気をつけてください
日曜日
宇佐見家
「───ん?なんかいい匂い……」
奏は目を覚ます。現在午前5時
いつもの彼女ならまだ眠っている時間だ。
「音哉かな………」
慣れない起床時間に身体がついて来ていない。
いきなりだが、ここで思い出して欲しい。奏は"朝に弱い"………というより、睡魔に負けやすいという方が正しいのだろうか。
『いつもならまだ寝ている』
『睡魔に弱い』
この二つが合わさるということは……
バタッ
「──だめだ、寝る………」
匂いの正体を調べようとすることもなく、またベッドに潜り込んでしまった。
コンテニュー?
Yes
No ←
「うー……ん。──あー、10時か……」
本日2度目の起床。あれから5時間が経過している。
今日は日曜日。
教師である両親はそれぞれの勤務学校で部活の顧問をし、今日は二人共遠征らしい。
この時間帯に起きてくる奏を音哉はいつも時間を潰して待っていることが多いのだが……
「──ありゃ?音哉もう行ったんだ……う~ん、もう少し早く起きれば良かったかなー?」
眠い目を擦りながら台所へ歩く。
───流石音哉。しっかり朝食作ってくれてる。さすが私の分身(←双子)。マジで愛してる(←兄妹として)
(ごちそーさま)
「さって、と………今日も紅魔館に行かなきゃねー。───皆気に入ってくれたかな?」
『気に入って』とは奏が紅魔館のメンバーに置いていった袋の中身のことだ。
「──はっ!?でももうこんな時間!?フランちゃんと触れ合う時間が!!………さっさと準備しますか」
だったらもっと早く起きろ。そう思った人は是非、心の中でつっこんであげて欲しい。
「ん?」
食器を洗っている途中、ふと今朝感じた匂いを思い出した。
(!──この匂いは……)
「冷蔵庫ばーん!!──これは!」
冷蔵庫に入っていたのは、『紅魔館に持っていったげて by音哉』の手紙が添えてあるチーズケーキとクッキー。
──もうホント、帰ってきたらちゅーしてやろう。
(する気もない)
───────────────
紅魔館
(ね、ねえパチェ。あれ、咲夜よね?)
(咲夜ね、一応は。人格が別人のようだけど……)
(あれが咲夜に見える?……だって………)
「~~♪~♪~♪」
(鼻唄なんか歌ってるのよ!?おまけに何よあの服!ウチ(紅魔館)で出してるメイド服でないじゃない!!)
(はいはいどうどう……)
「メイド長ーお客です~」
「ん……誰?」
「うーんなんだっけ……"かなた"?」
「……知らないわね…行ってみますか」
(でも切り替えは早いのね……)
(流石ウチのメイド長!優秀よ!)(`・ω・´)=3ふんすっ!
(なんで貴女が威張るのよ…)
奏side
おっかしーなー……
誰も来ないよ?
さっき来たのって、多分妖精メイドだよね?イメージと違ってあまり小さくなかったけど。
……いやでも、チルノとかも言うほど小さくなかったから、あれが平均サイズなのかなぁ?
ヒュン!
「きゃあ!?……あぶなっ!?」
私じゃなければ死んでるよ!?
なんてね
これ一回言ってみたかったんだよね
というより、このナイフの精度は……
「……あら、奏だったのね。──うん成程、美鈴が寝てるから妖精メイドの連絡ミスが出た訳ね……」
「咲夜さんだ~」ダキッ!
「ふふ、ごめんなさいね。妖精メイドが聞き慣れない名前で伝えてきたものだからつい。」
後ろの塀に刺さっているナイフに触ると、弾けて消えた。
「流石にお客様に本物のナイフなんて投げないわ。それは霊力で作った偽物。」
………
(良かったーー!!)
当たってたら妖怪でもないし、私死んじゃうって!
