そんなに人生甘くないよね   作:ジャイリ

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感は意外とあなどれない。


考えるな感じろ

 意識を取り戻すと俺は立ち上がった。

 

「また復活してる……俺の体はどうなってるんだ?」

 

 爆散した時よりも明らかに回復が早い。こんな回復力はさすがに異常だ。女神に回復力を少し向上してもらっているとはいえ、確実に死んだはずの状態で回復することなぞ今までの経験上あり得なかった。

 

「まさか本当に鬼に?いやあり得ない。何故だかわからないが俺の感覚が違うといっている」

 

 鬼になったことにより、異常な回復力を手に入れたことも考えられたが、何故だかわからないがそれは違うと確信することができる。何故かはわからない。第六感でも目覚めたのだろうか?

 死ねば死ぬほど第六感が成長していくとかないよね?

 もう本当にあんな思いはこりごり。

 

「そんなことよりあいつ、いきなり首をはねやがって、ものすごい痛かったぞ……」

 

 自分の首を触りながらちゃんとくっついていることに安堵しつつ、さっきのイケメン野郎のことを思い出す。なんとなくだが、まだあいつはそう遠く離れた場所にいない、そう感じた。

 

「いろいろ話を聞いてみたい、追いかけてみるか」

 

 まともに話してくれるのかはわからないが、いろいろと知ってそうなあのイケメン野郎に話を聞いてみたい。原作知識は少しずつ解放されてはいるが、まだまだ全然状況はわからない。あの人物はきっと重要人物なのではないだろうか。そうでなくては困る。あんな強いモブがいてたまるか。

 

 俺は大切だった家族たちに手を合わせる。後で絶対ちゃんと供養するからと誓いを立てて、イケメン野郎を追いかけた。幸いにも足跡が残っていたため、それを追跡すれば追いつけるはずだ。

 

 しばらく走っていると、人がいる気配を感じる。何人かの気配がする。そこにきっとイケメン野郎がいるはずだ。そう思いさらに走る速度を上げた。そこにいたのは、もっとも会いたい大切な家族だった。

 

「禰豆子!」

 

 嬉しい、嬉しい、嬉しい。生きてた、生きてたんだ。

 

「禰豆子、よかった、生きてたんだ。本当に良かった」

 

 すごい形相で何かを守ろうとしている。炭治郎だ、炭治郎を守っていたんだな禰豆子。きっと怖かったのだろう。そんな顔をして必死になって……家族思いのなんていい子なんだ。もう大丈夫俺が来た。もうそんな顔させてなるものか。

 

「やめろ、安易に近づくな」

 

 後ろでイケメン野郎が何かを叫んでいたがそんなものどうでもいい。俺は禰豆子を安心させるために抱きしめた。ゆっくりと安心させるように。

 

「怖かっただろ、禰豆子もう大丈夫だ」

「ううううう」

 

 可哀想に、震えているじゃないか。俺はさらに安心させるように抱きしめた。すると禰豆子も怖い形相からほっとしたような顔つきになり、俺を抱きしめ返してきた。

 

「よく頑張ったな、炭治郎を守ってたんだなえらいぞ禰豆子」

「ううううう」

 

 よしよしといった感じに頭をなでると嬉しそうに身をゆだねてくる禰豆子。こんな状況で不謹慎だが、可愛い。禰豆子可愛い。女神さまや、俺の女神様なんや。

 

「それにしても血だらけじゃないか、大丈夫なのか?」

「ううううう」

 

 何ということだ、ちょっと前からおかしいと思っていたが、うううううとしか返答が返ってこない。恐怖のあまり幼児退行しているようだ。ここまでの恐怖を与えた奴は絶対に許さない。いっそう強く禰豆子を抱きしめた。

 

「おい!」

 

 突然後ろから声をかけられる。そういえばイケメン野郎がいたんだった。忘れていた。名残惜しいが禰豆子から離れてイケメン野郎に向き直る。

 

「なんだよ」

 

「おまえ、いや、お前たちは何なんだ」

 

 突然何を言い出すのだろうかこいつは?なんなんだと聞かれてもな。

 

「家族だ」

 

「ふざけるな、お前とそいつは鬼の仲間か!」

 

「だから鬼じゃないって言っただろ。それに禰豆子に対しても鬼だと!こんな可愛い禰豆子に対して鬼とはどういう了見だこのやろう」

 

 こいつ、こんなに可愛い禰豆子に対して鬼とは、ぶっ殺してやろうか。絶対勝てないけど。ちらっと禰豆子を見る。禰豆子は不思議そうにこちらを見ておとなしくしていた。可愛い。

 

「ううううう」

 

 呼ばれたと思ったのか、嬉しそうにとてとてとこちらに来て俺の袖をつかんだ。可愛い。とは言っても、ちょっと冷静に禰豆子を見たら八重歯が発達していることに気付いた。八重歯がある禰豆子可愛い。いやいや、違う、あまりの可愛さに思考が停止してた。もしかして、禰豆子は鬼になってしまったのか。そう考えると言葉を発せなくなったのは鬼になった影響なのか。

