リコリスマイスター 刹那   作:水が死んでる

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十四話もかけて、アニメ本編五話だと?

クァァ


14 千束が張り切る依頼

地下鉄襲撃事件から一か月がたった。

だが、今でも地下鉄の復旧は済んでおらず、クルミが煎餅を食べながら見ているテレビでは、地下鉄会社の社長が会見を開いているところだった。

 

「この社長は何も知らないんですよね」

 

「ははは」

 

洗濯ものを抱えたたきながそういうと、クルミが乾いた笑いをこぼす。

無知であることが嫌い、とは言うものの、世の中知らない方が幸せだろうという立場の人はいる。

このテレビに映っている社長とやらも、その類なのだろう。

 

と、そこに刹那が合流した。

 

「...」

 

刹那は何とも言えない顔でテレビを見つめた後、クルミの隣へ腰かけた。

 

刹那はこのリコリコメンバーの中で唯一、地下鉄に絡んでいた人物であり、そして、生きて帰ってきた数少ない人物でもある。

しかも、生きていたリコリスは三人とも刹那が助けている。

 

クルミがラジアータをちょちょいとハッキングして得た情報には、そう書いてあった。

だが、本来であれば死ぬはずだったリコリスを一人で三人も救ったはずの彼女の顔は、今もまだ優れないままだ。

 

「...お前、まだ引きずってるのか?」

 

「いや、折り合いはつけた。助けられる中で、私は出来るだけのことをした」

 

クルミがそう問いかけると、刹那はそう返した。

そういう刹那の顔は、たきなから見ても嘘を吐いている様子ではなく、別のことに引っ掛かっている様だった。

 

あの日、何があったのか、当日の内に刹那から説明されたリコリコメンバーは、それぞれ反応を示したものの、最終的には刹那が無事に帰ってきてよかったという結論に落ち着いている。

その日からずっと、どこか暗いままの刹那を、千束も何とか元気にしようとしてはいるものの、今日まで失敗続きの様だ。

 

「なら、なんでそんな顔をしてるんだ?」

 

「...そうだな。私がこんな顔をしていてはいけない。切り替えるとしよう、すまない、クルミ」

 

「...お前がそれならそれでいい。だけど、何かあったら言うんだぞ」

 

「ああ、そうする」

 

...なんだか、千束が何とかする前に、クルミが何とかしたようだ。

 

そう理解したたきなは、洗濯物を回すべく、裏へと向かった。

 

そして、電話が鳴りミカがそれを取る。

今日も依頼が入ったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではみんな! 今回の依頼内容を説明しよう!」

 

夜。

後は片づけをしたら終わり、というところで、妙に張り切っている千束が、タブレット片手に声を張り上げていた。

 

「とっても楽しいお仕事ですよ~!」

 

そう言ってタブレットを振り上げる千束の前には、ミズキとたきなが座っている。

ミズキは足を出して座り、たきな正座。二人の性格が見るだけでわかる瞬間だ。

 

「ミズキさんが説明しないのですか?」

 

今までは、元情報部と言うこともあり、そういう方面はミズキが仕切ってきた。

依頼が来ていることを報告するのもミズキで、最終的に受けることが決まれば、そのやり取りをするのもミズキ。

 

だが、今回の依頼に限っては、ミズキではなく千束が仕切っている。

 

「私もう読みましたけど」

 

というよりかは、既にミズキから周知ずみだ。

だが。

 

「今回やたら乗り気なのよ」

 

ミズキの言う通り、今回は千束のやる気が非常に高い。

今も、話をしている二人に『私語しない!』とタブレットを振っていた。

 

そのままタブレットを二階へと振り上げると、今度は標的がクルミへと移った。

 

「そしてそこのリス! ゲームしてない? せっちゃんどう、ゲームしてない?」

 

「聞いてるよ」

 

「ああ、問題ない」

 

千束からは死角になっているため見えないが、二人はゴーグルをつけてゲームをしていた。

刹那から進んでやっているのではなく、クルミに協力してくれと言われゲームをしている。

これがまた中々やりごたえのあるゲームで、空間把握能力が問われるタイプのシューティングゲームだった。

 

そんなことには気が付かず、ノリノリで咳ばらいをする千束。

 

「依頼人は七十二歳、男性、日本人。過去に妻子を何者にかに殺害され___」

 

そんな千束を横目に、クルミは手元の機械をいじる。

二人は一緒にゲームをしている、と思っているのは刹那だけであり、クルミは刹那の情報収集を行っていた。

 

刹那と共に過ごした期間は一か月とそこらだが、それでも分かったことがある。

 

(刹那は、たきなはおろか、千束でさえもかなわないような反応をする時がある。何か理由があるはずなんだ。アラン機関が支援するべきだと判断した、何かが)

 

刹那が一緒にプレイしているプレイヤーは、クルミの戦い方を元にしたAI。

これが現実の戦いであれば、相手が人間でなことなど、()()()()()()判断は容易い。

だが、これはゲームだ。

 

と、難易度最高レベルでも難なく突破していた刹那とクルミAIだが、そこで難関が迫る。

クルミAIがミスをして、脱落したのだ。

 

