超昂大戦SS 翔べルビー、復活へのハイジャンプ! 〜敗北と、記憶を超えて 作:環 藍河
ネタバレとしては同第1部第6章、アメイズ参戦直後まで含まれますので、原作ストーリー未読の方はご承知おきください。
※第4話で完結させた後、pixiv様にも投稿いたします。
「よし、ルビー、サファイア! 決めてやれ!」
『はいっ、長官! 全力フルパワー!』
〘ブリザード…〙『ストライク…』
〘『エスカレーション!』〙
《ぐわあああ〜っ、急な衝撃にお備え下さい〜っ!》
通信から響く爆発音と、レールフラストの《ショ〜〜テ〜〜ン!》の断末魔。
園崎アカリ…エスカ・ルビーのダイビート入隊から程なく、アカリの熱意に心動かされ、加古野ヒビキもエスカ・サファイアとして参戦。紅と蒼のエスカ・ペアが、ようやく活躍を始めた。
もちろん、百戦錬磨のエスカレイヤーや閃忍ハルカ、神騎エクシールとは、戦闘力は比べるべくも無い。
それでも、二人の類稀なるADDD適性はもとより、相互に性格を補い合えるペアであることにも、トキサダとユーノは期待を寄せる。
幼少から修行に明け暮れたサファイアの経験は、ルーキーのルビーを何より導く。だが、ときに戦いの現実を悲観し立ち止まってしまいそうなとき、ルビーの希望に溢れた言動が、サファイアを…ときにはダイビート全体を躍進させている。
「ルビーとサファイア、いい感じね。」
「ああ、まさに俺たちの…動き始めたダイビートの、希望の輝石だ。」
…だが、その成長の兆しは、立場替われば早急に摘むべき災いの萌芽。
アルダークの毒牙は、二人に水面下で忍び寄り、来たるべき時を待っていた。
…
……
その日も閂市内では、各地でフーマン・滅忍の暴動が散発。ダイビートも各戦士・閃忍を出動させ鎮圧に当たる。
「紅蓮の光は不滅の炎!」
「青い光は勝利の狼煙!」
「〔超昂戦士、エスカ・『ルビー/サファイア』! 悪の現場に只今参上!〕」
名乗りを上げ、即座に繁華街のフーマン部隊鎮圧に当たるエスカチーム。
「はっ! やあっ!」
「ふんっ!」
「ブー!」「ブブーッ!!」「ブ〜ッ!」
ルビーの拳とサファイアの体術が、一体一体、次々とフーマンを沈めて行く。
「ぐう…っ、おのれエスカ・ペアめえっ!」
戦力を削られ、今や裸単騎のコマンダーの呻き。
だが、上り調子ゆえか、ルビーは見落としていた。
フーマンたちは、わざと倒れ、呆気なくやられたふりをしていたのだ。
ましてやそれが、自分を絡め取る罠であることなど、気づくはずも無かった。
両手の拳を握りしめ、気合いを込め直すルビー。
「決めます! ストライク〜…」
両足が大地を弾き、真っ赤な光が一筋、コマンダーを狙い撃つ。
ダッシュの勢いを乗せた右、左のミドルキックで、コマンダーの足を完全に止める。
(…ここだっ!)
数歩後ずさり、助走を付ける。
ルビーの右足首のパルシオンが、瞳の輝きとシンクロし、エメラルドの輝きを放つ。
爆発的な跳躍力で空に虹の軌跡を描き。
「エスカレーションっ!」
ルビーの最大攻撃力を溜めたキックが、コマンダーに振り下ろされようとした、
その瞬間。
「〔[〈ブブーっ!!!〉]〕」
(なっ!?)
コマンダーの周りに横たわるフーマンたちが4体、突如跳ね上がってコマンダーを庇う。
矢面のフーマンが2体、腕4本でルビーの右脚を堰き止める。
さらに、その背中をもう2体が支え、吹き飛ばされるのを防ぎ切る。
ぐぐぐっ……ばしいっ!!
「うわあああああっ!!」
ルビー必殺の一撃も、4体がかりで防がれてはひとたまりも無かった。
敵を沈めるはずが、逆に虚空へ吹き飛ばされてしまうルビー。
「ぐははっ、喰らえええっ!」
最初のキックに耐えたコマンダーが、満を持して放つ、全力の鞭。
びしいいいっ!
「きゃああああああっ!!!」
邪悪な蛇が、空中でガードが取れないルビーを捉え、その牙を突き立てる。
敢えなく、左肩から右脇腹へ、袈裟懸けにスーツを破られたルビーは、鞭の衝撃でそのまま、地べたへ叩き落される。
真下がアスファルトなら、受け身も取れただろう。
だが、そこにはガードレール。
重力と、鞭で加速された全てのベクトルが、レールに伸びたルビーの利き足に集中してしまう。
ごぐっ。
「うあああっ!!」
鈍い音を残し、飴細工のように歪むガードレール。
向こうずねから先を全てもぎ取られたかのような衝撃に、ほとばしる激痛。
ルビー最大の武器は、自らの必殺技のダメージを、倍返しで受けてしまった。
「…ブリザード・エスカレーション!」
ドガーーーン!!
「〔[〈ブブ〜〜っ!!〉]〕」
ルビーの窮地に動ぜず、必殺技でフーマンを一掃するサファイアだが、内心に滲む焦り。
(しまった…敵がルビーの戦闘を分析して、対策を講じて来ることぐらい、当然考えるべきだったのに…!)
「ふははっ、今日はここまでにしておこう。だが、ストライク・エスカレーション、破れたり! サファイア、お前の必殺技も次は破る! 次に相まみえる時が、エスカ・ペア最期の日だあ!」
「くっ…ルビー!」
撤退するコマンダーを横目に、うずくまるルビーに駆け寄るサファイア。
「ううっ…、ああっ、あああ〜〜〜っ!!」
鞭にスーツを引き裂かれ、はだける胸。
だが、それも隠さず、誇りの右脚を両腕で押さえ、ルビーは我を忘れて叫ぶ。
まるで右脚が自分のものでなくなってしまったかのような恐怖に、溢れる涙を抑えられなかった。
(何だよ…エスカ・ルビー、負けてるじゃん…)
(最近強くなってきたけど、やっぱりダメね…)
(もともと戦い方も危なっかしかったからな…)
誘導に沿い避難する一般人から漏れる失望の声を背中に浴びながら、サファイアはルビーを抱きかかえ、救護班の到着を待たず撤退する。
「ルビー、落ち着けっ!」
「あ…ああっ、足が…っ…!」
サファイアは気づいていた。
ルビーは今、激痛をこらえる以上に、心の奥底に閉じ込めていた、何らかの苦い記憶にさいなまれている。
人類の未来を照らす、希望の紅き宝石。
だが今、その輝きと未来を閉ざそうとする、深く暗い影が落ちていた。
はじめまして。
または、毎度お読みいただけている方には、1週間のご無沙汰でした。
超昂大戦専門でSS執筆中の、環藍河(たまき・あいか)と申します。
今回はルビーとサファイアがまだ駆け出しの頃、こんな戦いがあったのかな、という二次創作をお送りします。
全部で4章構成、全体の流れはほぼ完成しておりますので、なるべく一気にアップする予定です。明日以降もお楽しみにお待ちいただければ幸いです。