え、そ、そうだけど………」

 

 「うおおっ───!! すっごーーーい!!! (ナマ)JK 可愛い───っ!! 抱きしめてぇ──────っ!!!」

 

 そう言って、千鍵の身体のあちこちをサスサスする、なんちゃってJKのなぎこ氏。

 

 「さ、触るな───っ! おい藤丸、ホントになんなんだよ、この人───!!?」

 

 そんな状況を、こちらは苦笑いするしかない。

 

 「な、なぎこさん!一回ステイでお願いします! そちらの方は、今回の救難要請で私たちが出会った 桂木 千鍵さんです!どうか、なるべく丁重にお願いしますっ!」

 

 「ハイハイ、おっけまる! …(ナマ)JK、堪能させていただきやっしたァ!」

 

 マシュの言葉に、なぎこさんは一旦 その興奮を抑えてくれた。

 

 「そんじゃまあ、これからヨロシク! あたしちゃんのことは、"なぎこさん" …いや、それだとなんか派閥(グループ)が違うJK同士っぽいな…。よし!もっと気さくに "なぎこ" って呼んでイイよー!」

 

 そう言って、彼女は千鍵にぐっと顔を寄せる。

 

 「わ、わかったけど…。"なぎこ" って本名? なぁ、マシュさん、この人はホームズと違って、藤丸と契約してるわけじゃないのか? 見たところ、格好が現代の人だけど…」

 

 「ああ、いえ。その人は平安期に随筆(ずいひつ) "枕草子" を書き上げたという、作家の清少納言さんですよ」

 

 「は─────────?」

 

 あっ、今。

 千鍵の思考が完全停止する音がした。

 

 「そそ。まぁ昔の話だから気にすんなって!あたしちゃんは今をエンジョイするタイプだからさ!つーわけで、これから仲良くしようぜ、チカちー(・・・・)!」

 

 

 

 ***

 

 

 

 なぎこさんとの合流を果たし、引き続きこの第二階層の洞窟を進んでいく。その道中、これまでに起きたことや、今現在わかっていることなどを、彼女に説明しながら先を目指していたのだが…

 

 「ふーむ、どっからどう見てもスマホだわな」

 

 なぎこさんはそう言って、あのよく喋る謎の通信端末を手に持ちながら歩いていく。

 

 『アハン、ちょっとなぎこちゃーんっ、ケータイさんのこと、さ・わ・り・す・ぎ♡ …あと、そんなにカメラのところ(こす)らないで?』

 

 「おい、なぎこ。そいつ女に触られると喜ぶ変態だから、調べ終わったんなら、捨てていいんだぞ?」

 

 千鍵は、いつもの辛辣(しんらつ)な台詞を口にする。

 

 「いやぁ、あたしちゃんの自前のスマホ、通信障害と圏外(けんがい)でまともに使えないからさー。せっかく迷宮内で写真撮りまくって、かおるっちに送り付けよーって思ってたのに。SNSのない環境ってのは、シンドイわ」

 

 SNSのない環境だった人の発言は含蓄(がんちく)がある。

 

 「確かに、カルデアとの通信以外の機能がスマホさんに備わっているのかどうかは、まだ確認していませんでしたね、先輩」

 

 「うん、確かにそうだけど……」

 

 なんとなく、ろくなものじゃない気がする。

 

 「ねぇケータイちゃん。せっかくカメラ付いてるんだから、使えないのー? カメラとか写真アプリどこよ?しらばっくれんなって!」

 

 『やめたまえ、なぎこくん! そうやって無闇やたらに画面をスワイプするんじゃあない!そんなに探しても、君の望むモノは、ココにはないんだよっ! 本当に大切なモノは、スマホの中にはないんだっ!』

 

 ある種の真理(・・)を口にしている気がするが、そんなのはお構い無しに画面の向こうと、指先で格闘を続けるなぎこ氏。

 

 「ふむ。そういうのは "灯台もと暗し" だ、ミス・なぎこ。……そんな無数のマッチングアプリや美少女ゲームアプリの先に、比較的 使用頻度の高い写真アプリが埋まっているはずがない。最初に戻って、フォルダを確認したまえ」

 

 「デジマ?う〜ん、 フォルダって言っても、設定、健康管理、情報アプリ…くらいしかないけど?」

 

 「都合のいい隠し場所だな。私なら、健康管理かな?」

 

 「うおっ!? ホントにあった───!!」

 

 ホームズの指摘通り、健康管理アプリがいくつかまとめられたフォルダの後ろページに、写真アプリが隠されていた。さすがは名探偵である。

 

 『アッ、ちょ! ホームズ氏ぃ〜!? なーに余計なこと教えちゃってくれてんの〜!? ダメだから! その先は深淵だから!なぎこくんッ!』

 

