刀に狂うは人の性   作:ちょこっとみんと

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 初投稿です。めちゃめちゃ緊張しております。
 書き始めたはいいですが、無事走りきれるかわからないため、あまり期待せず気安く読んでいただけると幸いです。
 感想、高評価を頂けると私が泣いて喜ぶのでよかったらよろしくお願いします。


はじまり、第一歩

『強くなりたい』。

 物心がついた時には既に剣を振っていた。

 一日のうち睡眠と食事以外全てを剣に費やしながら、まだ足りないと振り続ける。

 

『強くなりたい』。

 

 そう思うようになった理由はなんだったか、今ではもう思い出せない。

 ただ、暖かいような、冷たいような.......そんななにかがあった気がする。

『強くなりたい』。

 

 その心に従いひたすら剣を振る。振り続ける。

 目指すものはただひとつ、『最強』のみである。

 

 

 

□⬛︎□⬛︎□⬛︎□⬛︎□⬛︎□

 

 

「モモンガ中将! コハク海賊団の捕縛、完了しました!」

「よくやった。君は先に船へ戻っていなさい」

「はっ!」

「.......さてと」

 

 部下が見えなくなったのを確認してから、奥の茂みに目を向ける。

 

「船長の仇討ちかね?」

 

 まだ生き残りがいたかと思い声を掛ける。

 一体どんな屈強な男が出てくるかと思っていたが、出てきたのはまだ幼い少女だった。

 

「紛らわしいことをして申し訳ない、私はただの旅人にすぎん」

 

 艶のある長い黒髪と、凛々しさはあるものの幼さの残る顔立ち、そしてそれに見合わない尊大な口調。随分と不思議な少女だ。

 その様子を見るに、たしかに海賊という訳ではなさそうだが.......。

 

「どうしてこのようなところに?」

「ここの船長を狙っていたのだよ、ただの賞金稼ぎさ」

 

 見たところ14歳程だろうか。そのような歳で賞金稼ぎとはどんな境遇で育ってきたのか。

 そしてなにより……。

 

「なるほど、それで彼を倒した私に鯉口を鳴らしてみたと」

 

 刀を交えずとも伝わってくるあまりにも大きい戦いへの本能、強さへの欲望。

 私の言葉を聞いた途端彼女の目が釣り上がり、嬉色を浮かべながらこちらに歩み寄ってきた。

 

「ほう、気づいていたのか」

「それだけあからさまにされて気づかない訳がなかろう」

「はは、それもそうか.......それで、返事は?」

「もちろん、受けて立とう」

 

 ピタリと立ち止まり、彼女の口が三日月を描く。

 

「では.......」

「いざ尋常に.............」

「「勝負!!!!」」

 

 

□⬛︎□⬛︎□⬛︎□⬛︎□⬛︎□

 

 

 目が覚めると、身体中を包帯でぐるぐる巻きにされベッドに寝かされてきた。

 

「そうか.......私は負けたのか.......」

 

 グランドラインのとある島で剣術家の家に生まれ、幼い時から剣を振っていた。

 ひたすら修行を続け、10歳の時師匠でもある父に勝利した。

 それからはよりいっそう厳しく修行に打ち込み、食事と寝る時以外はほぼ常に剣を振り続けた。

 丁度半年前、14の誕生日を迎えた日に海に出ていくつもの島を渡り歩いた。

 行く先々で出会った海賊や道場主に勝負をしかけ、これまですべての勝負に勝ち続けてきた。

 しかし先日海軍中将モモンガに挑み、海に出てから初めて敗れてしまったのだ。

 

「くくく.......」

 

 久しく味わっていなかった敗北の味。なんて........

 

「ははははは!!」

 

 ()()()()()()()()()()!!()

 

 私よりも強い強者との邂逅。

 これで私は、より強くなれる。

 

「おや、目が覚めたようだな」

 

 ちょうどいい所にモモンガ中将がやってきた。

 

「ここは海軍の軍艦か?」

「あぁ、君を適当な島に降ろした後に海軍本部へ向かう」

「海軍本部か.......なぁモモンガ中将」

「なんだね?」

「そこに、あなたより強い人はいるのか?」

 

 彼でさえ中将なんだ、おそらくは.......

