ハイスクール D-ECO   作:豚派

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イメージ的にはこのあたりで序章終、という感じです。
文庫的に80ページ弱にこれだけ時間が掛かるのもひとえに力量不足ですね。
速度と質を上げて自分で納得できる展開にしながら読者の方々にも面白いと思ってもらえるような作品にしたいところですが。
開き直り系の見切り発車は存外辛い物でした、というところで。


娘、紹介します!

 兵藤くんへの説明は、昨日私に対してのものの焼き直しといった感じでした。

 

 はじめはオカルト研究部といわれて胡散臭そうにしていた兵藤くんですが、彼女さんの話になったときに目に見えて苛立っていました。私が覚えていると言ったことで少しは持ち直しているかとは思いましたが、やっぱりまだ抱えているものはあったみたいです。

 

 それから兵藤くんがあの時殺されかけていた理由として、神器をもっていたらしいということを聞かされました。理不尽な危害の理由がさらに自覚のない理不尽なもので困惑していた兵藤くんですが、

 

「その神器って、私も持ってるみたいなんですよ。ほらこれ」

 

 と、例のマウスをなんとなく取り出して見せます。私としても、例え命を守ってくれたとしてもよくわからない物が手元にあることは少し不安でした。同じようなものを友達の兵藤くんも持っていると聞いて、安心できた部分があるのです。

 

 なんて思いながら兵藤くんの反応を待っていたら、

 

「……何それ?え、マウス?俺が死んだ理由がマウスとか……凹む」

 

 軽く引いちゃってくれました。兵藤くんは後で覚えていればといいと思います。

 

 

 

 さてそんなわけで兵藤くんは無事ドラゴン波をして神器を出したわけですが、結構かっこよくて思わず歯軋りして悔しがります。

 

「ぐぬぬ……兵藤くんとか下半身爆裂四散してしまえばいいのに」

「未使用だから勘弁してくれ!」

「そんな告白いらないんですけど……第一なんですかそのヒートエンドだか波動照射だかしそうなゴツイの。無駄に近接戦闘力高そうでうちの子のグレアーで消し飛ばしたくなります」

「物騒なこというなよ!一体何なんだ今日のお前おかしいぞ!?」

 

 言われて少し自省します。確かに今日の私は少しおかしいかもしれません。それというのも、このままいなくなってしまうのかと危惧していたサクラ、ヒマワリ、キキョウの三人とまた出会えて両親にも受け入れてもらえたからでしょうか。

 

 部室の片隅から適当に出してきた場違いなパイプ椅子に一人座りながら、その周りできゃっきゃはしゃぐうちの子達を見ます。私含めて四人分ちゃんと出したにもかかわらず使われているのは私の分だけ。サクラは座ることを固辞して私の脇に控え、ヒマワリは私の膝の上に座って、キキョウは何故かカーペットの上に震えながら涙目で正座しています。 視線を向ければそれぞれ落ち着いた微笑み、大輪の花のような笑い、引きつった悲しそうな笑顔で応えてくれました。

 

 そうしているうちにオカルト研究部組の兵藤くんへの自己紹介がそれぞれ行われます。木場くん、塔城さん、姫島先輩と続いて、最後にリアス先輩が改めた名乗りを決めて終了――と思う間もなく、流れがこちらへと切り替わりました。

 

「……さて、それじゃあ次は――貴女達のことを教えてもらおうかしら」

 

 やっぱりきました。まあ、元々その覚悟はしていたのでいいんですけど。

 

 三人に目を向ければ、少し緊張の面持ちになります。なのでとりあえずはヒマワリを抱きしめ、キキョウの頭に手をやり、サクラに微笑みかけながら、

 

「それじゃあまずは――皆で自己紹介しましょう。上の子から順番に、ね」

「なら、最初は私からですね。長女のサクラです、ポジションとしては支援職です」

「次はわたし!次女のヒマワリです!んと……いつもはこう、魔法でまとめてドバーンってやるよ!」

「さ、最後は私ですね……ええと、三女のキキョウです。前衛で守りを固めるタイプ……ぁ痛っ、吊った!足がっ!」

 

 キキョウが大体名乗ったところでぼてりと前のめりに床に倒れこみます。概ね例のorz状になっているため、背中からお尻の辺りまで丸見えです。もちろん服はちゃんと着てますが、この場合丸見えとなるのはキキョウの背中から生えた小ぶりな黒い翼と細長い尻尾でした。

 

 当然悪魔がどうのとここで出会ってから幾度も言っているオカルト研究部――もとい、悪魔な人々は目ざとく見つけます。

 

「やっぱり――この娘は悪魔ね?」

 

 目つきにも言い訳を許さないと言うような光を宿し、リアス先輩が詰問してきます。が、私はそんなことどこ吹く風です。

 

「まあ、悪魔族という言い方もありますが――正式にはキキョウはドミニオンという種族……人種?です」

「ドミニオン――主天使のこと?でもこの娘はどう見ても天使じゃないわ」

「納得出来ないのも無理はありませんが、そもそもこの子はこの世界の住人ではないんです。ゲーム世界の住人ですよ」

「――馬鹿にしているのかしら」

「残念ながら大真面目です……」

 

