「ねーまだ〜?」
日がまだ高い。
人里へと続くこの道は妖怪がよく出るが、まだ昼前。この状態では流石に妖怪たちも襲ってはこない。
流石に歩くのに疲れてきたのか、奏は霊力の球を作って遊んでいる
(……それにしても、攻撃手段ある奏はいいよなー…いつもは橙ちゃんが居てくれるから来れるけど)
「ねー音哉〜」ダキッ
「…あのさ奏、この格好はどうかと思うよ?」
「いーじゃん、恋人ですか?って訊かれたら『双子としての愛情です!』って言っておけば」
「そうじゃないんだよ……こんなところを"あの人"に見られたら…」
「あの人?」
昼だからと行って油断してはいけない。何があるか判らないから。
──もう一度いっておこう。『何があるか、判らないから』
『……おぉーーとぉーーやぁ〜〜!!』
「ああ来たよ……」
奏は叫んでいる人物を見る。
(……白髪?)
気付いた瞬間、自分の隣にいた音哉の姿が無くなっていた。
「あれ………?」
誰かに誤解されたかな、と思いつつもそんなに心配はしていない奏だった。
ドンッ!!
一方、連れ去られた音哉は壁ドンならぬ木ドンされていた。
「あ……あの、妹紅さん?」
音哉を攫った犯人は藤原妹紅。永遠の時を生きる蓬莱人だ……と、そんなことはどうでもいい。
「あ''ぁ''?」
うわぉ、これ絶対誤解されてるよね。しかも口調がいつもと違うあたり、結構マジな方だ……
「音哉……あの女は誰なんだ?」
ほらやっぱり!嫌な予感的中したよ!!
これは後で奏とO☆HA☆NA☆SHIしないとダメだな!うん!
「なにか誤解しているようだけど、あれは双子の妹で……!!」
「ふーん…言い訳が通用すると思っているらしいな」
「ご……誤解だ〜〜!!!」
(あ……………死んだな)
「───音哉〜〜?」
誰かが俺を呼んでいる……?
「………………起きろ」ペチッ!
「いてっ………」
目を開けると、目の前には白髪と栗色の髪を持つ二人がいる。
「あ、やっと起きた」
「妹紅さん?…奏?」
「──なんていうか……ごめんなさい…」
いきなり妹紅さんに謝罪された。
いつもの強気な感じはなく、ただ落ち込んでいる。
「奏から話を聞いたのよ。──まさか双子だったとは………」
そうか、誤解されていたんだっけ
「奏、言っただろ?"こういうこと"なんだよ。」
「分かったよ、納得。」
───そして、妹紅の案内で人里に到着した二人。
着いてすぐ、小学生位の子供達が音哉と妹紅の周りに集まる。
「うわっ!……ちょっ、耕助(こうすけ)重い!」
「やっと来たな音哉〜!!」
奏はふと思う。音哉と人里に来ておいた方が良かったんじゃないか、と。
宇佐見家は全員子供が好きだ。さらには教師をしている両親の影響か、子供の扱いにも長けている。
だから今の音哉の状態は奏にとって妬まs……羨ましいもの。紅魔館にしか行っていない自分とは大きく違う。
「早くサッカーやろー!」
「え、ちょ待っ…」
音哉が子供達に連れていかれ、奏と妹紅が取り残された。
「…………はぁ、子供達はやっぱり元気なのね。」
「子供苦手?」
「あのテンションには付いていけないのよ………」
そうこうしているうちに、サッカー(という名のフットサル)が始まってしまった。
「──ちょっと待ってて。」
そう言って妹紅はこの場を離れ、数分後、一つの袋を持って妹紅が帰ってきた。
(──そういえば妹紅……"さん"付けとこうかな。妹紅さんて世話焼きなんだっけ)
「はい。」
「ありがと。」
手渡されたのは──パン。幻想郷にもあるのかと思った奏だったが、妹紅が指さす方にある看板を見て納得。英語がからっきしな奏でも解る。
