評価だとか、お気に入りだとかありがとうございます。
見る方法を初めて知りました。
【ミズキの危機感】
「注文は?」
「あ、じゃあ、この『ブレンドコーヒー』をお願いします」
「わかった」
それは、たきなと刹那がリコリコに異動になってまだ数日の話。
たきなは、真面目系の美少女として客には浸透していく中で、刹那といえば。
「あの店員さん、クールでかっこいいね」
「低めな声がすごく好みかも!」
クール系として、人気を確立し始めていた。
とはいえ、本人にそのつもりはなく、敬語を使うなどという頭が最初から存在していないだけである。
当初は千束もミカも、どうなることやらと不安に思ったものだが、客からの好感触を得られているところを実際に見て安心したものだ。
しかし。
「くぅ....」
ここに、そんな刹那を見て拳を握りしめる女性が一人。
ミズキだ。
彼女はモテるということに対して過剰に反応する。
それこそ、食べモグに書かれた『店員がかわいい』という口コミだって、千束とどちらのことなのかと口喧嘩を始める程度には。
そんな中で、真面目系のたきなと、クール系の刹那の二人が現れ、ますます自分の立場が危うくなっていると感じているのは、仕方のないことだろう。
「このままでは、私の婚活の場が、二人にとられる...! というか、刹那に百合の場所として塗り替えられる!」
「なーに言ってんだこいつは」
現在は休憩時間のため、裏の座敷で、酒を握りしめながら、ミズキは怨嗟を吐き出す。
そんな様子を、たまたま皿を運んでいる千束が目にし、呆れていた。
彼女の決断からの行動は早かった。
まずは、彼女の立ち位置の確立。
店員である千束、たきな、刹那の三人の方向性を考え、誰も持っていないような個性を確立するのだ。
「だとすると...悔しいけど、年齢の差よね」
ただそれは、言い換えれば、まだ三人は子供だということだ。
自分には、子供にはない妖艶な魅力がある。
そう確信したミズキは、自分の着ているリコリコの制服に目をやる。
この制服では、妖艶などアピールできないだろう。
「まずは改造が必要かしら」
ミズキは、更衣室に向かった。
「少し私たちのものと違うようだが」
「あら、わかる?」
ミズキが更衣室にて、制服を改造していると、たまたまそこに入ってきた刹那が、その違和感に気づいた。
制服自体はさほど変わっていはいない。
だが、着方が違うようだ。
刹那たち三人はしっかりと結んで着ているのに対して、ミズキは少し緩めに着ている。
それにより、どこかはだけている、というのだろうか。
もう少し過激にいけば、肩を出して着物を着ている人のような、そんな印象を受ける。
「...足を出しすぎじゃないのか。風邪をひくぞ」
「色気のいの字もないわねこのガキ...」
視線を下にずらせば、やはり刹那のものとは違い、切込みでも入れたのか、膝上までミズキの足がちらちらと見えている。
ミズキから『色気』という単語を出された時、刹那の頭に閃くものがあった。
だがしかし。
「喫茶店で色気を出そうとしているのか?」
「そりゃそうよ。私も同じだと、三人とかぶるじゃない」
この女はだめだ。
そう理解した刹那は、ため息を一つ吐き出し、自分のロッカーで着替えを始めた。
目の前でため息を吐かれたミズキは、失礼しちゃうわね、とぼやきながら、そのまま更衣室を出て行った。
そのあと、他三人に怒られるミズキの声が響いてきたのは、しょうがないことだろう。
【たきなと刹那の相性】
とある昼下がり。
たきなと刹那は、迷子の捜索を依頼されていた。
迷子といっても、スーパーの中で見失ったというもので、依頼主もそこまで焦っているわけでもなかったが、たきなと刹那はそうではなかった。
「刹那、急がないとまずいのでは?」
「ああ。手早くすませるぞ」
一般人からしてみれば、日本というのは安全神話が何年も続いている国。
犯罪が起きていないのだ。
だが、起きるはずだった犯罪を秘密裏に処理している二人からしてみれば、迷子が何か事件に巻き込まれている可能性だって否定できない。
「では、私は下から見ますので、刹那は上からお願いします。見つけた時は連絡をお願いします」
「ああ。先に行く」
迷子の両親から、子供の情報を受け取り、刹那はすぐに駆け出した。
人ごみにすぐにまぎれて消えていった刹那の方向を見て、たきなはやはり、と頷く。
(千束さんよりも、刹那の方が学べることが多い気がしたのは、私の間違いじゃなかった)
そうして、手元にある、先ほど親御さんから受け取った子供の写真を見る。
特徴的なものといえば、頭に大きなリボンをつけていることだろうか。
(これだけの特徴があれば、すぐに見つかりそうなものだけど...)
