・・・2016年 某所・・・
『……スターズ。コスモス。』
『……ゴッズ。アニムス。』
『……アントルム。アンバース』
『アニマ。アニムスフィア』
機械的な音声を聞きながら、自分はある場所を歩いていた。そこは、何もない草原だった。
何もないと言っているのに、草原と判断できたことは不可思議な事だが、何故か、この場所は草原と、己の中で判断が付いていた。 ある程度歩いていると、頭上からまた機械的な音声が流れ始めた。
『スキャン開始、DNA、ヒトゲノム解析―― 解析中……
解析終了。 遺伝子情報、ヒューマンと判断。』
『次に、この施設の入館資格があるか確認します。 確認中――』
『確認終了。
登録No.照合、オールクリア、登録No.48と確認。 個体名、『
『魔術回路式確認―― 確認終了。
魔術ランクEと判断。』
『次に――』
様々な物が沢山言葉として現れる。 自分がそういう施設に来たという事を嫌でも分かってきた。 何回も色んな検査を受け、知りたくもない情報も洗いざらい言われるので、そろそろ鬱陶しいと感じていたところ。
『全ての検査、確認終了いたしました。 貴方をカルデアに属する者として認めます。 ――ようこそ! 48人目のマスターさん。 ようこそ! 人理継続保障証機関フィ二ス・カルデアへ! 貴方の入館を許可します。 どうか、緩やかな旅を』
機械音声が切れると同時に、自分の意識も途絶えたのだった。
***
「……」
声が聞こえる。
「……イ?」
聞き覚えのない声なのは確かだ。 では、何故、この声が聞こえるのだろうか?
「……セン……イ?」
どんどん声ははっきり聞こえてくる。 徐々に意識が回復している証拠だろう。 ……しかし、謎だ。 何故、自分はこうして意識が無いのだろうと、思ってしまった。ここに入る際に聞こえてきた、あの声に何か、問題が有ったのだろうか。 今となっては、確認のしようがないが。
「起きましたか、センパイ。」
透き通る凛とした声で俺は目を覚ました。 そして、目の前には、眼鏡をかけた女の人が居た。
「……」
「失礼ですが、センパイは、冷たい廊下で寝るのが、趣味なのでしょうか?」
女の人の問いに俺は?を浮かばせた。 しかし、すぐ納得できた。そう、自分が床で寝てるのだから、この子にそう思われても仕方ないのだろう。 だが、見知らない他人に、こんなことが趣味だと思われるのは、些か業腹の為、しっかり訂正する事にした。
「いや、自分は床で寝るのは趣味ではない。更に言うなら、こういう廊下で寝ることは断じてしない。 そんなの、快眠が出来る訳無い。自分は、ちゃんと、ベット、もしくは敷布団で寝る派だ。 趣味では無いから、訂正するように。」
「はい、分かりました。 では、センパイは、冷たい床で敷布団を引きながら、快眠するのが、趣味という事で宜しいでしょうか?」
何も宜しくない。この子は、何を聞いていたのだろうか……
「そういうことじゃない。自分は……」
「いやぁ、
廊下で凄く明るい声が響き渡った。その声の主は男性だった。
……マシュ、恐らく、目の前にいる女の人だろうと、察した。
男性の声を聴いたマシュと呼ばれた女の人は、声がした方に振り向いた。
「
レフ教授と呼ばれた男性は帽子の鍔を持ち、帽子を少し、上にあげた。
「いやぁ、何。 48人目のマスターがどういう子なのか、見に来たんだ。
……君が、48人目のマスター君かな? ……ようこそ、カルデアへ。
私は、
「……」
レフ・ライノール教授。 ……知らない名前だ。 少なくとも俺が居た国、日本では聞いたことがない人物なのは、確かだった。 しかし、今は世間の情報取集の性能は上がっている。
何かの功績があるなら、何処かに論文やら、インタビュー記事がある筈なのだが、この人に関しては何も聞いた覚えがない人なのは、確かだった。
「……あの、何やら、深く考えているようだけどね、人が、自己紹介したんだから、キミも自己紹介をするのが、日本の、レイギ。ってやつなんじゃ無いかな?」
どうやら、深く考え込んでしまっていたようだった。何か、棘のある様な言い方だが、確かに、相手が名前を名乗っているのに、自分だけ名乗らないのは筋が通らないのも確か、だと気づいた。
「……荒巾木。」
「ん?」
「荒巾木 連夜。日本人で、恐らくはこっちだと大学生ぐらいの歳だ。」
自己紹介を終えると、レフは、指に挟んでいた帽子の鍔を離した。
「よろしく、レンヤ君。 それで、君はどういう目的で、ここカルデアに? ぱっと見、名門での魔術師じゃなさそうだ。 良くて初級…… 悪くて見習い。って感じするけどね。」」
