嘘のつき方   作:にに(ににんがし)

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あらすじの部分にも書きましたが、読んでいて気持ちのいい文章では無いので閲覧注意です。
気分を害されてしまった方は、すぐに閲覧を止めて頂けると幸いです。


1日目

1日目

 

僕が嘘や隠し事に対して嫌悪感をそれ程抱かなくなってしまったのは何時からだろうか?

 

 アルバイト先の社長が、会社の経営難をひた隠しにし、倒産寸前の所で泣きついてきた時だろうか?

 両親が僕の口座のお金を勝手に住宅ローンの支払いに使っていたということを、夕食の時に悪びれる様子も無く告げてきた時だろうか?

 それとも、幼い頃に刷り込まれてしまった、嘘をつくと両親の叱責を回避することができてしまうという良くない経験に基づくものだろうか?

 

 今となってしまってはもう分からないことではあるが、これらの出来事は僕という人格を形成する上で、大きな影響を与えたということは間違いない。

 

 今日、僕は両親に半年にわたってついていた嘘とひた隠しにしてきた事がバレた。

 それも、親子の信頼関係を揺るがしかねない、大きな嘘がだ。

 

 

 嘘が露呈した経緯なんていうのは、どうだっていい事だが、バレてしまった時、僕は両親に対して、申し訳ないと思う一方、これ以上嘘を重ねなくてもいいんだという、ある種の安堵のようなものを感じてしまった。

 

 僕は嘘がバレたということで楽になろうとしたのだ。

 

そんな自己中心的な考えをしてしまう自分は、吐き気がするほど気持ち悪いと思うし、そんな事が真っ先に出てくる自分自身が怖くてたまらなかった。

 

 また、嘘に対する両親の反応は、生涯決して忘れてはいけないものであった。

 

 両親は僕を叱りつけることは無かった。

 ただ、懇々と事実確認をし、それが終わった後は二、三個質問をするだけで、それ以上何かを尋ねてくる事は無かった。

 

 この時、僕はこの世の中で唯一、無条件で自分の事を肯定してくれる人達の信頼を失ってしまったのだという事を改めて実感した。

 

 そしてこの失われてしまった信頼というのは、もう二度と得られることは無いということに、今更気づいたのだ。

 

 幼い頃から他人の顔色ばかり伺っていた僕には、自分というものが無かった。

 

 もちろん、嬉しいや悲しいなどの感情は持ち合わせており、機械の様な無機質な存在であるという訳ではない。

 

 厳密に言うと、他人の中に存在する僕という存在に深く依存をし、他人が思い描く自分を演じることでしか自分を表現することができないという状態である。

 

 例えば、僕は何か行動を起こす際に、自分の考えや感じた事よりも、その行動をした時に、それを見た他人はどの様に受け取るのかという事を考えて行動する。

 そうすること自体が悪いことだとは全く思わないし、そうしなければならない場面というのもあると思うが、僕の場合は度が過ぎていて、他人の心象を良くすることに固執をし、依存してしまっていた。

 

 要は、自己肯定感が低いくせに自尊心とか承認欲求が高く、他人というものさしでしか自分を測ることが出来ない最低な人間という訳だ。

 

 そして、そんな最低な僕は今、真っ当に生きていれば無くさない、本当に無くしてはいけない大切なものを、たった半年で失ってしまった。

 

 これから僕の人生がどうなるかなんて微塵も分からないが、今はこの場所から一歩でも遠くに離れたい。

 

  最低限の荷物を纏めた僕は、音が出ない様に静かにドアを開けた。そして誰にも気付かれない小さな声でごめんと一言呟いて逃げるようにその場を後にした。

 

 痩せ細った月がそんな僕を見て、嘲笑った様な気がした。

 

 

 

 

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