ミカと刹那が話をするために、店の裏口に向かっていた後。
ミズキは一人、酒を飲みながら考えていた。
「...刹那、か」
どこかで聞き覚えがあるような気がする名前。
まだDAにいた頃だろう。
その時は、年齢的に彼女もただのリコリスだった可能性が高い。
(リコリス一人、唐突に見なくなっても、『またか』なんて思うのが普通の場所だったものね)
そして、テレビで流れていた、アラン機関による支援を受けたものである証明の、フクロウのペンダント。
一体彼女は、何を支援されてるのだろうか。
リコリスの中で名前を、存在を隠して今まで活動してきたのには、それが関係しているのだろうか。
「なんだか、きな臭いわね」
刹那は、全く知らぬ人ではない。
黒髪で、少し癖のあるボブカット。
目の色が変、ということもなく、普通に黒色だし、目に見えて傷が残っている、ということもなく、きれいな肌だ。
千束やたきなに、刹那も。
リコリスの中でも特異なものは、ビジュアルが整っていないといけないのだろうか。
「ぐぅ...羨ましい」
ただ一つ気になることは、『アラン機関に支援されている』ということだった。
刹那がリコリコでコーヒーを飲んでいるとき。
千束とたきなは警察署に足を運んでいた。
「こちら新人の、井ノ上たきなさん」
「いや~、またリコリコに行く楽しみが増えちゃったな」
そう言いながら頭をかく、オレンジ色のコートを着た男性。
この男性は、リコリコの常連客だ。
仕事中に来たりする。
「よろしく、警視庁の阿部です」
「始めまして...井ノ上たきな、です」
「まぁちょっとこっちへ」
そう言って阿部が人目のつかない場所へと誘導して取り出したのは、一枚の写真だった。
それを受け取った千束は、横にいるたきなと一緒に見る。
「こんな事言うのも申し訳ないんだけど、担当じゃないから首突っ込みにくくてねぇ」
写真には一人の女性が写っている。
前髪を上にあげ、メガネをかけた女性だ。
見た目からは、明るそうだな、というような印象を受ける。
千束が写真を裏返すと、そこには漢字で五文字。
「『篠原沙保里』さん」
「うん。ストーカー被害っていうのは、警察は動きが鈍くてねぇ。女の子同士だし、話しやすいと思うんだ。ちょっと話聞いてきてくれない?」
バイト代はずむから、という一言に千束は反応し、その後、警察署をウキウキで出ていくのだった。
「もしもし?」
『あ、先生私私~。ちょっとめんどくさいことになっちゃってさ』
「何?」
刹那がコーヒーをゆっくり。それはもう本当にゆっくり楽しんでいると、電話が鳴り響いた。
それに出たミカの様子から、刹那は何かしらの異常事態かとコーヒーカップを飲み干し、ミズキはまたかとため息を吐く。
「私が行こう」
席から立ち上がり、ミカの方を見てそう告げると、数瞬悩んだ後、電話口に告げた。
「今日から転属になった、もう一人のリコリスをそちらに送る。場所を教えてくれ」
転属初日。
刹那は早速、任務に移るのだった。
「これが私のファースト・ミッション」
刹那が走って場所につくと、丁度、黒服のリコリス、たきなと、事前に聞いていた情報と同じ格好の女性が歩いていた。
視線をずらすと、彼女たちの背後をつけるように、バンが一台。
「あいつは...気づいているな」
たきなに視線をやると、彼女も露骨に振り返りはしないが、意識をそちらに寄せているようだった。
ならば協力して制圧する、と、刹那が動き出そうとした瞬間。
「では、先に行っててください。すぐに戻りますので!」
「なに...!?」
あろうことか、護衛対象をその場に放置し、たきなは前方に走り始めてしまった。
まさかとは思うが。
「護衛対象を囮に...!? 何を考えている!」
刹那は慌てて、彼女の元へと合流し、彼女の手を握った。
「すまないが、ついてきてもらえるだろうか」
「え? で、でも、たきなちゃんが」
「知り合いだ。この後すぐ合流する」
たきなと同じデザインの制服を着ているからか、刹那のことをすぐに信じた沙保里。
そのまま二人でゆっくり歩いていると、T字路の影で、たきなが隠れている所に合流した。
たきなは今にも『余計なことを』と言い出しそうな雰囲気だが、刹那が先に口を開く。
「護衛対象を囮にするな」
「彼らの目的はスマホの画像データです。彼らに殺す意図は」
「前提条件を間違えるな。護衛が今回の任務だ」
「......」
刹那はぶっきらぼうにそう言うと、たきなに沙保里を押し付け、銃を構えた。
「下がっていろ」
「下がっていろ、って。まさか」
たきなにそれだけ告げると、刹那は猛スピードで影から飛び出し、バンへと走り出す。
走りながら五発。
運転手の右肩あたりに一発。続けて両方のヘッドライトに一発ずつ。
左側ミラー、左フロントタイヤ。
これらを走りながら撃ち抜き、そのまま刹那は車の後方に立った。
「ファーストフェイズ終了。セカンドフェイズに移行する」
刹那がそう告げると、たきなの視界には、目を疑うような光景が飛び込んだ。
「...光って、え?」
刹那の両目は緑色に暗く光りだし、背中から緑色の粒子が舞い出す。
次第にその粒子は赤白く染まっていき。
「
刹那はそう告げた。
アラン機関っていう、なんかいくらでも設定漏れそうな便利な機関
怒られそう。