 「そんな照れんなって〜! ちょっち、アルバム覗くだけだからさー! ………って、は?」

 

 そう言って硬直したなぎこさんが気になり、自分も画面を覗き込む。

 

 するとそこには──────、

 

 「ぶ──────っ!!?」

 

 ありとあらゆるチラリズム(・・・・・)

 戦闘中や移動中に盗撮したと思われる、千鍵やマシュ、なぎこさんのちょっとハレンチな瞬間の写真たちが溢れていたのである。

 

 「おいコラ、クソケータイ……、何か弁明はあるか……?」

 

 『ひゅ、ひゅ〜〜! いやァなんのコトですかな〜〜!!私はマシュくんや(みどり)くんたちの、カッチョ良い勇姿を写真に収めていただけでしてよ〜!? 偶然っ!偶然そういう "えちち" な部分が写りこんじゃっただけでゴワスよ〜!?』

 

 うん。千鍵がなぎこさんに平手打ちをしようとした場面の写真とか、ガッツリ斜め45度の下半身しか写ってないけど、これも偶然でゴワスか。

 

 「スマホさん……、信じていましたのに…」

 

 『イヤァァア!!? マシュくんのマジトーンの辛辣な言葉と軽蔑(けいべつ)の眼差し───ィ!!?……ああ、でも悪くないネ…これも…』

 

 「おい、なぎこ。さっさとヤっちまってくれ」

 

 千鍵による死刑宣告がくだされる。

 

 「─────────。」

 

 「…なぎこさん? どうかなさいましたか? 」

 

 「──────ううん、なーんでもない! …じゃ、ごめんねケータイちゃん!来世は良いフォトグラマーになるんだゾっと」

 

 『ギャァァア──────!!!? この私の "全て遠き理想郷(アヴァロン)" がぁあ───!!?』

 

 写真フォルダから大量の写真が消されていく。

 ご丁寧にゴミ箱からも削除する徹底ぶりである。

 

 

 「ふむ、これで一件落着かな。……ところでミス・なぎこ。本当に道はこれで合っているのかね? 一向に第二階層の最奥へたどり着かないが……」

 

 「───え? って、ヤバ! さっきのとこ左だったわー!ごめんごめん、全員まわれ右でオナシャス!」

 

 歩きスマホは、やめましょう。

 

 

 

 ***

 

 

 

 なぎこさんの案内で、第二階層 最奥の大広間へとたどり着く。

 

 「うっわぁ……これは確かにここから先には進めないな…」

 

 大広間は、わずか2メートルほど下に(くぼ)んでいた。

 そしておそらく。第三階層に続くと思われる降り階段が、その広間の中心に置かれ、それを取り囲むように、無数の虫たち(・・・)が広間を埋めつくしていたのである。

 

 「でしょー? こんなサゲぽよな場所、あたしちゃんでも飛び込めないって!」

 

 「なるほど。"食人昆虫の群れ(インセクト・スクール)" か…」

 

 あくまで目測だが。

 その数は二百を超えていると思われる。

 

 「って、そういえば なぎこさん。あの水の馬(ケルピー)はどうやって突破したの?」

 

 彼女がこの第二階層の最奥まで一人で進んできたというのなら、当然あの魔獣とも出会(でくわ)しているはずだが。

 

 「んー? ナニソレ? あたしちゃん、第二階層 入ってからしか、魔獣なんて見かけてないよー?」

 

 なんと。

 もしかして第一階層には、魔獣に出くわさずに済むルートが他に存在していたのだろうか。

 

 「ほう…?」

 

 「……それで。どうするんだよ、コイツら。向こうはまだこっちに気づいてないけど、一匹でもやっつけたら、絶対気づくだろ?あんなの」

 

 「すべての個体から標的を向けられるのは、さすがに対応し切れないだろう。故に、"別のなにか" に注意を引き付けた状態で、戦闘を行なうのが好ましいね」

 

 しばし思考を巡らす。

 なんとか、この群れを打開する策はないだろうか。

 

 

 「ホームズさんの礼装を用いた光線で、一気に焼き払うというのはどうでしょうか?」

 

 「私の通常攻撃のひとつで、それほどの殲滅(せんめつ)力はないとも。過大評価だよ、ミス・マシュ。……だが、()か。それは良い案かもしれない」

 

 「もしかして、"誘蛾灯(ゆうがとう)"……?」

 

 自分のその言葉に、ホームズは頷く。

 

 誘蛾灯というのは、昆虫がもつ光に集まる習性…走光性(そうこうせい)を利用して、害虫を光源に用いた灯火(ともしび)で焼き払うという、日本でも昔から使われている害虫駆除の方法のひとつだ。

