リコリスマイスター 刹那   作:水が死んでる

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全てが無に帰りました。

おっほw


10 不吉な出会い

DA本部へと三人で向かった翌日。

刹那は、リコリコ営業中に『少し出かける』とだけ言い残し、人気の少ない路地裏へと向かっていた。

 

発端は、ボドゲ大会中に刹那のスマホに送られてきた一通のメール。

差出人は『真島』。

件名は『話がある』。

内容は地図に赤いマークを付けられている画像データが一つだけ。

 

あからさまに怪しいものだが、刹那は会いに行くことに決めた。

 

最たる理由としては、刹那のアドレスを入手した経路を知るためだ。

青服という、少々枠外にいるとはいえ、刹那もリコリスの一員。

そんな存在のアドレスなど、本来であれば流出することはあってはならないことだ。

 

だがこうして、第三者の手に渡ってしまっているという観点から、刹那のアドレスを知る者のスマホを奪取されたか、何かしらあったことは間違いない。

現在は刹那はリコリスの制服ではなく、黒のスカート、白のシャツに赤のスカーフを巻いているという、私服で歩いている。

少し袖口が広がったシャツの袖には、リコリス御用達のS&W M&P9Lを忍ばせている。

 

日時の指定はない。

だが、刹那が指定の場所にたどり着くと、奥から男が歩いてきた。

 

「待ってたぜ、リコリス」

 

「...何が目的だ」

 

最初から、リコリスであることがばれている等織り込み済みの刹那は、慌てず相手に問いかける。

 

(おそらく、この男が真島。いったい何が目的であんなメールを...)

 

刹那が袖の銃をいつでも取り出せるように備えていると、男は懐から銃を取り出して、その場に捨てた。

 

「俺は別にやりあいにわざわざこの場を指定したわけじゃねえ。『話がある』って言ったろ?」

 

「...そうか」

 

だがそれでも、刹那のようにどこかに隠し持っていることが否定されたわけではない。

自身の銃は捨てず、警戒心はそのまま真島の話に耳を傾ける。

 

「くくっ、それでいい。そこで銃を捨てちまうあまちゃんだったら興ざめだ」

 

「答えろ。お前の目的はなんだ」

 

「おいおい焦るなよ。まずは場所を変えねえか。腹減ったんだ」

 

「...近くにファミレスがある。そこでいいか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「刹那、どこに行ったんでしょう」

 

昼頃。刹那が一言だけ残し、突然何処かへと出かけて行った数十分後。

客足も落ち着き、一息ついたたきな達は、刹那の行動を振り返って思う。

 

まだ一年もたっておらず、数か月しか一緒に生活していないものの、今回のようなケースは稀どころか、初めてだ。

 

「けっ、どうせ彼氏でもできたんじゃないの~?」

 

そういいながら顔をしかめるミズキ。

他人に隠し事をしている人を見つけたときは、ミズキはまずこの線を疑う。

 

「いや、それなら男じゃなくて女をひっかけてそうだけどな」

 

そう言うのはクルミ。

刹那が居なくなったため、人手不足を解消するために押入れから出され働いていたのだ。

 

ミズキとクルミが言い合っているのをよそに、千束とたきなは想像してみる。

刹那が相手を作るとしたら、どちらの性別になるのだろう。

 

千束的には、どちらかと言うと女性を作りそうなイメージが強い。

何せ、刹那は男顔負けのイケメンな行動をすることがたまにある。

それに加え、ミステリアスな雰囲気も持ち合わせている。

 

ミズキの嫉妬により、今は刹那は裏方の仕事メインで働いているが、働き初めの接客をしていた当初は、それはそれは女性にモテた。

ミズキの言動がおかしくなるぐらいには。

 

たきな的には、やはり男性と歩いている姿しか浮かばない。

と言うのも、たきなは同性同士の恋愛をあまり知らないのだ。

理解が浅いがゆえに、選択肢がない。

 

とはいえ、あの刹那が男性と一緒に歩いているか、と言われると、それも違うような気がする。

 

「私は、せっちゃんは女の子と歩いてそうかな~。ほら、最初に働き始めたときは女性人気すごかったでしょ!」

 

「ええ、ええ。それはそれはモテてたわね! 私が嫉妬でおかしくなるぐらいには!」

 

千束の言葉に、ミズキが拳を握りしめていると、今度はたきなが口を開いた。

 

「私は...刹那が誰かと一緒にいる、という姿に違和感を覚えます」

 

「...それってどういう?」

 