(ベーカリー……なるほどね)
大分前に幻想郷に来たという人がやっている店のようだ。
「奏はここ以外に行ったこと、ある?」
パンを片手に質問される。
「マヨヒガと紅魔館なら」
「紅魔館?………あぁ、あの館に行ったのね……」
知ってはいるようだ。──幻想郷全体を巻き込む異変を起こしたのだから当然か。
「実はその二つ以外に行ったことがないんだけどね。」
「へぇ………どう?私はそっち(外の世界)に行ったことは無いんだけど、幻想郷は楽しい?」
そんなの決まっている。
「勿論!」
「そう、良かった。」
話をしているうちに、フットサルが終わったようだ。その音哉に妹紅はパンを渡した。
待っている間に音哉の人里での様子を聞いたところ、この短期間(といっても、初めて来てから2ヶ月経ってはいるが)で音哉は人里の有名人となっていた。
元々音哉から聞いてはいた幻想郷縁起の執筆を手伝うということ。元から頭が良いこともあり、寺子屋で臨時教師を務めていること。
対して奏はマヨヒガを抜かせば、紅魔館にしか行っていない。
──これはまずい。
(フランちゃんは少し我慢かな……)
「──それで?これから阿求の所にでもいくの?」
別にそれが目的ではなかったのだが、外れてもいなかった為首を縦に振っておく。
「別に飲み込んでからでもいいわよ……」
それにしても、この妹紅の話し方には違和感がある。
音哉はさすがに慣れたが、奏は妹紅の男口調に期待していたからだ。
「ん?どうかした?」
「なんでも。ちょっとさ、魔理沙みたいな話し方してみて。」
「魔理沙?………ああ、あの魔法使いか。となると、男口調ってこと?」
少し考え込む妹紅。
「………思い浮かばないわね。何か、リクエストはある?」
ならここはあれだ
「じゃあテーマ『相手への挑発』。」
(なんだそれ ?!)←音哉
「"挑発"ねぇ……」
「………ん?何だろあの人」
「急いでるわね。…あ、寺子屋に入った」
「………慧音さんが飛び出してきたけど?」
寺子屋から飛び出てきた慧音は、全力ともいえる走りで村の外に走って行った。
(あの雰囲気は……)
「音哉、奏、行くよ。あれ多分妖怪が出たらしいから」
「こんな時間から!?」
妹紅は二人の腕を引き、慧音のあとを追った。
「───見つけた」
大よそ50m先に空を飛ぶ慧音を見つけた。
「……ていうかなんで音哉は飛べてるの?」
───そう、音哉達も空を飛んでいた。
「奏の手を掴んでたら飛ぶイメージが浮かんできた。で、その通りにしたら飛べてた」
流石私の片割れ、幻想郷に来てから霊力などの質と感受性が上昇したことで感覚共有したのか、みたいな事を考えている。
「子供が妖怪に襲われてるっぽいわね」
慧音が対峙している妖怪は、人里の子供を攫っていったようだ。
「幼女を攫うなんて……アイツやるな」
「そうじゃないぞ。奏。」
(慧音は……戦えないようね)
「──音哉と奏はそこにいて。」
妹紅の雰囲気が変わった。
そして、背から炎の翼が現れた。
「"殺き"尽くしてやる……」
──────────────
「……奏、よく見ておいた方がいいよ。」
「二次創作なんかよりよっぽど凄いって言いたいんでしょ?紅魔館で吸血鬼姉妹のを見てきたからね。」
「あ…そうなの?」
(※奏編参照)
『フジヤマヴォルケイノ!!』
そして、敵妖怪は文字通り蒸発した。
「ありがとーおねーちゃん!」
「うんうん。いいんだよいいんだよ〜」ナデナデ
「……お前じゃないだろ」
†←妖怪の墓