 

 「…なるほど。ですがその方法には、常に発光し続け、かつ触れた際に有効性をもつ光源が必要になります。そんな都合のいいものなど、私たちには───、」

 

 そう言って、マシュは固まる。

 

 「ふむ。どうやら思い至ったかな…?」

 

 いや、まさか。

 

 「ホームズ……、それはホントのホントにどうかと思うけど……」

 

 「んー、なになにぃ?なんか秘密兵器でもあんのー?」

 

 なぎこさんは興味津々(きょうみしんしん)な眼差しを向ける。

 

 けれど──────、

 

 「…え?なんだよ、マシュさんも藤丸も。……いや、ホントになんでこっち見てるの?」

 

 すまない、千鍵(・・)……!

 

 「ははははは。」

 

 探偵の名案は、時に残酷である。

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 「では諸君。各々 準備は整ったかな?」

 

 アルカトラスの第七迷宮、第二階層・最奥。

 立ちはだかる、支配者の階級に位置する魔物 "食人昆虫の群れ(インセクト・スクール)" を突破すべく、ひとつの作戦が執り行われようとしていた。

 

 「なんでこんなことに……、」

 

 大きく広げられた、ホームズのアーム型の魔術礼装。

 その先端に、まるでクレーンで吊るされているかのように "桂木 千鍵" が括り付けられている……。

 

 「腹部は苦しくないかね? 決して落ちないよう、私のコートを命綱(いのちづな)代わりに、キミの腰へ随分とキツく結んだからね」

 

 「キツいかキツくないかで言ったら、キツいに決まってるだろ!!(おも)に私の心の方が…ッ!!」

 

 「良い調子だ! その感じで、沸々(ふつふつ)と感情を(たかぶ)らせたまえ!」

 

 ナチュラルに煽っていく名探偵(めいたんてい)

 

 「ねぇ、ちゃんマス。一発 殴る?」

 

 なぎこさんの言葉は、ごもっともである。

 いやホント、"正義の人" とはなんだったのか。

 

 

 「…では代替(だいたい)案はあるのかな。より安全性の高く効率の良いものがあれば、私だってそうしたいのは山々だ」

 

 「だとしても、さすがに非人道的すぎるのではないでしょうかっ! 千鍵さんは私たちの救難(きゅうなん)対象なんですよ!?」

 

 マシュが千鍵に代わって、決死の抗議をする。

 

 「───わかっている。故に彼女の安全は私が必ず保証するとも。……たとえ。この命に()えてもね」

 

 彼の眼差しは、真剣そのものだった。

 

 「ホームズ……、」

 

 

 「……大丈夫だ、藤丸!マシュさん! 私のことなら心配しないでくれ!」

 

 吊るされた状態の千鍵が、そう声を上げる。

 

 「千鍵さん…、でも……!」

 

 「ずっと守られっぱなしなのも、私の(しょう)にあわなくてさ。こんな私でも、役に立てることがあるなら立ちたい。……だから大丈夫。ホームズ! あの虫たちに気づかれる高さまで降ろしてくれ!」

 

 覚悟を決めた千鍵の言葉に、こちらも決意が固まる。

 

 「…わかった。なら俺たちも全力で援護する!」

 

 自分のその言葉に、同じくマシュとなぎこさんも強く頷く。

 

 「では、ミス・桂木。……最後に言い残すことは?」

 

 「その言い回しは不吉すぎだろ───ッ!!?」

 

 「ふむ。良い啖呵(たんか)だ! では降ろすぞ!」

 

 アーム型の魔術礼装が、食人昆虫の群れ(インセクト・スクール)へ目掛けて降りていく。

 

 

 「「「「kisisisisisisisisisisisi───ッ!!!」」」」

 

 

 無機質な音を鳴らしながら、昆虫たちは千鍵の存在に気がついた!

 

 およそ五十近くの黒い悪魔が、同時に千鍵へ飛びかかる。

 

 

 「ああ、でもやっぱり…っ!

  やってられっかぁぁあ────ッ!!!」

 

 

 (こぼ)れ出た本音に呼応するように、少女の全身が "眩しく光り出す"。

 

 

 「千鍵さん──────!」

 

 その光で、飛びかかった昆虫たちは存在ごと消し飛んでいく。

 

 が、それではまだ足りない。

 今消え去った数は、この大広間に蔓延(はびこ)る黒の四分の一にも満たないのだから!