 

「もしかして、禰豆子は鬼になったのか?」

 

「何をいまさら……本当に何も知らないのか?」

 

 イケメン野郎も困ったように考えだした。それにつられるように俺も少し考える。冷静になると第六感が働いたのか、禰豆子は鬼になってしまったのだと感じられるようになった。なんということだ、俺の可愛い家族が鬼にされてしまっただなんて……。

 

「おい、イケメン」

 

「いけ、めん?……俺のことか?」

 

「そうだイケメン。鬼になったものを治す方法はないのか」

 

「(いけめんとはなんだ?)……ない」

 

「くそ……」

 

 こんなに可愛い禰豆子が化け物の仲間入りなんてあってたまるか。なんとかならないのか。今は見つかってないだけでもしかしたら鬼を人間に戻す方法とかがそのうち見つかったりしないのだろうか。わからない。さすがに情報が少なすぎる。

 

「なぁ、あんた一体何者なんだ?」

 

「……鬼殺隊だ」

 

「鬼殺隊とはなんだ」

 

「……鬼を狩る組織だ」

 

「……そうか」

 

 なんか急に根暗な雰囲気になったなこいつ。さっきと全然違うやん雰囲気。話しかけづら。なんなん、さっきの威勢はどこに行ってしまったん?

 

「……俺からも聞きたい」

 

「何?」

 

「……なぜお前は殺したはずなのに生きている」

 

「それは俺もよくわかってない」

 

「……そうか」

 

「……」

 

 ど、どうしたの本当に。この人俺を瞬殺した人と同じ人なの本当に。もう滅茶苦茶根暗感半端ない。いづらい、この場にいづらい。すごいシリアスだったのに急にいづらい雰囲気になったよ。何なのこの人、情緒おかしいよ。あの絶対殺すマンの雰囲気の方がまだ話しやすかったよ、戻ってきて絶対殺すマン。いや、まぁ殺されたくはないんだけどね。とりあえず禰豆子をぷにぷにして癒されよ。かわいい。

 

 禰豆子をぷにぷにしてその場を過ごしていると、イケメンが何かを作ってこっちに向かってきた。竹で作った何かをこちらに差し出す。

 

「それは?」

 

「……さるぐつわだ」

 

「ふーん、それが?」

 

「……気休めだ」

 

 どういうことーー?言葉が足りな過ぎて何が言いたいのか全く分かんないんだけど。

 

 大変な労力をかけながら何が言いたいのかを根掘り葉掘り聞いてみると、どうやら禰豆子用に作ったものらしい。なんでも、鬼は人を食らう化け物であり、人を食わせないように気休めとしてさるぐつわを禰豆子に着けてほしいとのこと。口下手にも程がある。もうこいつ嫌い。ついでに女神も嫌い。

 

 とりあえず、こいつの言いたいことも分からなくもないので、禰豆子にお手製さるぐつわを装着することにした。俺が手招きするとおとなしく従ってくれ、すんなり装着することができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それなりの時間が経ったころ、炭治郎が目を覚ました。

 

「あれ、ここは」

 

「おぉ、炭治郎目を覚ましたか」

 

 ぎゅっと抱きしめる。

 

「で、泥海男兄さん生きてる!それに曲がってた腰と背中も治ってる、なんで!?」

 

「そんなことはどうでもいい。無事でよかったよ炭治郎」

 

「そうだ、禰豆子は、禰豆子は無事なの?」

 

「あぁ無事だ、あそこでおとなしく座っている」

 

 炭治郎は禰豆子の姿を見つけると安堵の表情を浮かべるも、先ほど自分の意識を刈り取ったものの姿も捉えて顔が強張る。それを見て、「あいつなら大丈夫だ、多分」と言って落ち着かせる。大丈夫だよね?

 その後炭治郎に禰豆子を人間に戻す方法を死に物狂いで見つけ出そうと話し合った。

 

「砂霧山のふもとに住んでる鱗滝左近次と言う老人を訪ねろ」

 

 イケメンは何かを決意したかのようにそう言ってきた。

 

「冨岡義勇に言われてきたと言え」

 

 いまさらながらこいつは冨岡義勇という名前らしい。そういえば全然自己紹介してなかったな。

 

「今は陽がさしてないから大丈夫なようだが、妹を太陽のもとに連れ出すなよ」

 

 鬼は太陽のもとを歩けない。そういえばそんな設定があったことを思い出した。

 

「炭治郎、これから頑張って禰豆子を人間に戻すために頑張ろうな」

 

「いや、お前は俺とともに来い」

 

「え?」

 

むんずと俺の襟足をつかんだと思ったらものすごい勢いと速度で俺を連れて移動した。

 

「な、なにゆえーーーーーーーーーーーー!」

 

「で、泥海男兄さーーーーーーーーーーん!」

「うううううううううううううううううう!」

 

 炭治郎と禰豆子の叫び声を聞きながら、俺はあまりにも急激な速度での移動に意識を手放すのだった。

 




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