秋→いきなり春
2月某日───
(………やっべ、めっちゃ緊張してきた……)
高校合格発表当日、音哉は姉である蓮子と高校に来ていた。
倍率はおよそ2倍。奏の方は1.8倍らしい。
「なーに?まだ緊張してるの?大丈夫だって!貴方は私の弟なんだから!」
「『大丈夫』の理由になってない!」
実は入試の時から合格する自信はあった。しかしいざ発表となると緊張もする。
「う~~………」
「?あれ、音哉……あのほら…あそこで手振ってる人、誰か分かる?」
横を見ると、大きめのバッグを持った長身の女性が立っている。
「…………………!」パクパク
「?」
「……………………!!」パクパク!
「(お…と…や…き…づ…け……?)
──蓮姉ごめん、ちょっと行ってくる」
「はーい。じゃ私、なんか買ってくるわね~」
校舎裏───
「──まったく…気付くのが遅い……」
「──まさか……藍さん?」
女性がニット帽とサングラスをとると、そこには輝くほど美しい長髪と、普通の人間にはない二つの出っ張りがある。
「人前でこれは取れないからな」
当然、とでも言わんばかりにニット帽を被り直す。
すると、髪はまた短髪になった
「……その髪、妖術ですか?というか、なんでこんなところに……?」
妖術や魔法などはもう見慣れたようなものだが、こっち(現世)でそれを見るとは思ってもいなかった。
「まあ、この髪はね。……で、ここにいる理由だが……ん?『音哉~!そろそろ始まるわよ~!!』……ま、所謂君の応援だ。緊張していると思ったからな。因みに、奏の方には橙を向かわせたよ。」
(何だあの微妙な表情……?まさか橙に言う事を聞かせるために……)
五分後────
『──それでは只今から、○○高校の合格者番号を掲示させていただきます』
ざわざわ────
(こ…こえ~!!)
上を見ると、教室と思われる場所から巨大な紙を持った人達が見える。
「おおあれか。音哉の番号を探せば良いんだろう?何番なんだ?」
「………0108です」
「へぇ、『おとや』か。良いことが有りそうだな」
(やめて藍さん……緊張で口から心臓が………)
「──あ、出てきた!」
「!!っ………(0108こい0108こい0108こい………!)」
(……いや、目を瞑っていたら見えないんじゃ…)
音蓮((こいっっ!!!))
4月─────
「「「「「「音哉(君)(さん)、高校合格おめでとーー(ごさいます)!!!!」」」」」」
パンッ!
魔「おめでとう音哉!!」
慧「音哉、高校入学おめでとう」
妹「私、高校ってどんなのか知らないけど、おめでとー」
「皆大袈裟だなぁ……でも、ありがとう」
人里の稗田邸では、今音哉の合格祝賀会が始まった。
どこから持ってきたともわからないパーティクラッカーもある。
(あれ、絶対魔理沙が買ってきたやつだな……)
「ふふふ………良かったわ、無事合格してくれて」
稗田家には紫と藍もいた。
「ありがとうございます……──そういえば、なんで合格発表に藍さんが居たんですか?合格が分かった瞬間すぐにどこかにいなくなってしまうし……」
「ん?ああ…あの時か……」
藍は酒を置く
「あら藍、貴女またあちら側に行ったの?私の許可無しに?」
「──お言葉ですが紫様。……私は以前、紫様に定期的に行けと命じられているんですよ?」
「あ…あら、そうだったかしら?藍の記憶違いではないの……?」アセタラリ
「──私の記憶力の良さは貴女が一番知っているでしょう………」ハァ…
(藍さんって本当に大変なのかもしれない……)
『おーい音哉!お前も主役なんだからもっと盛り上がれよ!!』
「はいはい、ちょっと待ってて~」
藍さんに話しかけようとすると、首を縦に振られた。
「──今はあの娘達と楽しんだ方が良いんじゃないかな。話は夜でもできるから。」
この人は幻想郷内でもかなり空気の読める人だと思う。
軽く会釈をした後、魔理沙に連れていかれた。
『おらおら、飲め音哉~!!』
『ちょっ、待て~~!!』
「──それにしても、あの子も馴染んだものね。」
紫は酒を啜る。
この妖怪が持つ元々の雰囲気と、その妖怪の式である九尾の持つ独特の雰囲気が相まって、他の人間が近付きにくい空間になっていた。
「………はい、やっとここまで来れましたね。でも──」
「ええ、分かっているわ。私達はあの子の行く先をこれからも支え続けなければいけない。──彼の人生は短いけれど、彼の言っていた『短い人生をどう生きるか』……私達の犯した罪は、私の理想と矛盾しないように償っていかねばならない……」
