「仮面のこと、やっと触れたな。 ……いや、この仮面に突っ込まないから、てっきりスルーされるのかと思ったが。」
実際の所、この仮面はここに来る前からずっと付いていた。いつ付いたのかも忘れたが、もう十数年間付け続けている。 ずっと俺と話してきた人、友人以外では、この仮面を見ると必ず何かで聞いてくる。 出会った直後の聞かれたり、ある程度過ごしてから聞かれるなど、接してくる人によって様々だ。
「いえ、魔術師の家系では、そういうモノもあるので、センパイもそういうタイプなのかなと思ったのですが、そうでも無さそうなので、聞きました。」
いや、魔術師の家系ってそんな奇抜なものなのか……?
「それで、その顔に付いている仮面は、その、本物なのでしょうか?」
「あぁ、本物だ。」
「……ジャパニーズ・チューニビョウ。ってわけでは無いのですよね?」
ジャパニーズチューニビョウってなんだよ。 ……あれか、厨二病の事か? 今どき、こんな仮面を付けんわ!!
「……なわけあるか! 誰が好き好んで、こんな仮面を付けるか! 取れるものなら取りたいわ!」
「取れないのですか?」
「取れない。 ……いや、違うな、取り外せないって認識が正しいかな。」
そう、この仮面は取れないのだ。 何があっても。
何でこんな仮面を付けているのかも覚えてないし、この仮面が取れない理由も分からずだ。 全く、何のために付いている仮面だよ。
「……そうですか。 ここには、色んな魔術師さんが居ます。もしかしたらセンパイのその仮面の事で親身になってくれる人が居るかもしれません。 もし、そんな人に会えたなら相談してください。 これから同じ任務に向かう人には、 ベストを尽くして欲しいので。」
「……ありがとう、マシュ。 もし、そんな人が居たら相談してみるよ。」
マシュは少し微笑むと、分かれ道に辿り着いた。
「それでは、自分はこっちなので。 センパイはこのまま真っすぐに行けば、所長が居るブリーフィングルームに着きます。」
マシュはそういうと走って去っていった。 まだ少ししか話していないが、レフ教授も、マシュって言う子も悪い人ではないと感じた。
「さてと、真っすぐだったか。」
俺は、マシュの言葉を信じ、ブリーフィングルームに向かうのであった・・・
***
*フィニス・カルデア 管制室
ブリーフィングルームに辿り着くと、自分と同じ格好している男女が沢山座っていた。そして、皆が座っ
いる地球儀によく似た物体の目の前には、一人の女性居た。
周りと服装が違う…… スタッフとも。
という事は、彼女がマシュが言っていた所長って言う人だろうか?
「それでは。 皆、席に着きなさい。これは所長命令よ。」
所長、と自分で名乗った彼女は、散らばっていたマスター候補たちを座らせた。
話をしていた奴等からすると、いきなり座れと言われたので、不服そうな顔をしている物もいた。 俺も何処か、適当に座っておこう。 怒られるの嫌だし。
「全員、居るようだね。 それでは、これより、所長から、ある作戦の概要を話す! これを聞いたら最後、君達はこの
これは、それほどの事だ。 もし、聞きたくない者が居るなら、立ち去って貰っても構わない! 十秒待とう。 この時間帯は立ち去っても我々はその逃避を責めない! さぁ! 自分の心と話し合って決めてくれた前!」
登壇したレフ教授は、そう言い放った。 この作戦はそれほどの覚悟を要求されるとの事だ。 もし、今ここで逃げても、カルデア側は責めないと豪語した。 十秒経過するまでは、ここで逃げても良いのだと。
十秒経過し、レフ教授は周りを見渡し始めた。
「……離席者はいない、か。 ……良かろう! これからする話に逃げずに立ち向かおうとする意志、私は君達に敬意を払う! ……それでは、作戦名、グランドオーダーを説明しよう!」
グランドオーダー。聞き覚えのない単語だが、何か大きな事が始まる予感がしていた。
「ここから先の説明はこのカルデア所長である、オルガマリー・アニムスフィアが説明してくれる、一度しか言わない! 一字一句聞き漏らさず聞いて欲しい!」
レフ教授が退席した。 それと同時に先ほど見た女性が登壇した。 恐らく、彼女がオルガマリーという人だろう。
「……先ずは、私が発した呼び出しに答えてくれてありがとうと言っておくわ。 だけど、此処では私、オルガマリー・アニムスフィアの言葉を絶対順守よ。 反対は聞き入れないわ。」
その言葉で、場が一気に険悪になった。 話し始めるよりも不満に対する声が上がるようになっていた。
「貴方達にも、不満があるのでしょう。 ええ、分かります。 貴方達も魔術師なら、持っていて当然の感情です。
……ですが、それは外の世界での話です。ここ私の
必要とされているのは、貴方が先祖より受け継がれている魔術師としての才能とされる魔術回路と、そのマスター適正素養です。正直な話、貴方達の人格は必要ともされていません。」
オルガマリーは辛らつな言葉をマスター候補生たちに言い放った。その言葉を聞いた色んな候補生達が怒りの声を上げ始めた。
ふざけるな!