 

 「私は下で様子見している個体を焼き払う! マスター・藤丸たちは、彼女に飛びかかる個体を撃ち落としたまえ!」

 

 「わかった────ッ!」

 

 迷宮での長期に渡る探索が想定された本作戦には、自分───藤丸 立香に扱える "魔術礼装" を、マシュの盾の格納スペースを利用する形で、三つ(・・)持参することとなった。

 一つは、第一階層にて対・水の馬(ケルピー)戦で用いた、基本的な戦術を想定した "極地(きょくち)用カルデア制服"。

 

 そして二つ目。

 あの手の小型の魔物に対しては、有効打となる遠距離攻撃による物理支援型の魔術礼装───"カルデア戦闘服"。

 

 「礼装起動(プラグ・セット)───、ガンド(・・・)───ッ!!」

 

 指先から、呪いの魔弾を撃ち放つ。

 

 「「kisisisi───ッ!!」」

 

 命中。

 直撃した食人昆虫は、その呪いにより麻痺。

 抵抗できぬ状態で大広間へと落下していく。

 

 ───が、それでも二匹。

 数匹へ同時に着弾させられても、四、五匹が限度だろう。

 

 加えて、自身のもつ魔力量では、短い間隔(スパン)で何十発も放つことができない。

 

 故に集中。

 自身が狙うべきなのは、ただ光に集まろうとする小物(したっぱ)ではなく、本気で少女の命を刈り取ろうとする大物(ボス)

 

 

 ───それ以外は。

 信じられる仲間の技量に託す。

 

 

 「どらっしゃぁぁあ───いッ!!!」

 

 

 清少納言によって蹴り飛ばされる蹴鞠は、まるでボウリングのように直撃した食人昆虫を次々に粉砕。そして砕け散った肉片がまた別の個体を薙ぎ払っていく───!

 

 

 「はぁぁぁあ──────ッ!!!」

 

 マシュが投げ放った聖盾は、まるでブーメランのように千鍵の周囲を一周。ただ(かす)めただけの昆虫たちも、散り散りに刻まれていく───!

 

 

 「す、すごい……」

 

 千鍵は、そんな連携に感嘆の声を()らす。

 

 「……って、見てるばっかじゃダメだ…!私も抵抗しないと…!」

 

 「kisisisisisisi──────ッ!」

 

 「このォ、キモいんだよゴキブリ野郎───!」

 

 そう叫んで、飛びかかってきた魔物を殴り飛ばす。

 

 千鍵の内から湧き出る光は、ここの昆虫たちにはかなり有効なようだ。

 

 

 ──────だが。

 激しい攻防は、予期せぬ事態を招く。

 

 砕け散った食人昆虫の鋭利(えいり)外骨格(がいこっかく)の欠片が、千鍵を縛っていたホームズのインバネスコートを、不幸にも引き裂いてしまったのだ。

 

 

 「え、ちょ、やば─────ッ!!?」

 

 

 「まずい、千鍵──────ッ!!!」

 

 千鍵は、そのまま大広間へと落下していく。

 その下にはまだ、五十近い数の魔物が溢れていた。

 

 

 「く──────ッ!」

 

 「ちょ、ちゃんマス──────ッ!?」

 

 考えるより先に、足が動いていた。

 

 千鍵を助けるために、そのまま大広間へと飛び込もうとして───、

 

 「え──────っ!?」

 

 ホームズ(・・・・)に、その肩を止められる。

 

 「ホームズさん──────ッ!?」

 

 彼はそのまま、千鍵を助けるために大広間へと飛び込んでいく。

 

 

 千鍵が地面へと身体を打ち付ける、ほんの間際でホームズが彼女の身体を抱える。

 

 「ホームズ………!?」

 

 ──────しかし。

 

 そんな決死の救助も(むな)しく。

 数多の黒き悪魔たちが、二人に覆い被さるように襲いかかっていた。

 

 

 「くそ──────ッ!」

 

 咄嗟にガンドを撃ち放つ。

 

 「千鍵さん!ホームズさん───!!」

 

 「身体 張りすぎだぞ、バカタレ───!!」

 

 マシュと清少納言は、共に大広間へと降りて二人のもとへと駆ける。

 

 

 

 ──────されど、慌てるなかれ。

 

 落ちた獲物を(むさぼ)り喰らわんとする、漆黒の山は、その内側から溢れる(まばゆ)極光(・・)で、跡形もなく消し飛んでいったのだから。

 

 

 

 「ホッピー! チカちー───!」

 

 三人で、ホームズと千鍵のもとへと駆け寄る。

 

 

 「二人とも、無事───!?」

 

 自分の問いかけに、千鍵を守るべく覆い被さっていたホームズは、いつもの涼やかな表情で、振り返る。

 

 「私は、見ての通り問題ない」

 

 「いやいや傷だらけだし、服もボロボロじゃん!無理すんなよ、ホッピー!」

 

 なぎこさんは本気で心配して、彼に駆け寄る。

 

