何も考えてないと普段より早く書けるということを発見しました。
突然ですが、キキョウはガーディアンという職業――クラスのキャラクターです。
そのクラスとしての最大の特徴は槍や細剣、盾に習熟して、とにかく体力や防御力が高いこと。あとは光と闇の攻撃スキルを扱えるといったところでしょうか。
攻撃面・防御面両方に幅広く活躍する場所があるといえますが、逆にいうとかなり特化しなければ火力は他のクラスに劣ります。防御面でもオンリーワンなスキルを持っているクラスが他にもありますので、強敵相手にはできれば特化が望ましいという具合です。
さて、私の可愛いキキョウはというと『防御寄りのバランス型』といった立ち居地になります。今現在命の危機に瀕している私にとって防御面に優れたキキョウが受け持ってくれるのはとても有難いのですが、一つ問題があります。
それは、相手からの攻撃を受け止めることは出来ても相手を倒しきることが難しいということです。そして相手を倒しきらなければ、殆ど死に掛けている兵藤くんを助けに行けないということを意味しています。
羽の生えた女の子の赤い光の槍はキキョウが何とかしのいでいますが、攻撃が激しいのでなかなか兵藤くんに近寄れません。今私の体を使っているキキョウの顔にも、焦りの色が浮かんでいました。
もっと近寄ることが出来れば、サクラのスキルで兵藤くんを死の淵から救うこともできるかもしれないのに――
「先ほどの光は神器のもの――あなたも、神器持ちだったわけね」
歯噛みをしていると、不意に対峙している女の子がこちらを睨み付けながら独り言のように語りだします。
それと同時に相手からの攻撃が止みました。なにやら考え込むように口元に手を当てています。キキョウも未だ警戒を解かずにじっと相手の様子を伺っています。
お互いの間にしばらく音が無くなったまま数秒が経ったとき、
「……今回貴女と会ったことはイレギュラーな事態。そのわけのわからない神器のこともあるし、今日は一端引かせてもらうわ」
彼女はばさり、と大きく羽を打ち鳴らしたかと思えば宙に浮かび上がりました。
そして恥ずかしながら、私はその時ようやく相手が誰だったかに気づいたのでした。
『貴女、兵藤くんの彼女の――』
「彼女?フフッ……私にとってはただのおままごとだったのに、随分とはしゃいじゃってたわねぇ彼――もう、死んじゃったけど」
はっとして振り向けば、遠くで兵藤くんはピクリとも動きません。
再び大きな羽音が響いたと思えば、あたりに黒い羽毛が舞い散ります。
「次は、その妙な神器をいただくわ――フフフ、アッハハハハハハ!!」
哄笑が響いて、消えます。あとは静かな、噴水の水の音しかあたりにはありません。
だけれど私にとって兵藤くんの彼女だった羽の生えた人が消えたことはどうでもよかったのです。今はただ、兵藤くんの所へ行きたくて――動かない。
あれ?と思って走って行こうと全力を振り絞っても、一行に体は動かずに距離は近づかない。
何で、どうして?と思ったら、困惑するようなキキョウの声。
「主様?あの少年のところに行けばいいですか?」
『あ……うん、お願い!』
体はキキョウが使っていたのでした。とりあえず今状態がいつまで続くかわからないけれど指示を出せばできることは聞いてくれるいい子なので、私はしばらく体を任せることにするのでした。
ガチャガチャと鋼鉄を響かせながらキキョウが兵藤くんの元に向かえば、そこにはいつの間にかもう一人の姿があります。
日本人では絶対に出せない赤い髪。学校でも有名な先輩、リアス・グレモリーさんです。
学校の制服の裾が短いのでパンツ要素の補給も出来ますが、先輩のメインウェポンはメートル級と噂される胸の二つの巨大なスイカ。ありえないその大きさに、学内で見かけたときなどは兵藤くんはもちろん、松田くんと元浜くんもはしゃいでいます。ちなみに元浜くんの目測ではバストサイズは99だそうですが、もう100でいいじゃんとか思ったりしますがそれはさておき。
そんな先輩が何故ここにいるんでしょうか?と思ったところで、先輩が声をかけてきました。
「貴女……悪魔みたいだけど一体何者?」
急にその切れ長の目を更に細く鋭くしてこちらに向けてきました。さっきの人といい、どうしてこう不穏な目を向けられなければならないんでしょうか。
悪魔とかなんとかさっぱりわかりませんが、とりあえずどう応えようかと逡巡していると、
「主様……わ、私じゃどう答えたらいいのかわからないので……あと、お願いしますっ!」
え?どういうこと?と思ったのもつかの間、再び私がキキョウになった時のような光が左手から迸ります。
『Soul Change Returns』
また右手が何か喋った、と思ったら急にずしりと重さを感じます。何事かと戸惑うままに足の筋肉が震えて膝から崩れ落ち、見るも無残な格好になりました。
筋肉に乳酸が溜まってるような感覚を覚えて、やっぱりさっきのキキョウの動きは体に負担だったのかなと思いながらちらりとリアス先輩を見上げてみれば、学校では一度たりとて見たことのない呆気にとられた顔。
やっぱり美人アイドルみたいな扱いの先輩もそんな顔するんだ、なんて少しおかしくて笑いそうになりました。
「……どういうことかわからないけれど、貴女確かこの子のお友達よね?」
「え、あ、はい」
「……それじゃあ後日使いを送るから、そのときに詳しいことを聞きましょう。それで、この子なんだけど――」
先輩が顔を向けた先に、倒れている兵藤くん――だったものがありました。
兵藤くん。改めて確認しなくともわかります。息はもう止まってます。
親しい人の死をこんなところで見るとは思わなくて、なんだか感覚も麻痺してしまったみたいです。もう、あの馬鹿みたいな話をすることは出来ません。パンツの布教もできません。本当は、ちょっとだけおっぱいの話に耳を傾けてもいいかなと思ったりもしていました。なのに、兵藤くんはもう二度と話すことはありません。
「兵藤……くん」
あ、と思う間もなく、私の意識が遠のいていきます。ダメ、待って、もう少しだけ、兵藤――一誠くんを、目に焼きつかせて。
意識を失う最後まで、何故か涙は出ませんでした。