 と、主張してみたものの、やっぱりリアス先輩の瞳は絶対零度のままです。美人さんなだけにこういう目付きがとにかく様になっていて、私自身いけない扉が開いてしまいそうな気がします。

 

 とは言いますが、どう説得すればいいんでしょうか。周りのサクラ、ヒマワリ、キキョウも不安そうに見つめてきます。ここであきらめたら彼女達の親として失格です。何とかせねばと思えば、ふと左手のブレスレットに気付きました。今日はキキョウが憑依していないのですが、いつものクセでつけてしまったもの――というわけで、閃きます。

 

「それじゃあキキョウ、左手に憑依お願いします」

「え?あ、はい」

 

 憑依?と誰かの呟きを余所にキキョウが座り込んだままでしばらく目を瞑れば、その体は突然薄れた後に淡い光になって私の左手のブレスレットに吸い込まれるようにして消えました。皆がぽかんとする様がちょっと面白く感じます。

 

「これが憑依――彼女達の持つ、誰かの装備品にその身を宿らせる能力ですね」

『主様達は憑依の力を持ってないんですよね?私達の居た世界では大体皆できることなんですよ』

 

 ブレスレットからキキョウの声がして、周りが更にざわつきます。まあ、その気持ちもわかります。私も始めてECOをした時悪用される系のシステムだと思いましたし。

 

 とかやっていれば、いつの間にか残りの二人もそれぞれ定位置に憑依してきました――と、思ったらヒマワリはいつもの右手装備――鞄がないので今はマウス型神器?ではなく服が憑依先でした。

 

「ヒマワリ?今日は服なの?」

『んっとね、その右手の奴なんか憑依できないみたいなの』

 

 彼女達の憑依が失敗するのは、憑依しようとした部位に先に誰かが憑依しているか、宿主の装備品全体で既に三人憑依している場合です。ですが誰かが憑依しているわけでもないので、原因は不明ですね……なんともミステリーです。

 

 さて、ひとしきりそんな風に一人で四人羽織状態になっていれば、さすがのリアス先輩もため息をついて、

 

「――とにかく、貴女達が私達の常識の範囲外の存在ってことは理解できたわ」

 

 頭を軽く抑えながら、一応の納得はしてくれたのでした。

 

 

 

 てくてくと、五人連れで夜の街を歩きます。私と、娘三人、それから兵藤くんという朝の面子からリアス先輩――部長さんが抜けた状況で、家へ帰るところです。

 

「しっかし今日は妙に疲れたなー……やっぱり色々なことがあったからか?」

「夜は身体能力が上がるって部長さんも言ってたから、きっと精神的なものだと思いますよ」

 

 鞄を肩にかけてけだるそうな兵藤くんは、ぼんやりと夜空を仰いでいます。その横顔を眺めながら兵藤くんの内心に思いを馳せれば、今日だけで兵藤くんの人生は相当な大転換を強いられたといっても言い過ぎにならないと思います。

 

 まず朝は美人の先輩が家に居て、一緒に登校と思ったら友人――という扱いで、いいんですよね?私が小さな子を三人連れて合流、それから放課後には自分が悪魔になってしまったことを告げられて更に神器という力まで宿っていることも判明します。と、ここまでは単なる困惑ばかりを覚えるような内容ですが、

 

「でも兵藤くんには人生――正しくは悪魔生?その目標になるような夢ができたんですからいいじゃないですか」

「お、おうとも!俺は絶対ハーレム王になると決めたからな!」

 

 松田くん長浜くんと一緒に居るときのような、子供に見せてはいけない顔をして鼻息荒くし始める兵藤くんです。当然私はその顔に鞄を叩きつけることで愛娘達から隠します。

 

「ってぇ!?何するんだよ!」

「うちの子に悪影響がある様な顔をする兵藤くんが悪いんです」

「あの、主様?私達は気にしないからそんな乱暴なことしないでも――」

「キキョウは優しい子ですね……そんな風に育ってくれて私は感激ですよ、でもこれはこれでいいんですこういう生き物ですので」

「オイコラそれどういう意味だよ!?」

 

 ぎゃいぎゃい騒ぐ兵藤くんはとりあえずスルーでキキョウの頭をなでてあげます。困惑しながらもその感触に頬を緩ませるキキョウはマジ天使です。と、天使を堪能していたらうちの種族的天使枠のサクラが、ええ、と言葉を作って、

 

「マスターはツンデレですからね、イッセーさんが死んだと思い込んでいた昨日の朝の落ち込みようを見せたいところです」

「そ、そうなのか……?」

「ちょ、やめ――サクラは口チャック!」

「わたし昨日の朝は寝てたけど、一昨日の夜のことは覚えてるよ!あのね、お姉ちゃん言ってたんだよ、『兵藤くんにも、死んで欲しくな――』むぁ、もがもが」

「ひーまーわーりー!!」

 

 夜空に、私の怒声と三人の笑い声が響きました。近所迷惑の羞恥プレイとか、本当に勘弁して欲しいものですが――兵藤くんが、何故か珍妙な面持ちでこちらを眺めていたのが不穏でなりません。

 

 またよからぬことをたくらんでいなければいいんだけれど……と、私は額を押さえてため息をつくことで精一杯なのでした。

 

 

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