リコリスマイスター 刹那   作:水が死んでる

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05 刹那

この世界において刹那という少女は、リコリスの中で例外なく、ただの孤児だった。

DAに拾われ、幼い頃から暗殺の技術をひたすらに叩き込まれた。

一般教養もある程度は教えられるが、それでも比率の偏りは激しい。

 

訓練を行う中で、ついていけなくなるものも、極稀にだが存在した。

その中に刹那もおり、ある日、刹那の体は限界を迎え、電池が切れたかのようにその場に倒れた。

 

それを狙ったかのように、刹那の体は、どこかに運び込まれたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

(ここは...)

 

刹那が再び目を覚ましたとき、そこは知らない天井だった。

DAの中にも、怪我をした際に運び込まれる部屋はあるが、そこでもなく、ましてや自分の部屋の天井でもない。

 

あたりを見渡すと、そこには見知らぬ機械が山のように積まれていた。

だが、それらは乱雑に積まれているわけではなく、しっかりと並べられているのが一目でわかる。

 

その機械からは、管が伸びており、その管は自分の体へとつながっていた。

 

「やぁ、起きたかい」

 

「!?」

 

突然声をかけられた刹那は、声のした方向にぎょっと顔を向ける。

 

そこには、金髪のオールバックの男性が立っていた。

緑色のスクラブスーツを着用しているところから、刹那は自分の体をどうにかしようとしているのがこの男だと理解した。

 

「...私の体をどうするつもりだ」

 

「何。今のままでは君の体が、君の力に耐えられず自壊するところだったのを、こちらで補強したのさ」

 

「何?」

 

男性の言葉を即座に理解した刹那は、怪訝そうな顔を向けた。

 

自分の力に耐えられず、自分の体が壊れるなど。

どちらかといえば脳がどうにかしているような問題だ。そういうのは無意識にセーブされるのではないだろうか。

 

刹那がそう考えていると、男性は見透かしたように笑って口を開いた。

 

「君が考えていることもまぁ間違いじゃない。だけど、この世界には、君のような才能が必要なんだ」

 

「才能だと...自分の体を壊すほどの力を持つ私が、この世界に必要な才能だと言うのか」

 

刹那がそう問いかけると、男性はうなずく。

そうして、足元においてあったのだろう銀色のトランクケースと、竹刀袋を持ち上げると、刹那の膝の上においた。

 

「これは?」

 

「今の、そしてこれからの君に必要なものだ」

 

男性はそれだけいうと、部屋の外へと向けて歩きだす。

扉を開けて、出る直前、刹那の方を振り向き一言だけ。

 

「期待しているよ」

 

「...」

 

男性が閉めた扉を数秒見つめた刹那は、先程渡されたトランクケースを開ける。

中には、分厚いまとめられた紙と、フクロウをモチーフにされたペンダントが入っていた。

 

ペンダントはひとまず横においておき、紙を読み進めていくと、内容は刹那の体に着いてだった。

 

『GN粒子を用いた人体の補強。並びに、延命』

 

「...この世界でも、存在しているのか?」

 

更に読み進めていくと、GN粒子と名付けてはいるものの、あれとはまた少し違う新種の粒子らしく、他に同じようなものを作る予定もないので、これがワンオフであることが書いてあった。

 

ただ、刹那の前世に存在していたものも設計してあるらしく、蓄積されている高濃度圧縮粒子を全面開放することで、一定時間約三倍の出力を発揮できる『TRANS-AM』があるようだ。

 

その際、背中から粒子が漏れ出すとのことだが...それはまぁしょうがないだろう。

単純な移動速度が三倍になっているわけではないようで安心だ。そんなことをしてしまえば即座にこの世とさよならだ。

 

書類に一通り目を通して、刹那は思う。

 

GN粒子。ガンダム00の世界で出てくる架空の粒子だが、あの世界では日常的に存在しているとされていた。

簡単に言ってしまえば、GNドライヴ、所謂太陽炉と呼ばれる装置が、エネルギーを半永久的に生成できる装置の事で、GN粒子はその結果出てくるものだ。

まぁ位相欠陥だかなんだか、難しいことが並んでいた記憶がある。

 

作られた過程は不明だが、とどのつまり、刹那の胸には、GNドライヴのような何かが埋め込まれているということだ。

 

体がまだ未成熟なため、この胸に埋め込まれた太陽炉は、アイドリング状態には出来ても、活動自体を止めることはできないのだろう。

 

「...」

 

それができるならば、なぜ千束の心臓は、とは思うものの、思うだけだ。

 

(私は生きている。生きているんだ)

 

それに、『期待している』と、あの男性は言った。

リコリスである自分をこうして助け、その言葉を残していくのは、リコリス関連での働きを期待しているのだろう。

 

近いうちに、DA内部で何かしら動きがあるはず。

 

刹那はそう確信し、覆面の医療スタッフと思われる者たちが管を外した後、羽が生えたかのように軽い自分の体に驚きながら、訓練へと向かった。

 

刹那が『青服』として命じられたのは、それからわずか三日の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シンジ、どうしてあの子もアランチルドレンにすることにしたんだ?」

 

「あの子もまた、失われては世界の損失だからだよ、ミカ」

 

とあるホテルの一室にて。

バスローブ姿の男性二人が、今日あったことを話し合っていた。

 

元々、シンジの中にも刹那を救うことは計画になかった。

だがたまたま、千束の件でミカと話をするために入り込んだ先で、刹那を見た。

 

(あれは、『殺しの才能』なんて生易しい物じゃない)

 

あの瞬間。シンジは、まだ幼いはずの少女の体からあふれる、人ならざる者のオーラとでもいうべきものを感じたのだ。

あの少女の内に眠る力を失えば、確実に世界の損失となる。

 

万が一があっては遅いと、その場ですぐに調べ始めたのが功を奏したのだろうか。

刹那の体は、心臓どころか全身が刹那の才能についていけず、既に限界が近いことを知った。

 

ミカに説明している余裕はない。

そう確信したシンジは、準備を手早く終わらせ、今日に至る。

 

刹那の胸に埋め込んだものはワンオフだ。製作者も、二度と同じものは作れないと豪語している。

 

「ミカ、千束は君に任せる。だが、刹那の方は気にしなくていい」

 

「気にしなくていいって...確かに、千束の事に関して頼み込んだのは私だが」

 

「刹那には、千束とは別にやってもらいたいことがあるんだ」

 

シンジはそれだけ言うと、これ以上この件について語る気はないとばかりに、口を閉ざしてしまった。

 

これ以上はいくら聞いても無駄だと悟ったミカは、将来の自分に降りかかるかもしれない厄介ごとに、一つため息を吐いた。

 




GNドライヴって木星ぐらいの高重力下と、宇宙の卵とかいう意味わからん奴がないと作れないんですよね

アラン機関はすごいなぁ~(すっとぼけ)

残念ながらツインドライヴになることはないと思います。
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