そうしてスーパーの中を走り回っていると、刹那から連絡が入った。
「見つかりましたか」
『ああ。だが、面倒なのに目をつけられている。先にそちらを処理したい。子供を任せる』
「わかりました。場所を教えてください。すぐに向かいます」
刹那から子供のいる場所を教えてもらい、その場所に急行する。
その途中で、親御さんにも連絡だ。
エスカレーターを走って上がり、国民的キャラクターのぬいぐるみが売られている場所で、その少女は見つかった。
「こんにちは」
「? こんにちは!」
小さい子にありがちな、人見知りをするということもなく、たきなが丁寧に『両親が探している』ということを伝えると、少女は笑顔で頷いた。
ここで変に泣かれたりすると非常にめんどくさいことになるので、たきなはひとまず安心と、息を吐き出した。
「本当にありがとうございました!」
「いえ、無事でよかったです」
その後、無事に親御さんと合流したたきなは、最後に少女に手を振る。
「今度は迷子になっちゃだめだよ」
「うん! ありがとう、たきなお姉ちゃん!」
そうして、三人は人ごみの中へと消えていった。
(...あとは、刹那の方だけだけれど)
三人の姿が見えなくなったのを確認して、たきなはスマホを取り出す。
そこにはメッセージが来ており、『先に戻る』とだけ残されていた。
何があったのかはリコリコで聞けばいいだろう。
そう判断したたきなは、何となく、ぬいぐるみを一つ買い、リコリコへと戻った。
【赤服と青服】
ファーストリコリスである千束は、ファーストを含めたほかリコリスの中でも随一の戦闘能力を持っている。
至近距離で放たれた銃弾をよけるし、近接格闘は言わずもがなだ。
だが、そんな千束でも冷や汗を流すほどの人物がいた。
場所は本部の訓練場。
観客はゼロだが、上から楠木指令が見ている。
そんな中で、千束は、刹那と模擬戦をすることになっていた。
「よし、じゃあ行くか」
普段であれば笑顔を浮かべられるほど余裕のある模擬戦だが、今回に限ってはそうもいかない。
沙保里さんに依頼された、ストーカー事件の際。
千束は見たのだ。明らかに、自分が動ける最高速度よりも速く動く刹那の姿を。
あの赤く光る状態を常に維持できるかどうかは不明だが、ああなればもう手に負えない。
それに、刹那の素の戦闘能力も知らないのだ。
「厄介だなぁ...もう」
そう呟きながら、クリアリングをしながら進む千束。
耳を澄ませながら、廊下を進み、クリアリングをしようとした瞬間、千束のいる壁にペイント弾が着弾した。
(うっそ、もうばれてる!?)
何か嫌な予感がして咄嗟に隠れたものの、どこから撃たれたのか、千束からは見えなかった。
とはいえ、この壁に当てられる場所にはいるのだろう。
先に発砲してくれて助かった、と千束は安堵の息を吐き出し、気合を入れなおす。
恐らくだが、音は正面から。
であれば、まずは。
千束は銃を上方に構え、発砲。
これで刹那は音の出所を把握したはず。
(この間に、足音を殺してサイドに回る!)
持ち前の運動能力をフルに活用し、その場を走り抜ける千束。
ネックとしては、刹那の姿を視認できていないが、それも問題ないだろう。
銃声がして、そちらの方向を警戒しないというのは無理な話だ。
(それこそ、さっき撃たれて警戒せざるを得なかった私のようにね!)
刹那をこの段階で仕留めることができればそれ以上のことはないが、まずは刹那の姿を視認すること。話はそこからだ。
これからのプランを再確認し、曲がり角を曲がった瞬間、全身を叩きつけられたかのような衝撃が千束を襲った。
「がっ...!?」
気づいた時には、世界が横になっていた。
左頬が冷たい。
(...もしかして、私が横になってる?)
状況を理解し始めた千束だが、起き上がろうとしてもうまく力が入らない。
そこらのリコリスよりも鍛えられているはずのこの体が、動かない。
段々混乱してきた千束の視界に、靴が映り込む。
「状況終了」
刹那の声だ。
(...まじ?)
どうやら自分は負けたのだということを、千束はようやく理解した。
「あれ、どうやったの? 私もなかなか音消して走ってたと思うんだけど」
「特別なことはしていない」
休憩室にて、千束は久しぶりに地面に寝かされたなと昔を懐かしみながら、紙コップ片手に刹那に問いかける。
千束の正面に座っている刹那は、変わらない表情でただそう呟いた。
刹那曰く、最初の千束への発砲の時点で千束の姿が見えていたので、あとはその場から移動し始めた千束を追いかけて制圧するだけだったという。
そんな、何でもなさそうな表情で紙コップのコーヒーを飲む刹那。
何となく、悔しく感じる。
「むむ...それと、私をあっという間に戦闘不能にしたのは? 特別な体術的な?」
「...それは、秘密だ。特別な道具だとか流派だとかではないとだけ言っておこう」
「ふーん?」
千束が疑惑の目を向けても、刹那の表情は変わらず、そのままコーヒーを飲み切ったようで、紙コップをゴミ袋に入れた。
「...私は、変革しようとしている」
「へ?」
ぽつりと、刹那が何かをつぶやいた。
千束だからこそ、小さい声量でも聞こえたのかもしれない。
『変革しようとしている』。
...どういう意味なのだろうか。
「いや、忘れてくれ」
「...うん。わかった」
表情から、触れてほしくないことを悟った千束は、それ以降、とのことについて尋ねることはなかった。
ただ、任務の度に、千束は刹那に体の使い方を尋ねるようになるのであった。
夜勤が入ると、更新が早まります。
あとスプラ3に飽きたってのはあります。
ブルリフタイ面白いですね。
発売当初に買ったんですけど、先日まで放置してました。