たきなの言葉に千束達が首をかしげていると、たきなもあまり理解していないようで、たきな自身も首を傾げた。

 

これまでの刹那の、一歩引いている感覚がまだ残っているというか。

壁が一枚ある、というか。

 

 

「なんとなく、そう思うんです。ただ、最近は私と話していると少し微笑んでくれるので、それも思い過ごしかも知れませんけど」

 

「なにそれずるい! 私が笑わせようと爆笑エピソードとか話したり、ギャグ映画を見せたりしてるのに一向に笑わないのに!」

 

「ああ、それで最近の刹那は疲れた顔をしていたんですね。やめた方が良いですよ、それ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回は俺が出す。何頼むよ?」

 

「...ドリンクバーだけでいい」

 

「それで足りんのかよ? んじゃあ俺は...」

 

近くのファミレスへと寄った刹那と真島。

二人は、お互い銃を持っているとは思えないほど気安い雰囲気でファミレスの席に腰かけていた。

 

たまたま近くにいた店員に注文をし、メニュー表をもとの場所に戻すと、本題だと言わんばかりに真島の目が鋭くなった。

 

「んで、だ。話ってのは、お前の所に裏切りのお誘いでも来なかったか?」

 

「お前の所にも来たのか」

 

「ああ。もちろん、断ったが」

 

昨日、メンテナンスと偽り、刹那に裏切りを持ち掛けてきた女性は、どうやら真島にも接触していたらしい。

勿論、首を縦に振るか横に振るかは本人の自由だが、どうして真島は断ったのだろう。

 

「俺がそっちに加担したら、今俺がやろうとしてることはどうなる?」

 

「何をしようとしている?」

 

「お前らリコリスの存在を世間に公表する。それだけだ」

 

それだけ言うと、真島はドリンクバーへと向かっていった。

 

リコリスの存在を世間に公表する。

そうなれば、リコリスの行く末は抹消のみだ。

元からなかったことにされるのみだろう。

 

刹那単体であれば、問題はない。

リコリスを抹消するのに動くのはリリベルだが、千束のような化け物クラスを数人用意しなければ、刹那にはかすり傷も負わせられまい。

ただ、刹那には守りたいものが出来た。

 

「最悪、海外へ逃げる伝手を用意しておくか」

 

刹那が席で待つこと数十秒。

真島が二つのコップを持って戻ってきた。

 

「お前の、ナルピスでいいか?」

 

「...ああ」

 

刹那は真島が持ってきたコップを受け取り、そのまま一口飲む。

こう言った甘い飲み物を飲むのは久しぶりだな、と思っていると、真島が呆気にとられたような顔でこちらを見ていることに気が付いた。

 

「どうした?」

 

「お前、おもしれーやつだな」

 

真島はにやりと笑いながら、コップを傾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻はすでに十五時以降。

昼の食後のデザート層もあらかた来なくなり、ある程度暇な時間が来たリコリコメンバーは、いまだに姿を見せない刹那の事を考えていた。

 

あるとすれば、刹那が何かしらの事件に巻き込まれた可能性。

とはいえ、刹那と直接、一対一の模擬戦を行った千束からしてみれば、彼女に出来ないことはそれこそリコリス全体で動かなければいけないような事態だ。

 

そのことを正しく理解しているのは千束だけで、他の四人は知らない。

 

どうしたものかと考えていると、たきながスマホを取り出して、耳に当てた。

 

「...出ませんね」

 

「刹那は三コール以内には出るはずだ」

 

たきながそう呟くと、真面目な顔をしたミカがそう告げた。

 

もしかすると。

 

「...もしかするかも。クルミ。刹那を探して。たきなは電話をかけながら私と探すよ」

 

「わかりました」

 

「任せろ」

 

スイッチの入った千束に指示を出された二人は、まずは着替えるべく更衣室へと駆け込んでいく。

続いて、ミカとミズキにも頼みごとがあると千束は、厳しい顔で言う。

 

「刹那が手に負えないってことは、もしかしたら私でもやばいかもしれない。バックアップをお願い」

 

「ええ」

 

「わかった」

 

そうして、リコリコメンバーは各々でやるべきことを開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前はその先に何を見る?」

 

「まぁ待て。俺だけが答えてちゃバランスが悪い。今度は俺が質問する番だ」

 

刹那の目の前で、真島はカルボナーラを食べながらそういう。

こう言った見た目の人物は、どちらかと言うとジャンクフードを好む印象があったため、刹那は少し意外に思っていた。

 

「いいだろう、私に答えられることならば」

 

