超昂大戦SS 翔べルビー、復活へのハイジャンプ! 〜敗北と、記憶を超えて   作:環 藍河

2 / 4
※メインタイトルを改訂しました。
※時系列・ネタバレについては第1話同様です。
(時間軸は原作第1部第3章、内容は第1部第6章までの内容が含まれます)


第2話 エスカ・ペア解消! 青き嵐は試練の刃

「どお〜? もう痛くないはずだけど〜?」

ダイビート本部の救護室で、右脚に大ダメージを受けたエスカ・ルビーを治療するのは、新参の地上神騎・ユユエル。

つい先日、天上神騎を率いる天使長アズエルが放った魔力を受け、覚醒してダイビートに合流したばかりだ。

 

「は…はいっ、嘘みたいです! ユユエルさん、ありがとうございました!」

現代医学ではなし得ない、神騎の力による回復は凄まじく、ルビーの右脚は出撃前の状態そのまままで整復されていた。

 

「ルビーちゃん。医学的にはあなたの右脚は、完全に元通りよ〜。だから、自信を持って動かしていいわん。これからも頑張ってね〜」

 

「そうそう。変身中はD2エナジーで防御力も飛躍的に伸びるし、それに、ディフェンスだけじゃないよっ! 攻撃と同時に脚も強化されるアルゴリズムを組んでるから、原理上、ルビーがどんなにパワーアップしても、自分の技で自分を壊すこともあり得ないんだから! どーんと行っちゃえ!」

 

ユユエルの激励に、様子を見に来たダイビート技術顧問・高円寺さやかも太鼓判を加える。

「あはは…大げさに騒いですみませんでした。」

 

救護室を後にするルビーを見送る二人。

(…でもね…)

ユユエルが目を伏せ、心配そうにルビーを思う。

 

(技を破られたのも、脚を壊されたのも事実なのよね…。自信を取り戻して、全力でまた戦えるかは、ルビーちゃん次第だわ…。)

 

……

ユユエルからは、日常生活全般で一切の禁止事項は無いと言われていたが、今日は湯船には浸からずシャワーだけにし、右脚は拭くだけに留めて、ベッドに身体を預ける。

 

(…忘れたつもり、振り切ったつもり、だったのに…。

やっぱり、消えてないんだ。心の奥では…。)

 

胸のざわめきを必死に押さえて、アカリはしばし、眠りにつく。

 

……

夜明け前。

誰もいないことを確かめ、第2トレーニングルームへ入るアカリは、ウォームアップもほどほどに、サンドバッグの前に立つ。

 

「はああっ!」

ばしばしっ、どがっ!

右から左のコンビネーションパンチから、左のハイキック。右脚を軸足にしての攻撃は大丈夫のようだ。

 

「…やああっ!」

どすっ。

決意を込めて放つ、右のハイキック。

だが、威力は直前の左ハイキックに、到底及ばない。

(…ダメだ、こんな弱気な蹴りじゃ…!)

 

「はああっ、やあっ、だああっ!」

どすっ、ぼすっ、ばすっ。

自分に活を入れて放つ、3連の右ハイキック。

だが、そのどれもがためらいを残す。到底、サンドバッグを撃ち抜く威力とは呼べない。

 

(はあっ、はあっ、はあっ…!)

 

ままならない自分の心に、焦りが浮かぶ。

 

思い立ったアカリは、隣接する第1トレーニングルームに移動する。

「フラックスプロージョン・ビートチェンジ!」

真紅の閃光に包まれ、アカリはエスカ・ルビーに変身する。

昨日引き裂かれたボディのレオタードも、打ち砕かれた右脚のブーツも、すっかり元通りであった。

 

(変身すれば防御力が上がる…さやかさんの言う通りなら、これで大丈夫…!)

 

サンドバッグでは超昂戦士の激しい攻撃に耐えられないため、場所を移して蹴撃を試す。端末を操作し、人型の強化ターゲットを配置して、正対して構える。

 

「…っ!」

だが、ルビーは動けない。

 

ユユエルとさやかのお墨付きでも、本当にこの脚は前のように耐えきれるのか。

もし、治りかけのこの足が、ルビーの防御力を上乗せしても、自分のキックに耐えられなかったら。

また、この脚を壊してしまったら。

 

…怖い。

戦えなくなることが。自分の不甲斐なさが。

 

どんなに怖くても痛くても、戦い抜いてみんなを護るんだって決めたのに。

自分の右脚なんて、壊れたって構わないのに。

頭でわかっている信念に、心が応えてくれない。

どうして…!

 

(はあっ、はあっ、はあっ…)

…にじむ汗をぬぐうことも忘れ、荒れる呼吸をなだめ、ルビーはターゲットをじっと見据え続ける。

 

…やがて、決意を込めて。

数度、右脚で素振りし、狙いを定め。

深呼吸を一つ、二つ。

 

 「…やあああーーーっっ!!」

 

自分の弱さを振り切るための雄叫びを振り絞り、ルビーは懸命に右脚を振り抜く。

 

  どがっ!