 

「あぁ、ごまんといるぞ」

「ふ、やはりそうか」

 

 そこに行けば、私は更なる高みへ登ることが出来る。

 『最強』へと一歩近づける。

 

「さて、下ろして欲しい島の希望はあるか?」

 

 私の決意は固まった。あとは一言告げるだけでいい。

 

「そうだな.......ではマリンフォードにお願いする」

「ふっ、お前ならそう言うと思ったさ」

 

 にやりと二人で笑顔を交わす。

 

「そういえば、お前の名前をまだ聞いていなかったな」

「あぁ名前か.......ミナヅキだ」

「ではミナヅキ、海軍本部で待っているぞ」

 

 そう残し、中将は部屋を去っていった。

 

「.......ふふふ」

 

 私よりも強いやつが山のようにいる所に行く.......興奮で胸がはち切れそうだ。

 ようやく、ようやく私はスタートラインに立ったんだ。

 

「待ってろよモモンガ、すぐに追いついて見せるからな」

 

 一人残された私は、ただただ期待に胸を膨らますのであった。

 

 

□⬛︎□⬛︎□⬛︎□

 

 

 訓練生の朝は早い。

 まず朝二時に起きて走り込み。

 二、三時間走ったら食堂に行き朝食を食べる。

 その後一時間程足運びや素振りをするとだいたい六時になるので、六時半からある朝練へ向かう。

 

「おはよう、みんな」

「おーミナヅキ! おはよう!」

「今日もまたいつものを頼めるか?」

「うっし! 今日こそは負けねぇからな!!」

 

 二十分になるまで他の訓練生と模擬戦を行い、技術を高めていく。

 また、この模擬戦はいつも一対三をローテーションして行うことで、一人の時には一体多での戦闘を、三人の時には標的を確実に仕留める訓練を積んでいる。

 

「だーくっそ、結局今日もミナヅキのいるチームが全勝かよ.......」

「ふふ、これでも人生全てを剣に捧げているからな。まだまだ君たちに負ける訳にはいかんよ」

「たった14のちみっこが言ってもなんも響かねーよ」

「う、うるさいなぁ……これから積み重ねていけばいいだろ!」

「ま、たしかにお前の強さに対する執念はすげーと思うよ、実際俺ら誰もお前に勝てねーしな」

「そ、そうか? ……へへ」

(((ちょろかわ)))

 

 む、なにやらとても失礼なことを思われている気がする……。

 そんなこんなで二十分になったため軽口を叩きながら整列し、教官がやってくるのを待つ。

 

 丁度三十分に教官であるゼファー先生がやってきた。

 

「休め! 気をつけ! 敬礼!」

「「「おはようございます!! ゼファー中将!!!!」」」

「おう、おはよう。まずはグラウンド三十週からだ。ランニング用意!」

「「「はっ!」」」

「始め!!」

「「「はっ!!」」」

 

 ランニングをこなしたあとは、柔軟、筋トレ、体幹等の基礎トレーニングを行い、その後やっと本格的な訓練が始まる。

 

「それではこれより戦闘訓練を開始する! 各自ペアを組んで組手を行うように!」

「「「はっ!」」」

「それとミナヅキ」

「はっ!」

「お前は私と組め、直々に鍛えてやる」

「っ!! ありがとうございます!」

 

 ついに来た! 黒腕のゼファーとの模擬戦!

 海軍でも五本の指に入るほどの実力者である彼とこんなにも早く戦えるなんて……やはり海軍に来たのは正解だったな。

 

「おいおい教官直々なんてやるじゃねぇか!」

「あぁ、このために海軍に入ったようなものだからね」

 

 期待に胸が膨らみ、自然と口角が上がる。

 

「それでは訓練! 開始!」

「「「はっ!」」」

 

 心躍るというのは、まさにこの事を言うんだろう。

 今の私がどれだけ弱いのか、私の前にそびえ立つ壁がどれほど高いのか、そしてそれを超えて高みへと至った時、どこまで強くなれるのか!