「いいねぇ。んじゃ質問だ。お前、自分とそれ以外の人間が違う存在なんじゃないかと思ってるだろ」

 

「...」

 

「たまたま情報が見つけてな。すでにぶっ壊れてた施設の中で、たまたま生きてた機械のデータを抜いたんだ。そこに、お前の名前があった」

 

「私を支援した奴の施設か」

 

「なるほど頭の回転は早いな。その通り。お前の胸に埋め込まれてるそれは、明らかに人類には過ぎた代物だ。他の何を持ってもバランスがとれねえ」

 

真島はフォークを刹那の胸の方へと向ける。

刹那は視線だけを、自身の胸へと向けた。

 

たきなよりかはある胸の中には、今もなお、止まることなく太陽炉が動いている。

一度動き始めた太陽炉は停止させることが出来ず、改良も出来ないとされている。

 

多少の不便さもあるものの、それを補って余りあるほどのパフォーマンスを持つのが、刹那の胸にある代物だ。

 

「それで、お前は何をしたいんだ?」

 

「私の、したいことだと?」

 

「ああ。アラン機関に支援されて、こうしてお前は生きてる。使命があるはずだ」

 

「私の使命か...」

 

刹那は、胸にかけているフクロウのペンダントを取り出した。

 

あの時、この胸に埋め込まれた後、確かにアラン機関の人間と会話をしていたことは覚えている。

ただ、それがどんな人物なのかが朧気だ。何せ何年も前の話だし、刹那もまだ子供だった。

一つだけ覚えているのは、『期待している』と言われた事。

 

「私の使命は知らない。だが、『期待している』らしい」

 

「...ふん、そうかよ」

 

刹那がそう告げると、真島はつまらなさそうに鼻を鳴らして、伝票をもって立ち上がった。

そして、ポケットから一枚の紙を取り出して刹那の前に置いた。

 

「俺の電話番号だ。もしお前の使命を見つけて、そのためにDAが邪魔だと思えばここにかけろ。協力してやらんこともない」

 

「...その代わりに、お前のやりたいことに手を貸せ、とでも言いそうだな」

 

「お、わかってんじゃねぇか」

 

そして、真島はそのまま会計を終わらせ、外へと出て行った。

 

刹那は、この先何度も真島と会うことになるかも知れないと、予感していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一体刹那はどこに...」

 

「あ、いた!」

 

リコリコを出て数十分。

クルミからの追加の情報を待ちながら、虱潰しに近辺を探していた千束とたきなの二人。

 

そろそろ人に寄って来た、と言ったタイミングで、ファミレスの中にいるのを二人は発見した。

事件に巻き込まれているわけではない。

そのことに安心した二人は、違和感に気付く。

 

刹那の正面に誰かが座っている。

 

「あれ、誰?」

 

「さあ...お店には来たことない人ですね」

 

外から見た限りでは、男の方はかなりフランクに刹那に接しているように見え、それを刹那が気にした様子はない。

しばらくその様子を見ていると、男が伝票をもって立ち上がり、その代わりに紙を置いてファミレスを出て行った。

 

「何か置いたね」

 

「置きましたね。...千束はよく映画を見るんですし、何か思いつきませんか?」

 

「えぇ~...でも、ありがちなのはやっぱり恋人だよね」

 

「...やっぱり刹那が誰かとそういう関係になるのは想像できません」

 

顎に手を置き、考え込むたきな。

刹那の事を想像すると、自然といつもの優しい笑みを浮かべた刹那の顔が浮かぶし、それと同時に、千束の姿も浮かぶ。

想像上のたきなも二人の傍にいて、笑っている。

 

(...なんだか恥ずかしいことを考えているような...)

 

と、たきなが若干頭を悩ませていると、千束が勢いよく刹那を指さした。

 

「あ、出てきた! 行くぞたきな!」

 

「え、あ、待ってください!」

 

ファミレスから出てきた刹那に、その勢いのまま飛びつく千束。

勢いを殺せずに数歩よろけたが、それでも倒れはしなかった刹那を見て、たきなは刹那の体幹が非常に優れていることを理解した。

 

「ぐっ...千束か」

 

「せっちゃん、さっき会ってた男の人って誰?」

 

「知人だ」

 

「うっそだー、せっちゃんに一般人の知人がいるわけないじゃない」

 

「...」

 

千束が刹那を問い詰めていく様子はまるで、千束に借りた映画の中に登場した、依存している少女のようだ、とたきなは思ったのだった。

 




危ない!
ギリギリ!


明日は仕事が休みなので、ストックが作れそうです

わあい^^
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