 

蹴撃はターゲット人形を捉え、撃ち抜いた。

破壊力は、昨日までと同じ手応えがあった。

右脚の負傷跡も、痛みも違和感も、無い。

 

(…よかった。私…これで、戦える。)

深く息を吐き、ルビーは安堵した。

今日はここまでにして、出撃命令を待とう。

そう思い、出口に向かうルビー。

 

だが。

「ルビー! そんなやけばちなキックで、敵が倒せるものか! 甘く見るな!」

「ヒ…ヒビキちゃん!?」

朝の鍛錬に向かおうとして、トレーニングルームの気配に気づいたヒビキが、ルビーのためらいと妥協を全部見ていた。

 

「フラックスプロージョン・ビートチェンジ!」

 

眩しい青の光に包まれ、ヒビキはエスカ・サファイアに変身。

 

「ルビー、今のお前じゃ戦えない! 私がそれを教えてやる! 行くぞっ!」

「えっ…、わっ、わわっ!?」

駆け出すサファイアが、ルビーを急襲する。

 

「はああっ!」

しゅっ、しゅっ、がしっ。

「うわっ!…くっ…」

サファイアの拳の連撃をガードするルビー。

 

「やあっ!」

どすっ。

「ぐっ…ああっ!」

続けざまに、本命の鋭い左ローキックが、ルビーの右足首を真横からパルシオンごと撃ち据える。

拳の連撃は、このためのフェイントだった。

 

「くっ…ううっ…」

「わかるかルビー! もう次から敵は、お前の右脚を、執拗に狙って来る! ウィークポイントを克服できないまま戦場に立とうとするお前は、無駄死にを選んでいるに等しいんだ!」

「わ…私、もう大丈夫だよっ! これくらいのキックで…!」

 

「はっ!」

サファイアの次なる一撃は、パンチでもキックでもなく。

集中を欠いたルビーの真横に廻り込み、重心が乗った左脚を右の足払いで刈り取る。

 

「きゃ…わあっ!」

軸足を飛ばされて仰向けに崩れ落ちるルビーを、サファイアは逃さない。足払いの低い姿勢のまま、狙いはもちろん。

 

がしっ。

「あ…あああーーーーっ!!!」

ルビーの右足首を両手でがっちり捕まえるサファイア。そのまま引き込み、ルビーの右脚全体を蜘蛛絡みのように両足でぎしっと締め上げる。

 

「ひっ…いやっ…!」

トゥーホールドからの、レッグロック。

上体を起こして逃れようとするルビーを、サファイアは右脚を揺さぶってバランスを崩し、さらに右脚をねじって逆にルビーの上体をひねり落とす。

 

「うぐうっ…! …あっ、あーーーーーっ!!」

遂にうつ伏せにされ、上体と左頬を冷たい地面に押し付けられるルビー。

その背面越しに、サファイアは完全にルビーの右脚を掌握してしまった。

 

相手も…サファイアも、自分と同じパワーを持つ超昂戦士。

このまま足首をねじりあげて壊すも、

足首から向こうずねごと横に曲げ、膝を壊すも、

太ももごと開脚させ、股関節を壊すも、

全てがサファイアの思うがまま。

 

うつ伏せでエビ反りになったルビーには、次のサファイアの技が見えない。

それが悲観を増幅させ、ルビーの心をへし折る。

 

ぐぐっ。

サファイアがルビーの脚に力を入れた瞬間。

 

「やめてええっ! もうダメええっ!!」

 

遂に屈服の証を叫び、ルビーは抵抗を諦めた。

 

……

「ううっ…、……〜〜っっ!!」

うつ伏せのまま、ルビーは肩を震わせ、声を殺して泣く。

「ルビー…お前、以前にも足を怪我しているだろう?」

「……うん。交通事故で…。」

 

サファイアは、それで全てを察した。

入院治療とリハビリの、辛く痛く苦しく、希望の見えない日々。

その経験がルビーの心の深層を苛み、新たな足の怪我を極端に怖れさせるのだろう。

 

サファイアはルビーの身体を起こし、たしなめるように真っ直ぐルビーに告げる。

「…ルビー、もう一度言う。

今のお前では戦場に出せない。

そのトラウマを克服して、脚を攻められても跳ね返せるようになるまで、エスカ・ペアは解消だ。」

「えっ…!」

「若頭領も同じ考えのはずだ。今は待機して、心を鍛えろ。」

 

出動、できない。

 

「あ…ああっ…!」

 

突きつけられた現実を受け止めきれず、その場でへたり込み呆然自失となるルビー。

 

(ルビー…待っているからな…!)

喉まで出かかった言葉を飲み込み、敢えてルビーを突き放すサファイアは、無言で去る。

 

ルビーは再び戦場に立ち、人類の希望を繋ぐことができるのだろうか。

それとも希望の輝きは、このまま潰えてしまうのか…!

 




作者の環です。2夜連続で第2話をお届けします。

今回のルビーVSサファイア、いかがでしょうか?
環のSSでは超昂戦士どうしのバトルは、こちらが第3弾となります。

  ルビーVSアメイズ(真の仲間になれないエスカチームのお嬢様は~)
  ルビーVSエスカレイヤー(眠れルビー、愛する人の腕の中で)

お気に召しましたら、既作もご愛顧賜りますれば幸いです。
#ルビーVSトパーズは…原作でいっぱい既出なので(汗)

おおむね明晩をめやすに第3話、そして週末に完結第4話までお送りできるよう、鋭意執筆中です。それではまた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。