 「本当に問題ないとも。霊核にはなんの損傷もない。……それよりも、ミス・桂木。キミの方こそ無事かな?」

 

 ホームズのその言葉に、千鍵は目を丸くする。

 

 「そりゃ、あんたが守ってくれたからな……」

 

 「フッ、それはどうだか。……実際、群がった魔物たちを消し去ったのはキミの力だ。守られたのは、私の方だとも」

 

 そう言って、彼は苦笑して立ち上がる。

 

 「さぁ。これでなんとか第二階層の関門(かんもん)も突破だ。引き続き、気を引き締めていこう」

 

 

 ホームズは、そうして階段の先を見据える。

 

 

 「は、はぐらかすなよ…! "命に代えても守る" なんて、そんな簡単に実行に移せることじゃないだろ…!」

 

 千鍵は、彼の先ほどの行動が理解できなくて、そう言い放つ。

 

 「それに…私の力のことは知ってたわけだし、お前だったら "私のことは放っておいても、命の危険を本気で感じたら、力が発動して助かる" って、簡単に思いつくだろ……!?」

 

 千鍵のその言葉に、今度はホームズが目を丸くした。

 

 「───ああ。言われてみればその通り(・・・・・・・・・・・)だね。すまない、考えるより先に行動していたんだ。」

 

 彼はそう、探偵らしからぬことを言う。

 

 「それと。"命に代えても守る" というのは、私からしたら簡単なことだとも。その対象が他ならぬキミやミス・マシュ、マスター・藤丸ならば、なおのことね」

 

 

 「え──────?」

 

 

 「わからないかい? ……いつの時代も。もっとも最優先されるべき命というのは、"今を生きる人類(・・・・・・・)" に他ならないのだよ」

 

 

 

 ***

 

 

 

 そうして、第三階層へと至る。

 

 第二階層 同様、簡易的なキャンプ地を設営し、自分も一時的な休息のための仮眠を取ろうとしたところ───、

 

 

 「マスター・藤丸、少しいいかね?」

 

 ホームズに声をかけられ、第二階層の階段 手前へと案内される。

 

 

 「どうしたの? ……って、マシュとなぎこさんまで!」

 

 「すみません、先輩。お休みのところに…」

 

 「チカちーは今 寝ちゃってるから、あんまりおっきな声は出さないでよ、ちゃんマス」

 

 三人とも集まって、一体何事かと思っていたら、

 

 『数刻ぶりの会話ですね、藤丸くん。第二階層もお疲れ様でした』

 

 青い通信端末───スマホさんから、シオンの声が聴こえてきたのである。

 

 「シオン…! 通信は戻ったんだね! …ってもしかして、また何日も経過しちゃってたりする!?」

 

 『いえいえ。そちらの音声はこちらでも問題なく拾っていました。その喋る通信端末が、意図的に私たちの声をミュートにしていただけでしたので、観測のズレは生じていませんよ』

 

 そうだったのか。

 では、向こうにもこちらの状況は伝わっていたらしい。

 

 「キャンプの見張り中に、こうして問題なく会話が再開できたからね。またいつミスター・ケータイの機嫌を損ねるかわからない。事実確認も含め、キミを交えて相談をしておきたかったんだ」

 

 ホームズが自分を呼びつけたのは、そういう理由だったのか。

 

 「んで、確認ってなによ?」

 

 「ふむ。では まずキミのことからにしようか。…"ミス・なぎこが洗脳を受けなかったこと" についてだ」

 

 「んー、それってそんなに大事? ちゃんマスや後輩ちゃん、チカちーだって受けてなかったンでしょ?」

 

 なぎこさんの言葉に自分も頷く。

 

 「そうだ。だから私は、あの洗脳は "サーヴァントに対して効力があるもの" と考えていた。ミス・マシュもサーヴァントといえばサーヴァントだが、彼女の場合は "デミ・サーヴァント" という特殊な立ち位置だからね」

 

 たしかに、彼の考察には一理ある。

 普通の人間である自分や千鍵、そしてデミ・サーヴァントという半分は人間であるマシュは無事で、純粋なサーヴァントであるホームズが洗脳にかかった。

 この情報だけでは、"サーヴァントに効力がある洗脳" と考えるのは自然な流れである。しかし、なぎこさん───清少納言にも通用しなかったとなれば、話はまた変わってしまう。

 

 「ミス・なぎこ。キミは、マスター・藤丸たちと同じように "一切の洗脳の兆候(ちょうこう)" もなかったのかな?」

 

 「うーん……………、」

 

 そう言って、なぎこさんはしばし考え込んだ後、

 

 「ゴメン! ホントは途中で "それっぽい" のはあった! でも洗脳にかかってないってのはマジでガチだから! ちゃんマスたちを騙してたワケじゃないよ!」

 