 

「胸を借りさせていただくよ、ゼファー教官」

「ふっ、言うじゃないか若造。全力でかかってこい!」

 

 訓練用の刀が収められた鞘を撫でる。

 刃を潰してあるとはいえ、金属の塊だ。全力で振るえば人など簡単に殺めてしまう。

 しかし彼は強い。おそらく今の私の何倍も。

 だから今なら、本気で振っても大丈夫だろう。

 

「では、いざ尋常に……死合おうか」

 

 鞘を持ち、柄に手を添える。

 

「居合……」

 

 呼吸を整え、全神経を集中させる。

 

一重(ひとえ)

 

 ただの抜刀。一の太刀に全てを載せた奥義。

 風を裂き、音を置き去りにする一閃を、彼は拳ひとつで迎え撃つ。

 瞬きにも満たぬその瞬間、ありえないことが起こった。

 彼の拳に当たった刀が、粉々に砕け散ったのだ。

 

「っ!」

「なるほど、たしかにいい速さだ。神速と言ってもいいだろう」

 

 あんなに軽々止めた後に褒められてもね。

 しかし止められるとは思っていたが、まさか刀の方が砕けるとは思ってもみなかった。

 刀と拳が触れる瞬間、彼の腕が黒く染ったように見えたが、あれが黒腕のゼファーと呼ばれる理由なのだろうか。

 

「そうでなくては! 黒腕のゼファー!」

 

 即座に予備の刀を構え、首目掛けて居合を放つ。

 

「馬鹿の一つ覚えか!? 剣の天才とやら!」

 

 先程と同じように迎撃の拳が振るわれる。

 同じことをしてもまた折られるだけだ。だから……。

 

「しっ!」

 

 刀の軌道を変え、拳を躱す。

 しかし彼の体には届かず、刀は空を切る。

 ……だが、それでいい(・・ ・・・・・)

 剣閃の運動エネルギーをそのままに、軽く跳ねて回転する。

 空中で刀を鞘に収め、さらに加速させた二閃目を抜き放った。

 

「な!?」

 

 さしもの彼もこれは防げず、巨体が訓練場を転がっていく。

 

「居合……二重(ふたえ)

 

 振り抜いた刀を、ゆっくりと鞘にしまう。

 その瞬間、訓練場に歓声が響き渡った。

 

「おいおいミナヅキ!! すげえとは思ってたけどよ! まさかここまでやってくれるなんてな!」

「あのゼファー教官をぶっ飛ばしたんだ!! ハンパねぇよお前!」

「お、おいお前ら、はしゃぎすぎだぞ」

 

 同僚達の喜びようがあまりにも大きく、少し気圧される。

 

「というか訓練を中止してなにをしてるんだ! また教官にどやされるぞ!」

「は、その教官なら今お前にぶっ飛ばされてのされてるだろ」

「ざまーみろ鬼教官! さすが俺らのミナヅキだぜ!!」

 

 そう言って口々とゼファー教官への愚痴を募らせる同僚たち。

 

「お、おいお前ら喜んでくれるのは嬉しいがその辺にしておけ! おそらく教官は……」

「あんなんくらってしばらく起きれるわけねーだろ! だいじょーぶだって!」

「そーだそーだ! ったくいつも散々扱きやがってよー! 身体持たねーよばーか!」

 

 これは私でもわかる……死亡フラグってやつじゃないか……?

 その私の予想は、見事に的中することになった。

 

「ほう、バカで悪かったな」

「「「……へ?」」」

 

 少し離れた所で大の字に寝転がっていた教官がむくりと起き上がる。

 

「たしかにお前らへの配慮が足りなかったか……それじゃあもっとキツイ訓練にすれば、その弱っちい身体もちっとはマシになるかもな?」

「げぇ! 生きてる!」

「や、やだなぁ教官、そんなこと言うわけないじゃないですか」

「まったく……お前たち……」

 

 口々にそうですそうですと教官に媚びへつらう同僚(バカ)たち。

 

「大丈夫だ、わかってるから安心しろ」

「「「きょ、教官……!」」」

「お前たち、明日から訓練メニュー倍な」

「「「きょうかぁぁぁぁぁぁん!!」」」

「ぷ、ふふふ」

 

 まるで漫才かと言うようなやり取りに、思わず吹き出してしまった。

 全くほんとに、愛すべき同僚(バカ)たちだよ。

 

「さてミナヅキ、もちろんこれで終わりとは思ってないよな?」

「ええ、もちろん」

 

