なんて思っていたら目が覚めると日が暮れていましたよ?
これは原作なんてなくてもいいという神のお告げか何かか……実際原作読みながらのほうが書くスピード遅い気がするのは確か。
一日の授業が終わり、放課後になりました。朝からしばらくの私は錯乱していたと自覚できていましたので、なんとも気恥ずかしい四半日でした。
だから授業が終わったのであれば早く抜け出したい、と思っていたのですが、昨日私が気を失う最後に言っていたリアス先輩の言葉が頭に引っかかっていました。
――後日って、いつなのですか。
後日。ある日より後の日。これから先。今後――以上、授業中に内職して調べた電子辞書の広○苑よりの引用です。
つまり、今日の放課後であっても後日、ということになります。というかそんな面倒な言い方しないで日にちを指定してくれればよかったのにと、頭を抱えて机に突っ伏しながら思います。
などと考えながら唸っていれば、今私が頭を悩ませていることの根本原因である兵藤くんが心配そうにこちらに声をかけてきました。
「……なあ鷺沼、本当に大丈夫か?今日のお前は一段とおかしいぞ?」
「うるさいですパイオツスキー。私のことはほっといて置いて――ああ、パンツ至上主義に改宗したのであれば受け付けますよ?」
「いやおっぱいを捨てることなんて出来ないから」
「捨てろといってるわけではなくパンツを優先に物事を考えましょうと言っているだけなのですが――」
「……まあ、多少はいつも通りに戻ってよかった。じゃあ明日までに調子直しとけよ、こっちまで調子が狂うんだ」
そういい残して、鞄を肩に適当な感じで手を振りながら教室の扉から出て行きます。
どうやら、兵藤くんにも心配をかけていたみたいです。あんなおっぱい魔人に心配されるなどと、我ながらなんという失態をしてしまったのかと盛大にへこみます。
恨めしげに兵藤くんの去っていった扉を眺めていると、なにやら教室の外が騒がしくなりました。大体が黄色い声、という感じです。先ほど出て行った兵藤くんであればもっと蔑まれた声――色で言うなら茶色でしょうか、そんな感じで叫ばれるはずですが。
そんな風にどうでもいい事を考えていれば、果たしてその理由はすぐにわかりました。教室の開いた扉から、イケメンが現れたからです。
イケメンです。パツキンで爽やかな風貌で甘いマスクでなんか周りで光がきらきらしてる彼の正式名称を木場――なんでしたっけ?正直、パンツ穿いてないと確定している顔と頭と性格がいい男はあんまり興味がないので、普通の男子生徒くらいにしか知りません。
そんな木場くんが、周りに寄ってくる女生徒達に控えめながらも道を明けてもらえるように声をかけながら、教室の中へと入ってきました。そしてそのまま、まっすぐにこちらへ向かってきます。
正直に言えば、私は木場くんのことが得意ではありません。正確に言うと、木場くんの周りに集まる子たちが苦手なのです。
私はこんな風にわりと自由にやらかしているので、女子の友達は殆どいません。もちろん男子にもいませんが、兵藤くん筆頭に三人組が私の話を真正面から受け止めてくれるので居心地はいいと感じています。
当然そんな私は昔から女生徒のグループには入れず、いじめまがいの事をされたこともありますが、全く無視していればそのうち見向きをしなくなりました。いじめを受けないコツは、いじめても意味がない、面白みがないと思わせることです。まあそんな暗いようでその実今の私にとってどうでもいいことはさておきます。
そんな私のところに、全女子生徒の憧れの的ともいえる木場くんがくればどうなるかといえば――ほら、全方位からのやっかみの視線です。
「やあ、鷺沼さんだね。リアス・グレモリー先輩の使いできたんだ」
何事かと思えば、そういうことでした。後日が翌日のことだというのはまあ、予想していたので問題はないのですが――この人選は圧倒的に誤りだと言わざるをえないと思います。