 そうして手のひらを合わせ、謝罪をするなぎこさん。

 

 「詳しく聞かせてもらえますか、なぎこさん」

 

 「うーんとね、第二階層に着いた辺りだったかな。こう…脳ミソに直接 叩きつけるみたいな感じで、強い命令(・・)が頭ん中にきたんよ。」

 

 『イメージでいうと、令呪(れいじゅ)による強制力に近しい感じですかね?』

 

 「そう、それそれ! でもほら、あたしちゃんって、基本的に "誘惑 効かない" じゃん? だから、そんな命令知るかー!なんだコラー! って思ってたら、(はじ)けちゃったっぽくてさ! あはは!」

 

 なんてパワースタイルな。

 

 『彼女の固有スキル…"一乗(いちじょう)の法" ですか。法華経(ほけきょう)で強調される教えのひとつですね。彼女の場合、誘惑や魅了といったものに強い耐性をもつスキルとして成り立っていますが、それが有効に働いた…ということですね』

 

 シオンの考察で、その理由(わけ)が腑に落ちた。

 

 「なるほど。それでしたら、最初のホームズさんの考察にも矛盾は生まれませんね? …実際、サーヴァントであったなぎこさんは、"サーヴァントに効力をもつ洗脳" を受けてはいたものの、彼女本人のもつスキルでそれに打ち勝ったと」

 

 「ホームズと違って、第二階層の途中でなぎこさんがその洗脳を浴びた理由は、やっぱり自分たちよりも先行して入っていたから…なのかな」

 

 この迷宮は、内部が異界となっている影響か、外と中で時間軸にズレが生じている。ほんの数刻の差に過ぎなかった侵入のタイミングが、まさかここまで大きな影響を与えることになるとは思わなかった。

 

 「その能力が働いたのは、ちょうど私が入るタイミングだったのかもしれない。私には、洗脳にかかる以前の迷宮内で過ごした記憶が、ほとんどないからね。第一階層を徘徊していたことが、その裏付けだろう。……しかしそうなると、新たな課題も生まれる」

 

 「クー・フーリン…だね?」

 

 自分の言葉にホームズは頷く。

 

 「彼は、一番最初に迷宮へと入ったサーヴァントだ。彼には、ミス・なぎこのように、魅了に対抗するスキルはない。対魔力のランクもそこまで高くはないからね。魅了後、自我が残っていれば "仕切り直し" のスキルを用いて復帰することはできるかもしれないが……洗脳中の私は、行動の自由だけでなく自己の発言力さえも封じられていた。となれば、彼も同じ状態と見ていいだろう。そのような抵抗ができるとは思えない」

 

 『その場合、クー・フーリン氏との戦闘は避けられないでしょうね。皆さん、第三階層は、しっかりと身を引き締めて下さい』

 

 シオンの言葉に、了承の意を込めて頷く。

 

 

 「そして次は、彼女───ミス・桂木が話していた、彼女の働き先である喫茶店での出来事についてだ」

 

 「マリスビリー・アニムスフィア……」

 

 あの喫茶店で、彼女は西暦2004年の冬木市にいるはずのマリスビリー・アニムスフィアと遭遇していた。

 その記憶が、直近のものとして残っていたということも驚きだが、それ以前に、彼女の働く喫茶店は "加々美崎(かがみさき)市" にあるという話だったのだ。

 

 これは、いったい。

 

 「これに関してはやはり、彼女の勤めていた喫茶店───"アーネンエルベ" に、なにか秘密があると考えた方がいい。そこでミス・シオン、トリスメギストスⅡで、西暦2004年の冬木市にあったとされる、その喫茶店を調べてほしい」

 

 ホームズの要求に、なぜかシオンはため息を吐いた。

 

 『ホームズ氏? 私とダ・ヴィンチを見くびらないでください。そんなことは、既に行ないました(・・・・・・・・)よ』

 

 なんという仕事の速さだ。

 

 「フッ……、優秀すぎるのも、考えものだな」

 

 「さすがです、シオンさん!」

 

 『いえいえ。……それで、調べた結果わかったことは大きくふたつ(・・・)ありました。』

 

 そう言って、シオンは少し咳払いをしてから、

 

 『まずひとつ。確かに西暦2004年の冬木には、その喫茶店 "アーネンエルベ" は存在していました。そしてそれは、今現在の白紙化状態に陥る直前、西暦2017年末においても、変わらずその場所に現存していました。』

 

 淡々と、その事実を述べていく。

 

 『しかし。喫茶店 "アーネンエルベ" は、彼女の言っていた場所───日本の加々美崎市には、存在していませんでした(・・・・・・・・・・・)。』

 