 近くで泣き崩れている同僚達から目を外し、ゼファー教官に向き直る。

 

「っ!」

 

 彼と目が会った瞬間、空気がピリつくのを感じた。

 一目見ただけで分かる。先程まではただの様子見、ここからが本番だと。

 海軍でも間違いなく五本の指に入る強者である黒腕のゼファー、彼の本気があんなものだとは、こちらもハナから思っていない。

 

「今度はこちらから行くぞ!」

「こいっ!」

 

 刀を真っ直ぐに構え、適度に力を抜く。

 全神経を極限まで研ぎ澄まし、彼の拳の軌道を読み取る。

 

「しっ!」

「ほう! やるじゃねえか!」

 

 大振りに飛んでくる右腕を刀の刃で受け流す。

 シャァァァン! と金属同士が擦れ合う音が響き、彼の体が流れていく。

 すかさずそこに斬撃を放つが、左腕でガードされた。

 ガキン! という音と共に、刀が大きく弾かれる。

 硬すぎる、まるで岩でも斬ったみたいな感触だ。

 

「ちっ、なんで刀と拳でそんな音がなるんだ!」

「なぜか知りたいか?」

「はい!」

 

 切り結びながら、ゼファー教官の問いかけに食い気味に反応する。

 だって仕方ないだろう。より強くなるための道が、目の前に伸びているんだから。

 

「ミナヅキ、六式は使えるか?」

「はい」

 

 六式、海軍が悪魔の実を持つ強力な海賊に対抗するために生み出した体術形式。

 目にも止まらぬ速度で動く「剃」、相手の攻撃を舞うように躱す「紙絵」、自身の体を鋼鉄のように固めて受け止める「鉄塊」、空を駆ける「月歩」、弾丸のように強力な突きを放つ「指銃」の6つがあり、どれもがとても強力だ。

 

「そしてこれが! そのもう一段階上の技術、武装色の覇気だ!」

「くっ、あぁぁ!!」

 

 その瞬間、またしても彼の腕が黒い鎧のようなものに包まれ、まるで大砲の弾のように迫ってくる。

 それを私はガードしきれず、大きく後ろに吹き飛ばされた。

 

「くっ……はぁ、はぁ……」

 

 聞いた事はある、能力の強弱がそのまま強さに直結するグランドラインと違い、新世界では覇気と呼ばれる技術をどれだけ扱えるかが生死を分けると。

 

「そしてこれが相手の気配を読み、先の動きを見る見聞色の覇気だ!」

 

 息つく隙も与えずに、二撃目がやってくる。

 上から隕石のように振ってくる拳を避けた……はずだった。

 

「なっ!?」

 

 まるで私がどこに避けるか分かっていたかのように、避けた私を拳が追ってくる。

 あぁ、これは防げないな。

 そう考え防御を捨て、少しでも反撃をしようと彼の頭目掛けてまっすぐ突きを放つ。

 しかし彼の拳は私に届く直前に寸止めされ、私の放った突きももう片方の手で止められた。

 

「はっはっは! そこで攻撃を選ぶとはえれぇ嬢ちゃんが入ってきたもんだ」

「はぁ……はぁ……参りました、完敗です」

 

 流石だ、伝説の海兵。今の私じゃ足元にも及ばない。

 しかし、それでこそ、だからこそ……超えがいがあるというものだ。

 

「相手の気配を読み、後の先をとる見聞色の覇気、身体を鋼よりも固く硬化させる武装色の覇気、そして限りあるもののみが持つ王の覇気、覇王色の覇気。これらをお前に叩き込む!」

 

 見聞色の覇気、武装色の覇気、そして覇王色の覇気……。

 

「ふふふ」

 

 これを習得すれば、ゼファー教官にも勝てるだろうか。

 ゼファー教官に勝てれば、もっと強い人と戦えるだろうか。

 もっと強い人と戦えば、更なる高みへ、剣の果てへ到れるだろうか!

 やっと見えた明確な「道」、その道の先にあるものを想像するだけで溢れんばかりの激情が込み上げてくる。

 この身を焦がす欲望! 飽くなき強さへの渇望! なんて心地いい魂の叫び!

 

「よろしくお願いします! ゼファー教官!」

 

 強さの果てへと、その一歩を!

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