はたまた暗い意識から目を覚ます。最近意識失いすぎじゃないか俺。
「気が付いたか」
「気が付いたかじゃねぇよ、殺す気か」
突然の無茶苦茶な移動に俺は意識を飛ばすこととなる。もっと優しく運んでよね、ぷんぷんなんだから。
冷静になってあたりを見渡してみると、もうそれはそれは立派な庭園に、それに引けを取らない屋敷が目の前に存在していた。なに、お金持ちの家ですかここ?状況が理解できないので、さすがに目の前義勇とやらに話しかけることとする。
「こんなところに連れてきていったいどういうつもりなんだ。愛しの家族と引き離されたんだ。納得のいく理由じゃないと許さねぇぞ」
「(あまりにも未知な存在故に、俺一人の独断で判断する訳にはいかないから)判断を仰ぎたい」
「なんの?」
「(鬼殺隊の代表であるお館様に今後の処遇を判断していただく)お前の事を」
相変わらず口下手だなぁ。でもなんか知らないけどこいつが何を言いたいのか何となくわかっちゃう自分が嫌になる。意識を失った事でまた第六感が冴えわたったのかもしれない。なんかどんどん人間離れしていく気がするなぁ。
「よくわかんないけど、ここにお前の上司的な奴がいるってことでいいのか?で、そいつに俺のことを話して処遇について決定すると」
「……そうだ」
まぁ、妥当な判断か。鬼ではないが、人間のようにも思えない俺という存在は恐怖の対象でしかないだろう。そこでいっぱしの鬼殺隊の部下のこいつは、そのような存在を放って置くわけにもいかないので、無理やり俺を連れてきたと。とは言っても、何をされるかはわからない。いつでも逃げる準備はしておくか。……こいつがいる限り逃げられなくね?
「(まだ鬼ということを疑ってないわけじゃないが、気絶しているときに太陽に放り出してもこいつは平気だった。そのことからも、こいつのような存在をお館様に報告することは間違っていないはずだ)おとなしく待っていろ」
こいつ……俺を気絶していた間に太陽に晒しやがったな。なんか思念が伝わってきたぞこの野郎。鬼ではないけど死んだらどうするつもりだったんだ。ほんとこいつ無茶苦茶だな。それにしてもこいつ心の中滅茶苦茶饒舌なんだろうなぁ。めちゃくちゃ心が動いてるのが伝わってくるもの。
あぁ、それにしても炭治郎達は大丈夫だろうか。心配でならない。本来であれば一緒に行きたかったが、こうなってしまったからには、無事を祈るほかない。なんとなくだが炭治郎はしばらく地獄の特訓が待っていそう。そんな気がする。あぁ、一緒にいて慰めてやりたかった。
そんなことを考えていると、誰かがやってくる気配がした。ちょっとしたオーラから察するに、この気配こそが義勇の上司とやらなのだろう。そう思ったのも束の間、俺は地面とキスをしていた。いったい何を言っているんだと思うかもしれないが、本当の事なんだから仕方ない。まじで痛い。いつの間にか跪いている義勇が俺の頭をつかんで地面にキスをさせたようだ。絶対いつか殺す。こいつ強いから無理だけど。
「ご壮健のようで何よりでございますお館様。この度は私が持ってきた問題にご足労頂き誠に申し訳ございません。しかしながら私の一存では判断いたしかねる問題であったため、判断を仰ぎにまいった所存でございます」
「そんなに堅苦しくしなくても大丈夫だよ、義勇。今は柱合会議ではないからね」
お館様と呼ばれた男の声を聴いて驚いた。これはいけない。この男の声は麻薬だ。この心地よさは人を惹きつけもするし駄目にもする。きっと何人もの人間がこの声に心酔してしまうのだろう。オーラといい声といい、まさしくカリスマ性の権化だ。ただし、何故か知らないが俺には通用しないがね。なんか変な耐性も備わってきたのかしら?どんどん人間離れしていくな。
「鎹鴉からある程度内容は知ってはいるが、そこにいるのが義勇が言っていた鬼ではないが死なない人間かな?」
「はい」
「なるほど。少し話が聞きたいな。押さえつけている手を放してあげなさい」
「御意に」
義勇は俺を解放する。どんだけ地面とキスさせんだよ。危うく地面が好きになるところだったじゃないか。少しばかり義勇をにらみつけるが、何故にらみつけられているかわからない義勇は少しばかりきょとんとしていた。う、危うくときめきかけた。可愛くなんて断じてない。くそぅ、これだからイケメンは嫌いだ。
「初めまして、産屋敷耀哉です。詳しく説明はされてないだろうけど、義勇の上司のようなものだよ」
「これはこれは初めまして。鎮江泥海男と申します。以後お見知りおきを」
少しばかり大仰にお辞儀をして見せる。ちょっと調子に乗りすぎてる気もするが、少しばかりイラついていたので許してほしいものだ。
「君にいくつか質問をしたい。君は鬼なのかな」
「鬼ではありません。証拠を提示することはできませんが、それは確信を持って言えます」
「証拠が提示できないのになぜそう言い切れるのかい」
「第六感がそう言っている。信じてもらえないかもしれませんが、俺にとっては信ずるに値するものです」