 「え──────?」

 

 彼女の言葉が理解できず、そう聞き返す。

 

 「なるほど。やはり彼女は、"来訪者(ストレンジャー)" か」

 

 「それって、どういう───、」

 

 「彼女───ミス・桂木は、異なる世界線(・・・・・・)から我々の世界にやってきた、"異邦の旅人" というわけだ」

 

 ホームズの言葉に、目を丸くする。

 

 『おそらく、我々と同じく "編纂(へんさん)事象" に名を連ねていた世界からの来訪者(ストレンジャー)でしょう。』

 

 "編纂事象" と "剪定(せんてい)事象"。

 

 これは並行世界(へいこうせかい)論における世界の在り方を、大きくふたつに分けて考えた時の名称である。

 

 前者は、安定し多種多様な可能性に満ち溢れた、今もって進歩し続ける世界のことを指す。これは自分たちが歩んできた、汎人類史も含まれている。

 一方で後者の剪定事象とは、行き止まりの世界。良くも悪くもその先の可能性を失った、もう変えることのできない一本道となってしまった世界のことを指す。これは異聞帯(ロストベルト)───今もって対立している世界がこれに該当する。

 

 

 「では千鍵さんの世界には、日本の加々美崎市にその喫茶店 アーネンエルベが存在していると…?」

 

 マシュの問いに、シオンは無言の肯定をした。

 

 つまり彼女───桂木 千鍵は、自分たちと同じく "今を生きる人類" ではあるが、住んでいた世界が違った、ということか。

 

 「当然、これには新たな疑問が生じる。"なぜ、彼女は我々の世界に迷い込んでしまったのか" だ」

 

 『はい。そこでふたつめ(・・・・)になります。この冬木市に存在していた喫茶店───桂木さんのところでは、加々美崎市になりますが、ここは "ある種の特異点(・・・)" でした』

 

 「な──────!!?」

 

 「では、もしや! その喫茶店には聖杯(・・)があったのですか……!?」

 

 『───いいえ。ここには聖杯など存在していませんでした。その代わりに存在していたのは、聖杯に匹敵する(・・・・・・・)レベルの "大魔術式" でしたよ』

 

 なんだって──────?

 

 『聖杯規模の奇跡(・・)を可能とする術式です。これは、異なる世界同士を、時間軸さえも無視して "過程をすっ飛ばして渡る" ひとつのゲートでした。……こんなものが極東の地にずっと眠っていただなんて、考えただけでトリハダですよ、ホント』

 

 「なるほど。私はその道の人間ではないが、今の説明だけでも、それが何を意味するのかわかるとも。ようするに、世界が大混乱(・・・)だね?」

 

 『ええ。加減を間違えたら終末世界にまっしぐら。唯一の救いは、その "仕組みが高度すぎて誰にも悪用できない" …ということでしょうか』

 

 「ふむ。さすがに、"来訪してくる人物を選別(せんべつ)する防衛機構(・・・・)" や "来訪者の認識や考え方を曇らせる魔術" のひとつくらいは、備わっていそうなものだが……」

 

 シオンとホームズの言葉に、正直 頭が追いつかない。

 

 「いったい誰がそんなものを……」

 

 『多元に広がる並行世界を渡る術式。聖杯にも匹敵しうるそれは、既に魔術ではなく魔法(・・)の域です。故にこんなものを造る該当者は、ただ一人だけ。…………"第二魔法の使い手" 並行世界を運営しうる魔道元帥(・・・・)

 

 「魔道元帥(まどうげんすい)………、」

 

 馴染みのない言葉ではあったが、とても得体の知れない人物なのだろうということが、シオンの声色だけでうかがえた。

 

 

 「では千鍵さんは、魔法の域に到達した、その特異点まがいの術式を超えて、私たちの世界へとやって来てしまったと…? 黒幕は、その人ということでしょうか?」

 

 『前者はイエスですが、後者はノー。いやまあ、原因を(さかのぼ)っていけば、彼が黒幕とも言えなくもないですが、今回の場合は、完全なる事故(・・)ですね』

 

 「事故……?」

 

 「つまりはこういうことか。その術式 特異点───喫茶店 アーネンエルベを通して、我々の西暦2004年の冬木市より来訪していたマリスビリー・アニムスフィアとミス・桂木は接触。彼が持参し、店に忘れた "コート" を届けようとしたことで、彼女は誤ってこちら側の世界に踏み入ってしまったと」

 

 『ええ。そして大きな時空の歪みによるズレが生じた。彼がそのコートを喫茶店内に忘れた時点で、同一の世界にいる誰かがそれを取りに来ないかぎり、そのコートは喫茶店内に残り続けなければならない(・・・・・・・・・・・・)。』

 