『待て魔理沙!!何だその"鬼殺し"って酒は!?』
「………先代の巫女に、『貴方達妖怪は子供が欲しくないの?』と聞かれたことがありました……」
「?え、えぇ……」
突然式が話を変えたことで、紫の反応は遅れてしまう。
「私達妖怪は、寿命が長い故に子孫を残すようなことは必要ありません……
───そんな私は、あるとき式が欲しいと思ったんです。そして"橙"という式を作った。
───可愛らしかった。式とは、自分自らに従う、所謂"使い"のはず。
しかし私は、甘やかしてしまった。その結果が、今ある"勝手な行動"」
「藍……まさか貴女………」
「───。……私も、人間の親子というものを見て、"我が子"が欲しいと心のどこかで想っていたんだと思います。だから橙の事も、"我が子"だと思っていたのでしょう……今、確信しました。」
そう言って、九本の尾を全て消す。
服もいつの間にか変化している。
「──どうですか?外(現世側)にいる時の格好です」
「……?」
「音哉と、今ここには居ない奏の小さい頃を知っているからなんでしょうね……彼等に何かがある度に心配になってしまうんです。……これが親心と言うものなんでしょうか?」
突如式から言われた事に、主は答えることが出来なかった。
彼女もまた我が子なんている訳がなく、ましてや恋もした事はない。
恋に関してなら、藍の方が詳しいだろう。式になる以前から"そういう"妖狐だったのだろうからだ。
その藍が親心と言うのだ。そうなのだろう。
「そうね………でも、私だってそう言う事はあるわ。例えば、霊夢とかね」
幻想郷を支えるもうひとつの存在、博麗の巫女。
初代から関わってきた紫にとって、幼少から見てきた霊夢含め、かつての巫女達は我が子同然だった。
「──彼等は、強いわ。戦いにおいてではなく、"人間"として……何にも物怖じしないという、"最強"の強さよ」
「そうです…よね」
「そうよ。──というより、貴女が"親心"なんていうと、昔貴女に親心を感じていた私はどうなるのよ?人間でいうところの祖母とかじゃない」
紫は笑いながら言う
「あの子達にはまだちゃんと両親がいる。──貴女が必要ない訳じゃないのよ?ただ、こっち(幻想郷側)の"親"として見守ってあげましょう?」
「………はい!」
祝賀会も区切りが良くなってきた。参加者の大半がもう既に酔いつぶれているのだ。
「……阿求…」
音哉はこの会を直ぐに終わらせるような真似はしない。
しかし、軽く酔っている阿求を連れて街に繰り出した。
「あ!音哉君、高校受かったんでしょ!?おめでとー!!」
「あ、どうも菖芽さん。──いや、ありがたいんですけど、お客さん待ってますよ?」
「へ?……あああごめんなさい!300円です!」
人里で会う人々に次々祝われる
何故こんなに早く広まったのか判らないが、噂が伝わるのは早いというから仕方が無い
それに、悪い気もしない
「ふふ……音哉さん、人気者ですね」
少し頬が紅く染まった阿求は、いつもより魅力的だった
『おーい音哉~!!なに逃げ出してんだ~!?』
後ろから魔理沙が走ってくる
あの様子だとかなり酔っているだろう
「今行くよ~……(ポスッ)っと魔理沙?」
「寝ちゃってますね……」
阿求に寄りかかる魔理沙は、何をやっても起きなさそうな雰囲気を醸し出している
「………しゃーない。俺がおぶって行くから、阿求はこれを持ってて?」
「なんですかこれ?」
「家にいる家族の分のお土産。今回の合格祝いでいろいろ貰っちゃってさ。」
「そういえば、音哉さんにはお姉さんがいるんですよね?どんな方達なんですか?」
(蓮姉?蓮姉は……うーん)
「そうだな~……頼りになる姉、かな?」
少なくとも、長所も欠点もある最高の姉だと思う。
「もう一人は……まあ姉ではないんだけど。メリーっていう、幼馴染みで年上だから姉って感じなんだけどね。」
「……いいな~」
そういえば、阿求は一人っ子だった
「阿求達……先代達もだけどさ、姉妹みたいなのは居なかったの?」
「ん~…そーですね……"御阿礼の子"の世代はいた事がないと思います。記録上ですけど。だから、姉弟という類のものが少し羨ましくて……」
「姉弟は良いよ~?お世辞抜きで天才だから勉強教えてもらえるし、一緒にいて楽しいしね。」
「…………………」
───あの阿求の目はなんだ?
………あ、いいこと考えた
「なぁ阿求、学校始まったらさ、メリ姉の家に住みなよ」
「……へ?」
「話はつけておくからさ」bグッ!
プロローグを読んでくれた方にマジ感謝