「第六感……感覚、ということかな」
産屋敷耀哉はふむ、と少し考える。少しの間沈黙が流れる。
「ではなぜ、君は何度も死の淵から生還をしているのかな?聞いた話によると、鬼が回復する様と酷似しているとの報告を義勇から聞いているのだが」
「感覚的なこと、そして荒唐無稽なことでよければお話させていただきますが」
「それでかまわないよ」
実は感覚的になんでこんなに回復力が上がったのかは予想がついている。しかし、こんな話を信じてもらえるのだろうか。それで構わないといってるから、まぁある程度は話すか。
「実は、私は鬼の血を体内に注入されております。本来ならその時に鬼の血に耐えられず死んでいるはずだったのですが……私は昔から人より回復力が並外れておりました。そして、信じられないかもしれませんが、私は回復能力の副産物として、聖の属性を女神から付与されております。恐らく邪の属性であろう鬼の成分を浄化し、鬼特有の回復能力だけを手に入れるに至ったというわけです。元々備わっていた私の回復能力、そして鬼の回復能力。それが混ざり合っているのが今の私の状態と言うわけです」
「女神からの付与……にわかには信じられない荒唐無稽の話だね確かに」
「これくらいですかね。後は自分でもわからないことの方が多いですから」
「話してくれてありがとう。私は面白くて信じてみてもいいかとも思う。君という人柄はとても清らかなのは感じ取れるからね。とはいえ、こんな荒唐無稽の話はそんなに簡単に信じてもらえるものではない。それはわかるね」
「わかります。もし自分がそんなことを言われたとしたら、噓を言っているか、その人が異常者なのかを疑ってしまいます」
「そう、人間は弱い。自分と違うものを見たとき、恐怖を感じてしまうものなんだ。だからこそ、証明していかなければいけない。君自身の行動でね」
「そうですね、どうしたものか……」
今後の方針について考えてみる。はたから見れば鬼と何ら変わらない能力を持っている俺は恐怖の対象として存在することとなるだろう。ちょっとした行動が混乱を招きかねない。炭治郎達を追いかけて、ともに行動することも考えたが、俺は鬼殺隊の長であろうものに存在を知られてしまった。鬼になった禰豆子と行動している炭治郎に合流するのはあまり得策とはいかないだろう。恐らく俺は監視をつけられる。その内ばれてしまうのだろうが、できるだけ長く知られないようにするに越したことはない。
しばらく考え込んでいると、産屋敷耀哉が提案とばかりに口を開いた。
「今後の君の処遇なんだけど、ある場所で君を保護したいと思っているんだ。もちろん衣食住全てこちらが負担するよ」
好待遇。裏がありそうだな。
「それはありがたいですが、何が目的ですか?」
「そう警戒しないでおくれ。君にこれから行ってもらおうと思っている場所は蝶屋敷。実は病院のような場所でね、君の体をそこで少し観察させてほしいんだ」
要はモルモットってことか。なんとなく不快に感じたが、第六感がその提案を受けたほうがいいと感じている。癪だがその提案を受けることにした。
「わかりました、その提案をお受けします」
「よかった、さっそく向かってもらうね」
産屋敷耀哉がそう言ったとたん、黒子みたいな二人が突然俺の前に現れた。驚くのも束の間、一瞬で簀巻きにされ目隠しをされてしまう。
「え、え、え、ナニコレ怖い、どういう状況」
「おとなしくしてれば何もしない。黙って運ばれてくれ」
黒子にそう言われて、俺は二人に担がれてどこかしらに運ばれていくのだった。
「どういうことーーーーーーーー!」
俺の運ばれ方雑じゃね毎回?
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side 冨岡義勇
「どういうことーーーーーーーー!」
あの男の叫び声を聞きつつ俺はお館様の提案したことに驚きを隠せなかった。だって、今の蝶屋敷にあいつを送り込むことはあまりにも酷だ。
「浮かない顔だね義勇」
「……そのようなことは」
「いいんだよ、私も少し荒療治をしているとは自覚している」
お館様も少しばかり申し訳なさそうな表情だった。
「これは予想でしかないのだけれど、彼はきっととんでもなく酷い目にあうだろう」
「……それは」
「きっと、それによって彼女は色々な感情と戦うきっかけになるはずだ。彼には悪いけど、彼女の為に酷い目にあってもらうつもりだよ。私は彼なんかより可愛い子供たちの方が優先だ。私はひどい奴だね」
「そのようなことは……」
「しかし、矛盾してるようだけど、彼を信頼しているからこそ蝶屋敷に送り込んだんだ。彼ならきっといい未来を紡いでくれると信じている」
どこか晴れやかな気持ちで空を見上げる産屋敷耀哉。それを見て、お館様は自分では計り知れない物事をたくさん考えている、そう思った。
side out 冨岡義勇
時には荒療治も必要である。