 「しかし、ミス・桂木は、それを届けようとしてしまった。"コートが失われたはずの世界" に "コートが現れる"。……この矛盾を引き起こさないために、世界は彼女を、異なる時間軸(・・・・・・)に飛ばした。すなわち───、」

 

 「"世界の方が失われている" 時間軸……!」

 

 白紙化し、世界が失われている2017年末であれば、"コートをもった彼女" が現れても矛盾は生じない。失われた世界の方に、もうそのコートは戻らないのだから。

 

 『もっとも、"人理焼却(じんりしょうきゃく)" 中も、この矛盾を引き起こさない時間軸のひとつに該当しますが、そちらの場合は、そもそも喫茶店の出口となる場所が、焼き尽くされ存在していませんからね。』

 

 そうか。だから事故なのか。

 彼女がこちら側の世界にやって来てしまったのは、誰のせいでもなかったのだ。

 

 「ああ。しかしそうなると、彼女がやって来たタイミングは……」

 

 そう言って、ホームズは考え込み、

 

 「───いや。やめておこう」

 

 「ちょ、ホームズ…この期に及んでまさか…」

 

 

 「ああ。今はまだ語るべき時ではない(・・・・・・・・・・・・・)。」

 

 

 ここまで考察しておいて、止めるのか。

 

 

 「でもさ、ホッピー。それだと一つだけ、おかしなことあるじゃん」

 

 今までずっと黙って難しい顔をしていたなぎこさんが、唐突に口を開いた。

 

 「さて。いったい何のことかね?」

 

 

 

 「なんでチカちー、

  "アルカトラスの第七迷宮( こ こ )" に、いんの?」

 

 

 

 

 

 / 『スター&ノスタルジック』-了-

 

 




 
 
 まずはここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。今回は何度も長々とした考察パートが多くて、頭が痛くなったと思います。すみません…
 
 ここから先は、今までと同じく今回のお話の補足説明や小話を書き連ねていきたいと思います。興味がございましたら、こちらもお読みいただけると幸いです。
 
 
 ・星5 アーチャー 清少納言
 
 やはり迷宮(楽しそーなモン)ですか。あたしちゃんも同行するゼ。…というわけで今回の探索に名乗りをあげたシリアス・ブレイカー。
 迷宮侵入後、藤丸たちにハブられたと勘違いした彼女は、爆走で第二階層まで突き進むも、その最奥を占める昆虫ランドを見て、(ゲキ)()え。完全 ()みモードに突入したなぎこさんは、その悔しさと鬱憤(うっぷん)から、第二階層に湧いた魔獣たちをほぼほぼ蹴散らしたとさ。八つ当たりで悪いか。
 …といった理由で、第二階層は水晶の巨像(クリスタル・ゴーレム)食人昆虫の群れ(インセクト・スクール)以外はほとんど魔獣がいませんでした。じゃあ迷宮にあるって言われてた宝箱も彼女が盗ったの?と思われるかもしれませんが、それはノー。それがあったら、彼女はもうちょっと元気ハツラツだったことでしょう。
 
 そして彼女を登場させた経緯についてですが、以前に竹箒の方で匂わされており、ここ最近 発売した『FGO material X』にて確定しましたが、彼女の設定担当をなさったのがOKSGさんということで、こりゃ『まほうつかいの箱』と『スターリット・マーマレード』の二次創作をやるなら、共演させるしかねーとなったわけです。
 そう。なにを隠そう、TYPE-MOONにおいて "ひびちか" をメインに担当してくださったのが、このOKSGさんなのです。
 しかし実際に登場してもらうと、なんとも味わい深く楽しいサーヴァント。自分で書いているのにも関わらず、まるで勝手に動いていく。
 こんなに素晴らしいキャラクターを考えてくださったOKSGさんに感謝をしつつ、引き続きその原作に恥じない活躍をしてもらおうと思っていますので、よろしくお願いします。
 
 
 ・訪れた男
 
 西暦2004年の冬木にやってきた、今は亡き、天体科の君主(ロード)。彼が冬木の街にやってきた理由や経緯は、もちろん原作の方でしっかりと語られておりますので、ここでお話することはございません。
 ただ、その街の喫茶店を訪れた理由で、"知人" に紹介されたと言っていましたが、こちらは、彼に "冬木の聖杯戦争について" の情報を与えた人物と同一の男です、とだけ。
 というのも『ロード・エルメロイ二世の事件簿』の内容に触れるものなので、その名は明言いたしません。
 ───心臓のない男であっても。その店での出来事とパイの味は、きっとその身に染みたのです。
 
 
 今回の話はこのあたりで。
 改めまして、ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。次回の更新をお待ちいただけますと幸いです。
 
 
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