リコリスマイスター 刹那   作:水が死んでる

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お久しぶりです。
ちょっと短めですが。


17 トリオ結成

『え? リコリスが?』

 

「四人とも、単独任務中に大勢に襲われたらしいです」

 

刹那は、たきなの早足についていきながら、通話から漏れる千束の声も含めて静かに聞いていた。

現在二人は千束が生活しているセーフハウスへと向かっている最中である。

 

その理由は、二十四時間一緒に生活し、単独で動いているところを襲われないようにするため。

発案者はたきなだ。

 

『なんで特定されてんだ?』

 

「わかりません」

 

ラジアータは犯罪が起きるその予兆をカメラなどでキャッチしてリコリスへと通達。

事前に犯罪を防いでいる。

だが、ラジアータがその予兆を見つけることができずに、既に四人も殺されている。

 

確実に真島とあの男の二人組だと、刹那は直感的に察していた。

 

「例のラジアータのハッキングと関係あるのかも...あぁそれと、『今月の健診昨日よ』と山岸先生が。...行ってなかったんですか」

 

『あ、あぁ、そういえばそうだった~...」

 

電話しながら半眼になるたきな。恐らくその声色で、千束にもたきながどのような顔をしているのかは伝わっただろう。

 

「早速今日から常にトリオで行動しようと思います」

 

『ん? いやトリオって...別に毎日お店で一緒じゃん』

 

たきなのスマホから聞こえてくる千束の声を聞きながら、刹那はチャイムを押す。

一般住宅街の中にある一部屋。

ここが、千束のセーフハウスだ。

 

たきながスマホを耳に当てたまま待機していると、扉が何の確認もなしに開く。

中には白い服を着た千束が立っており、千束もまたスマホを耳に当てたままだった。

 

(警戒心と言うものはないのか)

 

流石の刹那でも少し呆れる物があったようだ。

 

「夜は三人で交代で睡眠をとりましょう」

 

「...へ?」

 

未だに状況が呑み込めていないのか、扉を開けたまま固まった千束。

そんな彼女の横を通り抜けて、二人は中へと入っていく。

 

「安全が確保されるまで二十四時間一緒にいます」

 

「そう言う事だ」

 

そう告げた二人を見て、千束の顔が喜色満面になる。

 

「うちに泊まんの!?」

 

事態はそう楽観的なものではないが、これも千束のやりたいこと最優先であるが故、なのだろうか。

 

とはいえ千束の言う事に間違いはないので、否定はせずたきなは部屋の中へと入っていく。

部屋の中には物は何もなく、まるで引っ越しの内見かのようだった。

 

...そのような印象を覚えたのは刹那だけだったのだが。

 

「プロの部屋だ...」

 

「...」

 

全ての部屋のカーテンが閉められた薄暗い部屋を見渡し、たきなは感嘆の声を漏らす。

これまでの千束を見てきて思うところがあったようだが、やはりトップリコリスなのだな、と思っているたきな。

そしてたきなを半眼で見る刹那。

 

「ああそっちじゃないよ。こっちこっち」

 

「えっ?」

 

たきなが振り返ると、千束が壁を押してくるりと回っているのが目に入った。

まるで忍者のようだ。

 

隠し扉の向こうは鉄筋コンクリート打ちっぱなしの壁があり、とってつけられた照明が一つ。

下にはハシゴがあり、千束はハシゴを降りていった。

 

まさか、とたきなが考えている間に、刹那はそのあとに続いていく。

 

刹那の後に続いてハシゴを降りてみれば、そこには先程見ていた住居の間取りと同じ部屋が存在していた。

 

なるほど。

どうやら二階層分部屋を借りて、改造しているようだ。

 

千束の後を二人で追いかけると、途端に人が住んでいる部屋になった。

 

「...ゴミが...」

 

机の上に無造作に置かれているDVDのディスクと、空とまだ入っているのが入り乱れているお菓子の数々。

既に空のペットボトルは床に転がっており、この場だけ見れば清潔とは言えない空間だ。

 