「どうしたの奏?行くわよ~」
すいません、恐怖と安心で放心してただけです。
前回来た時はゆっくり見れなかったけど……
「ここの植物って皆綺麗だよね……」
「そう?ありがとう。…でもこれ、殆ど美鈴が手入れしているのよ?」
「………え?」
少し考えてみた。
────ありえる……ありえ過ぎる。
しかも『気を操れる』のに、『普通に育てた方が良いんですよ!』とか言ってそう。
「数年前に『能力使わずゆっくり育てます!』とか言って、しっかり手入れしていたのよ?」
……あ、やっぱりそうなんだ。
うーんダメだ、やっぱり気になる。
「……その服、どう?」
咲夜が着ているのは紅魔館で使用されているものとは違う。
昨日奏が持ってきた袋に入っていた、咲夜用の服装だ。
「これ?」
咲夜はその場で一回回った。
『咲夜さんって作品によって違うけど、メイド服はあの位の、パターンしか無さそうでしょ?』
奏の推測実際は違った。パターンどころか同じのしかないらしい。
「良かった~てっきりあれ(いつもの)以外着ないのかと……」
「あら、馬鹿にしてる?私だって一応女の子なんだけど?もちろん、服とかは大好きよ」
咲夜は笑いながら。
しかし違和感……
この人はなぜこんなに『女の子』という単語が似合わないのだろうか。
どっちかというと『女性』に近い気がする。
自分より少し歳が上なだけの筈なのに…
(ウチの姉はなぁ……)
「───えくしっ!」
「どうしたの蓮子?その変なクシャミ?」
「いや、姉として否定された気がする………」
「?」
「それにしても、これすごいのね。着心地が良すぎる……それに動きやすいわね、これ」
「でっしょー?知り合いに必死に頼み込んで作ってもらったんだよ、それ」
この服はほぼ執事服をモチーフにしているが、下はスカートになっている。一見するとアンバランスのように見えるが、《カッコイイ咲夜》のイメージを考えていたらこのような妄想(作者の)を具現化した結果になった。
黒を貴重としているので、咲夜の銀髪が映える。
(でも、一つだけ気になるのよね……)
咲夜は服の裏を見る。
「──ねぇ奏、なぜこの服の裏はこんなにナイフを収納する部分ばかりなのかしら?別に私、ホルダー持ってるわよ?」
「え?ああそれはね、何となく。因みに、使わなくても生地が厚くならないようになっているから」
「へぇ…(脚にもホルダーがある…)」
「さて仕上げに……咲夜さん、これ履いてみて?」
奏が持ち物から取り出してきたのは、黒と茶のロングブーツ。
「何これ……これもいいの?」
「店を彷徨いている時に思わず自分の足のサイズで買ってしまったんだよね。後悔はしていない。だから、少しサイズ違うかもしれないけど…「あら、ぴったりじゃない。」え、早っ!?」
「本当よ。……どう?」
「 」
奏が咲夜本人への第一印象は"綺麗な人"。現世でも十分モデルができるレベルだと思っていた。
振り返った咲夜は………格好良かった。
執事服にスカートという少し変わった服装も、咲夜というメイドを完璧な"女執事"へと変えている。
「ナイフも入れてみたのだけど…何故重さが変わらないのかしら?」
「あーそれはね…」
そう言った瞬間、奏は息を吐いた
すると
ぐんっ!!!