誇りがある我らを侮辱するのか!
天文科の癖に、我々に歯向かうのか。
上記にあるのは他よりかは聞こえた声だった。 魔術師達は連夜達、一般人より、プライドが高いと分かった。 しかし、全部のマスターがその言葉を言ったわけでは無かった。 一部はそのまま、オルガマリーの言葉をちゃんと聞くやつも居そうと感じた。
「なら言いましょう。貴方達はまだ無名の魔術師。親と家が無ければ何もできない者達でしょう、けど、既に、貴方達の親にはこの事を伝えてある。 もし、ここで任務を失敗したり、逃げてきたと聞いたのなら、それこそ、家の名前に傷が付くのでは無いでしょうか?」
騒いでいた人物達がオルガマリーの言葉で、沈黙した。
……何だ、それほど家や名前の方が大切なのかよ。
と、俺は思ってしまった。
オルガマリーの発した言葉で声を荒げていた魔術師達は一人、また一人と座っていた。数分後には、また静かになっていた。 オルガマリーは溜息をつきながら、作戦の概要を説明し始めた。
「それでは、説明を続けます。先ずは、こちらをご覧ください。 レフ。」
レフが頷くと、教壇の前にある電子モニターに何かが映し出された。
「……地球?」
「何だ? あれは……」
「これの名前は『地球環境モデル・カルデアス』。我々、アニムスフィアが作り上げた叡智の結晶の一つです。 此方には、我々人類の未来をシュミレートし、人類の繁栄を観測する役目を持っています。」
映像越しだか、かなり大きい事は分かる。 昔小学校で見た地球儀によく似ていると、こんな物でも未来をシュミレート出来るなんて、魔術は何でもありだな……
周りでも、カルデアスの事についての話題で持ち切りだった。 魔術師の世界でも、これは珍しいみたいだな……
「……ですが、ある日を境に、カルデアスでの未来の観測が出来なくなってしまった。」
ザワつく候補生。人類の繁栄を観測するはずのカルデアスが未来の観測が出来なくなった。その言葉は、会場ををザワつかせるには十分すぎるほどの内容だった。 そんな動揺を他所に、オルガマリーは話を続けた。
「その後にシバの解析の元に調べた結果。2016年より先の未来が見れなくなっていた事が判明したわ。それにより、私達はその原因を探りました。」
「シバを用いても結果を割り出すのに時間を要しました。 そして、観測の結果。西暦2016年12月31日を持って、人類の破滅が確定した。 我々はこの決定を覆すがために、様々な手を尽くした。そして、つい最近、人類の破滅を回避する方法が分かりました。」
「それは、近未来観測シバと、霊子演算装置トリスメギストスを用いた技術。その名前は『レイシフト』。 このレイシフトは、適性が無い者には行えない者です。そこで、貴方達の出番という事です。
此処に居るマスター候補
それが、ここに集められた事に繋がるのか…… なんか、とんでもないところに来た感が凄い。 ……待て、
「……あー マリー、少し良いかね?」
「何よ、レフ? まだ、全部話し終えてないのだけど?」
「それは本当に済まない。 だが君に共有しなければいけない出来事なんだ。 その、候補生の事なんだがね?」
「何よ。当初の予定で48人集めるのは知っていたけど、マスター適正とレイシフトの適性を同時に持っている魔術師は集められなかったじゃない。それで、私とあなたで話し合った結果、47人で行くって話になったじゃない!」
「見つかったんだ、48人目。」
「……嘘、本当に見つかったの?」
オルガマリー所長の動揺っぶりを見る限りは本当に見つからなかったんだな。48人目……
「ねぇ! どんな人なの⁉ どんな優秀な魔術師なの⁉
「……すまない、オルガマリー。 48人目は魔術師ではないんだ。 ……唯の一般人だ。魔術のまの字すら知らない一般人だ。」
「……は? 何よそれ……?」
レフ教授がそれを伝えると、所長はみるみる失望の色を見せてきた。 今まで探していたのが、一般人に枠を持っていかれたと聞かされたのだから、よりショックも大きいのだろう。 ……いや、俺の方が傷つくんだけどね? そんな露骨に落ち込まれると……
「……」
「マリー?」
「……の、」
「え?」
「…な……の」
「誰、なの?」
「その一般人は誰なの⁉」
所長が取り乱しながら、その人物が誰なのかを聞いた。 ……やべ、俺歓迎されてない感じ?
「……レンヤ君だ。」
「レンヤ?」
「レンヤ・アラハバキ。 極東、日本で見つかったレイシフト適正最高数値を叩き出した青年だ。」
レイシフト適正が最高数値……? マジか、俺、この中で最高値叩き出しているのか? 何それ、ラノベ主人公みたいじゃねぇか。
「連れてきなさい! 今すぐ!」
「分かったよ。 ……てなわけで、レンヤ君! 来てくれ!」
おいおい、マジなのかよ…… というか、ここに来てから、マジしか行ってない気がする。 ……口癖にならないようにしないとな……