それでいてイスやソファーの上は綺麗なのだから、千束の性格というか、普段どう過ごしているかが手に取るようにわかる。

 

「その辺座って。アイスコーヒーでいいでしょ? あ、脚はもう平気?」

 

「えぇ...」

 

「よかった~」

 

そうしてここがセーフハウスだと説明する千束の声を聞きながら、刹那は他の部屋へと向かう。

リビングの散らかり具合は確かにちょっとあれだが、その他の部屋は意外と普通だ。

 

寝室にはベッドが一つ。

睡眠は交代で取る予定なので、このベッドの上で二人で寝るか、もしくは布団か寝袋でもう一人が寝ることになるだろう。

今回二人が持ってきた道具類の中に、その類の物はない。

後で持ってくるかどうするかは、たきなと考えることになるだろう。

 

そうして刹那が部屋の物色を終え戻ってくると、たきなが大きい紙に黒のマジックペンで何かを書いている所だった。

 

「それは?」

 

「家事分担スケジュールです」

 

たきなにそう言われ覗いてみると、全ての曜日で『料理』、『洗濯』、『掃除』と枠が決められており、それぞれに名前が書かれていた。

刹那の月曜日の担当は『掃除』。

 

「...」

 

刹那はリビングの惨状を見て、もう一度紙を見た。

何度見ても、刹那が掃除。

 

刹那が目を閉じて黙っている間に、たきなは完成したのか壁に紙を張り付けた。

 

「共同生活を送るうえで公平な家事分担です」

 

真面目な顔でペンで紙を指すたきなだが、残念ながら千束から賛同は得られなかった。

 

「つまんな~い」

 

「つ、つまらない?」

 

頬を膨らませそう文句を言う千束。

どうしたものかとたきなは顎に手を当てて考えた。

 

「そういわれても...では、ジャンケンとかでいいですか?」

 

たきながそう言うと、千束はストローで飲んでいたコップを置き、いいねぇと声を上げた。

 

ジャンケン。

今回は三人でジャンケンをするのだから、出す手は二十七通り。

自分さえ勝てばいいのだから、その確率は三分の一。

それならば、と考えるたきな。

 

しかし、刹那に電流走る__。

 

(嫌な予感がする。千束のこの自信はどこから来るものだ?)

 

千束の自信。それの出所が不明な以上、刹那は出しかけた手を戻さざるを得なかった。

 

「? せっちゃんはしないの?」

 

「いや...私はいい。千束の好きなようにしろ」

 

「おっけー。じゃあ私が負けたら半分こしよっか。負ける気はないけど...イヒヒ

 

「...」

 

悪い笑みを浮かべる千束を横目にスマホを取り出す。

メールアプリを開くも、特に新着のメールは来ていない。

 

「ジャンケン、ポン!」

 

リコリスだけが狙われているこの状況。

刹那としては、リリベルが絡んでいる可能性があると踏んでいた。

千束がたきなにセーフハウスと紹介した際にこぼした『色々ある』というのも、リリベルによる襲撃が多い為だ。

 

予想の範囲を出ないが、もしかすると、リコリスの数を減らし、千束が任務に出ざるを得ない状況にする。

そのタイミングで動き出そうとしているのではないか、と刹那は予想していた。

 

「くっ...これで三回連続で負け...いえ、まだです。まだここから!」

 

「よ~っし、いっくぞ~ジャンケンッ」

 

「「ポン!」」

 

とはいえ、楠木もリリベルに狙われている可能性は予想しているだろう。

千束が狙われている可能性がある以上、それに対する対策も行っているはず。

 

刹那は未だにジャンケンをしている二人を見て、息を吐き出す。

 

(二人で行動していれば、多少の問題は解決するだろう。私がするべきことは...)

 

熱中している二人に背を向け、刹那は歩き出した。

 

 




頑張って更新します。
そろそろリコリス円盤2巻が来るので。
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