「そんな……あの変態が木場くんと一緒に歩くなんて……」
「ダメよ木場くん!そいつだけは絶対にダメ!!」
「木場くんとあいつなんて許されるはずがない……!」
あははー、周りのヘイト上昇が半端なーい。
もうどうでもいいや、と投げやりになりながら木場くんの言葉には適当に返事を返しながら、旧校舎へと向かうのでした。
ほんと……朝からやってられません。
さて、そんなわけでやってきたのは北の大地の究極がっかり遺産にそっくりな旧校舎です。あれはほんとヤバイくらいのがっかりさですが、こちらは木立の中に埋もれて雰囲気たっぷりです。至近距離にビルとかもありませんし、これがあるべき姿――否、むしろこちらが本物とすら言いたくなります。
木場くんに案内されるままに旧校舎内の雰囲気ある洋室へとたどり着けば、そこには天使がいました。
「と……塔城子猫ちゃん……ですって……?」
名前を呼ばれた事に反応し、アイスを食べる手を止めてこちらを振り向きます。
そのロリータフェイスに未発達なボディ、さらには黒い猫のヘアピンが実にキュートな子猫ちゃんは、パンツの中身が非常に妄想膨らむことで常日頃からリストアップ済みでした。白状すると、私はロリ系ショタ系が大好きです。
「名前を知っているのなら話は早いね。塔城さん、こちらは鷺沼依子さん」
「ふ、ふふふ……よろしく、お願いします……ふふっ……」
「……」
精一杯動揺を抑えながらの挨拶をしたつもりですが、彼女はびくりと顔をこわばらせ、怯えたような様子でじっとこちらを警戒して見てきました。そんなところも実に名前の通りの猫っぷりで素晴らしいです。
「来たみたいね。歓迎するわ、鷺沼依子さん」
もはや此処が桃源郷であることが確定した事で浮かれていた私の耳に、昨日も聞いたリアス先輩の声が聞こえました。
振り向けば、赤髪の跳ねた長髪と自己主張の激しすぎる胸部装甲が特徴的なリアス先輩の姿。その後ろに控えるように立つ黒髪のポニーテールとこれまた自己主張の激しいエアバッグが目に付く女生徒は、
「私の名前はもう知ってるわね。こちらは姫島朱乃、私が部長をしているオカルト研究部の副部長をしてもらっているわ」
「あらあら……よろしくお願いしますわね」
「はあ、よろしくお願いしま……オカルト研究部?」
なにそれ怖い。というか、もしかして、
「まさか此処が部室で……皆さんは、部員ですか」
「ええ、そうよ?」
「……うえあー」
オカルト研究部なんてそんなトンデモな部活の、しかも昨日殺人現場にいたような人とその仲間たちに囲まれてるとかどうしようもないです。できれば戦略的撤退といきたいのですが、この人数相手に大立ち回りを演じられるほど私の身体能力は高くありません。
可能性があるとすれば――と思えば、右手にその可能性の端緒らしき軽い重み。
出ました。よくわからないけどなんとなく使える気がする謎の光るマウス。それを少し握り締め、
「なっ……神器!?」
「皆!彼女を止めて!!」
是非も無し、です。
『Soul Change!!』
これでうちの愛娘達が私の体を動かしてくれれば何とかなると思います。多対一の状況ですので、昨日同様キキョウに――何でか今日に限って全く喋らないのですが――全てを託して――あれ?
『Fails』
「ぐえっ?!」
突然の重みに、べしゃりとつぶれます。思わず変な声まで出ました。
昨日と変わらない声が右手からしたのに、今日はキキョウが私の体に移らず、装備だけがやってきて――ご覧の通りです。
突然崩れたバランスになかなか立ち上がることも出来ず、じたばたともがいてみれば、
「……すみません、少し大人しくしてもらえますか」
首筋に西洋式の直剣が突きつけられました。
そんなもの今まで至近距離で見たことのない私は、無様に頷くしかできないのでした。