「まじゅつし? ……何ですか、それ。」
自分のこの言葉で、何故か、レフ教授の表情が一瞬にして固まった。
「おいおい、レンヤ君。 君、それは冗談で言っているのかい? 魔術師の家系の子なのに、魔術師の意味も分からないのかい⁉ いやいや、いくら何でも、それはないぞ……」
凄く動揺している……
「レフ教授。もしかして、彼は例の48人目の……」
「……あぁ~ そういえば、一般人枠を設けたって言っていたね。 あ~…… レンヤ君? 君、ここにどうやって来たのか、差し支えなければ、教えてくれないかな? 君の事を知るうえで大切な事なんだ。 覚えている範囲で良い。 我々に教えてもらえると助かるな。 どうかな?」
どうやって来た。か、それに関しては自分でも分からない。
直前までの記憶は、献血に行ったある日、献血が終わった帰り道に、変な黒スーツの男性が居て、すごく困ってそうな顔をしていたことを覚えている。 それで、親切心で聞いたら、ある仕事で必要な人材を求めていると言った。 どういった人物を求めているのか、それが何なのか。その黒スーツに聞いた。
黒スーツ曰く、世界を救える素質を持った人物が欲しいと言っていた。 正直、それを大の大人がマジで言っているのはどうかと真面目に思った。 その時点でかなり怪しんでいた俺だが、何の気まぐれなのか、その検査を俺に受けてくれっと言ってきた。
俺に、そんな才能が無いのが分かり切っていったので、そんなに深く考えずに検査を受けた。
だが、俺の思っていた事とは別の出来事が起きた。 なんと、検査の結果。 俺にはある素質があると言われた。 その素質が何なのか問いただしたが、その場では教えられなかった。
教えられないなら、何故検査した?
変な検査を終えた俺は家に帰ろうとしたが、次の瞬間、俺の目に移ったのは、地面にあるあろう、石のタイルだった。
――
「……で、さっきここの検査を受けて、ここに居たって事。分かったかよ…… ……どうした? レフ教授。」
俺が覚えている範囲を伝えた瞬間、レフ教授は肩を震わせていた。 一体どうしたというのだろうか。
「マシュ、これは……」
「はい、本で読みました。 これは…… れっきとした誘拐です。 裁判になったら敗訴するやつです。 教授、今のうちに弁明を。」
「助ける気は無いのだね⁉ ……す、すまない、レンヤ君。こんな拉致の様な事になってしまって、後でそのスカウトマンには厳しく言っておくよ。」
「いえ、お気になさらず。 それより、此処はどんなところなのですか……? 俺、結局何も説明を受けないまま、ここに来たんですが……」
いい加減に教えてもらいたいものだ。ここが、どういう施設なのか。
「そうだね、君はこれからここの職員だからね。知る資格があるはずさ。さあ、ここで話すもあれだ。歩きながら話そう。」
レフ教授は、そういうとこの施設、カルデアの中を案内してくれた。 その上で、自分が何でこの場に呼ばれたのかも聞いた。 なんでも、自分は人類の未来を保障し、人類が今後反映していくのかも此処で調べるらしい。
「そんな大事な事、俺に話しても良いのですか?」
「無論、外部の人達には他言無用で頼むよ。ここは君たち日本人の言葉でいう所の、機密組織?ってやつだからね。」
「それに、この任務が終わるまで帰れないと思いますよ。」
「何故?」
俺はマシュに問いかけた。
「ここに居るマスター候補含め、此処の職員は、このカルデアが何処の地域にあるのかすら知られていません。 此処が何処なのかは、所長クラスの権限を持ち合わせていないと知れないようですのでいようですので。」
「じゃあ、マシュさんも此処が何処にあるのか分からないのか?」
「はい。といっても、私は生まれが少々他の方々とは違っておりますが。」
「……? どういうこと……」
「おっほん。 マシュ、レンヤ君。着いたよ、ブリーフィングルームだ。 ここで、君達が相対する問題の説明を受ける。 規模がやばいから、あまり腰を抜かさないようにね。」
レフ教授がそういいながら、自分たちの前から立ち去った。 レフ教授が見れなくなった頃に、マシュに声を掛けられた。
「……あの、センパイ。此方に入る前に、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「何だ?」
「その、何故、センパイは
マシュがそう言うと、やっと自分の顔についているこの仮面に触れてくれたと思った。