「何!?」

 

「ん、珍しいこともあるな」

 

ゲームでは敵なしを誇るクルミが落とされたことに一瞬の同様が走るも、気を取り直してコントローラーを握る刹那。

だがしかい、協力プレイを推奨されている難易度に苦戦し、この後は刹那も落とされて終わりか、とクルミが次のプランを練っていると、異変は起きた。

 

刹那のデータを取っている機械が一斉にエラーを吐き出し始めたのだ。

 

「な、なんだ?」

 

「こんなことでは...!」

 

唯一計測されているのは、驚異的な処理能力を持っているということ。

刹那が握るコントローラーを見ると、先ほどとは比べ物にならないぐらいの早さで入力を始めていた。

 

(これだ! 刹那はこれがきっかけでアラン機関に支援されたんだ!)

 

クルミがそう確信してデータ取りに励むそれは、惜しくも、アラン機関に支援されたことにより芽生えたものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

リコリコの扉を開けて入ってきたのは、車いすの老人だった。

それも、自分では動かすことのできないほどの。

 

筋萎縮性側索硬化症。

神経変性疾患であり、孤発性のものは未だに原因不明の症状だ。

端的に言ってしまえば、筋肉を動かす指令が脳から筋肉へと届かず、至る所の筋肉がやせていく症状。だが、手足の感覚や、内臓の機能などは保たれているのが普通だ。

 

 

「遠いところ、ようこそ」

 

「『少し早かったですかね?』」

 

ミカがそう出迎えると、今回の依頼人である、松下の合成音声が響いた。

既に本人が喋る事のできるほどの筋肉は残されていないのだ。

 

楽しみだったもので、とお茶目にいう老人が千束の方を向くと、少し呆気に取られていた千束は再起動し、横に置いてあった旅のしおりを掲げた。

 

「あ、いえ。準備万端ですよ。旅のしおりも完璧です!」

 

だが、この老人にはアナログな旅のしおりを見ることは難しいだろう。

刹那がクルミを見ると、彼女はわかっている、と言うように頷き、ミカの後ろから出た。

 

「千束、データで渡そうか?」

 

「え? あ...」

 

クルミに言われて気づいたのか、千束は持っていた旅のしおりで口元を隠した。

だが、松下は気にしていないような声色で告げる。

 

「『助かります。...あとはこの方たちにお願いするので下がっていいですよ』」

 

松下がそう言うと、黒服の男たちは車へと戻っていき、そのままどこかへと走り去っていった。

 

早速とばかりに、クルミはデータを松下へと送っていく。

スキャンして送るだけの、簡単な仕事だ。

 

その間に、千束は軽い話をしていく。

 

「『今や機械に生かされているのです。おかしく思うでしょう?』」

 

「そんなことないですよ。私も同じですから。ここに」

 

松下の、自虐ともとれる話題に振り方に、千束が軽い調子で答え、胸にハートマークを作る。

 

「『ペースメーカーですか?』」

 

「いえ、丸ごと機械なんです」

 

そんな、世間話のような軽さで告げられた事実に、たきなは気づかずに声を出していた。

 

「...えっ?」

 

「『人工心臓ですか』」

 

「あんたのは毛でも生えてんだろうね」

 

「機械に毛は生えねえっての」

 

クルミは一瞬反応したが、すぐにいつも通りの顔に戻っており、ミズキは驚きもしていない。最初から知っていたような反応だ。

人工心臓。つまり、千束の胸には機械が埋め込まれているということ。

 

それで今までのことや、これから千束に対する何かが変わるわけでもない。

だが、衝撃は大きかった。

 

聞かなければならない。

そう思い声を出すも。

 

「えっ、どういう」

 

「よし! できたぞ」

 

タイミング悪く、クルミの声と被ってしまう。

データの転送が終わったようだ。

 

『リコリコプロデュース

 東京大観光

      For 松下さん』

 

と書かれた表紙をはじめ、しっかりとデータ化されて転送されたそれは、松下にも好評だったようで、嬉しそうな声を上げた。

 

「おお、これは素晴らしい!」

 

「では、東京観光しゅっぱ~つ!」

 

そうして、たきなの疑問はそのままに、千束は松下の車いすを押して、外へと出て行った。

千束が出て行った方を指さし、たきなは大人二人組に尋ねる。

 

「あの、千束の今の話って...」

 

「ん~?」

 

「た~きな、早くいくよ~!」

 

「あっ、はい!」

 

「ミズキ車!」

 

だがそれもタイミング悪く、千束から急かされてしまう。

駆け足で外に出てきたところには、既に刹那もおり、その顔はいつも通り飄々としていた。

 

「刹那は知っていたんですか?」

 

「何をだ」

 

「心臓の事です」

 

「...いや、初耳だ」

 

「そうですか...」

 

そして四人は、東京観光へと向かった。

 

この日から事態は、急激に動き出す。




メガネかけながらマスクもしていると、自分の息が自分の目にかかってめっちゃ乾燥するんですよね。

そのたびにコンタクトにすればよかった、なんて後悔します。
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