超昂大戦SS 翔べルビー、復活へのハイジャンプ! 〜敗北と、記憶を超えて 作:環 藍河
ストライク・エスカレーションを破られ、右脚を負傷してしまったエスカ・ルビー。
治療は完璧になされても、かつて交通事故で長期リハビリに苦しんだ記憶が、ルビーに全力の蹴撃をためらわせる。
その心の弱さを見抜いたエスカ・サファイアは、ルビーにペア解消…戦力外を告げる。
…
……
しゃああああっ…
トレーニングルーム併設のシャワールームで、アカリは肩を震わせていた。
(ごめんなさい…!
ヒビキちゃん…ごめんなさい…!)
自分の不甲斐なさから、かけがえない相棒に愛想を尽かされてしまった。
その情けなさに、悔し涙が止まらない。
それでも、この右脚が、応えてくれない。
(どうして…どうして最後の最後に、撃ち抜く勇気を貫けないの…!)
…
……
火照った身体と泣き腫らした顔を冷まして、部屋に戻ろうとするアカリを呼び止める人影。
「…アカリ、ちょっといいか。」
「…長官…
私っ…もう…ダメです…!」
またこぼれそうになる涙をこらえるアカリ。
トキサダは、アカリの部屋に付き添う。
「右脚だけじゃ、ないんです…。」
アカリは独白する。
「ストライク・エスカレーションも破られて…。敵が強くなるなんて、当たり前なのに…。」
「アカリ…」
「私…覚悟が足りないんです…。ヒビキちゃんにいっぱい言われてたのに…戦いを、甘く見るなって…!
そんなこともわからないで、ADDDの力に甘えて戦士ごっこをして、ちょっと勝てたからってうぬぼれて、負けたら足がすくんで…!」
うつむき、顔を伏せ、トキサダに向ける言葉としてより、自分をなじるように、アカリが続ける。
「…知ったかぶりだったんです。負ける辛さを、戦いの怖さを…。
戦う覚悟ができてるつもりになって…。
でも…やっぱり私は弱くて、怖がりで…。
そんなままで出撃して、また負けて、自分がダメ戦士だって思い知らされるんだって思ったら、ますます戦いが怖くなるんです…!」
昨日までの希望に溢れた眼差しが嘘のように、嘆きと絶望の中でアカリは溺れ、もがいていた。
「情けないけど、私…
もう、立てないかも、しれません…!」
…だが、トキサダは知っていた。
初めて会った日、アカリが我が身も顧みず、木の上の少年を救おうとしたことを。
並ならぬ決意と覚悟でダイビートの門を叩き、地球を、愛するみんなを護るための力を、私心なく求めたことを…!
「…アカリ。
負けたことのない戦士なんか、いないんだ。
エスカレイヤーもハルカもエクシールも、何度も負けた。
必殺技だって、何度も破られた。
プライドも決意も覚悟も、何度も何度も砕かれたんだ。」
「…えっ…!?」
「…それでも彼女たちは、再び敵に向かって立ち上がり、平和を取り戻した。
再び負けるかもしれない、恐怖を飲み込んで。
今日出撃するのだって、みんな本当は怖いんだ。
それでも戦場に立つのが、君が憧れ、君が目指す、本物の戦士の姿なんだ。」
「あっ…!」
「アカリ…君は今日、訓練ではわからない戦いの厳しさと辛さ、何より、負けて自分の大切なものを失う悔しさを、初めて知ったんだ。
リアルの戦いに怖れず飛び込んだ者だけが、その痛みを知ることができる。
…アカリ、おめでとう。
ダメ戦士なんかじゃない。君は間違いなく、最高の戦士だ。」
トキサダが続ける。
「…俺も、最初から強かったわけじゃ無い。何度もコテンパンにのされ、こんなことじゃ未来を変えられないって、何度も絶望したさ。」
「あ…あの…!」
「?」
「…それじゃ…長官はその壁を、どうやって乗り越えたんですか?」
「…弱い自分を認めて、強くなってやるんだって腹を括って、がむしゃらに鍛えた。
その間も、何度も倒され、地べたを嫌になるほど舐め尽くして…
やっと最後に、恐怖を超えることができた。」
「あっ…!」
アカリは気づいた。
自分は、弱い。
また右脚を壊されて、惨めに負けるかもしれない。
でも、ためらって戦わないままでは、いつまでも未来は拓けない。
強いから戦うんじゃない。
勝てるから戦うんじゃない。
逆だ。
弱くて、怖くて、当たり前。
負けて、当たり前。
怖いからこそ、戦うんだ。
負けたからこそ、挑むんだ。
自分が求めるみんなの笑顔は、この怖さと敗北を超えた、その先に必ずある…!
「アカリ…そんな君に、一つプレゼントだ。」
トキサダはそう告げると、インカムでラボと通信し、
「さやかさん、例のアレを使う。用意を。」
コンタクトを取ると、アカリをラボに連れ出す。
…
……
「インストール、完了か…」
(…んっ…。)
「あっ、目が覚めたー? どーお、さやかさんの『精神と時の部屋』はー?」
「…はい。いっぱい、いっぱい右脚、撃ち抜いてきました!
右脚を狙うフーマンや滅忍の対策も、勝率79%まで上げました!
ストライク・エスカレーションも、数え切れないほど打ち込んで、何度も失敗して、改良して工夫して、磨きました!」
トキサダがアカリに課したのは、学習インストールシステムの応用。
さやかがバーチャルシミュレーターと融合させ、脳から運動神経への指示やフィードバックをコントロールし、数十倍の頻度で反復させる。
実際にキックやジャンプをしないので、怪我の恐れも無い。
ルビーの脚を傷めず、キックを何十日もひたすら磨きあげるのと同じ経験を、ものの数十分で獲得できる。
「負けた21%は大丈夫か?」
「はい…ボロボロに、何度も何度も惨めにやられちゃって…、悔しいです…!
けど、負けて学んだことも大きくて、次に負けないための戦い方も、見えてきた気がします!」
「わかった。お疲れさま!
あ、今のアカリちゃんは神経伝達系を酷使した状態だから、今はここで、そのまま寝ちゃう方がいいわね。」
「は…はいっ…。おやすみ…なさい…。」
ぱたっ。
「…吹っ切れたかな。」
「う〜ん…このあと、生身の体で実践して自信回復完了…となればいいけどね。」
トキサダとさやかの期待を肩に、心地良い達成感を抱いて、アカリは少しの間まどろむ。
だが。
こうしている間にも、敵は容赦なく、片輪を打ち砕いたエスカ・ペアの完全粉砕を目論み、そのための武装と作戦を着々と完成させていた。
サファイアの必殺技も、また破られてしまうのか?
そしてルビーの復活は、果たして成るのか…?
作者です。第3話、掲載いたします。
原作が閃忍エピソードで盛り上がるさなかでも、ブレずに初期ストーリーがベースのルビー回をお届けしております。
どうも読者様のニーズとかをお構いなしにしてしまって…申し訳ありません。
このシリーズは次の第4話で完結。
その後、今日プロットの神様が降臨なされまして、大急ぎで熟成中です。うまく明日あさってにお披露目できますよう、土日とも休日出勤なんですが、隙間を縫ってテキスト打ち込みます!(大丈夫か本業?!)
それでは近々、完結編または新SS(あるいはその両方)でお会いできますことを。