まさかの百合学園ガンダムっていう。
まぁリアタイしてないんで全然知らないんですけど。
千束とたきなと別れた刹那は、サードリコリスが持ってきてくれていた青の制服を身にまとい、地下鉄へと急ぐ刹那。
耳に通信装置を取り付けると、すぐに女性の声が聞こえてくる。
「準備は?」
「まだだ。詳しい情報が聞きたい」
楠木だ。
刹那はまだ地下鉄へと向けて走っている途中で、幸い場所は近いためさほど時間はかからないが、相手の情報も不明と言うのは不安材料になる。
ラジアータであれば何かしら掴んでいるだろうと、刹那は情報をよこせと急かす。
「...ラジアータが地下鉄襲撃を察知した。人数は不明。だが少なくはない。襲撃されるであろう地下鉄には既にリコリスが乗車している。刹那は、それに合わせて地下鉄内に入り込み、挟み込むようにして叩け」
「了解」
「まだ予定時刻には早いが、刹那の方は準備が出来るのが早ければ早いほどいい。しくじるなよ」
「わかっている」
刹那はそれだけ言うと通信を終了し、人に見られずに駅内の『関係者以外立入禁止」と書かれた扉を開けて中に入る。
ここは既に他リコリスにより確保されており、一般人が入ってくる可能性はない。
刹那はこの場で、作戦開始時間まで息をひそめていた。
『まもなく二番線に、東武線直通急行、南栗橋行きが参ります』
「...時間か」
暇つぶしの時間を、スマホに保存されている三人の写真を眺めていた刹那は、外から鳴るアナウンスの音で立ち上がる。
音もなく外に出て奥へと進んでいくと、そこには既に男たちが待機していた。
男たちは銃を携帯しており、中でも緑頭の男は機銃を構えていた。
「あの男...」
真島だ。
それを理解した瞬間、地下鉄が通り、男たちが一斉に発砲を始めた。
(まだだ。あの中に乗っているのはサードリコリスたち。銃声がある程度止んだ時に、一斉に顔を出して銃撃を始めるはず)
それと同時に後ろからも襲撃する。
今回のミッションプランはそういったものだ。
銃で撃たれることを想定して作られていない地下鉄は、一瞬でボロボロになっていく。
だが、男たちが銃撃をやめ、静かになった時、中は見た限りもぬけの殻だった。
「あ...?」
真島が訝しむ声をあげたその時、椅子の下に隠れていたリコリスたちが顔を出した。
「やっべ...」
真島の判断は早く、機銃を捨て、リコリスたちの射線に入らない柱の影に身を隠す。
「くそっ」
仲間の男たちは続々と倒れていき、このままでは死ぬだけだというところで、懐からスイッチを取り出す。
こいつらだ。こいつらが。
「お前らが!」
そうして真島がスイッチを押そうとした瞬間、赤い残像が目の前をよぎった。
そして襲い掛かる激痛。
スイッチを持っていたはずの右手は赤く腫れあがり、肝心のスイッチは探してみれば、遠くへと飛んでいた。
先程まで絶えず鳴っていた銃声が止み、不審に思いながら痛みで閉じていた目を開くと、そこには赤く輝く、見た覚えのある顔があった。
「...また会ったな」
「ったく、やっぱお前か...!」
この場を切り抜ける方法を真島が必死に考えていると、ちょうどスイッチが飛ばされたところに倒れている仲間が、まだ生きていることが分かった。
男はまだ意識があり、飛ばされたスイッチの存在に気が付き、押そうともがいている。
気づかれるとやばい。
だが、意識をこちらに向けようとして、やりすぎてリコリスに殺されるのもやばい。
真島はぎりぎりのラインを攻めることになった。
「結局お前はそっちにつくのかよ?」
「元々私はリコリスの一員だ」
真島と刹那が話を始めたのを見て、他の白服は銃を構えるだけで撃つ素振りは見せない。
これなら行ける。そう確信した時、真島の耳が、スイッチのカバーが開かれる音を拾った。
「いいのか? そうしてて」
「何?」
「ここはもうすぐドッカーン。爆発して崩れるぜ?」
「...! 撤退しろ!」
真島の表情を見て、嘘を吐いていないことを察した刹那が撤退の指示を出すのと、男がスイッチを押すのは、ほぼ同時だった。
その瞬間、地下鉄の天井が爆発し、真島は驚異的な反射をみせ、地下鉄の電車がない方へと潜り込む。
「くそっ...!」
刹那の中で、真島を追いかけるか、他のサードリコリスを救うかの二択が生まれる。
真島を追いかけるとして、その先に何があるのかわからないという点がある。
だが、後者のリコリスを救うとして、人数が多すぎて、救える人数は片手で数えられる程度だ。
爆発により落下してくる瓦礫をどうにかしようにも、モビルスーツのようにビームを出すことなどできない。
「掴まれ!」
迷う時間はない。
刹那は、近くの数人のリコリスを抱えられるだけ抱え、トランザムを発動。
抱えているリコリスにかかる負担は度外視で、安全圏へと全力で急いだ。
このまま地上に出るのは容易い。
だが、そうすると一般人の目に入ってしまう。
刹那は九十度進行方向を曲げ、刹那が待機場所に使っていた場所へと入る。
中に入ると同時に抱えていたリコリス三人を雑に放り投げ、扉を出力全開で抑える。