「っ!?」
急に体が重くなる。
「いやー…実はそれまだ未完成なんだよね……私の能力で強引に持ち上げていたけどやっぱりきつくて。だからパチュリーに持続性がある魔法でも教えてもらおうかなって思ってたんだ。」
そこまでしようとしていたのね……
……まあ確かに重いけど
「いいわよ?」
後ろを向くと、いつの間にかそこには目を擦りながらパチュリーが立っていた。
足取りがおぼつかない。
「また研究で徹夜ですか?」
「違うわよ。二度寝失敗しただけ」
わかるよ、わかる。
「至高だよね二度寝」
「あら奏、分かってるじゃない。そう──」
「「睡眠こそ至高!!」」
「…………あの、話進めていいですか?」
「あ、ごめん咲夜さん」
「取り敢えず…パチュリー様がなぜここに?」
「なんか面白そうな霊力があったから。……で、いざ来てみたら面白そうな会話が聞こえたのよ。」
流石魔法使い、そういうことには敏感なんだね。
「で、やりたいんでしょ?」
「もちろん!咲夜さんのためにだからね」
「──というわけだから。奏借りてくわよ。」
そうして、奏とパチュリーは図書館に入っていった。
───────────────
「──ねえ咲夜、奏とパチェは何をやってるのかしら?」
レミリヤは紅茶を啜る。
吸血鬼であるレミリヤとフランは、基本的にブラッド(血入り)ティーを飲むが、余り血を取らなくても体調自体は安定するので、それ以外の紅茶も飲むことができる。
(因みに血は紫が輸血パックで持ってくる)
レミリアが今飲んでいるのはミルクティー。フランが飲んでいるのを見て自分もハマってしまったらしい。
「あの二人なら『さっくやさーん!』……あ、来ましたね」
歩いてきた二人のうち、なぜかパチュリーはボロボロになっていた
「……パチェ、何やったのよ」
「永続魔法を教えてたのよ………まさかできるとは思わなかったけど」
「え、永続魔法?それって中位魔法クラスじゃなかった?」
事実、永続魔法にも色々種類があるその中でも大まかに分けて二つ
攻撃などで使われる、連続系統。これはすなわち、効果が短い魔法の『コピー&ペースト』を繰り返すもの
もう一つは、『火を出す』などの事象を魔法の使用者抜きで持続させるもの
「まあ、使えることは使えるからね。魔力が使えるものならだけど…」
奏がパチュリーから教わったのは後者だが、そもそも魔法は魔力が必要となる。
ではなぜ奏が魔法を使えたか?
「…………才能?(ビシッ)あいたっ!」
「調子に乗らない。私が奏の霊力を一部変換したのよ」
そう言って、咲夜から服を受け取る。
「ほら、やるわよ奏」
「うう……」
パチュリーは服を浮かび上がらせる
そしてホルダー部分に触れながら詠唱をはじめる。
「────〜。はい、奏」
「はーい。─────〜~~~、─────どう!?」
奏の詠唱が終わると、服に紋章が現れる。
「──成功のようね。お疲れ様、奏。」
「───やったーー!!どう咲夜さん!?どう?」
(……なぜパチュリー様がやらなかったのですか?)
(自分のプレゼントは自分で完成させたかったらしいわよ?)
(そこまでして………?)
「──ありがとう、奏。」
「どーいたしましてっ!」
「───凄い…以前よりも軽くなった…」
「奏の能力だと断片的な効果になりそうだったから重力魔法にさせてもらったわ。」
「パチュリー様…ありがとうございます」
「いいのよ。私も奏から色々もらったからね。」
そう言って小悪魔に持って来させたのは、数冊の本。
「それは?」
「外の世界の世界史関係の本ね。幻想郷に来てからこういうのを余り見てなかったし、かなり嬉しいわよ?」
「あ、私も貰いましたよー!」
そう言って小悪魔が大きめの物を持ってきた。
「……何それ?」
「あ、それ抱き枕だよ。寝るときとかに抱いてると落ち着くんだよね〜」
小悪魔が持っている抱き枕には小悪魔らしき羽のデザインが。
抱いてみる。──温かい。
(──あ、確かに良い抱き心地……このデザインは音哉が考えたのかな?)
「ありがと奏」
「いぇい」
「レミィとフランは何を貰ったの?」
「私?これよ」
レミリアの横には、綺麗にたたまれた和服が一式。
「私もだよー」
フランは似たような和服を着ていた。
「うん、似合ってる。さすが私、サイズも合ってる。」
「これいつの間にか着てたんだけど。」
大方、咲夜が時間を止めて着せたのだろう。
二人の和服は、それぞれレミリアが蝙蝠、フランが羽についた宝石のようなものの模様が入っている。
「どちらもよくお似合いですよ」
「当然じゃない咲夜、私に合わない服がある訳ないじゃない」
((((( )))))
「なによ!なにか言ってもいいじゃない!」
珍しい!4500文字!
奏のはこれ自体が番外編みたいなモノです