爆発の衝撃で開きそうになる扉を抑える事数十秒。
ようやく落ち着いたと思い後ろを振り返ると、刹那が助け出した三人の内、一人が立ち上がり、刹那を睨んでいた。
「なんで助けたの」
「...」
少女は、刹那の胸倉をつかんで、ひねり出すように声を出す。
「私だけが助かるなら、死んだ方がマシだった...!」
それだけ言うと、その少女は力が抜けたようにその場に崩れ落ち、静かに泣き出した。
他の二人は、トランザムでの強行突破に耐えられず意識を失っているものの、外傷は見られない。
ひとまず、この三人は助けられたというべきだろう。
だが刹那は、これが正解なのかわからず、拳を握りしめた。
太陽は既に沈み、喫茶リコリコにてクルミが常連客相手に無双している頃。
刹那が薄汚れた制服姿で戻ってきた。
「すまない、今戻った」
「ああ、おかえり。...何かあったのか?」
「いや、少しドジをしただけだ。シャワーを借りるぞ」
刹那はそのまま、常連客やクルミが声をかける暇もなく、そのままカウンターの奥へと進んでいった。
「あれ、千束とたきなは? 一緒に出掛けたんじゃないの?」
それを見送ったミカは、何も言わずにテレビに視線を移す。
そこには、常連客の一人である阿部が映っていた。
それに他の皆も気づいたらしく、こりゃ今日は来ないな、などと口々に言う。
回送電車だったのが不幸中の幸い、とは言うが、ミカの予想では、これもDAによる情報操作だろう。
それに刹那が関係している。
客が帰った後刹那に詳しく聞くとして、今出来ることは少ないと、ミズキの方へと顔を向けた。
「何かあったんだろう。あとで聞いておけ」
「無視してたんじゃねぇのかよおっさん」
翌日。
午前中の営業中に、千束は思い出したとばかりに、更衣室へと入り込み、たきなのロッカーを開けてパンツを処分していた。
「はい捨てま~す。これも捨てま~す。捨てま~す」
順調に袋の中にトランクスを袋の中へと入れていく千束だったが、何かを突然思い出したらしく、トランクスを持つ手が止まる。
『これいいんですけどね。通気性も良くって、動きやすい』
思い出されるのは、そんな一言。
たきなが言うのだ、嘘ではないのは明らかで、その言葉も保証されているぐらいのもんではある。
物は試しだ、とばかりに、千束はおもむろに自身のパンツを引き下げ、トランクスを着用した。
「お? おお? おお~?」
まさかここまでとは。
千束は、たきなに全否定していた自分が恥ずかしくなるほどに、トランクスと言うものを実際に着用し、その機能性に驚いていた。
「これは~!」
たまにトランクスでもいいかも知れない。
そう思いながら、スカートを自分でめくりあげながら一回転したところで、更衣室の扉があいた。
「千束~! サボってないで...」
時が止まった。そう千束は感じた。
「いやこれは、あの...」
「いや~! ハレンチ~!」
「違う違う違う!」
リコリコ店内にミズキの叫び声が響き渡った。
なんだなんだとたきなと刹那が更衣室へと寄ると、そこではミズキが千束の首を絞めながら、やれ『男の所に泊ってきた』『私への当てつけのつもりか』と言っていた。
話の脈絡が見えない二人は顔を見合わせて、また千束とミズキを見る。
すると、そのタイミングで千束と目が合い、たきなのだから、と言い始めた。
その言葉に反応したミズキは、ずかずかとたきなの方へと歩みより、スカートをまくり上げた。
しかし、そこにあるのは純白のパンツであり、決してトランクスではない。
「かわいいじゃねぇか」
「いやだからそれを昨日買ったの!」
千束とミズキが言い合う中で、たきなの顔は真っ赤になっていく。
それを見た刹那は、たきなも恥じらう心があったのか、と思いながら、コップに水を入れて差し出した。
「飲むか?」
「あ、ありがとうございます...」
たきなが冷えた水を飲んでいる間に、ミズキはカウンターの方へと歩いていき、声を大にして言った。
「みなさーん! この店に裏切者の嘘つき野郎がいますわよ~!」
「やめろやめろやめろ~!」
ミズキを捕まえようととびかかった千束だが、それを逆手に取られて抱え込まれ、スカートを客に見られるようにめくられる。
千束が必死に抵抗している中で、店の電話が鳴り響いた。
ミズキが千束を羽交い絞めにし、クルミが扇風機を持ち出しスカートをひらひらとめくる。
そんな様子をただ見ているたきなと刹那。
そんな五人を横目に、ミカは受話器を取る。
「楠木か。うん」
通話の内容が聞こえないように、裏へと向かうミカ。
その途中で折りたたまれた紙を取り出し開く。
「例の銃か」
紙は、銃取引の現場であるものが印刷されており、楠木からの電話の内容は、先日あった地下鉄の事件で使用された銃と一致している、という情報だった。
「わかった」
その一方で、千束とミズキのやり取りを見て、たきなは笑っていた。
そんなたきなの表情を横から見ていた刹那は、リコリコに来た最初のころのたきなを思い出し、笑みを浮かべていた。
なんだかリコリコ十四話がトレンドに入ってたみたいですね。
集団幻覚で笑いました。